アメリカで若い層を中心に大流行している「ロビンフッド」という投資アプリがあります。このロビンフッドを舞台にGamestopという小売業の株が暴騰と暴落をしたニュースが世界を駆け巡り、そのニュースを見聞きされた方は多いと思いますが、実はこの荒い値動きにはこれまでにない要因があると見られています。
その1つはコロナ禍、もう1つはスマホによる投資ブームです。これらの要因については詳しく解説しますが、従来であれば機関投資家やヘッジファンドといった大口の投資家が主導してきた株式市場に、個人投資家が旋風を巻き起こしたことに大きな意味があります。
この一連の動きでいったい何が起き、今後に向けてどんな影響を及ぼそうとしているのでしょうか?今回はGamestop株の騒動についての顛末と、そこから見えてきた背景について解説します。
ユーザー数が1,300万人を超えた「ロビンフッド」
先ほどから言及しているロビンフッドというのは、アメリカのロビンフッド・マーケッツという会社が開発し、運営している株式取引アプリのことです。売買手数料が無料であることやスマホでゲーム感覚の取引ができることなどが支持され、特にスマホに慣れ親しんでいる若年層の利用者が多いことで知られています。すでにユーザー数は1,300万人を超えており、単一の取引環境でこれだけ多くの投資家を抱えているというのは、一大勢力と考えてよいでしょう。
従来の証券会社を通じた株式取引と違う点としては、小口投資家に向けてハードルを徹底的に下げたことが挙げられます。最低取引単位がなく売買手数料が無料なので、ちょっとしたお小遣いでも株式取引に参加することができます。
コロナ禍によって自宅にいる時間が長くなった人が投資に目を向け、さらに先行きの不透明感から副収入を得たい人が多くなったと考えられます。これは日本国内でも見られた傾向で、新型コロナウイルスが猛威を振るった2020年の4月以降に証券会社の口座数が増加したことからもうかがえます。
もちろんこうした流れはアメリカでも起きており、手軽に投資に参加できるロビンフッドが注目を集めるには十分な土壌がありました。
テスラ株の急騰で存在感を示す
ロビンフッドを利用している投資家のことを「ロビンフッダー」と呼びますが、ロビンフッダーが注目を集めたのはGamestop株が初めてではありません。2020年7月13日にEV(電気自動車)メーカー大手のテスラ株が急騰したときには、4万近くのロビンフッド口座からテスラ株が買われていたことが判明し、このときにロビンフッドの名前を初めて見聞きした方も多いのではないでしょうか。
「ロビンフッド」が大流行している理由
なぜここまでロビンフッドが大流行しているのでしょうか。先ほど述べたコロナ禍による巣ごもり需要や先行きの不透明感が理由であれば、ロビンフッド以外にも投資に参加する方法はたくさんあります。
ロビンフッドが特に注目を集めたのは、「株を知らない人」に支持されたからだと考えられます。アプリの画面や操作性だけを見ていると、株を売買しているように見えないほどシンプルに構成されており、ゲームアプリのような印象すらあると言われています。ロビンフッダーのほとんどは短期売買による利益を狙っているため、短期売買によって「儲け」が見えやすくなっているのもゲーム感覚の投資家には魅力的です。
そして最も大きな理由として考えられるのは、「ロビンフッドで儲けている人がいる」という話題がネット上を駆け巡り、その噂によって関心を持った人たちが一斉に流れ込んだことです。こうした人たちが流れ込むことによってブーム化している銘柄はさらに株価が上昇するため、噂が噂を呼ぶ形でロビンフッドが主役に躍り出たのです。
「ロビンフッド」現象の副産物
投資に参加するハードルを下げたロビンフッドの功績は大きいと思いますが、その一方でさまざまな社会現象や副産物も生まれています。最も問題であると指摘されているのは、投資の素人が参加している点です。それでは当記事のテーマであるGamestopの株価推移をご覧いただきましょう。
それまで10ドルを下回っていた株価が突然高騰し始め、たった2週間程度で500ドルに迫る急騰を見せました。これには、「レディット」という掲示板サイトによる影響があるといわれています。
レディットとはアメリカの掲示板サイトのことで、日本でいう「2ちゃんねる」に近いものです。誰もが自由に発言をしてフォーラムを立てることができる環境のなかで、このレディットに「WallStreetBets」というフォーラムが立ち上がりました。このフォーラムでは個人投資家が株式市場の情報を交換しています。
このフォーラムで「Gamestopの株を空売りしているヘッジファンドはけしからん」という論調の書き込まれました。このGamestopはゲームソフトの小売り店なのでアメリカ国内にも子供のころから利用していた人が多数います。しかし近年はオンラインゲームや配信に押される形で業績が低迷し、さらにコロナ禍によるロックダウンで閉店を余儀なくされているため、ヘッジファンドから空売りのターゲットになっていたのです。「自分たちがお世話になってきたGamestopをヘッジファンドが潰そうとしている」という論調が支配的になり、ロビンフッダーたちが一斉にGamestop株を買いに回りました。その結果が、先ほどの急騰劇です。
このときに空売りを仕掛けていたメルビン・キャピタルというヘッジファンドは損切りを余儀なくされ、この相場ではロビンフッダーたちの「勝利」となりました。しかしその後は株価が暴落し、ロビンフッダーたちの関心が薄れたことを物語っています。
このように無邪気なロビンフッダーたちが相場を荒らしていることが問題視されるなか、あるロビンフッダーがアプリ上に表示されている損益表示の読み方を間違えて大損をしたと思い込み、自殺するという痛ましい事件も起きました。短期間に大きな利益を手にしたロビンフッダーがその直後に全財産を失ったといったことも続発し、ゲーム感覚で参入している無邪気な投資行動の危険性が指摘されています。
日本の株式市場にはストップ高やストップ安があるため、一定以上の値動きは抑制されます。しかしアメリカの株式市場にはこういった制御装置はないため、そのリスクを意識していないロビンフッダーが大損をすることもあるわけです。
「ロビンフッド」のフィーバーは日本にも起きるか
こうしたロビンフッドのようなフィーバーは日本でも起き得るのでしょうか。2021年2月現在、日本国内ではロビンフッドアプリを利用できません。そのためロビンフッダーが国内で増殖することはないでしょうが、それに類似したサービスはあります。
貯まったポイントを使って株式投資ができるサービスが人気を集めています。こうしたサービスでは利用者の大半がスマホアプリで投資に参加しています。また、アメリカの株式市場は成長性が高いことから、日本国内でもアメリカの株式に投資をしている人は数多くいます。こうした状況を踏まえると、日本でもロビンフッドのようなアプリが人気を集めてフィーバーを巻き起こす可能性は十分考えられます。
フィンテックの分野は成長が著しく、それは日本国内でも同様です。ロビンフッドのようなサービスが登場するとアメリカと同じことが起きる可能性があるため、こうした動きをリスク管理の一環として意識しておく必要はあるでしょう。(提供:Incomepress )
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