時計製造の歴史において、偉大な発明のひとつとされているのが「トゥールビヨン」です。トゥールビヨンは「ミニッツリピーター」「パーペチュアルカレンダー」と並び世界三大複雑機構とされており、高級腕時計ブランド「ブレゲ」の創始者、ルイ・ブレゲが1801年に特許を取得したものです。
ブレゲはトゥールビヨンによって、腕時計史をどのように変えたのか。この記事では、トゥールビヨンの機構についての解説とともに、ひとりの天才が生み出したブランド「ブレゲ」の歴史について解説します。
複雑機構のひとつ「トゥールビヨン」とは何か?
トゥールビヨンとは、ひと言で表せば、 重力を克服するための複雑機構です。腕時計は懐中時計と異なり、さまざまな姿勢をとるたびに重力のかかり方が一定せず、それが原因で計時に調整が必要になるという難題がありました。
この問題を解決するために、時計が正確に時を刻むための機構で重力の影響を受けやすい「脱進機」を、1分間で1回転する可動式のかごの内部に格納するという機構が発明されました。これによって重力の影響を相殺し、狂いを生じさせないようにするのです。
トゥールビヨンを時計に搭載するのは大変に難しい技術といわれており、先に挙げた世界三大複雑機構の中でも特に高度な技術が必要とされています。ゆえに、トゥールビヨンを搭載した時計は一般に高価とされ、高級腕時計の代名詞的な機構になっています。
腕時計の歴史を早めた男、ブレゲの偉業
自然の摂理を克服する複雑機構トゥールビヨンを発明したのが、時計師のアブラアン=ルイ・ブレゲ(1747~1823)です。ブレゲは1747年、スイスのニューシャテル生まれ。ブレゲの発明した数々の機構は時計の歴史を200年早めたともいわれ、“時計界のレオナルド・ダヴィンチ”とも評されるほどの天才時計師です。
ブレゲは1775年パリに時計工房を開いて以来、次々と革命的な機構を発明します。その顧客にはマリー・アントワネットやシャルル=モーリス・ド・タレーラン=ペリゴール、ナポレオン・ボナパルトなどフランス史に名を残した人物も多く、みな熱烈に彼の時計を愛好したといいます。
愛好された理由は、やはりブレゲの時計師としての技術だといえるでしょう。ブレゲは一生の間に時計界にとって重要ないくつもの発明を残しました。代表的な発明をまとめると以下のとおりです。
▽ブレゲの主な発明
年 | 出来事 |
---|---|
1780年 | 「ペルペチュエル」という自動巻機構のついた時計を発明 |
1783年 | ムーブメントを取り巻く「ゴング」という板バネを鳴らす方式での“ミニッツリピーター”の機構を発明。リピートウォッチの厚さを大幅に抑えることに成功 |
1790年 | 「パラシュート」という耐衝撃吸収機構を発明 |
1795年 | 月によって変わる日数をも考慮して、日付・曜日などの暦の情報を自動表示する「パーペチュアルカレンダー」を発明 |
1801年 | 姿勢によらず計時精度を維持する調節機構「トゥールビヨン」を発明 |
ここで紹介した機構は、ブレゲの発明の一部にすぎません。また表を見ればわかるように、世界三大複雑機構のうちトゥールビヨンのほかに「パーペチュアルカレンダー」も発明しています。このことからも、ブレゲに対する腕時計の歴史を早めたという賛辞は、決して誇張した表現ではないことが理解できます。
多様化を見せる、現代のトゥールビヨン
電波式腕時計などで複雑機構を搭載せずとも正確な計時が可能になった現代。しかし、いまもなおトゥールビヨンはオーデマ・ピゲ、リシャール・ミルなど多くの高級腕時計に採用され、羨望の対象となっています。
その理由のひとつとして、トゥールビヨンを採用した時計は、その機構がわかるよう内部を露出させたデザインが多いという特徴が挙げられるでしょう。ひと目でトゥールビヨンが搭載されている、つまり高級腕時計だとわかることは所有する満足を引き立たせてくれます。
現代のトゥールビヨンには3種類あります。
トゥールビヨンの種類その1:ノーマルトゥールビヨン
ブレゲが発明したオリジナル機構に改良を重ねたもので、さらに小型化され、機能的に進化した機構が「ノーマルトゥールビヨン」です。近年の製造技術の進歩はすさまじく、この機構の量産化が可能となっており、普通のメジャーブランドからも手の届く価格帯の搭載モデルが販売されています。
トゥールビヨンの種類その2:フライングトゥールビヨン
「フライングトゥールビヨン」は、トゥールビヨンの心臓部であるかご(キャリッジ)を支えるブリッジというパーツを廃し、かごが浮いているように見えるタイプの機構です。トゥールビヨンの機構内部がより見えやすくなるため、コレクターからの人気が高いです。
トゥールビヨンの種類その3:ジャイロトゥールビヨン
スイスの高級時計メーカー『ジャガー・ルクルト』がトゥールビヨンをさらに発展させた機構が、「ジャイロトゥールビヨン」です。球体型のかごに収められたトゥールビヨン機構が回転し、重力の影響を最小にとどめます。
腕時計愛好家の世界をつくったブレゲ
トゥールビヨンひとつとっても、語り尽くせないほどの魅力ある機構を発明してきたブレゲ。その功績を見るに、ブレゲがいなければ、現在の腕時計の愛好家の世界はなかったといっても過言ではないでしょう。
そんな、 ひとりの天才時計師のクラフトマンシップが、今日の「ブレゲ」というブランドへとつながっているのです。(提供:JPRIME)
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