まず、前提として知っておかなければならないこととして、住宅ローンと投資用不動産ローンは全く別物であるということです。同じ不動産でも自分が居住するためのローンと第三者に貸し出すマンションやアパートのローンは審査の基準も金利も異なります。住宅ローンは一定の収入があり、自分が住むという条件ならば比較的融資は受けやすいですが、投資用不動産ローンは誰でも融資を受けられるというものではありません。
そこで、投資不動産の融資を受けるための3つの条件をまとめました。

① お金を借りる方の属性

一般に、住宅ローンと比較して高い属性が求められます。金融機関によっても異なりますが、概ね年収500万円以上で安定した収入を見込める方は融資が通りやすいといえます。
ただし、高い年収があったとしても、多額のカードローンや消費者ローンを借り入れていたり、過去のローン返済において、延滞が頻繁にある場合などは、融資を受けることは難しくなります。

② 購入物件のエリアや建物の仕様、設備の内容。

投資用不動産のローン返済には、その物件から家賃収入が入ってくるかどうかが重要です。そのため、金融機関は融資対象のマンションは長期的に安定した家賃収入が見込めるかどうかを厳しく査定します。
また、内装についても、入居者に求められる人気の設備が付いているかどうかで借入可能額が増減します。

③ 販売会社

また、不動産の販売会社の企業としての信頼性も審査の対象となります。その企業の規模や売上はもちろんのこと、コンプライアンス違反はないか、業界内外の評判はどうかなども審査されるのです。
当然、評価が高い企業でなければ金融機関と業務提携ができません。たとえ、お客様がどんなに年収が高く、信用力がある方でも販売会社の評価が低ければ、融資を受けることができないのです。
その点で、どの販売会社を選ぶかということは不動産投資にとって極めて重要であるといえるでしょう。

上記の条件をクリアして初めて不動産投資の融資を受けられるのです。

「融資を制するものは不動産投資を制する」と言われますが、これらの知識を得ることで、金融機関を選びやすくなります。この記事の前半では、金融機関の種類と特徴を解説しつつ、後半では融資に関する初心者のよくある疑問についても紹介します。

不動産投資で使う金融機関の種類と特徴

マンション経営と他の投資はどう違うの?
(画像=Stas Walenga/Shutterstock.com)

不動産投資を始める時に選択肢として考えられる金融機関には次の5種類があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

  • メガバンク(都市銀行)
  • 地方銀行
  • 信用金庫・信用組合
  • ノンバンク
  • 日本政策金融公庫

1.メガバンク(都市銀行)

メガバンクとは、全国に支店ネットワークのある大手銀行のことです。主に「三菱UFJ銀行」「三井住友銀行」「みずほ銀行」「りそな銀行」などがあります。メガバンクの銀行口座は都市で生活をするには必携のため、身近な金融機関というイメージを抱く人も多いでしょう。そのためマンション経営をするときに「メガバンクに融資をお願いしよう」と考える初心者もいます。

しかしながら、「不動産投資の融資元」となるとメガバンクは敷居が高い存在です。基本的には土地を担保に融資を行う銀行が多く、アパートローンなどの融資を行っているケースはありますが、マンションの区分所有のような土地の権利が敷地権になっている物件には融資を行わない銀行がほとんどです。

2.地方銀行

地方銀行は、県や地方(例:関西地方や東北地方など)といった限定されたエリアで営業展開する金融機関です。不動産投資の融資元としては有力ですが、原則その地方銀行がカバーするエリアにある賃貸物件が融資対象になります。とはいえ、銀行やその支店ごとに目安となる収入や勤務年数が設定されているため、それをクリアしなければ融資はしてもらえませんし、金利も高い傾向にあります。

3.信用金庫・信用組合

信用金庫・信用組合は、地域密着型の金融機関です。営業エリアは、地方銀行よりもさらに限定的であることが一般的です。口座を開設するには、営業エリアに住んでいたり、勤務先が所在しているといった条件が付きます。また、信用金庫や信用組合は出資を行って、その会員や組合員とならないと融資を受けることができません。
地域に密着した金融機関のため、メガバンクや地方銀行よりも親身になって話を聞いてくれるなどが特徴で、融資審査のハードルも低い傾向です。ただし、それぞれの信用金庫・信用組合で融資審査の要件が大きく異なるため、誰でも気軽に借りられるわけではない点に注意が必要です。

4.ノンバンク

ノンバンクとは融資を専門に行っている金融機関で、銀行のように預金は扱っておりません。
ノンバンクには様々な形態があり、クレジットカード会社、信販会社、住宅金融専門会社、リース会社などが主となります。
ノンバンクと提携している販売会社から物件を購入することで、緩やかな審査になり、迅速に融資を受けることができます。ここでポイントとなるのが、先ほど紹介した条件の③です。

また、このような提携金融機関を多く持っている販売会社からの物件購入はスムーズに融資を受けるための必須条件といえます。

一般に、不動産の融資を受ける際には、まずは自分自身で購入物件の評価査定に必要な登記簿謄本や地積測量図・公図・固定資産税評価証明書などの書類を集め、銀行へ持参し物件評価を出した後、自分自身の融資審査といったように何段階もの審査を受けなくてはなりません。

ただし、販売会社と金融機関が提携している場合には、販売会社が既に金融機関から物件評価を取っていることが多く、自分自身で評価を取らなくても融資が受けられるのです。
また、ノンバンクの中には投資用不動産の融資に対するノウハウを豊富に持っている金融機関もあり、銀行よりもノンバンクの方が、適用金利が低いこともあります。

5.日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は、小規模事業者や中小企業向けの政府系金融機関です。民間金融機関よりも低金利な傾向があり、要件に合えば融資審査のハードルも低いです。ビジネスパーソンでも賃貸経営をする場合に融資してもらえる可能性があります。ただし、日本政策金融公庫はあくまで事業としての貸し出しであるため、返済期間は民間金融機関よりも短く、ビジネスパーソンが新築マンション経営をするには不向きです。

結局のところ不動産投資で選ぶべき金融機関は?

ここまでの内容で不動産投資をはじめるときに融資をしてくれる5種類の金融機関の違いは理解できたのではないでしょうか。このうち、不動産投資の初心者が選択することの多いマンション経営(区分所有)向きなのはノンバンクです。ノンバンクは物件評価を販売会社で受けているため、自分で何度も金融機関に足を運ぶことがなく融資を受けられるので、忙しいビジネスパーソンとの相性が良いでしょう。

不動産投資でよくあるギモン「先に決めるべきは金融機関?賃貸物件?」

「先に決めるべきは金融機関?賃貸物件?」これは、不動産投資家の書籍やネット上などでしばしば話題になるテーマです。不動産投資家の意見でよくあるのは、不動産投資は融資が生命線のため「金融機関の開拓を自身ですべき」というもの。
そのため、以下の3者の金利を比較して融資元を決めれば不動産投資を有利に展開しやすくなるでしょう。
という情報が多いのですが、実際は・・・。

  • 自身で開拓した金融機関→時間が掛かり、その間に買いたい物件が売れてしまう。自分だけの信用力で借りられないため、融資をしてもらえる可能性が極めて低い。
  • 現在取引している金融機関→上記と同じ。
  • 不動産会社で紹介してくれる金融機関→金利も低く、融資が迅速で、手間もかからない。

忙しいビジネスパーソンは自身での金融機関の開拓にこだわらないほうがよいかもしれません。金融機関の開拓は、経験豊富な投資家でも難易度の高いことです。不動産会社から提携している金融機関を紹介してもらうのが得策といえるでしょう。

不動産投資でよくあるギモン「返済期間はどれくらいに設定するべき?」

不動産投資の初心者が融資関連で迷いやすいテーマは「返済期間はどれくらいに設定したほうがよいか」といったものです。一般的な不動産投資ローンの最長返済期間は、30~35年程度ですが最長45年ローンも登場しています。返済期間を考えるうえでは、2つの軸が大切になるでしょう。

毎月の返済の負担を極力減らす

一般的な不動産投資では、新築物件なら毎月の返済の負担軽減、中古物件ならキャッシュフローを重視するケースが多いでしょう。これらを意識するのであれば返済期間を長くするほど有利になります。なぜなら、同じ金額を借りても返済期間が長くなるほど毎月の負担が軽減されるからです。しかし、デメリットとしてローンの残債がなかなか減らないため、将来的な売却や年金対策として完済を目指すのであれば、返済期間の長さが負担となります。
また、表面的なキャッシュフローだけを考えると、後からツケがまわってくるという可能性もあります。

リタイアする年齢までに返済を終わらせる

これは、将来の私的年金づくりのためにマンション経営をする場合に当てはまります。
ただし、定年退職の年齢に合わせてローン期間を短くする必要はありません。
ビジネスパーソンには、人それぞれタイミングは異なりますが、お金のかかる時期とそこまでお金が掛からない時期があると思います。

最初は、現状の自分の生活に負担にならない程度の支払いで持ち、余剰資金が貯まった段階で繰り上げ返済をして、定年退職時までに完済するといった持ち方です。これは繰り上げ返済により、支払金利の総額が減り、完済を目指しやすい取り組み方といえます。
いずれにしても、返済期間の設定は経営戦略の要です。不動産会社のコンサルタントとよく話し合ったうえで設定してください。

「金融機関選び」は不動産投資を成功させるための生命線

たとえ立地や条件で魅力的な賃貸物件と出会えても融資審査に通らなければ意味がありません。また同じ賃貸物件でも金利や返済期間が変われば経営環境は変わります。だからこそ、不動産投資を成功させるには「金融機関選びが生命線」になるのです。自分に合った金融機関を探すと同時に少しでも有利な条件を引き出せるよう交渉していきましょう。 (提供:Dear Reicious Online


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