価値観の変化による働き方に対する多様化や、国の働き方改革、さらにはコロナ禍といったさまざまな要因が重なり、テレワーク(リモートワーク)の本格的な普及が進んでいます。テレワークというと在宅勤務を想像する方が多いかもしれませんが、テレワークとは「離れたところで働く」という意味であり、在宅で勤務することを意味しているわけではありません。

目次

  1. 自宅以外にテレワークできる4つのスペース
  2. 会社でも自宅でもない「場」が浸透する時代
    1. コワーキングスペースとは
    2. レンタルスペースとは
    3. シェアオフィスとは
    4. サテライトオフィスとは
  3. 仕事場の多様化に向けて不動産オーナーが押さえておくべきこと
    1. 1.職場である以上、立地条件はきわめて重要
    2. 2.立地以外の条件が悪くても再生できる可能性がある
  4. 事業化にあたっては支援制度の利用も含めて徹底したコスト管理を

自宅以外にテレワークできる4つのスペース

シェアオフィスとサテライトオフィスの違いとは?意外に知らないテレワークのためのオフィスを解説
(画像=REDPIXEL/stock.adobe.com)

「会社以外」で働ける場所は自宅以外にもたくさんあります。特に近年では自宅でテレワークをすることによる課題も浮き彫りになっており、それを受けて自宅でも会社でもない仕事場としてさまざまなワークスペースが整備されつつあります。

自宅でも会社でもない仕事場として現在利用できるのは、主に以下の4つです。

  • コワーキングスペース
  • レンタルスペース
  • シェアオフィス
  • サテライトオフィス

これら4つについて「新たな仕事場の選択肢」という視点から、不動産オーナーや不動産投資を検討している方にとってこれらの新たな仕事場がどんな可能性をもたらすか、解説していきます。

会社でも自宅でもない「場」が浸透する時代

国は働き方改革の一環として、テレワークを推進してきました。通勤時間が短縮すると豊かな生活が実現できるように、メリットも多いため一部の業種では普及が進みつつありました。その流れを決定的にしたのが新型コロナウイルスのパンデミックです。「3密」を避けるために出社を取りやめ、テレワークに切り替えていった企業が続出。これをきっかけに、初めてテレワークをしたという人も多かったことでしょう。

最初にコロナ禍による影響が深刻化したのは東京ですが、東京都が行った「テレワーク『導入率』緊急調査」でも、2020年3月と4月とではテレワーク導入企業が2.6倍に急増していることが明らかになりました。同調査では、人数ベースでもテレワークを実施する社員数が12月から4月に2.5倍になっていることも示されました。

<「テレワークを導入していますか」への回答>

3月 4月
導入予定なし

71.0%

31.2%

今後予定あり

5.0%

6.1%

導入している

24.0%

62.7%

<テレワークを実施している社員の割合>

実施割合 12月 4月
0割

73.2%

24.2%

2割

5.8%

8.7%

4割

1.4%

14.1%

6割

10.1%

18.1%

8割

8.0%

20.1%

10割

1.4%

14.8%

参照:東京都「テレワーク『導入率』緊急調査結果」

しかし、その一方で課題もあります。国土交通省の調査ではテレワークに対して「自宅では集中できない」「仕事をする物理的なスペースがない」といった声が多数挙がっており、「テレワーク=在宅勤務」が必ずしも最適解ではないことがうかがえます。

今後さらにテレワークが普及していくことを受けて、会社でも自宅でもない「場」がさらに求められ、浸透していく確率は高いと考えられます。

コワーキングスペースとは

コワーキングスペースは、「コワーキング」といって特定の場所に縛られることのない働き方に応えるために設けられた仕事場のことです。利用者はノートパソコンを持って好きな場所で仕事をする人たちなので、そのために必要なネット環境や電源、無料で飲めるコーヒーなどを完備したスペースを提供するスペースです。

レンタルスペースとは

レンタルスペースは用途が仕事に限定されてはおらず、オフィスビルの一室やマンションの一室、さらには戸建て住宅などさまざまな形態で提供されています。マンションや住宅であれば調理や宿泊が可能なレンタルスペースもありますし、仕事やプレゼン、会議向けに提供されているレンタルスペースではスポット的なオフィスとして利用できます。

シェアオフィスとは

シェアオフィスは、名称のとおり最初からオフィスとして利用することが前提のサービスです。よくある形態としてはフリーアドレス型と個室型があります。コワーキング向けに設けられている点ではコワーキングスペースと似ていますが、個室利用者のなかには法人登記をする人や、住所貸しサービスを利用して郵便物の受け取りなどを行っているケースもあるため、ビジネス用途に特化しているサービス形態といえるでしょう。

サテライトオフィスとは

サテライトオフィスの「サテライト」とは、衛星という意味です。本社とは別に衛星のようなオフィスを設けて、社員はそこで業務を行うことができます。これだけだと支社と違いがわかりにくいですが、市場が存在している立地に設けられる支社に対して、サテライトオフィスは通勤時間の短縮や自然環境のなかでの仕事など社員の満足度向上を目的としている点に違いがあります。国も積極的に支援しており、地方創生の意味合いも込めて地方にサテライトオフィスを設置する企業に税制面での優遇や自治体の誘致も活発です。

仕事場の多様化に向けて不動産オーナーが押さえておくべきこと

コワーキングスペース、レンタルスペース、シェアオフィス、そしてサテライトオフィスについてそれぞれの概要や特徴について解説してきましたが、これらすべてに共通していることがあります。それは、いずれも不動産を必要とする点です。

そこで、不動産オーナーやこれから不動産投資家になることを検討している方々は、新しい仕事場の普及が新たな不動産市場の開拓につながることを知っておきましょう。既存の不動産活用や、安い物件を購入して再生するといったビジネスモデルにもつながるので、以下の2点を押さえておいてください。

1.職場である以上、立地条件はきわめて重要

当記事でご紹介した4タイプの仕事場は、いずれもそこで働く人にとっては職場です。しかも従来のオフィスと違って職住近接を目的として利用する人も多いと予想されるので、立地条件はきわめて重要になります。

都市型のコワーキングスペースやシェアオフィスなどでは駅から近いことが必須になりますし、その駅についても主要駅であるほうが望ましいでしょう。一方でサテライトオフィスなど敢えて地方や郊外で働くことに主眼を置いている場合は、幹線道路から見た交通アクセスの良さや周辺の自然環境などが重視されます。これらは真逆の価値観ですが、いずれにしても立地条件がとても重要であることに変わりはありません。

2.立地以外の条件が悪くても再生できる可能性がある

立地条件がとても重要になる一方で、それ以外の条件についてあまり恵まれていないような物件であっても再生の余地があるのがメリットといえます。築年数が古い物件、外観にも古さが感じられるような物件であっても、あくまでも職場なので気にする人は少ないことが考えられます。コワーキングスペースやシェアオフィス、レンタルスペースとして再生する場合はリノベーションをすることが多いので、「古さ」がハンディになることはあまりないでしょう。

また、住居向けの物件であれば学校や公園、スーパーなど周辺の施設についても条件になりますが、職場であればこうした点を考慮する必要もあまりありません。むしろ、こうした条件に恵まれていない物件を安く仕入れることができれば、再生の価値が大いにあるといえるでしょう。

事業化にあたっては支援制度の利用も含めて徹底したコスト管理を

こうした仕事場を提供するビジネスでは、利益を追求するためにもコストにはシビアになる必要があります。物件の仕入れ価格はもちろん、地方でのサテライトオフィス開業は国からの税制優遇の要望が出されており、その他にも自治体による補助金制度もあります。こうした制度をフル活用して、徹底したコスト管理でビジネスを発展させる視点を持ちましょう。

<自治体による補助金制度の一部を紹介>

  • 富山市「サテライトオフィス等開設支援事業補助金」

https://www.city.toyama.toyama.jp/shokorodobu/shogyoroseika/shogyoshinkokakari/machinaka_office_2_2.html

  • 上田市「サテライトオフィス開設事業補助金」

https://www.city.ueda.nagano.jp/soshiki/shoko/5455.html

  • 伊東市「サテライトオフィス等支援事業補助金」

https://www.city.ito.shizuoka.jp/gyosei/shiseijoho/itoshinotorikumi/4942.html

(提供:Spacible