BCP(事業継続計画)がコロナウイルス感染拡大により注目を集めていますが、併せて理解しておきたいのがサテライトオフィスです。テレワーク(リモートワーク)などの働き方が日常的となると予想される今後、サテライトオフィスはBCP対策の重要な役割を担い需要拡大は必然と言えそうです。

サテライトオフィスの導入目的

BCP対策としてサテライトオフィスを設置しよう
(画像=Olivier Le Moal/stock.adobe.com)

サテライトオフィスとは本社から離れた場所にあり、一時的な業務を行えるようにしたオフィスです。支社や支店のように常駐する社員は少なく、他に席を置く社員が移動中など何らかの理由で立ち寄り、業務を行ったりミーティングをしたりする使い方が一般的です。

以前より存在していたもののテレワークの普及で注目が増しているサテライトオフィスのメリットを、改めて確認しましょう。

生産性の向上

サテライトオフィスは社員が取引先を回る途中などに立ち寄り業務を行えるため、移動時間の削減効果があります。移動時間を減らすことでこなせる業務が増え、生産性の向上につながると考えられます。また社員の住居と近ければサテライトオフィスに出勤して業務を行えば、交通費の削減も可能です。

さらに通勤混雑を避けたり通勤にかかる時間を減らしたりしてワークライフバランスを確保できれば、社員の心身を健康に保つことで生産性の向上が期待できるのです。

人材の確保

サテライトオフィスを活用することで、育児や介護で経験豊富な人材の離職を防ぐことも可能になります。小さなお子さんを育てる上で、通勤時間がかかり遠方のオフィスに1日拘束されることは大きな負担です。また親の介護はそばにいなければならない時間が多く、やはり通勤時間や拘束時間が長い職場では勤め続けることは難しいでしょう。

育児や介護を理由に、経験を積んだ有能な社員が離職してしまう恐れがあります。人材を育てるには多くの時間と周囲のサポートが必要ですが、せっかく成長した人材に辞められてしまうのは企業にとって大きな損失です。しかし自宅の近くにサテライトオフィスがあれば子育てや介護をしながら業務を行えるため、人材確保に大きな効果が見込めるのです。

BCP対策とは緊急事態への備え

BCP対策とは自然災害やオフィスの大きな火災、テロ、そして今回のウイルス感染拡大など、緊急事態においても事業を継続させるための計画です。通常の業務が行えない事態に事業資産の損失を最小限に食い止め、中核事業の継続と早期の復旧をするためのものです。

さらにBCP対策の具体的な対処方法や役割などを平常時から社員や取引先に周知し、定期的に訓練を行って改善することも非常に大切です。

なぜBCP対策は必要か

BCP対策を十分に行っていないと緊急事態に業務が継続できず、事業が縮小したり倒産したりする恐れがあります。逆にBCPを導入することで中核事業を維持することができ、収益の大きな下落を抑え早期の事業回復も可能になります。

また十分な対策を行っている企業は取引先からも安全性が高いと評価され、販路の拡大や新たな事業展開の機会を得る可能性もあります。

BCP対策としても重要なサテライトオフィス

このBCP対策の重要な役割を担うとして、サテライトオフィスの機能に注目が集まっています。具体的には、サテライトオフィスがあれば本社に出社できない事態でも業務を行い、事業を継続させることができます。また通勤ラッシュや人混みを避けられるため、社員の安全確保や新たな人材を呼び込むためのアピールにもなるでしょう。

このようにBCP対策にサテライトオフィスは大きな効果をもたらすのは明らかといえます。特にコロナウイルス感染拡大による都心への出勤回避とテレワークの普及が、サテライトオフィスを充実させる動きに拍車をかけるでしょう。今後は広範囲に事業を行う企業にとって当たり前の施設となっていくことが考えられます。

サテライトオフィスを導入する際の注意点

実際にサテライトオフィスを導入するにはどのような点に注意して物件を選べば良いのか、代表的な3つのポイントを紹介します。

アクセスしやすい立地

サテライトオフィスはできるだけアクセスしやすい場所にあることが望ましいでしょう。移動中に立ち寄ったり育児や介護のためにスムーズに出退勤ができたり、さらに非常時には素早く出社できたりと、できるだけ交通の便が良い場所が理想です。

主な交通手段が鉄道なら駅のそばが良く、車での移動も多いなら渋滞に巻き込まれることなく出社できると利便性が高まります。利用は社員に限られるため、通りに面した目立つ場所の必要はなく、アクセスのしやすさを重視した物件が本来の目的を果たしやすいでしょう。

良好なネット環境

現代の業務ではネット環境は必須であり、サテライトオフィスとは言え十分な通信スピードを備えている必要があります。テレワークで課題とされるコミュニケーション不足解消のため、「Zoom」などによるビデオ会議を快適にこなせる回線速度は軽視できない条件です。

また複数の社員が集まって本社とビデオ会議を行うことがあるようなら、大型のテレビモニタなどを設置できるスペースがあると、よりサテライトオフィスの業務機能が高まるでしょう。

セキュリティの充実

サテライトオフィスには建物とネット環境の2つのセキュリティが求められます。

建物では常駐社員がいない場合は特に注意が必要です。オフィスビルの一室のような形態なら部屋の入り口はもちろん建物エントランスのセキュリティ、防犯カメラの有無、警備会社との契約状況などを確かめると良いでしょう。戸建ての場合は入り口以外に窓のセキュリティも厳重にし、企業が個別に警備会社と契約する必要もあります。

もう1つの通信環境のセキュリティも企業が利用する場合は重視されるところです。部屋ごとのWi-Fiを導入しておく際は設置業者と相談の上、厳重なセキュリティを備えた通信方式と機器を選ぶようにしましょう。オフィスビルの中には建物共用のWi-Fiを提供している場合もありますが、ネットワークに侵入されてしまう危険があるため利用を避ける企業は多いと思われます。

賃貸のサテライトオフィスのメリット

サテライトオフィスは賃貸で確保する企業も多く、自社所有とは違ったメリットを備えています。

素早く開設できる

自社で土地や建物を所有するには場所の選定から契約の交渉、所有権移転など各種手続きなど、非常に多くの時間が必要です。また建物なら年単位で時間がかかることもあります。このためできるだけ早くサテライトオフィスを開設したいなら賃貸が適しており、物件を探し契約する時間だけで済みます。

場所替えや軌道修正が容易

サテライトオフィスの必要性は理解しているものの、場所や広さなどはまだ手探りだという企業もあると思います。また試験的に導入して検証をしながら、今後も継続するか見極めたいというところもあるかもしれません。

そのような場合も賃貸のサテライトオフィスなら場所や広さを変えるといった軌道修正が容易です。またアクセスのしやすさなど実際に利用してみないとわからない部分もあります。特に初めてサテライトオフィスを所有する企業にとって、柔軟に対応できる賃貸のほうが導入しやすいと言えるでしょう。

コストが安く済む

サテライトオフィスを自社所有する場合、建築費はもちろん固定資産税や建物全体の修繕費など、維持費がどうしてもかかってしまいます。長期的にその場所にオフィス機能が必要であれば自社所有も良いかもしれませんが、コストをできるだけ抑えたいなら賃料と管理費程度で済む賃貸が適しています。

今後は必須の施設になる可能性がある

サテライトオフィスは生産性の向上や人材の確保にメリットを持つオフィス形態です。さらにコロナウイルス感染拡大によって、非常事態のBCP対策におけるメリットも大きく見直されています。アクセスの良い立地や通信環境、セキュリティなどの条件を備えた物件は今後需要が高まっていくでしょう。

賃貸は素早く手配できる上に企業が柔軟に活用でき、しかもコストを抑えるというメリットも持ち増す。今後各地に社員や顧客を抱える企業では、サテライトオフィスが必須の施設となることが考えられます。

以上のことから、不動産投資オーナーの視点で考えるならば、賃貸のサテライトオフィスは需要が高まると考えられます。資産形成方法の選択肢のひとつとして、サテライトオフィスを考えてみるのも良いかもしれません。(提供:Spacible