マンション経営は、長期にわたって家賃収入を得られるのが魅力ですがリスクもあります。投資用マンションは、販売価格が高額な傾向のため、状況によっては大きな損失が発生するかもしれません。ただしマンション経営のリスクの多くは、事前に対策が可能です。投資用物件を購入する前に、リスクと対処方法について理解を深めておきましょう。

空室・家賃滞納リスク

マンション経営を始める前にリスクとその対処方法を知っておこう
(画像=lucid-dream/stock.adobe.com)

マンション経営では、入居者がいなければ家賃は入ってきません。また入居者がいても家賃滞納が発生すると収益が得られなくなってしまいます。マンション経営で安定した収益を得るには、空室や家賃滞納の発生を最小限に抑える対策が必要です。

空室・家賃滞納リスクへの対処方法

空室・家賃滞納リスクへの主な対処方法は、以下の通りです。

  • 賃貸需要が高い地域(首都圏、福岡など)で始める
  • 好立地の物件を選ぶ
  • 保証会社を利用する
  • 家賃滞納に強い賃貸管理会社を選ぶ

マンション経営では、定期的に退去が発生することを完全に避けることはできません。しかし賃貸需要が高い地域で好立地の物件を選ぶことで、空室期間を短くすることは可能です。例えば「人口が集中していて長期的な需要が見込める首都圏」「単身者や若者が多くて高利回りの福岡市」などの物件を検討しましょう。

家賃滞納については、契約時に保証会社を利用することで滞納分の家賃を保証してもらえます。また家賃滞納に関する専門部署があるなど滞納に強い賃貸管理会社を選ぶこともリスクへの備えになるでしょう。このように賃貸管理会社を選ぶときは、家賃滞納保証の有無や対応実績なども考慮することが大切です。

災害リスク

投資用マンションは、実物資産のため、地震や火災、水害などで建物が被害を受ける可能性があります。被害の状況によっては大きな損失が発生するため、事前の対策が重要です。

災害リスクへの対処方法

災害リスクへの主な対処方法は以下の通りです。

  • 保険に加入する
  • 新耐震基準の物件を選ぶ
  • ハザードマップを確認する

マンション経営では、火災保険と地震保険に加入して災害リスクに備えることが大切です。災害そのものをコントロールすることはできませんが、保険に加入することで損失をカバーすることはできます。また火災保険のみでは、地震による火災が補償されないため、必ず地震保険にも加入しておきましょう。地震については、1981年6月1日以降に導入された新耐震基準の物件を選ぶことも対策の一つです。

新耐震基準の建物は「震度6強以上の地震でも倒壊・崩壊しない」とされています。そのため新耐震基準で建てられたマンションであれば、地震による建物の倒壊・崩壊リスクに備えることが可能です。災害リスクに強い物件を選ぶには、自治体などが公表しているハザードマップを確認することも参考になります。

自治体によって公表している内容は異なりますが、地震や洪水、土砂災害など「購入を検討している物件が災害リスクの高い場所に位置していないか」について把握することが可能です。木造家屋が密集している地域や地盤が弱い地域、川が近い地域は災害リスクが高くなるため、避けたほうがよいでしょう。

家賃・資産価値下落リスク

投資用マンションは、経年劣化によって家賃や資産価値が下落するリスクがあります。ただし家賃や資産価値は築年数だけで決まるものではありません。地価や立地、賃貸需要、設備、周辺環境などさまざまな要素を考慮して決定されます。マンション経営で安定した収益を得るには、家賃や資産価値が下落しにくい物件に投資することが大切です。

家賃・資産価値下落リスクへの対処方法

家賃・資産価値下落リスクへの備えとしては、以下のような対策が考えられます。

  • 新築を避ける
  • 賃貸需要が高い地域で始める
  • 好立地の物件を選ぶ
  • 修繕積立金に不足がないことを確認する

新築マンションは、入居者からの人気が高く空室リスクは低いですが、新築から中古に変わる1年目に資産価値が10%程度下落する傾向にあります。そのため資産価値の減少に備えるのであれば、新築より価値減少ペースが緩やかな中古マンションを検討しましょう。築年数が経過していても賃貸需要が高い地域で好立地の物件であれば、家賃や資産価値は下落しにくい傾向です。

「人口が少ない」「最寄り駅から遠い」など空室リスクが高い物件は、退去が発生するたびに家賃を下げないと入居者が見つからない可能性があるため注意が必要です。また中古マンションの場合は「修繕積立金に不足がないか」の確認も忘れてはいけません。いくら利回りが高くても築年数が経過しているのに十分な修繕積立金がなければ修繕やメンテナンスを適切に行えなくなるでしょう。

建物が劣化していけば資産価値の下落につながる恐れがあります。投資物件を選ぶ際は、重要事項説明書などで修繕積立金の状況を確認し積立金が不足している物件は避けましょう。

レジデンスからオフィスへの転用でリスク回避

コロナ禍、働き方改革の影響から、会社に通勤しないで働く「テレワーク」が注目されています。ただ、家では生産性が悪くなるといった声もあります。そこで注目されているのが「サテライトオフィス」です。

例えば、マンションの1室をサテライトオフィスに改築して、貸し出すといった方法もあります。オフィスであれば賃料も高く設定でき、一度入居すると長く借りていただけるといったメリットがあるのです。「家賃を下げないと入居者が決まらなくなっている」「修繕をしたいがキャッシュフローが悪く、厳しい」といった状況であれば、一度検討してみるのも手です。

流動性リスク

マンション経営における流動性リスクとは、所有物件を希望する価格で売却できなくなるリスクのことです。株式や投資信託などの金融商品は、証券会社で注文を出せば早期に現金化できます。しかし不動産を売却するには、買い手を見つけるところから始めなくてはなりません。そのため売却するまでに数ヵ月程度かかるのが一般的です。

物件によってはなかなか買い手が見つからず大幅に価格を下げないと売却が難しいケースもあります。家賃収入を目的に物件を長期保有する場合は、売却を想定していないかもしれません。しかし急にまとまった現金が必要になる可能性もあるため、マンション経営では売却の際の出口戦略も検討しておくことが重要です。

流動性リスクへの対処方法

マンション経営の流動性リスクに備える方法は、以下の通りです。

  • 賃貸需要が高いエリアで始める
  • 好立地の物件を選ぶ
  • オフィスへの転用

安定した収益が見込める物件は、投資家からの人気が高く比較的短期間で買い手が見つかる傾向です。空室リスクや家賃・資産価値下落リスクの低い物件に投資することが、結果として流動性リスクを抑えることにつながります。

また、オフィスに転用することで家賃を高く設定でき、結果として利回りが上昇します。利回りが改善すると買い手がつきやすくなるため、オフィスへの転用も対処法の一つといえるでしょう。

金利上昇リスク

投資用マンションは物件価格が高額なため、金融機関の融資を利用して購入するのが一般的です。基本的に家賃収入で毎月のローンを返済できるため、自己資金を貯めてから購入するより融資を利用するほうが効率的に資産形成を行えます。ただし、ローン返済中に金利が上昇すれば返済額が増えて返済が困難になる可能性もあります。

金利上昇リスクへの対処方法

金利上昇リスクへの対処方法は、以下の通りです。

  • 無理な借り入れをしない
  • 収支計画を立てておく
  • 手元資金を厚めに用意しておく
  • 繰り上げ返済を行う
  • 固定金利を検討する

融資を利用して物件を購入する場合は、無理な借り入れをせず空室が発生しても問題なくローンを返済できる状態にしておくことが大切です。しっかりとした収支計画を立て手元資金は厚めに用意しておきましょう。余裕があれば繰り上げ返済を行って借入金を減らすことでさらに金利上昇リスクを抑えられます。

また固定金利を選ぶと借入期間中は同じ金利が適用されるため、金利上昇リスクを回避できます。変動金利に比べて金利はやや高くなりますが低金利で借りられる場合は固定金利も選択肢の一つになるでしょう。

リスクに備えてマンション経営を成功させよう!

マンション経営にはさまざまなリスクがありますが、その多くはコントロール可能です。リスクの内容を理解して適切に対処すれば、リスクを最小限に抑えながら長期にわたって家賃収入を得ることが期待できます。物件を購入する前に、リスクに備えてマンション経営を成功させましょう。(提供:spacible