要旨

●政府は20年度第3次補正予算を閣議決定。先般の経済対策の裏付けとなる予算で、コロナ対策や産業構造転換が軸。経済対策における国費の純増分は、当初予算も含めて22~23兆円程度と概算される。政府公表資料には既存経費等も入っているため、大きく見えている点に注意が必要。

●税収は8.4 兆円の大幅減額補正。当初予算がコロナ前の編成であったため、幅が大きくなっている。足元の経済状況をみると、製造業などでは立ち直りの速さが目立っているが、感染再拡大などのマイナス要素もあり、決算での着地は不透明。更なる下振れも視野に入る。

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第3次補正予算を閣議決定

15日、政府は2020年度の第3次補正予算を閣議決定した。先般閣議決定された経済対策(※1)の裏付けとなる予算だ。コロナ感染防止対策、デジタル・グリーンをはじめとした産業構造の転換、短期の景気対策に軸をおいたもので、今回補正予算における追加歳出額は19.2兆円に上る。ただし、今回の補正予算では、既定経費の減額が▲4.2兆円計上されている。うち新型コロナ対策予備費が▲1.9兆円、その他が▲2.3兆円となっている。前者は、今年度の第2次補正の際に計上された予備費だ。この予備費残額のうち5.0兆円を20年度分として残し、1.9兆円を減額して今回対策に充当する。その他の既定費の減額分▲2.3兆円は、例年の国債費の減額のほか、第1次・第2次補正予算で不用になった額が含まれるとみられる。追加歳出19.2兆円(※2)はあくまで「グロス」の数字であり、既定経費減額分を除いた値が「ネット」の数字となる。

第一生命経済研究所
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経済対策フレームの再整理

今回公表された補正予算の内容を踏まえると、先般の経済対策における国費部分のフレームは資料2の通りになると考えられる。来年度当初予算では0.5兆円程度が経済対策分として措置されよう(主に国土強靭化関連とみられる)。資料2の通り、今回対策における国費の純粋な追加分は22~23兆円ほどと考えられる。政府公表資料が示す経済対策の規模には、既存経費分が含まれている等によって規模が大きく見えている部分がある点には留意する必要があろう。

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税収は大幅な下方修正に

今回の補正予算では税収見積もりの改訂に伴い、2020年度の税収が当初見積もりから▲8.4兆円の大幅な減額補正となった。これにより、20年度税収見込み値は当初の63.5兆円から55.1兆円となる。当初予算はコロナ禍前の昨年12月に編成されており、大幅な下方修正は避けられない情勢であった。足元、製造業などにおいて早いピッチでの回復がみられる一方、世界的にコロナ感染が再拡大する中、景気に再び強い下押し圧力がかかるリスクは高まっている。決算時の着地は不透明だが、ここからさらに下振れする可能性も見ておくべきだろう。

新規国債発行額は22.4兆円。経済対策による追加歳出と税収減額分を新規国債発行を中心に賄う形となっている。(提供:第一生命経済研究所

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(※1) 「国民の命とくらしを守る安心と希望のための総合経済対策」(2020年12月8日閣議決定)。内容等に関して、EconomicTrends「73兆円経済対策の解剖」(2020年12月9日)でまとめています。

(※2)一般会計ベース。特別会計では雇用調整助成金の延長(労働保険特別会計)などに0.9兆円が計上されている。


第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部
副主任エコノミスト 星野 卓也