現代アートは単なる美しさや郷愁などの感性だけではなく、日常を飛び越えた哲学的な「想念」や危機感を伝えるメッセージ性をもって強く訴えかけてくるがゆえに、われわれの目を引き付けてやみません。

そんな現代アートには、数多くの有名なアーティストが知られています。しかし、代表的な作家や代表作は広く知られているものの、実際に作品を見ることができる美術館は意外と知られていません。この記事では、有名現代アーティストの作品が見られる美術館を紹介します。

現代アートを専門にする“現代美術館”は世界中に

現代アート,世界の美術館
(画像=mint/stock.adobe.com)

日本で現代アートを専門にする美術館といえば、東京都現代美術館や大阪の国立国際美術館が代表的ですが、世界にはもっとたくさんの現代美術館があります。エポックメイキングな現代アートが見られる、代表的な美術館を紹介しましょう。

ザ・ブロード(アメリカ)

現代アート,世界の美術館
(画像=bennymarty/stock.adobe.com)

2015年に米カリフォルニア州ロサンゼルスにオープンした「ザ・ブロード」は、イーライ・ブロードとその妻エディスのアートコレクションが収蔵されている現代美術館です。イーライ・ブロードは実業家で、金融と建設事業で成功を収めた大富豪。美術品の収集家としても有名です。ここには、2,000点を超えるコレクションが収蔵・公開されています。

著名な作家によるえりすぐりの作品が一堂に会しているとあって、かねてアートになじみのない人たちにまでうわさが広まり、開館から1年間で82万人の入館者を記録する盛況ぶりです。

入場料はなんと無料で、入館するのにはWebサイトから予約するのがベターです。予約なしでも入館できますが、長い行列に並ばなくてはならず、ひどい場合は並んでいる間に閉館時間になってしまうこともあるようです(2020年12月執筆時点では新型コロナウイルスの感染拡大防止のため一時閉鎖中)。

所蔵作品は、アンディ・ウォーホル、ロイ・リキテンスタイン、ジャスパー・ジョーンズなどポップアートの騎手らの作品。さらに、ジェフ・クーンズの巨大な風船をモチーフにした立体作品「バルーン・ドッグ」。また、世界的に人気が過熱しているジャン=ミシェル・バスキアの作品など多数となっています。

さらに、日本を代表するアーティストの作品も所蔵されています。村上隆の作品「DOB in the Strange Forest」や、草間彌生の作品「Infinity Mirrored Room-The Souls of Millions of Light Years Away」などです。後者は、LEDライトと鏡を利用した無限に広がる幻想的空間をつくりだした現代アートで、美術館を代表する作品です。

「本当によい作品は美術館にではなく、プライベート・コレクションにある」といわれることがありますが、質の高い作品が並ぶザ・ブロードは、その説を裏付けるような場所となっています。

テート・モダン(イギリス)

現代アート,世界の美術館
(画像=giorez/stock.adobe.com)

「テート・モダン」は、ロンドンのテムズ川沿いに存在したバンクサイド火力発電所をリノベーションした近現代美術館です。モネ、ドガ、ピカソ、マティスなど、後期印象派以降の巨匠の作品が鑑賞できます。

また、古い火力発電所のリノベーションぶりも建物として見どころのひとつとなっています。テート・モダンは7階建ての本館ボイラーハウスと2016年にオープンした10階建ての新館スイッチハウスに分かれています。2つの建物は、1階と4階で連結されて行き来できます。また、新館スイッチハウスには、ロンドンの街を一望できる展望台もあります。

テート・モダンの常設展示の特徴は、年代でカテゴライズするのではなく、たとえば「風景」「人物」などテーマごとに展示されています。テーマごとにさまざまな時代を超えて作品を鑑賞できます。

本館の2階と4階の多くは常設展示室になっており、20世紀印象派の巨匠による作品から、現代アートまで展示されています。ピカソのキュビスム代表作のひとつ「泣く女」や、1916年に描かれたモネの「睡蓮」などが展示されています。

他にも、アンディ・ウォーホルの代表作「マリリン・モンローの2連画」、ワシリー・カンディンスキーの「コサック」、ピエト・モンドリアンの「コンポジション」など有名作品が展示され20世紀アートを幅広く見ることができます。

中でもマーク・ロスコの「シーグラム壁画」を集めた「ロスコルーム」が人気を集めています。アメリカの抽象表現主義を代表する画家と位置づけのロスコは、大きな絵を「場」として表現し、体験するという新しい鑑賞を生みだした画家です。

このようにテート・モダンは、広い空間に、膨大な数の近現代アートの作品が展示されており、かなり見応えがあります。ロンドンを訪れたら必ず足を運んでおきたい場所のひとつです。

モダン・コンテンポラリー・ミュージアム(オランダ)

現代アート,世界の美術館
(画像=andrey-shevchenko/stock.adobe.com)

オランダ・アムステルダムにあるThe Modern Contemporary Museum、通称「MOCO美術館」は2016年に設立された比較的新しい美術館です。1904年にエドゥアルト・コイペルスという建築家が居住用として建てた家を美術館へと改築しており、一見すると美術館らしくない邸宅風の外観が大きな特徴になっています。

プライベート・コレクションを展示しているこの美術館は、あの謎のアーティスト、バンクシーの作品を多数展示していることでも知られています。たとえば、2018年に約1億5,000万円で落札された直後にシュレッダーで細断されたことで有名な「少女と風船」の別バージョンが展示されているほか、「花束を投げる男」も展示されています。

また、バンクシーのほか、ロイ・リキテンスタインの作品「Bedroom at Arles」をそのまま部屋に再現した3Dインスタレーションが常設されています。「Bedroom at Arles」はゴッホの有名なシリーズ作品である「ゴッホの寝室」をもとに作成された作品。ゴッホの部屋がリキテンスタインならではのポップな部屋に仕上がっています。実際に部屋の中に入れるので、それも美術館の目玉のひとつとなっています。

このほかにも、巨匠アンディ・ウォーホルの代表作のひとつ「ドルサイン」、草間彌生の「星の夜」と「カボチャ」など名だたる現代アート作品が多く展示されています。

一般の民家のリノベーションですので、大きい美術館ではありませんが、有名アーティストの作品がまとまっていて、非常にクオリティが高い展示を楽しむことができます。

コロナ禍が収束したら行ってみたい

現代アートをじっくりと眺めて、凝り固まった常識を打ち砕かれる瞬間は、刺激的で楽しいものです。できれば海外に行った際に立ち寄ってみてみたいものですが、コロナ禍ではなかなかそうもいきません。

今は、国内の現代美術館などで予習をして、コロナが収まった後に、ゆっくりと見に行きたいものです。(提供:JPRIME


【オススメ記事 JPRIME】
超富裕層が絶対にしない5つの投資ミス
「プライベートバンク」の真の価値とは?
30代スタートもあり?早くはじめるほど有利な「生前贈与」という相続
富裕層入門!富裕層の定義とは?
世界のビリオネア5人が語る「成功」の定義