海外不動産投資は、人口減で日本の不動産需要が減っていくことを踏まえると、魅力的な要素のある投資方法と言えます。海外不動産投資は高利回りや高額な家賃収入が期待できる半面、運用の難しさといったリスクが存在します。

本稿では、人口が増加傾向にあり不動産需要が高い国を投資先に想定し、海外不動産投資のメリット・デメリットについて解説します。海外での不動産投資を検討されている人は、ぜひお役立てください。

海外不動産投資のメリット

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(画像=sean-k/stock.adobe.com)

海外不動産投資を行うメリットとしては、次のようなものがあります。

・安定した家賃収入
・売却時の値段も高くなりやすい

以下より、個別に解説します。

安定した家賃収入

人口が増加している国の物件を購入すれば、賃貸物件の需要も増え続けますので、空室に悩まされる可能性も少なくなります。それに加え、築年数の経過とともに物件の賃料が下がりやすい日本と違い、欧米諸国などは中古物件の価値も下落しにくくなっています。

国土交通省が公表している「国土交通白書 2015」によると、住宅販売市場における日本の中古物件の比率は2013年時点で14.7%であったのに対し、2010年のアメリカは89.3%、2012年のイギリスは88%と高い数値でした。

以上のように、賃貸物件の需要が高く、中古物件にも価値がある国で投資を行えば、安定した家賃を得られやすくなるのが海外不動産投資の魅力のひとつでしょう。

売却時の値段も高くなりやすい

日本ではキャピタルゲインを狙った投資は難しいのが現状です。しかし海外では、不動産価格が上昇し続けている地域もあります。「経済的に成長している」「人口が増加している」という条件を満たす国においては、購入時よりも高い値段で物件を売却して差益を得る「キャピタルゲイン」を狙った投資も成立しやすいと言えます。

海外不動産投資のデメリット

海外不動産投資を難しくしている要因として、次のようなものがあります。

・2020年の法改正で節税メリットがなくなった
・融資を受けるのが難しい
・為替変動リスク
・維持、管理が難しい

以下より、それぞれについて解説します。

2020年の法改正で節税メリットがなくなった

以前までは、海外不動産投資のメリットのひとつとして、減価償却による節税効果がありました。しかし、2020年の税制改正によって、2022年の確定申告から海外不動産投資の所得を損益通算できなくなったため、減価償却による節税スキームが不可能になりました。

もともと、日本の物件と比較して欧米の中古物件は値段が高い傾向があり、日本の減価償却の制度に対して有利に働いていました。しかし、この海外不動産を使った節税スキームはかねてから問題視されており、規制されました。

本稿を執筆している2021年時点分から、海外不動産所得が節税の対象外となっています。そのため、今から節税目的で海外不動産を購入しても意味がないということになります。ただし、アメリカなどにおける不動産価格は2020年も上昇していましたので、家賃収入や売却益を目的としての購入は、まだ検討の余地があります。

融資を受けるのが難しい

海外不動産投資で問題となるのが、融資を受ける方法です。日本にいながら、海外不動産投資のための融資と受けようと考えた場合、取れる手段は3パターン存在します。

・国内金融機関の海外不動産投資ローンを利用する
・国内金融機関の使用用途自由のフリーローンを利用する
・現地の金融機関から融資を受ける

まだ数は多くありませんが、日本国内においては海外不動産を購入するための融資を受けられる金融機関も存在します。ただし「審査が厳しい」「金利が高い」「返済期間が短い」など、日本の物件を購入するためのローンに比べて条件が厳しいのが現状です。

それに加え、国内で資金使途が自由なフリーローンを借りる場合、不動産投資は事業性資金と判断される可能性があります。海外の金融機関からの融資を受ける場合も、現地の言語を使って融資契約を結ぶ必要があるなどの理由から、非常に難易度が高くなっています。

為替変動リスク

海外不動産投資では、為替のレート変動による影響を受ける可能性も懸念されます。例えば「1ドル=104円」のタイミングで、利回り10%の想定で20万ドルの物件を購入した場合、想定できる年間家賃収入は「20万ドル×104円×0.1=208万円」となります。しかし、ここから「1ドル=100円」まで円安になってしまうと、年間家賃収入は200万円となり、約8万円分の差が生じます。

このように、海外不動産投資では為替変動の影響があるため日本の物件以上に家賃収入が変動しやすく、運用する海外物件が増えるほど為替変動リスクは高まります。

維持・管理が難しい

海外不動産は、物件の維持・管理が非常に難しいという点もデメリットです。購入後も安定して家賃収入を得るためには、物件の状態管理や、入居者が起こしたトラブルへの対応が必要です。

日本に住みながら海外不動産投資を行うなら、物件の管理を現地の管理会社に任せることになります。その場合、時差・言語・文化などがネックとなり、コミュニケーションに想像以上の労力がかかることが想定されます。

海外不動産投資ができる国別の特徴

ここからは、海外不動産投資に向いた国について、それぞれの特徴について解説します。

アメリカ

アメリカは、出生率の高さと移民の流入により先進国の中でも人口が速いペースで増加しています。年間300万人近く国民が増えており、先進国に比較して不動産取引に関する法整備も整っているのが特徴です。

日本とは十数時間の時差があるため、現地の管理会社とのやり取りに影響が出る可能性はありますが、今後も賃貸需要の増加が見込めるため魅力的な投資先と言えます。

イギリス

イギリスでの不動産投資でも、アメリカと同じく法整備が整っているというメリットがあります。イギリスは海外からの留学生も多いので、学生寮に需要があります。イギリスで学生をターゲットとした賃貸物件の賃料相場は月320〜600ポンド(約4万5,800円〜8万5,900円)と、エリア次第では一部屋ごとの賃料はあまり高く設定できませんが、その分継続的な需要が見込めます。

オーストラリア

オーストラリアは、東海岸のゴールドコーストに代表されるように、温暖かつ自然豊かなリゾート地が多いのが特徴です。住みやすい土地柄から人口も増加傾向にあり、ゴールドコーストを例に取ると、2010年に56万6,112人だった人口は、2020年には69万9,226人になりました。そのため、高価格帯の物件も多数存在し、購入までのハードルはあるものの、資産性が高くなっています。

マレーシア

マレーシアは現在経済成長の途中にある国のため、今後の発展による国民の平均所得の上昇が期待できます。ただし、一時期中国資本が大量流入した影響で不動産の乱開発が進み、不動産の需要自体は冷え切ってしまっています。逆に、今が底値とも言えますので、将来的な売却益を期待しての購入も検討可能です。

カンボジア

カンボジアは、成長途中の新興国でありながら米ドルで家賃収入を得られるというメリットがあります。マレーシアと同じように、カンボジアでは不動産開発がどんどん進んでいて、低価格帯の物件はすでに供給過多になりつつあります。そのため、カンボジアで不動産投資を行うなら、狙いを首都のプノンペンに絞り、高級物件を購入するのが無難でしょう。

タイ

タイは、首都バンコクなどに住んでいる日本人も多く、時差もそこまでないため現地の人間とのコミュニケーションが取りやすいのが特徴です。しかし、タイは近年物価が高騰傾向にあり、首都バンコクの物件も値上がりしているため、期待できる利回りもそこまで高くないのがデメリットとなります。

海外不動産投資は上級者向け

2021年現在、節税目的での海外不動産投資はメリットを享受できなくなってしまいました。しかしながら、国によっては「今後も不動産需要の増加が見込める」「中古物件でも値下がりしにくい」などの理由から、安定した家賃収入や売却益を得られる可能性もあります。

ローンの借入や、物件の維持管理の難しさから非常に上級者向けの投資ではあるものの、日本での不動産投資とは異なった魅力があると言えます。(提供:Incomepress


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