人生100年時代を楽しく過ごすためには、老後資金の対策を早くから考えることが必要です。では、30代、40代の働き盛りの世代ではどのくらい貯蓄があるのでしょうか。老後の資金はどのくらい準備できているのでしょうか。

これから老後資金の準備をする30代、40代のために、賢く資産を育てる方法をお伝えします。

30代40代の平均貯蓄額と中央値

資産,育て方
(画像=simona/stock.adobe.com)

30代、40代の貯蓄について、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」2019年をもとに考えてみましょう。

単身世帯世帯の約半数は貯蓄額100万円以下!

・30代
平均貯蓄額:約360万円 中央値:77万円

・40代
平均貯蓄額:約560万円 中央値:50万円

30代単身世帯の貯蓄額をみると、平均貯蓄額は約360万円です。平均貯蓄額には、全く貯蓄を持っていない人の割合や、3,000万円以上の貯蓄がある人の割合が平均値に影響を与えてしまいます。ですから、平均値だけを見るのではなく、数値を並べたときに真ん中になる「中央値」のほうが現実に近いかもしれません。30代の中央値では77万です。また、40代では平均貯蓄額は約560万円ですが、中央値では50万円になっています。これは、30代も40代も全く貯蓄がない世帯の割合が多いことが原因となっています。

<単身世帯>

30歳代40歳代
金融資産非保有36.5%40.5%
100万円未満14.2%13.4%
100〜200万円未満9.8%5.9%
200〜300万円未満6.4%3.9%
300〜400万円未満3.7%4.8%
400〜500万円未満3.4%2.7%
500〜700万円未満6.4%4.5%
700〜1,000万円未満5.0%4.3%
1,000〜1,500万円未満6.2%6.8%
1,500〜2,000万円未満2.3%2.5%
2,000〜3,000万円未満3.4%2.7%
3,000万円以上0.7%4.3%
平均359万円564万円
中央値77万円50万円

参照:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(2019年)より編集部作成

2人以上世帯でも4組に1組が貯蓄100万円以下!

・30代
平均貯蓄額:約530万円 中央値:240万円

・40代
平均貯蓄額:約690万円 中央値:365万円

2人以上の世帯の30代では平均値は約530万円、中央値は240万円と単身世帯と比べて多くなっています。40代では平均値は約690万円で中央値は365万円です。単身世帯と比べて全く貯蓄がない世帯の数も少なく、貯蓄金額も多くなっています。

<2人以上世帯>

30歳代40歳代
金融資産非保有15.8%18.7%
100万円未満9.5%5.9%
100〜200万円未満11.6%7.2%
200〜300万円未満11.0%7.3%
300〜400万円未満6.5%6.0%
400〜500万円未満5.4%4.4%
500〜700万円未満9.2%9.8%
700〜1,000万円未満8.6%9.3%
1,000〜1,500万円未満5.7%9.1%
1,500〜2,000万円未満2.4%5.0%
2,000〜3,000万円未満3.0%3.1%
3,000万円以上2.1%2.9%
平均529万円694万円
中央値240万円365万円

参照:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(2019年)より編集部作成

30代も40代も3,000万円以上の貯蓄を持つ人がいる一方で、全く貯蓄がない人と100万円未満と答えた人は30代が25.3%、40代が24.6%と、どちらも約25%で4組に1組は貯蓄が十分でないことがわかります。また、平均貯蓄額があるからと言って、その後のライフプランや、老後の準備などを考えると十分でないことも考えられます。

30代、40代からであれば老後資金を準備する期間は十分あります。なんとなく貯めるよりも目標があったほうが頑張りやすいので、目標金額などを決めて資産形成を始めましょう。

老後資金は本当に2,000万円必要?本当はいくら必要なのか

老後の資金がどのくらい必要なのかは、老後にも家賃を支払うのか、住宅ローンがあるのか、どんな生活をしたいのかによって大きく異なります。まずは老後の生活をイメージするために、総務省の「2019年家計調査報告の家計収支」をもとに考えてみましょう。

夫婦2人で2,000万円以上!

下表は、65歳以上の夫と60歳以上の妻の高齢夫婦2人世帯の家計収支です。社会保障給付(年金)約21万7,000円の収入に対して、支出は約27万円(消費支出23万9,947円+非消費支出3万982円)で毎月約5万4,000円が不足しています(その他収入を含まず)。この不足金額が、資産からの取り崩しをしなければならない金額です。

仮に、夫が90歳まで生きると仮定すると、65歳からの26年間で約1,684万円(5万4,000円×12ヵ月×26年)が必要になります。さらに、妻が90歳まで生きるとすると、60歳からの31年間で2,000万円以上(5万4,000円×12ヵ月×31年)が必要です。仮に夫が100歳まで長生きすると、2,300万円(5万4,000円×12ヵ月×36年)が必要になります。しかし、この金額では住まいにかかる費用の割合が低いため、65歳以降住まいも賃貸の場合は上記の金額のほかに家賃分の準備も必要となります。

<高齢夫婦無職世帯の家計収支 -2019年->

単身世帯でも1,000万円以上必要

60歳以降の単身世帯では社会保障給付の年金の収入は約11万6,000円、一方支出は約15万2,000円(消費支出13万9,739円+非消費支出1万2,061円)で毎月3万6,000円不足しています(その他収入は含まず)。

こちらも年金が支給される65歳から90歳まで生きると1,123万円(3万6,000円×12ヵ月×26年)、100歳まで長生きすると約1,550万円(3万6,000円×12ヵ月×36年)必要になります。単身の場合も老後も賃貸であれば家賃分も考えておかなければなりません。

加えて、夫婦2人の世帯も単身世帯も介護が必要になった場合に備えるためには、さらに上乗せして準備をしておく必要があるでしょう。

<高齢単身無職世帯の家計収支 -2019年->

資産運用で大切な3つのこと

老後の資金を準備するのに、早過ぎるということはありません。預貯金の金利に頼ることができない現在では、長期的に資産形成をしていく必要があります。安定的に資産を増やしていくためには、資産形成特有のリスクを減らすことが重要です。

リスクを減らす方法として一般的なのが、「分散」「長期」「積立」の3つの方法です。

価格の動きが異なる商品に投資する「分散投資」

一つの商品だけで運用していると、価格の変動などで資産が大きく減ってしまうこともあります。しかし、動きの異なる商品で運用していた場合、その変動幅は相殺されて小さくなります。そのため分散投資をすることで、リスクを低減することができます。

投資期間を長くする「長期投資」

さらに、金融商品などは毎日価格が変動し、世界経済などの影響で大きく株価などが下がってしまうこともあります。単年で見ると大きく下がってしまうことがあっても、長期で見ると再び株価が上昇することもあります。短期で考えず長期で考えると、価格変動のリスクも低減できます。

購入した価格を平均化する「積立投資」

株価は毎日変動しているために、いつ購入するかで利益や損益がわかります。安い時に購入して高い時に売ることができればいいですが、実際にはなかなかそうはいきません。しかし、積立のように毎月決まった金額を決まった日に購入することで、高いときも安いときも購入することになります。

積立の効果は、買うタイミングを気にしなくていいことだけでなく、購入した価格を平均化する効果もあります。例えば、購入を始めたときよりも株価が下がっていたとしても、平均単価よりも高くなれば利益が出ることもあります。つまり、同じ商品を購入したとしても、一度に購入するよりも積立で購入するほうがリスクを低減することができるのです。

長期、分散、積立のメリットを生かせる投資方法5選

長期、分散、積立の方法を使った投資方法はいろいろありますが、これから始めてみたいという人向けなのが税金のメリットの大きいiDeCoとつみたてNISAです。さらに、老後の収入源も同時に作りたい方には不動産投資がいいかもしれません。マーケットで直接取引をしたいならETFや株式投資が向いているでしょう。それぞれどんな特徴があって、どんなメリット、デメリットがあるのか一つずつみていきます。

1.定期預金よりも効果あり?注目の「iDeCo」

iDeCoは老後資金の上乗せとして、自分で積立てる「自分年金」の制度です。自営業、専業主婦、公務員などが加入できます。現在会社員の人は、勤務先に企業型確定拠出年金がある場合加入できない人もいますが、そうでない人は加入できます。

iDeCoは毎月自分で決めた掛け金(5,000円以上)を拠出して、商品を自分で選択して運用します。定期預金などの元本が確保されている商品のほかに、値動きがある投資信託などを選択することができます。投資信託での運用の場合は、将来の受け取り金額は確定していません。

iDeCoが注目される理由は、拠出した金額が全額所得控除になるため、所得税や住民税の軽減効果が大きいことです。例えば、毎月1万円拠出すると、年間12万円が所得控除になります。所得税率10%、住民税率10%の人であればそれぞれ1万円2,000円税金の軽減効果があります。12万円に対して2万4,000円の税金が軽減できるので、普通預金の金利と比べても効果が大きいことがわかります。

また、運用期間中の利息や配当金、売却益などが非課税になることも大きなメリットです。さらに、受け取るときにも退職所得控除や公的年金等控除に該当するため、税金の負担が軽減される効果も期待できます。

2.非課税が20年間続く「つみたてNISA」

つみたてNISAは1年間に40万円まで積立でき、20年間は配当金や売却益などが非課税になる制度です。2018年から2037年まで期間限定の制度でしたが、5年間の延長が決まりました。

購入することができるのは、金融庁が出した一定の条件をクリアした投資信託とETFです。iDeCoとは違い、元本が確保されている商品はありません。しかし、いつでも売却することができるため、資産が増えているときなど選んで売却することもできます。20歳以上の人であれば口座を開設することはできますが、1人1口座しか開設することができないため、一般NISAとつみたてNISAのどちらかを選ばなくてはなりません。一般NISAとつみたてNISAは1年単位で変更することは可能です。

3.老後の安定収入なら不動産投資

不動産投資は、所有する不動産を賃貸に出すことで家賃収入を得る方法です。しかし、多くの場合は金融機関からの融資で投資用の不動産を購入し、家賃収入からローンを返済していきます。ローンが完済した後には、毎月の家賃の大方が収入になり、売却すればまとまったお金を手にすることも可能です。

不動産投資の特徴は、ローンで購入するため自己資金が少なくても始められる点です。さらに、ローンの契約時には団体信用生命保険にも加入するので、生命保険の代わりにもなります。長期間の収入源が確保できることはメリットですが、家賃の下落や空室の恐れなどもあるため物件の選び方には注意が必要です。

4.リアルタイムで分散投資ができるETF

ETFは「上場投資信託」といいます。仕組みや運用方針は投資信託と同じですが、取引方法が異なります。投資信託の価格は自分指定して購入できませんが、ETFは株式と同じように上場しているため、証券取引所でリアルタイムに価格を確認することも、価格を指定して購入することもできます。いつでも取引できることと、値動きがわかりやすいこと、つみたてNISAなどよりも選択肢が多いことが特徴です。また、1つのETFで複数の銘柄に分散投資できることも特徴です。

5.スマホのアプリでもできる株式投資

株式投資とは、企業が発行している株式を証券取引所で売買することです。株価は毎日変動しているため、購入した価格よりも高くなったら売却することで利益を得ることができます。しかし、長期保有することによって、配当金が受け取れたり、株主優待をもらえたりすることもあります。つまり、株式投資は短期的な売却益だけを目指すのではなく、長期保有することでも利益を得ることができます。最近では少額からでも購入できたり、スマホのアプリで購入できたりと、利便性が高くなっています。

時間を味方につけて資産を大きく育てよう

資産形成は早く始めれば、時間や経済などを味方につけることで積み立てた金額より大きく育てることも期待できます。老後の時間が長くなるのであれば、その分自分で準備しなければなりません。人生100年時代を楽しく過ごすためには、今の生活を守りながら、「長期」「分散」「積立」でリスクを低減しながら将来のお金を準備していきましょう。(提供:Incomepress


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