特集『withコロナ時代の経営戦略』では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続く中での、業界の現在と展望、どんな戦略でこの難局を乗り越えていくのかを、各社のトップに聞く。

長崎で創業し、現在は福岡を拠点として、確固たる地位を築く株式会社サニックス。住環境領域、エネルギー領域、資源循環領域と事業範囲を広げる同社は、1975年の創業から34年を経て本格的に太陽光発電事業に進出した。多くの企業よりも先行できたのは、環境衛生事業を柱として着実にお客様との関係値を構築してきたからだ。お客様の住環境をより快適にするために、より安く良質なサービスを提供するために、その想いが現在の隆盛につながった。

(取材・執筆・構成=安田勇斗)

withコロナ時代の経営戦略
(画像=ふくおか経済)
宗政 寛(むねまさ・ひろし)
株式会社サニックス代表取締役社長
1975年長崎県生まれ。東海大学卒。
東海大学ではラグビー部に所属し、2003年に株式会社サニックスに入社。2013年に副社長に、2017年に創業者である父親の伸一さんの後を継ぎ社長に就任した。

お客様のニーズを汲み取って新規事業に参入

――1975年に創業、1978年に会社を設立されました。当初は環境衛生作りのサービスをメインとしていました。

1975年に長崎の佐世保で創業し、当時はシロアリをはじめとした害虫の防除がサービスの中心でした。1970年代は日本が急速に発展した時期で、戦後を境に多くの家も建ちました。その中で長崎は温暖な海辺の土地ということもあってシロアリの被害が大きかったんです。そこで当社の創業者であり、私の父である宗政伸一がシロアリ消毒を始めました。「被害が出てから駆除するのではなく、被害に遭わない環境を作る」という、当時としては一般的ではなかった「予防」の見地から必要性を説くスタイルでビジネスを展開しました。それから床下のメンテナンスなどシロアリを寄せつけないための対策など、家を快適に保つために必要なサービスを開発してお客様に提供していきました。

――創業から約20年後の1994年に、新しい領域である産業廃棄物の再資源化、減量化、無害化の事業に参入しました。

創業時から、シロアリを中心としながらゴキブリやネズミなど害虫害獣の防除も行っており、その事業を、個人のお客様の住宅への対応、ビルや病院など法人のお客様の建物への対応と大きく2つに切り分けそれぞれを発展させていきました。そうした中、1980年代後半あたりから、社会的に産業廃棄物の処理方法が厳しくなり、特に医療系廃棄物の処理は大変でした。我々のお客様である病院からも「どうにかならないですか」という相談があり、「では自分たちがやろう」と。そこで北九州に医療系廃棄物も扱える焼却施設を作りました。まさにお客様の声から生まれた事業です。当事業を進める中で、プラスチックのカロリーの高さに注目し、プラスチックの燃料化リサイクルも開始しました。さらにはその燃料を使った発電事業へと事業領域を拡大し、エネルギー分野にも業容を拡大しました。

――さらに太陽光発電など再生エネルギー事業にも進出します。

太陽光発電事業への本格参入は2009年ですが、それ以前の1989年から太陽光パネルを使った商品をラインナップに加えています。家のメンテナンスをする事業の中で床下の湿気対策、具体的には床下に換気扇を設置するサービスを行っているのですが、その動力源として太陽光パネルを採り入れました。当時はまだ太陽光発電は一般的ではなかったんですが、これもお客様のお困りごとに対する解決策として採用しました。もともと換気扇はコンセントを差してタイマーをセットして決まった時間に稼働する設定だったんですが、それだと雨の日の湿った空気も取りこんでしまいます。換気のためには晴れの日の乾燥した空気が効率的なので、そうした面も考えて扱うようになりました。

宗像市に建設したサニックスソーラーパークむなかた
宗像市に建設したサニックスソーラーパークむなかた(画像=株式会社サニックス)

日本中に太陽光発電を普及させる

――太陽光発電の販売開始には、どういう経緯があったのでしょうか?

我々も20年以上前に商品ラインナップに加えたのですが、環境面に良いことはお客様に認識していただきながらも、価格的に高いと感じられる方も多く、しばらく“お蔵入り”にしていました。ただ2009年に固定価格買取制度が施行され、これならお客様にメリットを感じていただけるのではないかと、もう一度チャレンジすることになりました。

――固定価格買取制度は価格低下、10年満期があります。今その影響などはあるのでしょうか?

そうですね。政府は再生可能エネルギーを増やすために、固定価格買取制度などの制度を実施しました。我々のコンセプトは変わらず、お客様が喜んでいただける価格水準でサービスを提供すること。そうでなければ、太陽光発電は普及しないと考えています。買取価格の低下に合わせてシステム価格を下げる努力をしてきました。買取期間である10年間で投資回収できることを目安に価格設定し、自分たちのコストを下げて対応しています。それを追求する中で、製造から販売、施工、メンテナンスまで一貫して自社で行う体制を整えています。

――新型コロナウイルスの感染拡大によって感じている変化などはありますか?

我々の仕事は家のメンテナンスも、太陽光発電も、実際にお宅にうかがって現地の状況を確認しなくてはいけないので、人に会うことが制限される現状では、そうした機会を失うケースもあります。一方で、リモートワークの普及によって、普段自宅にいなかった方とコミュニケーションが取れたり、在宅が増えることで家の快適性に目を向ける方が増えたり、そうしたケースもあって、良い影響、悪い影響両方があります。ただ、こうした状況に直面したことで、住宅に関わっている我々は、お客様に必要とされるサービスが提供できているのでは、と改めて感じることができました。

――今後はどのようなアクションを起こし、どのように事業を発展させていきたいと考えていますか?

先日、政府が「2050年カーボンニュートラル」への挑戦を発表しましたが、太陽光発電システムは日本だけでなく世界的に見ても重要だと考えています。我々はお客様によりお安く、快適に過ごせるようにサービスを提供できればと思っていますが、太陽光発電システムの設置箇所が増えていけば、再生可能エネルギーがどんどん増えていくことになりますし、それは2050年カーボンニュートラルにも近づくことにもなります。当社の究極の目標は、日本中に太陽光発電を普及させること。実現するためには仕組み作りなど課題もあります。当社は、電力システムの改革につながる経済産業省の「バーチャルパワープラント構築実証事業」にも参画しております。電力システムの課題解決を含め、太陽光発電でできるだけ多くの電力を供給することにチャレンジしていきたいと考えています。