不動産投資において重要な要素のひとつに「住宅ローン(金融機関からの融資)」が挙げられます。ローンを利用すれば、個人では購入が難しい数千万円単位の不動産を購入することも可能です。

住宅ローンの中には「オーバーローン」「フルローン」といった種類があります。しかし、それぞれのメリット・デメリットについて、詳しく把握していないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。本記事では、オーバーローン・フルローンについて詳しく解説します。

オーバーローンとは?

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(画像=jo-panuwat-d/stock.adobe.com)

オーバーローンとは、物件価格に加えて諸経費なども含めて融資するローンを指し、物件価格以上の資金を借り入ることです。オーバーローンを利用すると「貸出超過」の状態に陥りますが、物件の購入費用のほかに、火災保険料、不動産登記費用、修繕積立金といった初期費用、さらに保証料、司法書士や不動産仲介会社への手数料、印紙税など数百万円の費用が発生します。それらも全て借りられるため、頭金の手出し分を大幅に削減できます。

そのため、オーバーローンを利用すれば、自己資金があまりない方でも資産価値の高い物件を購入可能です。ローンを組んで多額の資金の借入を行ったとしても、収益力が高い物件で返済を行いつつ、手元に残った自己資金を別の投資や予期せぬ出費に備えて蓄えておけます。

フルローンとは?

フルローンとは、物件価格の満額で組むローンです。そのため、不動産購入に必要な諸経費は自己負担となります。

不動産投資では、おおよそ物件価格の10〜20%が初期費用として発生します。例えば、2,000万円の物件を購入するためにフルローンを利用するつもりであったとしても、最低でも200〜400万円ほどは手出し資金を用意しておくのがベターです。

不動産投資でオーバーローン・フルローンは利用するべきか?

結論から説明すると、不動産投資においてオーバーローン・フルローンを利用したほうがキャッシュの破綻が起きにくくなります。多額の資金の借入に不安を抱かれる人もいるでしょうが、物件の購入に必要な資金を自己負担で用意し、手元にキャッシュが残らないほうがよほどリスキーといえます。

例えば、2,100万円の貯金がある人が全て自己負担で2,000万円の物件を購入すると、手元には100万円しか残りません。しかし、フルローンを利用すると、初期の諸経費を差し引いた1,700〜1,900万円ほどが手元に残る計算になります。

近年は金利が低い住宅ローンも多くなっています。金利2%の条件で、2,000万円の融資を20年ローンで受けた場合、年間の返済額は120万円ほどです。手元に多くの資金が残り、家賃収入が将来、定期的に入ってくることを踏まえると、どちらが安全かはお分かりいただけるのではないでしょうか。

不動産投資ではなるべく現金を残しておくほうが懸命な理由

不動産投資では、以下のように突発的に資金が必要になるケースがあります。なるべく手元にキャッシュを残しておくほうが懸命です。

<突発的に資金が必要になるケース>
・家賃の滞納
・退去の際のハウスクリーニングやリフォーム
・雨漏りなどの設備の補修
・シロアリの発生

上記のケースに加え、そもそも空室状態が長く続けば家賃収入が得られず、物件の維持費や宣伝費などで収支が悪化するリスクが発生します。「自分もしくは近親者が病気になった」「車が壊れた」など、不動産投資とは直接関係のない日常生活の部分で、現金が必要になる可能性もあるでしょう。

以上の理由から、物件の購入に手持ちの資金をほとんど投下するのではなく、オーバーローンやフルローンをはじめとする住宅ローンを活用したほうが安全といえます。

オーバーローン・フルローンを避けるべきシチュエーション

オーバーローン・フルローンは、突発的な出費に備えられると説明しましたが、注意点も存在します。次のようなシチュエーションでは、オーバーローンやフルローンの利用には慎重になりましょう。

・耐用年数を超えた返済期間で物件を購入する
・自己資金が全くない
・収益が見込めない物件を購入する

以下より、それぞれ気をつけるべき理由について解説します。

耐用年数を超えた返済期間で物件を購入するとき

住宅ローンを組む際には、返済期間を長く設定し過ぎないように注意しましょう。例えば、購入物件の耐用年数が20年ほどであるにも関わらず、35年返済の住宅ローンを組んでしまうケースです。

住宅ローンの返済期間を長くすると、月々の返済金額は少なくなるので見かけ上のキャッシュフローは良好に保てるかもしれません。しかし、長期のローンでは金融機関側のリスクも大きくなるため高金利になりやすく、高金利でローンを借りてしまうと融資残高もなかなか減りません。

不動産物件は、耐用年数がどのくらい残っているのかによっても資産価値が決まります。もし耐用年数を超えた状態では、ローンの返済が難しくなったために物件を手放そうとしても想定していた値段で売れない可能性が高いでしょう。

「物件に耐用年数が残っていない」「ローンの残債が残っている」という状態では、物件の買い手がつかず土地のみを売却することになりかねません。そうなると、取り壊し費用なども相まって、赤字になるリスクが増大してしまいます。

自己資金が全くないとき

オーバーローンやフルローンを利用する目的は、手元にキャッシュを残すためです。そのため、そもそも現金を持っていない状態でのローンの利用は大変危険と言えます。

例えば、手元に100万円しかないにも関わらず、2,000万円のフルローンを組んでしまうと、物件に雨漏りが発生した時などの修繕費で、たちまち手元のキャッシュがなくなってしまう可能性が考えられます。

月々のローンを返済しなければならないことも考慮すると、物件に空室が発生するとキャッシュフローが破綻する可能性はさらに高くなるでしょう。

利回りが低い物件を購入するとき

利回りが低い物件を購入する際も、オーバーローンやフルローンの利用には注意しましょう。収益があまり見込めない物件を経営するということは、月々の利益の手残りが少なくなる状況を意味します。

そのため、少しでも空室状態が続くと、月々のローンの返済などで手持ちのキャッシュがどんどん減っていってしまいます。そうなると、キャッシュフローが破綻しかねません。収支計算がマイナスになると懸念される物件はなるべく購入しない、もしくは購入するにしてもオーバーローンやフルローンなどの高額な融資は利用しないようにしましょう。

不動産投資では手元にキャッシュを残すことが重要

オーバーローン・フルローンは、不動産の購入に必要な資金を賄えるため、手元に多くのキャッシュを残せる住宅ローンです。高額な融資を受けることに躊躇される方も多いかもしれませんが、不動産投資では突発的な出費が発生する可能性も高いため、自己資金を手元に残しておくほうがリスクは低いといえます。

ただし、高額なローンを組むと月々の返済額が多くなり、ローンの返済期間が長くなると、それだけローンの残債が残り続け、物件の売却時に悪影響が出ることが懸念されます。

オーバーローンやフルローンを利用する際には、あくまでも「キャッシュを手元に残すため」との認識を持ち、無理のない収支計画を立てるようにしましょう。(提供:Incomepress


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