投資信託には、決算という仕組みがあり、その決算のタイミングで、利益や相場状況などを鑑みて、分配金を支払うことが可能になっています。現在、銀行や証券会社で販売されている投資信託のほとんどは年に1回以上の頻度で決算があり、状況によってはその決算期に分配金が支払えるものの、運用状況が良くても分配を出していないファンドも存在します。

分配金を出す“分配金あり”の投資信託は、お金を定期的に受け取れることがメリットです。その一方、決算時に運用状況が良くても分配金を出していない“分配金なし”の投資信託は分配金を再投資に回すため、複利効果が得られることがメリットです。そのため、長期的な資産形成のためには“分配金あり”よりも“分配金なし”の方が運用上有利だと一般的にいわれています。

そこでこの記事では、“分配金あり”のメリット・デメリットや分配金の仕組みや注意点についてご紹介し、“分配金あり”でも “分配金なし”に近い投資効果が得られる投資信託について探っていきます。

投資信託とは?

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(画像=Андрей Яланский/stock.adobe.com)

最初に、そもそも投資信託とは何かをみていきましょう。

投資信託とは、投資家のお金を大きな資金としてまとめ、まとめた資金を専門家が運用していく投資商品です。運用の方針は投資信託ごとに定められ、「リスクを低く抑える」「多少のリスクがあってもリターンを狙う」など、さまざまな種類があります。また、あくまでも投資ですので、銀行預金のように元本が保証されたものではありません。

投資信託のメリットは以下のとおりです。

・1口1万円など少額からの投資ができる
・専門家が投資家に代わって運用するため初心者でも取り組みやすい
・値動きの異なる複数の商品に分けて投資して損失のリスクを抑える「分散投資」が、少額でも可能となる

投資信託の利益は?

投資信託で得られる利益にはどのようなものがあるかをみてみましょう。投資信託で得られる利益は「売却益」と「普通分配金」の2種類です。

売却益

投資信託で得られる利益は、まず売却益です。売却益とは、投資信託を売却する際の価格と購入価格との差額です。売却価格が購入価格を上回っていれば利益となります。

投資信託の価格は「基準価額」と呼ばれます。基準価額は、投資信託が運用対象としているすべての資産の合計額を、投資家が保有する総口数で割ったものです。市場の動向により毎日変動し、値上がりすることもあれば値下がりすることもあります。

売却時の基準価額が購入時を上回っていれば、その分が売却益です。しかし、逆に購入時を下回った場合には損失がでます。売却益を得た場合には税金がかかります。

分配金

投資信託で得られる利益のもう一つは「普通分配金」です。但し、分配金は株式の「配当金」とは異なるので注意しましょう。

株式の配当金は、株式の発行企業が自社の利益に応じて支払うものです。それにたいして分配金は、投資信託の運用会社が、運用の状況に応じて支払うものです。

分配金には「普通分配金」と「特別分配金」の2種類があります。普通分配金は投資家が利益を得るため税金がかかりますが、特別分配金には税金はかかりません。

分配金の仕組み

分配金がどのような仕組みで支払われるかをみてみましょう。

分配金は、投資信託の資産のなかから支払われます。したがって、分配金を支払うとその分投資信託の資産は減り、それにともない基準価額も下落します。但し、投資家の資金がその時点で減るわけではなく、投資していた分のお金が戻ってくることを意味します。

分配金の種類

投資信託の分配金には、「普通分配金」と「特別分配金」の2種類あります。それぞれがどのようなものかをみてみましょう。

普通分配金

普通分配金とは、分配金のうち元本を上回った部分の金額です。たとえば、元本が100万円で、分配金支払後(分配金支払前の基準価額は111万円)の基準価額が110万円、そこで1万円の分配金がでたとしましょう。基準価額110万円は元本を上回っているため、分配金1万円は全額が普通分配金となります。普通分配金は投資家の利益となるため、税金がかかります。

特別分配金

特別分配金とは、分配金のうち元本を下回った部分の金額です。たとえば、100万円の元本で、分配金支払後(分配金支払前の基準価額は100万5,000円)の基準価額は99万5,000円、そこで1万円の分配金がでたとします。すると、1万円のうち5,000円は、基準価額が元本を5,000円下回っているため特別分配金となります。元本を上回っている残りの5,000円は普通分配金です。

特別分配金は、利益ではなく「元本の払い戻し」に相当します。したがって、税金はかかりません。

「投資信託 分配金ありのファンドのメリット・デメリット」

さて、投資信託で分配金ありの場合のメリット・デメリットをみてみましょう。

“分配金あり”のメリット・デメリット

“分配金あり”のメリットは投資資金の一部を現金化できること、デメリットは分配金により運用効率が下がることがあげられます。

・“分配金あり”のメリット……投資資金の一部の現金を確保できる
“分配金あり”の投資信託のメリットは、投資資金の一部を現金化できることです。投資信託は投資ですから、基準価額が下落して売却時に利益を受け取れず、損失がでるリスクがあります。

その点、“分配金あり”の投資信託なら、分配金により投資資金の一部を現金化できるため、資産を定期的に、お小遣い的に引き出すことにメリットを感じる人もいるでしょう。

・“分配金あり”のデメリット……運用効率が低下する
“分配金あり”のデメリットは、運用効率が低下することです。分配金を支払えば、投資信託の総資産は減少します。分配金を支払わず、その分も運用すれば、より大きな利益が得られたかも知れません。この利益を得る機会を逃したと考えれば、デメリットだといえるでしょう。

“分配金あり”でも、“分配金なし”に近い投資効果が得られる方法とは

“分配金あり”の注意点についてみていきましょう。“分配金あり”の投資信託でも、“分配金なし”に近い複利効果が得られる場合があるので探っていきます。

長期でじっくりと資産を増やしていきたいなら“分配金なし”、再投資型を選ぼう

分配金あり、なしについてはメリット・デメリットがあります。一般的に、資産を定期的に引き出したいなら“分配金あり”を、長期でじっくり資産を増やしていきたいなら“分配金なし”を選ぶのが良いでしょう。

一般的な傾向として、決算の回数が多い投資信託は分配を定期的に出すケースが多く、少ないものは基本的に分配しないか、あるいは年に1回、利益が出ているときにのみ分配するケースが多いですが、最終的には、ファンドごとの運用方針にそって運用会社が判断しています。

ちなみに、決算(分配金)の頻度の有無にかかわらず、ほとんどの投資信託で、「分配金再投資」コースを選択できるようになっているかと思います。このコースを利用すれば、分配金利益部分(普通分配金)には税金がかかるため投資効率は低下することになりますが、再投資されることで、複利効果が得られるため、完全に分配金を受け取るものよりは、長期の資産形成に向いています。

分配金ありでも、なしに近い複利効果は得られる。自分の投資スタイルに合わせて選ぼう

ご説明してきたように、投資信託の分配金を考える場合、運用資金の一部を定期的に引き出したい場合には“分配金あり”が、長期にわたってじっくり運用したい場合には“分配金なし”が向いています。分配金に対する考え方は、個人のライフスタイルや投資へのスタンスによって変わってくるものです。自分の投資スタイルに合わせて選びましょう。

※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。(提供:Wealth Road