日本国内で不動産投資(マンション経営)をしやすいエリアとして、東京や大阪と並んでよく紹介されるのが福岡(福岡県の主要都市または福岡市)です。この記事の前半では福岡の不動産投資のメリット、後半では福岡の収益マンションの利回りについて解説していきます。
目次
福岡のマンションは新得・築浅・築古すべてで物件価格が急上昇
はじめに投資環境を確認するため、福岡の不動産マーケットを見てみましょう。東京カンテイが2020年7月にリリースしたレポート「新築・中古マンションの市場動向(福岡県)」によると、新築・中古マンションの2005年と2020年の坪単価を比較すると、次の結果になります。
年 | 新築 | 築10年以内 | 築20年以内 | 築30年以内 |
---|---|---|---|---|
2005年(1Q) | 112.8万円 | 77.7万円 | 57.0万円 | 44.4万円 |
2020年(2Q) | 192.0万円 | 135.0万円 | 115.0万円 | 81.9万円 |
価格差 | 79.2万円 | 57.3万円 | 58.0万円 | 37.5万円 |
一見して分かるのは、新築〜築浅物件も築古物件も全体的に物件価格が上昇していることです。2005年と2020年の価格差を見てみると、37〜79万円前後上昇しています。築20年以内の物件に至っては約2倍も上昇しています。
これは近年、中古マンションの資産価値が高まった影響が大きいと言われています。加えて同レポートによると、福岡の中古マンションは新築物件と中古物件の価格差が三大都市圏(首都圏・近畿圏・中京圏)と比べて小さいとも分析しています。福岡で不動産投資をするのであれば、この部分を記憶に留めておきたいところです。
この項目で見てきたように福岡の直近の不動産マーケットを見る限り、「福岡が不動産投資をするのに理想的な環境」というのは間違いないでしょう。
ちなみに、東京都心(都心5区)の新築マンションの坪単価は500〜800万円程度です。福岡の新築マンションの坪単価は半分以下の192万円となっています。初期投資額を抑えたい投資家にとってはこの部分も魅力でしょう。
福岡でマンション経営をする際の3つのメリット
次に、これから先の福岡の不動産マーケットについて考えていきます。「これから福岡で不動産投資を考える人」にとっては、過去の実績よりも将来のマーケット環境のほうがより重要性が高いでしょう。
まず前提として、 福岡のマンションというときは「福岡市」または「福岡県」のどちらかのマンションを指しています。福岡県内の主要都市であればいずれも不動産投資はできますが、より有利な経営環境は「福岡市」です。
その理由は、福岡市は政令指定都市のため人口が多く、さらに福岡県全体のマンションのうち約6割を福岡市が占めているからです。不動産マーケットが大きく、安定性と流動性が期待できるため、とくに他エリアの投資家で土地勘があまりない人は福岡市を選択するのが無難でしょう。
これを踏まえた上で、これから福岡市でマンション経営をする際の3つのメリットを見ていきましょう。
メリット1:マンションが選ばれやすい土地柄
メリットの1つ目は、福岡市は住居としてマンションが好まれる傾向があることです。地方都市だとマンションよりも戸建てが好まれるケースもありますが、福岡市はマンションが優位です。これは福岡市でマンション経営をする人にとって大きな安心材料でしょう。
前出の東京カンテイのレポートでも福岡市は「世帯数当たりのマンション普及度合いは国内トップレベル」と述べられています。福岡市でマンションが多い理由は、限られた面積に人口が集中するコンパクトシティだからです。
これは同じ政令指定都市の札幌市と比較するとわかりやすいでしょう。札幌市(人口197万人)の総面積1,121平方キロメートルに対して、福岡市(人口160万人)の総面積は343平方キロメートルしかありません。つまり、人口では37万人差なのに、面積で約3倍以上も差があるわけです。限られた面積の福岡市に大勢が住むためにはマンションの活用が必須です。これは将来も変わることがない福岡市だからこその特徴といえるでしょう。
メリット2:エリア内の人口が安定している
2つ目は「中期的に人口が増加、 長期的に人口が安定している」ことです。不動産投資の経営環境は、将来人口に大きな影響を受けます。エリア内に人口が流入するほど賃貸マーケットも拡大し、インカムゲインとキャピタルゲインの両面で追い風になります。とくに面積の限られた福岡市のようなエリアは人口が流入すると、物件の資産価値が上昇しやすいといえます。
下記のグラフは福岡市の将来推計人口です。現在の日本は全体で見ると人口減少が進んでいますが、福岡市はそれを感じさせない増加ペースになっています。
※2020年段階では、この推計を上回るペースで人口が増加しています。
福岡市の人口は、2030年代半ばまで増加し続けます。2035年前後には160万人超でピークを迎えると予測されていますが、その後も微減ながら安定した推移を示しています。福岡市はよく「国際都市」といわれますが、さらに国際化が進むと将来人口が推計を上回る可能性もあります。
メリット3:国際金融都市への飛躍を目指した再開発
3つ目は「国際金融都市を目指した大型開発」です。現在の福岡市では都市機能を向上させる大型再開発が次々に進んでいます。主な大型再開発には、「天神ビジネスセンター」「福ビル街区建替プロジェクト」「旧小学校跡地の再開発」などが挙げられます。
着目したいのは、福岡市では「国際金融都市構想」というテーマを掲げて再開発を進めている点です。福岡市・福岡県・地元経済界が連携してさらなる開発を進め、海外からの金融機関の誘致を目指しています。これが成就すれば、国内外で福岡市はさらなる存在感を示す都市に成長するでしょう。マンション経営の安定経営や資産価値の向上を後押しする好材料になりそうです。
福岡市マンション利回り評価は視点によって変わってくる
福岡市のマンション投資のデメリットは、政令指定都市で比較したときの利回りが低いことです。不動産投資の情報サイト「健美家」が発表した「2020年上半期 政令指定都市 住宅系収益不動産『高利回りランキング』」によると、政令指定都市別の利回りで福岡市は、20都市中17位(区分マンション)となっています。これはメリットで見てきたように、不動産投資の経営に有利な好材料が揃っているため、マンションの人気があり物件の資産価値が高いことが要因といえるでしょう。
ただ視点を変えると、福岡のマンションは比較する対象を東京(首都圏)にすると高利回りの傾向です。健美家のデータを参考にすると、近年の首都圏の収益物件の平均利回りは6%台後半です。東京都心であればさらに低利回りになります。1〜2%程度、福岡市が優位と考えられます。
福岡の不動産投資と相性のよい投資家像は
ここでは福岡のマンション投資の経営環境をさまざまな視点からチェックをしてきました。福岡市は不動産投資にうってつけのエリアといえますが、そのぶんマンションの資産価値が高く、低利回りの傾向がうかがえます。その意味では、東京の不動産投資と同様、長期的に安定した経営を目指したい人に向いているといえます。
福岡と相性のよい投資家像としては、不動産投資で私的年金づくりをしたいビジネスパーソンが挙げられます。また、東京都心に収益物件を持っている人がエリアリスクを回避するために分散投資をしたい場合などに良いのではないでしょうか。(提供:Spacible)