現在、日本の大学進学率は約55%です。高等学校を卒業した後、半数以上が大学などに進んで勉強を続けています。大学受験は、実際に受験する子どもはもちろん、親にとっても大きなライフイベントです。どのくらいの資金を準備しておくべきか、しっかり把握しておきましょう。

大学進学にかかる費用を時系列で確認

大学受験,費用
(画像=guy2men/stock.adobe.com)

志望大学に合格するためには、受験料や入学金以外にもさまざまな場面でお金が必要です。一般的な大学受験のスケジュールを追いながら、支出額をチェックしていきましょう。

受験の準備段階の費用

1年あたりの教育費平均額

授業料設備費等学校外教育費
(補助学習費)
就学支援金負担額合計
公立高校11万8,800円14万7,875円11万8,800円14万7,875円
私立高校43万3,991円15万1,715円19万3,935円11万8,800円
~39万6,000円
50万2,441円
〜77万9,641円

(図表:著者作成)

志望大学に合格するためには受験勉強が必要ですが、それにも費用がかかります。

国の「高等学校等就学支援金」により、公立高校では授業料無償、私立高校でも世帯収入に応じた給付金が支給されますが、居住する都道府県によってはさらに補助金が用意されているところもあります。基本的な授業料が無償または軽減されているため、学校外教育費用を増やすこともできるでしょう。

学校外教育費は塾や家庭教師の費用などが該当しますが、上記は高校1~3年生の平均費用であることに注意が必要です。例えば大学受験を目前控えた冬休みの直前講習費用は、1教科1コマあたり2,000~8,000円と塾によってさまざまです。集中対策講座では、数日分で10万円を超えることもあります。

-進学校は受験対策が充実していてお得な場合もある

私立高校は授業料以外の諸費用も公立高校より高い傾向がありますが、受験指導が充実しているため、学校外教育費が不要になるケースも少なくありません。このことから、高校受験を控えた中学生の保護者の多くは「公立高校の場合は塾に通わせることになるから、どちらでも結局かかる費用は同じ」と考えるのです。

高校を選ぶ際はさまざまな視点で魅力を探しますが、中でも受験指導は大きな魅力といえるでしょう。

-有利になる検定を受けるなら検定料も必要

主な資格の検定費用(税込価格)

実用英語 技能検定
(英検)
TEAP/TEAP CBTIELTS TOEICGTEC CBT日本漢字能力検定
(漢検)
数学検定
(数検)
日商
簿記検定
1級:1万300円
準1級:8,400円
2級:7,400円
4技能:1万5,000円
2技能:6,000円
アカデミック:2万5,380円6,490円9,900円1級:5,000円
準1級:4,500円
2級:3,500円
1級:7,800円
準1級:6,700円
2級:6,000円
2級:4,720円

(図表:著者作成)

資格の中には、一定水準以上のスコアや級を持っていると受験で有利になるものもあります。一般的に検定は、難易度が高いものほど受検料が高く設定されており、学校や塾などでの検定対策講習や問題集には別途費用がかかります。

大学や学部、受験方式によって優遇される資格やスコア・級が異なるため、入学試験要項などで確認することが大切です。

受験費用 出願するほど受験料は増える

一般的な大学受験料

大学入学共通テスト2教科以下1万2,000円
3教科以上1万8,000円
成績通知手数料800円
国公立大学
(1校あたり・平均)
二次試験1万7,000円
私立大学
(1学部・学科あたり)
大学入学共通テスト利用入試1万8,000円~2万円
一般選抜入試3万5,000円
私立大学[医歯系学部]
(1学部・学科あたり)
大学入学共通テスト利用入試4万円
一般選抜入試6万円

※公立大学・私立大学受験料は、採用している大学が多い金額です。
※別途支払手数料などがかかります。
(図表:著者作成)

多くの大学はインターネット出願に対応しているため、願書の購入費用は不要です。インターネット上で登録後、書類を郵送します。「定形外郵便物料金・簡易書留・速達料金」として、1校あたり750円~1,000円程度の郵送料がかかります。

-大学入学共通テストは、申し込みが早い

大学入学共通テストの実施期間は1月中旬ですが、出願期間は前年9月末~10月初旬です。このタイミングで約2万円の出費があることを覚えておきましょう。

-出願割引制度を活用する

通常は、出願するたびに受験料がかかります。例えば、ある大学の2学部を一般選抜入試で出願する場合は、3万5,000円×2学部=7万円の受験料が必要です。

しかし大学によっては、複数出願分について受験料の割引が適用されるところもあります。2つ目以降の受験料が1~2万円割り引かれるケースが多いのですが、中には2つ目以降が無料になる大学もあるようです。同大学で複数出願を希望する場合は、必ずチェックしておきましょう。

-意外とかかる交通費 遠方の場合は宿泊費も

受験会場までの交通費も侮れません。比較的近い大学でも1校あたり数千円かかり、新幹線や飛行機などを利用し、宿泊費がかかる場合はさらに負担が大きくなります。

例えば大阪在住の人が東京の大学を受験する場合、約3万円の交通費の他に宿泊費用がかかります。遠方の大学を複数受験する場合は、1回の移動で複数の大学を効率よく受験できるスケジュールを考えることも大切です。大学によってはキャンパス以外にも受験会場を用意しているところもあるため、費用と体力を節約するためにも積極的に利用したいものです。

入学金と前期授業料の同時納入が一般的

一般的に、入学手続きは合格発表から1週間程度で締め切られます。二次・三次発表では、手続き期間は2~3日しかありません。

このとき、50~100万円を支払うことになります。クレジットカード決済ができるところもありますが、指定銀行口座への振込のみとしている大学もあります。振込方法によっては利用限度額が設けられている場合もあるため、その場で焦らないようにそれぞれの大学の決済方法を確認しておきましょう。

-投資や保険で受験資金を準備している人は、手続き時期に注意

一般選抜入試では、1~3月に出願から入学手続きまでを行います。一方で推薦入学試験や帰国子女・外国学生・アスリートなどを対象とした入学試験は、9月頃に始まり12月中には終了します。つまり、そのタイミングで入学資金を準備しておかなければならないのです。

ジュニアNISA口座では、口座開設者が18歳になる年度の12月末まで払い出しができません。また学資保険の満期は保険会社によって異なるため注意が必要です。

-併願の場合は、入学しない大学にもお金を支払うことに

複数の大学を受けていて、先に第一志望ではない大学の合格発表がある場合は、以下の3通りの手続きが考えられます。

【A.延期申請ができる大学】
本来の入学手続期間内に「入学手続きの延期」を申請し、入学金と同額の入学申込金を支払います。入学申込金は、後日入学手続きを行う場合は入学金に充当されますが、入学を辞退した場合は返還されません。

【B.延期申請ができない大学】
入学手続期間内に入学金と指定納入金を支払い、入学手続きを行います。第一志望の大学に合格した場合は、指定された期限内に「入学辞退」を申し出ることで納入金が返還されます。ただし、入学金と納入時の振込手数料は返還されません。

【C.入学手続きが2回に分かれている大学】
大学によっては「第一次手続きで入学金の納入し、第二次手続きで指定納入金を支払う」としているところもあります。延期申請は不要ですが、第二次手続きを行わない場合も入学金は返還されません。

いずれにしても、入学金相当額は支払わなければなりません。入学金は20万~30万円で、大学によって異なります。入学を辞退することで納入金が返還されるBのケースでも、他大学の入学手続期限を考えると返還を待っている余裕はないでしょう。

-志望校を早めに絞り込むのも手だが、ギリギリまで追加できる

「子どもの希望どおりに受験させてあげたい」と思うのが親心ですが、使えるお金には限りがあります。思うような結果が得られない場合は、追加出願をすることもあるでしょう。あらかじめ志望校の受験日や手続きの締め切りを確認しておくことで、かかるお金は同じでも受験できる回数が変わってきます。受験はゴールではないため、その後の入学費用も考慮しながら効率よく進めていきたいところです。

初年度費用は学部によって大きく異なる

初年度納入金平均額

入学金授業料施設設備費初年度納入金
国公立大学28万2,000円53万5,800円0円81万7,800円
私立大学文系学部22万8,262円79万3,513円15万807円117万2,582円
理系学部25万5,566円111万6,880円17万7,241円154万9,687円
医歯系学部107万3,083円286万7,802円86万2,493円480万3,378円
その他学部25万6,521円95万9,899円23万4,883円145万1,303円

※国公立大学でも設備費がかかる場合があります。
(図表:著者作成)

入学手続時の指定納入金には、前期授業料や施設設備費が含まれています。後期授業料の納入時期は、9~10月が一般的です。50万円以上の出費をした半年後には、再度数十万円の出費があるということです。入学手続きで力尽きないよう、計画的に資金を準備する必要があります。

入学準備 学部によっては教科書・教材費が高額

入学手続きが済んでも、出費は続きます。選択科目によっては教科書・教材費用が10万円近くになることもあるため、油断できません。

学部によっては「ノートパソコン必携」としているところもあり、スペックの指定があるケースがほとんどなので、子ども用に1台新調しなくてはならない家庭もあるでしょう。

子どもの夢を応援するためにも、早めの準備が大切

大学受験は、子どもが夢を叶えるための第一歩です。あまり教育費がかからない小中学生のうちから大学進学資金を準備しておけば、余裕を持って子どもの夢を応援できるのではないでしょうか。WealthRoadを読んで、子供の夢を応援するための教育資金作りを始めましょう。(提供:Wealth Road