不動産投資は、不動産という実物資産を用いて資産形成を行う投資方法です。不動産投資には他の投資方法と比較して多くのメリットがあります。一方で、不動産投資のデメリットやリスクも存在します。不動産投資とその他の投資の違いを理解することで、自分の目的に合った投資方法を選択できます。この記事では「不動産投資を行ってみたいけれど、メリットやデメリット、リスクについてあらかじめ知っておきたい」という方のために「不動産投資のメリット」「不動産投資のデメリット(リスク)と対策方法」「不動産投資にはどんなタイプの人が向いているのか」について解説します。

目次
1.不動産投資の9つのメリット
2.不動産投資の5つのデメリット・リスクとそれぞれの対策方法

3.不動産投資に向いている人とは?
4.堅実な資産運用をするために不動産投資を検討しよう

1.不動産投資の9つのメリット

不動産投資,メリット,デメリット
(画像=MonsterZtudio/stock.adobe.com)

この章では、不動産投資のメリットについて説明します。なお、ここでは主にマンションやアパートなどの居住用賃貸物件について説明します(駐車場や商業ビル、太陽光発電などは条件によりメリット・デメリットが少し異なる場合があります)。

この章の先読みまとめ:不動産投資の9つのメリット
【メリット1】安定した家賃収入(インカムゲイン)が得られる
【メリット2】「投資」でありながら融資が使え、レバレッジ効果が期待できる
【メリット3】ミドルリスク・ミドルリターンである
【メリット4】節税効果が得られる場合がある
【メリット5】値下がり率が低くインフレに強い
【メリット6】売却で譲渡益(キャピタルゲイン)が得られる
【メリット7】保険代わりにもできる
【メリット8】現物資産であるため利用方法が複数ある(自分で住むこともできる)
【メリット9】年金代わりにもなる

【メリット1】安定した家賃収入(インカムゲイン)が得られる

不動産投資の最大のメリットといえるのが、長期間安定した家賃収入を確保できることです。所有する賃貸物件(一棟または区分マンションなどの居室)に入居者がいる限り家賃収入が発生するため、物件が生みだす収入=「不労所得」が継続的に得られます。

<参考:不動産投資のインカムゲインとキャピタルゲイン>
株や債券においてはインカムゲイン=おもに配当益、キャピタルゲイン=売却益です。不動産投資ではインカムゲイン=おもに家賃収入、キャピタルゲイン=売却益となります。

なお、不動産投資においては、賃貸経営を始めると管理業務が発生します。自主管理する方法もありますが、管理会社に任せることで、オーナーの負担はかなり減らせます。管理会社に支払う管理委託料は一般的には賃料の5%程度となっています。

【メリット2】「投資」でありながら「融資」が使え、レバレッジ効果が期待できる

不動産投資は名前のとおり「投資」ですが、株、投資信託、金、その他の投資方法と比較してほぼ唯一「融資(ローン)」が使える投資方法です。融資が使えることで、手持ちの資金よりも大きな額の物件に投資することが可能になります。これを「レバレッジ効果」と呼びます。

例えば1,000万円の自己資金だけで不動産を購入しようとすると、1,000万円の物件しか買えないことになります(実際は手数料などが差し引かれます)。1,000万円の賃貸物件では得られる家賃もそれほど多くない可能性が高いといえるでしょう。一方、1,000万円を頭金にして5,000万円の物件を購入した場合、物件そのものの資産価値が高くなるため、得られる家賃は1,000万円の物件より大きくなる可能性が高くなります。

また、融資の返済については毎月の家賃収入を充てることで、オーナーは頭金以外の自己資金を使うことなく、頭金以上の価値の不動産(現物資産)を得られることになります。

【メリット3】ミドルリスク・ミドルリターンである

不動産投資,メリット,デメリット
(不動産投資のリスクとリターンを株式投資などと比較したイメージ図)

投資にはいくつかの種類があり、それぞれにリスクの度合いが異なります。不動産投資は一般的に「ミドルリスク・ミドルリターン」と言われます。

理由として、初期の投資額が株などよりも大きくなること、利益を得るのにある程度長期的な戦略が必要になること、不動産そのものの価格が下がりにくいことなどが挙げられます。「株などのように短期間で大きな収益を上げることは難しいけれど、比較的安定した収益が得られる」「デイトレードなどのように何度も値動きを確認するなどの手間は不要」「預貯金や国債よりは大きな利益を長期間生み出し、オーナー側の運営体制によって、ある程度リスクやリターンをコントロールできる」「売却することができれば、株などのように価値がゼロになることはない」という点で、不動産投資は「ミドルリスク・ミドルリターン」と考えられます。

【メリット4】節税効果が得られる場合がある

不動産投資は相続税、所得税、住民税、その他で節税効果が得られる場合があります。

(1)相続税
相続税は、不動産の場合は時価ではなく路線価(相続税評価額)や固定資産税評価額で評価額が決まります。これらの評価額は、現金の70%~80%程度になることが一般的です。そのため同じ価値の現金よりも、不動産の方がかかる相続税は安くなります。

さらに、貸家建付地(賃貸に出している居住用物件の土地)の場合は、その価額は「自用地としての価額−自用地とての価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合」で算出します。そのため同じ価値の現金と比較して、賃貸マンションや賃貸アパート一棟の場合、同じ価値の現金と比較して最大で60%程度まで課税される価額を下げることができます(空室率などにより計算結果は変動します)。

ほかにも、相続税対策に、不動産は絶大な効果を発揮します。

〔参考〕国税庁:「No.4614 貸家建付地の評価

(2)所得税・住民税
不動産投資で得た利益・損失は、給与所得と損益通算することが可能です。例えばサラリーマンが副業で不動産投資をしており、初年度の決算が赤字になったとします。出た赤字を給与所得と合算して申告することで、課税対象額が小さくなり、所得税が戻ってくる場合があります。

また不動産(建物)には減価償却費の適用があります。毎年、使用するごとに価値が下がっていくとみなし、その価値の減少部分を経費として計上することで、課税対象額を減らすことができます。

【メリット5】値下がり率が低くインフレに強い

不動産は現物資産であり、少なくとも現在の日本では短期間で大きな値動きをすることはありません。土地の価格は毎年3月中旬~下旬に国土交通省が公表する公示地価9月中旬に都道府県知事が好評する基準地価を指標として相続税評価額(路線価)固定資産税評価額が決まります。また時価(土地や建物の取引価格)はこれらの価格と、取引された実績などを参考にして決められます。例えば1,000万円で購入した物件が、1カ月で500万円になるということは、まず通常では考えられません。

実際に、コロナ禍においても土地の価格は商業地などで下落が見られましたが、居住用物件(中古マンションや戸建て)では逆に成約価格はプラスとなり、取引量も増えていることがわかります。

不動産投資,メリット,デメリット
〔画像引用元〕公益財団法人 東日本不動産流通機構「月例速報 Market Watch サマリーレポート 2020年11月度」p1

また不動産はインフレに強いとされています。理由として、インフレになると「物」の価格が上がる=貨幣価値が下がるため、例えば現金(預貯金)や株、債券などの価値は下がります。しかし不動産は現物資産=「物」のため、価格が上がります。インフレのリスクを想定して不動産などの現物資産を一定の割合で保有しておくと、投資を行う上でリスクを分散することができます。

また家賃収入も「金銭」のため、インフレのときには物価の上昇とともに緩やかに上昇する傾向があります。その他、融資による借入金の価値も下がるため、実質的に借金が減ることになります。

〔参考〕国土交通省:土地総合情報システム>「国土交通省地価公示・都道府県地価調査

【メリット6】売却で譲渡益(キャピタルゲイン)が得られる

不動産の価格は株などのように短期間で大きく下落することはないため、購入から期間が過ぎても、売却によって一定の現金に換えることができます。立地条件が良く購入時より人気が出た場合などは、購入時の価格よりも売却価格が上回り、売却益(譲渡益)を得ることもできます。

ただし、譲渡所得が発生した場合は所得税の支払いが必要になるため、確定申告などに注意が必要です。

【メリット7】保険代わりにもできる

不動産投資ローンに団体信用生命保険(団信)が付帯されている場合、生命保険の代わりとすることもできます。団信は、契約者(オーナー)が亡くなるなど万が一の場合に、保険会社がローン残債を弁済してくれます。そのため家族に、ローンの返済がない不動産を遺すことができます。

なお、すでに加入している生命保険を解約して団信のみにするかどうかは、契約内容をよく確認してから決定してください。

【メリット8】現物資産であるため利用方法が複数ある(自分で住むこともできる)

不動産は現物資産のため、賃貸物件として以外に、例えば自分で住むことも可能です。例えばサラリーマン時代に一棟マンションを購入しておき、定年後はローン返済が終わったそのマンションの一室に老夫婦だけで住んで、元の家は子どもに譲ることもできます。

【メリット9】年金代わりになる

老後の年金問題や、老後のための資金がいくら必要かなど昨今話題になっています。不動産投資により賃貸物件を所有することで、老後も安定した家賃収入が得られるため、年金に加えて生活費が手に入り、余裕のある老後の生活がおくれます。

2.不動産投資の5つのデメリット・リスクとそれぞれの対策方法

この章では、不動産投資のデメリット、リスクと、その対策方法を説明します。不動産投資のデメリットは、対策をすることで回避または軽減できることが多いため、あらかじめデメリットやリスクを理解しておくことが重要です。

【デメリット1】不動産投資最大のデメリット、空室リスク

不動産投資(賃貸経営)は入居者の家賃収入でローン返済を行うため、家賃収入が減ると自己資金を持ち出すことになります。そのため空室率を下げ、可能な限り満室経営を行うことが必要です。

<対策>
実際には常に満室にすることは難しいといえます。そのため、オーナーは管理会社などに客付けを依頼するなど、空室リスクに備える必要があります。また、立地条件の良い人気のある土地を選ぶ、交通の便がよく最寄り駅までの時間がかからないなど、物件を選ぶ場合に十分に検討しなければなりません。

また家賃設定は、周辺の競合物件を十分に調査してから決定しましょう。高すぎると入居者が集まらず、安すぎると利回りが低下するため長期的に経営が苦しくなりかねません。

不動産投資のノウハウをもった建設会社や不動産会社に依頼することで、これらの条件がそろった物件を購入・建築できます。

【デメリット2】物件の老朽化などに応じて修繕費用がかかる

建物は年月とともに老朽化するため、定期的なメンテナンスが必要になります。また日頃の管理状況も、長い目で見たときに建物の劣化に影響があります。日々の細かな管理点検と、定期的なメンテナンス、一定期間ごとの大規模修繕が必要です。その分、費用がかかることを念頭に置いておかなければなりません。

<対策>
長期的な修繕計画を初期から立てて、いつどの程度の修繕費用が必要か、あらかじめ計算し、毎月の家賃収入から修繕費用をプールしておきましょう。また購入の際に、物件の耐震性や耐久性について十分確認しましょう。

【デメリット3】立地選択ミスなどにより物件価格が下がることがある

すでに説明したとおり、不動産は短期間で劇的に価格が下がることはまずありません。しかし、立地が良くない場合や社会情勢の変化などにより、物件価格が下がってしまうことがあります。売却しようとしたら購入時より価格がかなり下がってしまった、ということもあり得ます。

<対策>
購入前(土地がある人は建設前)に、立地条件と、物件とターゲットのニーズが合っているかをあらかじめ調査しましょう。

【デメリット4】金利上昇リスク

投資用物件をローンで購入する人がほとんどでしょう。ローンは、金利が上昇すると支払額が増えます。そのため金利の上昇によって収支が悪化することがあります。

ただし、現在の日本は超低金利政策をとっており、突然に金利が大きく上がることは考えにくいといえます。また、変動金利でローンを組んでいる場合でも、市場金利がそのままローンの金利にすぐ反映されるわけではありません。

  • 金利は半年ごとに見直されるが、毎月返済額の見直しが5年ごと
  • 5年以内に金利が上がると6年目から毎月返済額が上がるが、従来の返済額の1.25倍までしか増えない(ただし利息は金利に合わせて増える)

<対策>
最初から固定金利を選ぶ方法があります。ただし、固定金利は変動金利よりも高く設定されていることが多いです。

また借入金を少なくし、返済期間を短くすることでリスクを回避できますが、毎月返済額が増えるため、将来的に支払いが継続して可能かどうかをシミュレーションして設定しましょう。

【デメリット5】入居者とのトラブルのリスク(家賃滞納や訴訟など)

入居者によっては、慢性的に家賃滞納する、隣や上下階の住民とトラブルを起こす、物件の設備を破損・汚損するなど、問題のある場合もあります。特に家賃滞納はローン返済に関わってきます。また自主管理を行っていると、問題のある入居者と直接オーナーが交渉に当たらなければならないため、精神的なストレスもかかります。

<対策>
管理会社に管理を委託して、オーナーは入居者と直接交渉などを行わないようにします。また入居者審査を客付けの際に十分に行い、問題のありそうな人は審査を通さないことも必要です。ほかに、連帯保証人だけでなく家賃保証会社による保証をつける方法も、昨今では一般的になっています。家賃保証会社のサービスによっては、入居者と裁判になった場合や孤独死などの対応も行ってくれるケースもあります。

3.不動産投資に向いている人とは?

不動産投資はメリットが大きく、初心者でも比較的参入しやすいとされています。しかし、誰にでも簡単にできるというわけではありません。物件を購入すれば儲かるというわけではなく、ある程度「賃貸経営を行っている」という視点が必要になります。ここでは不動産投資に向いている人について説明します。

(1)株のように頻繁に値動きを気にする投資は難しい人

株のように頻繁に値動きを気にする投資は常に相場を見ていなければなりません。そのため、時間がなく忙しい人には不動産投資が向いています。

不動産投資は管理会社に管理や修繕、入居者対応などを任せてしまえば、オーナーの負担はそれほど大きくありません。また株のように大きく値動きすることがないため、頻繁に相場をチェックしたり、売却したりという手間もかかりません。

(2)実物運用で着実に目に見える形で資産を増やしたい人

現物資産のため、自分の資産であるという実感がもてます。また入居者が増えていくことで家賃収入が増えるため、目に見える形で資産形成が行えます。

(3)自分である程度リスクやリターンを見極めて投資したい人

例えば、空室リスクは、ある程度オーナーの努力で改善することが可能です。入居者の目線で室内の設備をきれいにしたり、無料Wi-Fiを設置して利便性を上げたりと、工夫することである程度リスクやリターンをコントロールできます。

また株などは世界経済の動向などに大きく左右されますが、不動産は価値の下落があっても幅は比較的小さいといえます。ほかに、傾向として人が集まりやすい土地や建物は、調査すればある程度知ることができるので、立地や条件のよい土地、建物を根気よく探すことでリスクを下げることも可能です。

(4)長期的な視点で資産運用を考えている人(規模拡大には時間がかかることを納得出来る人)

不動産投資は、短期的に大きな利益を得る投資方法ではありません。規模拡大には一定の時間がかかります。そのことを理解したうえで、長期的に資産を拡大していく目標をもって行える人に向いています。

堅実な資産運用をするために不動産投資を検討しよう

この記事では不動産投資のメリットと、デメリットやリスク、どういう人に向いていて成功しやすいかについて説明しました。

不動産投資は以下のような特徴があります。

株などのように短期間で大きな収益を上げることは難しいが、比較的安定した収益が長期間得られる

  • デイトレードなどのように何度も値動きを確認するなどの手間は不要
  • 預貯金や国債よりは大きな利益を長期間生み出し、オーナー側の運営体制によって、ある程度リスクやリターンをコントロールできる
  • 売却することができれば、株などのように価値がゼロになることはない

9つのメリットと5つのデメリット(リスク)をおさえることで、着実に資産を増やせるのが不動産投資です。先行き不透明な社会情勢、リスクを分散し堅実に資産運用するために、不動産投資を検討してみてはいかがでしょうか。(提供:YANUSY

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