21年の実質GDP成長率は4%増を予測
第一生命経済研究所 主任エコノミスト / 桂畑 誠治
週刊金融財政事情 2021年2月15日号
米国の2020年の実質GDP成長率は、新型コロナウイルスの感染拡大によって前年比3.5%減となった。金融危機で落ち込んだ09年の同2.5%減以来のマイナス成長であり、マイナス幅はGDP統計の作成が開始された1947年以降で最大となった。四半期ごとの成長の推移を見ると、ロックダウンの実施で20年1~3月期に前期比年率5.0%減、4~6月期に同31.4%減と落ち込んだ後、ロックダウンの解除や経済支援策によって7~9月期に同33.4%増の大幅上昇となった。
その後、10~12月期では、7~9月期の大幅拡大の反動のほか、新型コロナ感染再拡大による行動制限の強化、経済支援策の押し上げ効果の弱まりによって、前期比年率4.0%増と急減速した。特に、12月は個人消費や雇用の減少などにより減速感が強まった。ただし、企業の景況感を示すISM景気指数は、製造業、非製造業共に20年10~12月期、21年1月を通じて高い水準を維持しており、景気回復が持続していることを示している。
21年の米国経済は、新型コロナ感染拡大とその対策の影響を大きく受ける。ワクチン接種が始まっているものの、供給不足などによって接種が遅れている。このため新型コロナの感染拡大が高水準で続くと予想され、行動制限の継続や自主的な抑制につながろう。一方、昨年12月末に9,000億ドル規模の経済支援策が成立したことで、21年1~3月期に個人消費が下支えされるほか、中小企業での雇用削減が控えられ、労働市場の回復が進展しよう。さらに、バイデン政権によって総額1.9兆ドル規模の経済支援策の策定が予想される。
1.9兆ドルの内訳を見ると、ワクチン普及や検査拡充など新型コロナ対策のほか、家計向け支援として、①1人当たり1,400ドルの現金給付、②失業保険の追加給付の期限を9月まで延長した上、週400ドルの上乗せ、③住居の強制退去の猶予措置を9月末まで延長──といった施策が掲げられている。また、中小企業向け補助金・融資の拡充、州・地方政府への補助金などが含まれる見込みだ。これらの効果により21年前半の経済成長の下支えが期待される。
21年後半には、経済支援策の効果が浸透するなか、ワクチン接種の増加によって行動制限など経済成長を抑制する要因が弱まるとみられ、景気・雇用の回復ペースが速まろう。その結果、米国の実質GDPは主要先進国で最も早くコロナ危機前の水準を上回り、21年の実質GDPは前年比4%増程度の成長が見込まれる(図表)。ただし、感染力が高く、ワクチンの予防効果が弱まるような新型コロナ変異種の感染が拡大すれば、経済成長が下振れするリスクがある点には留意が必要だ。
(提供:きんざいOnlineより)