中国経済
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中国景気を加速させる3つのエンジン

岡三証券 チーフエコノミスト(中国) / 後藤 好美
週刊金融財政事情 2021年2月8日号

 中国政府は今年1月、昨年10~12月期の実質GDP成長率が前年同期比6.5%増となったと発表した(図表)。新型コロナウイルスによる感染爆発が世界で初めて武漢で発生してから1年が経過したタイミングであり、V字回復を印象付けた。通年でも2.3%増と主要国で唯一のプラス成長を実現。昨年前半は強力な金融財政支援による景気回復が進んだが、年後半は自動車・住宅市場の活発化に設備投資の改善も加わり、民需の自律的回復力が強まった。

 V字回復の達成は、強力な都市封鎖と広範なPCR検査、および徹底した水際管理による「ゼロコロナ政策」の賜物といえる。年明け後の寒波や中国北部での集団感染は、景気回復の足取りをやや鈍らせているが、政府による迅速な対応で春ごろには再び民需主導の回復軌道に戻るとみられる。

 国際通貨基金(IMF)は、今年の中国の経済成長率が8.1%増まで回復すると予想している。今年は中国共産党の結党100周年、かつ習近平政権第3期の可否を問う党大会を来年に控え、経済運営の失策は許されない。そうしたなか、今後の景気回復を後押しする三つのエンジンが注目される。

 一つ目は、「新五カ年計画」が今年から始まることだ。米国と対峙する「デジタル強国」を目指し、各地でハイテク投資を呼び込むプロジェクトが順次始動する。すでに広東、浙江、上海、北京、重慶などで半導体、AI、新エネルギー車(電気自動車や水素を燃料とする燃料電池車等)、5G、インターネット産業などの民間投資が動き始めている。

 二つ目は、マクロ政策の柱として消費促進策が強化されることだ。景気回復に伴い所得環境の改善も進むなか、農村消費、自動車販売、スマート家電販売への補助金導入やオンライン販売促進策などにより消費の下支え効果が見込まれる。

 三つ目は、外需の追い風が続くことだ。昨年以降、コロナ禍に伴う各国からの巣ごもり需要や代替生産需要が根強い。今年は世界でワクチン接種が本格化するため、ワクチン外交に伴う防疫関連輸出の一段の拡大とともに、感染が鎮静化した地域への輸出回復も期待される。

 一方、先行きの懸念材料として、感染力の強い変異ウイルスが中国内に頻繁に流入するリスクが挙げられる。庶民の感染警戒意識が強い中国では、小規模感染でも継続的に発生するとサービス消費への打撃が大きい。現在、中国では製造業が好調な一方、旅客輸送、宿泊、娯楽など幅広いサービス業で今なお前年割れが続いている。昨年の都市新規雇用者数も第三次産業の低迷で前年より160万人強も少ない。ウィズコロナの景気回復はこうした経済の二極化が特徴であり、今年の中国政府にとってサービス消費と雇用環境の底上げが最大の課題といえる。

きんざいOnline
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(提供:きんざいOnlineより)