高齢化社会の日本において、誰にでも起こりうるのが「介護」です。介護には比較的大きなお金がかかるため、場合によってはお金を借りるケースもあるでしょう。

介護のお金を借りる方法は、大きく分けて以下の2つがあります。

・公的機関から借りる
・民間の金融機関から借りる

本記事では、介護のお金を公的機関から借りる方法と、金融機関から借りる方法をそれぞれご紹介します。

介護のお金はどれくらいかかる?介護にまつわる現状

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(画像=naka/stock.adobe.com)

まずは、介護のお金にまつわる現状を確認しておきましょう。

平均で月に7.8万円 一時的な費用は69万円

生命保険文化センターによると、介護費用の平均は以下のとおりです。

【生命保険文化センター 介護費用の平均】
・月額:7.8万円
・一時的な費用の合計:69万円

介護を行った期間の平均は、4年7ヵ月。月の平均が7.8万円ですから累計で429万円、一時的な費用を合わせると498万円になります。

「約500万円」が、介護費用の目安といえるでしょう。

要介護(要支援)認定者は2000年の2.7倍超

厚生労働省によると、介護保険で「要介護(要支援)」と認定されている人は、2020年10月末時点で678.2万人。2000年の同月は247.3万人ですから、20年で2.7倍以上になっています。

要介護(要支援)に認定される人の数は高齢化などの影響もあり、近年は右肩上がりで増えています。

上記は、あくまで介護保険で認定されている人の数です。要介護や要支援に認定されていない人も含めると、実際はさらに多くの介護が発生していると考えられます。

介護は、誰にでも起こりうるものです。前述のとおり、介護には多額の費用がかかるため、一時的にお金を借りる方法を知っておくと役に立つかもしれません。

そこで次章では、介護のお金を借りる方法を紹介します。

介護のお金を借りる方法1:公的機関から借りる

まずは、公的機関から借りる方法を見ていきましょう。

厚生労働省は、生活が困難な人に向けて一時的にお金を貸す「生活福祉資金貸付制度」を実施しています。

【生活福祉資金貸付制度の対象】
・必要な資金を他から借り受けることが困難な世帯(市町村民税非課税程度)
・身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者等の属する世帯
・65歳以上の高齢者の属する世帯

利用には審査がありますが、上記の対象に該当する場合、介護のためのお金を借りられる可能性があります。

生活福祉資金貸付制度にはいくつかの種類がありますが、ここでは介護のお金に使えそうなものを3つご紹介します。

福祉資金(福祉費) 最大230万円

貸付限度額 利子 返済期限
介護サービスを受ける期間が
1年以下:170万円
1年半以下:230万円
※世帯の自立が必要なとき
保証人あり:無利子
保証人なし:年1.5%
5年以内
(据置:6ヵ月以内)

生活福祉資金貸付制度の「福祉資金(福祉費)」は、一時的にまとまったお金を借りられる制度です。利用目的ごとに上限が定められていますが、介護費用の場合は最大で230万円を借りられます。

保証人は原則必要ですが、保証人なしでも借りられるケースがあります。保証人がいない場合は年1.5%の利息が発生し、据置期間の終了後5年以内に返済する必要があります。保証人がいる場合は、利息はありません。

福祉資金(緊急小口資金) 最大10万円

貸付限度額 利子 返済期限
10万円 無利子 1年以内
(据置:2ヵ月以内)

「福祉資金」のうち、緊急で必要な少額のお金を借りられる制度が「緊急小口資金」です。上限は10万円と少ないですが、無利子でお金を借りられます。

総合支援資金(生活支援費) 月に最大20万円

貸付限度額 利子 返済期限

2人以上世帯:月に20万円
単身:月に15万円
※貸付期間:原則3か月(最長1年)

保証人あり:無利子
保証人なし:年1.5%
5年以内
(据置:6ヵ月以内)

生活福祉資金事業の「総合支援資金」は主に失業者を対象としたものですが、広く「日常生活全般に困難を抱えている方」も対象としています。

そのため、介護費用で生活が苦しい場合もお金を借りられる可能性があります。

総合支援資金のうち「生活支援費」は月に最大20万円を借りられる制度で、最長1年間借りられます。利息や返済期限などの条件は、「福祉資金(福祉費)」と同じです。

介護のお金を借りる方法2:金融機関から借りる

次に、介護のお金を民間の金融機関から借りる方法を確認しましょう。主に以下の3つの方法があります。

【金融機関から介護のお金を借りる3つの方法】
・リバースモーゲージ
・介護ローン
・フリーローン

いずれの方法も審査があるため、必ず借りられるわけではないことに注意してください。

リバースモーゲージ

「リバースモーゲージ」とは、自宅を担保にお金を借りる方法です。金融機関によって諸条件は異なりますが、基本的には以下のような特徴があります。

【リバースモーゲージの特徴】
・自宅を担保にお金を借りる
・契約者は親
・親が生存中は利息のみを返済、または返済がない
・親の死亡時に子どもが一括返済 現金または担保の自宅を売却して返済する

リバースモーゲージは、親が自宅を持っている場合の選択肢です。親が自宅を担保にお金を借り、存命中は利息のみ返済するか、または返済がありません。

親が亡くなると、子どもが一括返済します。子どもは現金で返済するか、担保に入れた自宅を売却して返済するかを選択できます。

メリットはまとまったお金を借りられることと、親を介護している間は負担が軽いことです。

注意したいのは、自宅を相続できない可能性があることです。現金で返済しない場合は担保に入れた自宅を売却して返済するため、相続できません。親が亡くなった後も自宅に住み続けたい場合は、注意しましょう。

もちろん、金利や限度額などの諸条件にも注意が必要です。

介護ローン、福祉ローン

「介護ローン」または「福祉ローン」は、金融機関が提供する介護費用専用のローンです。

お金の使い道は介護に関するものに限定されますが、限定されていない「フリーローン」や「カードローン」よりも金利は低めです。

介護ローンや福祉ローンは、銀行や労働金庫が提供しています。条件は金融機関によって異なるため、申し込む前に確認しましょう。また、審査結果によって条件が変わることもあります。

フリーローン、カードローン

「フリーローン」や「カードローン」は、使い道が限定されていないローンです。

使い道が限定されていないので介護のお金にも使えますが、「介護ローン」や「福祉ローン」と比較すると金利は高めです。

フリーローンは主に銀行が取り扱い、借りたい金額を一括で借ります。

カードローンは、銀行のほか消費者金融など多くの金融機関が取り扱っています。限度額が定められ、限度額の範囲内なら何度でも借りられます。

何度でも借りられる分、カードローンのほうが使い勝手はよいといえます。しかし、フリーローンのほうが金利は低めです。

その他 介護の支援制度

介護にまつわる支援制度も確認しておきましょう。

「育児・介護休業法」介護のための休暇を取りやすくする法律

会社員など企業に雇用される人が、介護を行うための休暇を取りやすくする法律が「育児・介護休業法」です。

企業に雇用される人は、要介護に認定された家族を介護するため、年に3回(通算93日)の「介護休業」を取得できます。

「雇用保険」からの給付金 

要介護状態にある家族を介護するため休業し、その間給与が支払われない場合は、雇用保険から「介護休業給付」が支給されます。

【介護休業給付の額】
休業前の賃金(日額)×67%×支給日数

【要介護認定は早めに申請を】
上記の2つの支援制度の利用するための条件は、いずれも家族が「要介護」に認定されていることです。

要介護認定は、市町村に設置される「介護認定審査会」で判定されます。介護が必要だと感じたら、お近くの市役所や区役所で早めに相談しましょう。
若山卓也(ファイナンシャルプランナー)

介護のお金の注意点

介護のお金を用意する方法も大切ですが、他にも気をつけたいポイントがあります。主な注意点を確認しましょう。

介護費用は親の財布から支払うのが基本

「介護のお金を誰が支払うか」は重要なポイントです。介護のお金は、基本的に親の財布から支払うようにしましょう。

「親の介護費用は自分が出したい」と考える人もいるでしょう。しかし、自分の生活も大切です。介護費用は、決して少ない金額ではありません。自分の生活が苦しくなる可能性もあります。

介護サービスを受けるのは親ですから、介護のお金は親の財布から支払い、足りない分を補填することをおすすめします。

上述したお金を借りる方法でも、できるだけ親自身が契約者(借り手)となる方法を検討しましょう。

兄弟がいる場合は事前に相談を

兄弟がいる場合は、「相続」を念頭に置くべきでしょう。介護のお金を支払った事実が考慮されず、相続が不公平になる可能性があるからです。

例えば子どもが2人いて、子Aは介護のお金を支払い、子Bは1円も支払っていないとします。子Aと子Bがそれぞれ同じ金額を相続した場合、子Aは不公平を感じるでしょう。

親が子Aに多く相続させるよう遺言を残せばよいのですが、遺言がない場合は「法定相続」に従い、子Aと子Bは基本的に同じ金額を相続します。仮に子Aに多く相続させる遺言があったとしても、子Aと子Bの関係が悪くなるかもしれません。

親が生きているのに相続を考えるのは、気が引けるかもしれません。しかし兄弟がいる場合は、後のトラブルを避けるために、誰が介護のお金を支払うかを明確にし、できるだけ均等に負担するようにしましょう。

自分の老後のお金も確保しよう

親の介護のお金も大切ですが、自分の老後のお金も用意しなければなりません。

日本FP協会によると、老後は毎月4~5万円ほど赤字になるそうです。赤字は基本的に自分の預貯金で埋め合わせることになるため、老後までにまとまったお金を準備しなければなりません。

働いていると収入があるため、簡単に親の介護のお金を出しがちです。しかし、自分の老後資金もしっかり確保するようにしてください。

介護のお金は公的支援も含めて検討しましょう

介護には、大きなお金がかかります。民間の金融機関から借りる方法もありますが、公的機関にも介護を支援する制度があります。

公的機関からの借入は、民間の金融機関より金利などの条件が有利なものが多いです。介護のお金を借りる場合は公的機関の支援も検討し、また自分の老後生活を守ることも考慮して、慎重に検討しましょう。

文・若山卓也(ファイナンシャルプランナー)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業、保険募集代理業、金融系ライターとして活動しています。関心のあるジャンルは資産運用や保険、またお得なポイントサービスなど。お金にまつわることなら幅広くカバーし、発信しています。AFP、プライベートバンキング・コーディネーター資格保有。

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