働き方改革の推進により、働く場所を選ばないテレワークが新しい働き方として普及しつつあります。総務省が公表した「平成30年通信利用動向調査」によると、テレワークを導入している、または導入予定である企業が2011年には13.6%であったのに対し、2018年には約2倍の26.3%にまで増加しました。
2020年以降、新型コロナウイルスの感染予防の一環としてテレワークが一段と普及することも予測されます。テレワークの普及が増加を続けると、同じオフィスに会社としての機能を集約し、全社員が集まって仕事をするという働き方よりも、分散された多くのオフィスにて少人数単位で仕事をするという働き方が主流になるかもしれません。
少人数単位での働き方が主流になると、大規模オフィスよりも小規模オフィスのニーズが高まることが考えられます。小規模オフィスとはどのようなものなので、どのようなメリット、注意点があるのでしょうか。
小規模オフィスの定義
今後のニーズ上昇が予測され得る小規模オフィスとは、そもそもどのようなオフィスを指すのでしょうか。小規模オフィスの定義は以下の2点です。
- 5〜6名程度のオフィス
- 1人当たりのオフィス面積は3.71坪、総面積21~24坪ほど
5,6名程度のオフィス
小規模オフィスを導入するシチュエーションとして、現場運営上の都合で少人数のみが常駐する拠点やサテライトオフィスの設置、少人数での起業といったものが想定されます。
小規模な業務やネット環境があれば行える業務を、少人数または単独で運営することを想定していると考えられるため、人数の規模としては5〜6人程度のオフィスである場合が多くあります。
1人当たりのオフィス面積は3.71坪、総面積21~24坪ほど
小規模オフィスは5〜6人程度の人数規模のオフィスであるという点から、1人当たりのオフィス面積を3.71坪と仮定すると、オフィスの総面積は21坪~24坪となります。
3.71坪は約12.2平方メートルに値する広さで、平均的な1K・1Rのマンションの居室部分(約7畳)に相当します。21~24坪は約69.3~約79.2平方メートルに値する広さで、平均的な3LDKのマンションの全専有面積に相当します。
小規模オフィスのメリット
小規模オフィスは5〜6人程度の少人数で働くことを想定しているため、あらゆる点でコンパクトかつまとまりのある空間を創出しやすいという点が大きなメリットの1つでしょう。
「コンパクト」と「まとまり」を具体的に述べると以下の3点がメリットとして考えられます。
- 賃料が安価(初期費用も安価)
- 規模が小さいのでレイアウトやデザインを統一しやすい
- コミュニケーションを取りやすい
賃料が安価(初期費用も安価)
小規模オフィスにおいては、オフィス面積がコンパクトである分、賃料が安く済むというメリットが想定されます。
賃料のみならず、契約時に預ける敷金やワークスペースの環境整備に必要なオフィス家具およびオフィス用品といった物品もコンパクトで済むため、初期費用を安価に抑えられることが期待できます。利用する人数や面積がコンパクトであるため、新設や運営に係る経費もコンパクトにしやすいということです。
規模が小さいのでレイアウトやデザインを統一しやすい
オフィス空間において、レイアウトやデザインの統一感によって見栄えの良さだけではなく、使いやすさという実用面でのメリットにもつながります。
デザインの観点では、壁紙やオフィス家具をモノトーンで統一することでシックなデザインにしたり、アースカラーで統一することでリラックス効果を出したりすることができます。実用面の観点では、動線がシンプルなレイアウトにすることで生産性や業務効率の向上につなげることも可能です。
コミュニケーションを取りやすい
小規模オフィスは全利用者間の距離を必要な範囲内で近くすることができるため、オフィス全体でのコミュニケーションも取りやすくなります。コミュニケーションが取りやすくなることで、業務の円滑化や社内での良好な人間関係の構築ができるという効果が期待できます。
全体ミーティングを自席で行えるという点で、オフィスの全体的なコミュニケーションの取りやすさに寄与できるため、全体ミーティングのたびに会議室を確保したり、移動したりする時間と手間を削減することにもつながります。
小規模オフィスの場合のレイアウトの注意点
コンパクトかつまとまりのある空間を創出しやすいというメリットがある小規模オフィスですが、コンパクトであるがゆえの注意点も存在します。
小規模オフィスの新設や運営を考える際は、以下3点に留意してレイアウトを構成していきましょう。
- 書類や物がかさばらないようにする
- 動線をシンプルにする
- 利用者間のパーソナルスペースを確保する
書類や物がかさばらないようにする
小規模オフィスは面積が小さいため、書類や物がかさばってくるとオフィス全体が雑然とした環境になってしまう可能性があります。書類は可能な限りデータ化して保管する、不要な物は定期的に処分する、収納用のオフィス家具を活用するといった整理整頓、清掃を欠かさないように心がけましょう。
どうしても書類を紙媒体で保管する場合は、外部の倉庫に保管を外注するのも選択肢の1つです。外部の倉庫に保管を外注する際は、保管に係る費用や倉庫の容量、書類の受け渡しに要する時間といった要素を勘案して、オフィス内に保管するよりも外部で保管するほうが合理的か否かを判断基準とするのが得策でしょう。
動線をシンプルにする
小規模オフィスにおいては、比較的狭いスペースに大きいオフィス家具やオフィス用品を配置しなければならない場合があります。限られたスペースを有効活用するという観点から、動線は可能な限りシンプルにするのが合理的といえるでしょう。
各自のデスクから、出入口やコピー機などの共用するものまでの動線をシンプルにし、動きやすいレイアウトにしましょう。
利用者間のパーソナルスペースを確保する
パーソナルスペースとは、個人の心理的安心を保つことができる自分と他者との距離を指し、密接距離・個体距離・社会距離・公衆距離の4種類があります。
一般的に、密接距離および個体距離は家族や友人といった親しい関係にある者との距離であるため、オフィス空間においては社会距離を保つことが適切であると考えられます。
社会距離とは、相手との距離が120センチメートル以上350センチメートル未満の空間を指すため、全員が安心して業務に取り組めるよう、オフィス空間における隣のデスクの人との距離は120センチメートル以上保つのが得策といえるでしょう。
コンパクトなスペースを効率的でスタイリッシュに活用できるのが小規模オフィス
小規模オフィスはコンパクトなワークスペースであるため、新設や運営に係るコストを安く抑えることができるうえ、デザインを統一させることでスタイリッシュな空間を作りやすいといえるでしょう。
今後、テレワークがより一層普及することでオフィスの分散化が進むこともあり得ます。オフィスの分散化によって、拠点1ヵ所当たりに要する面積が小さく済むことから、小規模オフィスは今後の働き方のニーズに応えることができる合理的なワークスペースになっていくかもしれません。一方で、コンパクトな空間であるがゆえ、利用者間の距離への配慮や収納スペースの少なさといった注意点も挙げられます。
小規模オフィスの導入を検討する際は立地等の諸条件と併せて、どのような目的で、どのくらいの人数でオフィスを利用するのかを、より詳細に吟味する必要があるといえるでしょう。(提供:Spacible)