特集『withコロナ時代の経営戦略』では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続く中での、業界の現在と展望、どんな戦略でこの難局を乗り越えていくのかを、各社のトップに聞く。

前身の有限会社星工務店から社名を変えて、1996年に設立されたスターホーム株式会社は、神奈川県の葉山、逗子、鎌倉エリアを中心に注文住宅事業や賃貸住宅事業を展開する。北米スタイルの高いデザイン性、地震・台風などの災害に強い構造、エネルギー効率の良い家づくりが支持され、年間約20棟を手掛けている。2018年からは新規事業として、障がい者を支援するグループホーム「セラヴィ」をスタートさせ、民泊事業にも着手。スターホームは代表取締役の星武司さんを筆頭に、精力的な活動を続ける。

(取材・執筆・構成=不破 聡)

スターホーム株式会社
(画像=スターホーム株式会社)
星 武司(ほし・たけし)
スターホーム株式会社 代表取締役
1968年神奈川県生まれ。
1989年に地元横浜の中堅ゼネコンに入社。2000年に家族が経営するスターホーム株式会社に移り、専務取締役就任、2004年に代表取締役に就任した。現在、神奈川県倫理法人会・会長を務める。

2つの理由から新規事業「セラヴィ」を立ちあげる

――2018年から障がい者支援グループホーム「セラヴィ」を新たな事業として立ちあげました。

現在、横須賀、藤沢、平塚に建設し、運営を開始しました。障がい者の自立に向けた共同生活を営む施設です。当初は建設と運営を両輪で走らせる事業を計画していました。ところが、すでに完成した施設や建設計画を立てた事業者から、運営だけをしてほしいという依頼が続々と入って50件にも達し、このうち10施設の運営が決まりました。当初の計画では事業の立ちあげから3年で30棟の建設と運営を想定していましたので想定外の展開です。

事業規模拡大だけを目指すのであれば、無理をしてでもすべての案件を請けるところです。しかし、当社は建築を本業としてきた会社です。その数に対応できるだけの人材やノウハウが今の段階だと十分とは言えません。確実に入居者のケアやサポートができる自信が持てた施設だけを先行して請けさせていただきました。

――グループホーム事業を立ちあげた経緯は?

社会貢献をしたいという私自身の強い想いと、レッドオーシャン化した住宅の建築販売とは異なる事業を推進したいという企業戦略の2つの側面があります。私の身内に自閉症の子どもがいます。彼らと触れ合ううちに、社会に出て活躍できる場を提供したいと考えるようになりました。また、障がいを持つ方の家族の身体的、心理的な負担の大きさも実感しました。その2つを総合的に解決したい。それがグループホーム「セラヴィ」に結実しました。

建築業界は少子化が進んで競争が激しくなっています。当社は逗子や葉山で事業展開しているため、価格競争には巻きこまれにくいエリア特性があります。しかし、この先も安泰かというとそうでもありません。経営戦略としては、住宅や賃貸以外の事業への進出が必要になります。グループホームはブルーオーシャンで戦う事業の1つになります。

建築そのものの参入障壁はさほど高くありません。その一方で、ケア施設の運営ができる組織を構築するのは、長い時間がかかります。時間がかかる分、参入障壁が高くなります。そのため、先行者優位になりやすいと考えています。

――厚生労働省の調査では、2015年時点での障がい者就労支援施設数は327で、5年間でおよそ50施設増加しています。

障がい者の就労意欲が増し、家族もそれを応援する姿勢が強くなっています。この傾向は今後も続くでしょう。さらに、競争が激化する建築業界で、社会福祉施設建設に乗り出す事業社も多くなりました。需要と供給がうまくかみ合っていると感じています。ただし、施設の運営はそれに追いついていないのが実情です。

当社の一番の課題は、グループホームで働くスタッフの獲得と育成です。2021年は組織づくりに向けて、これまで以上の努力が必要になりそうです。幸いにも会社の企業理念や戦略に共感するスタッフが多く、畑違いの事業にも積極的に関わってくれています。人には恵まれていると感じています。

スターホーム株式会社
今後はスタッフの獲得と育成に一層力を注ぐ(画像=スターホーム株式会社)

逗子、葉山、鎌倉エリアの注文住宅が増加

――新型コロナウイルスの感染拡大で住まいの都市部集中型に変化が生じました。

逗子、葉山、鎌倉エリアの注文住宅は非常に好調です。通常の売上は10億円前後ですが、コロナ禍での売上は13億円に届きそうです。相談に来た人たちに話を聞くと、リモートワークの頻度が増えたことや、密になりやすい都市部を避ける目的で、都心のマンションではなく、郊外の家に住みたいと。

コロナ前に都市部のタワーマンション購入を予定していた人たちは、資金が豊富で邸宅へのこだわりが非常に強いです。その期待に応える家を作り、顧客満足度が上がって、結果的に単価が上がるというケースが非常に多くなりました。葉山というブランド力がある場所が、人を呼んだという側面もあると思います。その点ではこの場所で商売をしてきた強みが発揮できました。

――葉山の住宅メーカーの中でも、高いデザイン性が集客フックになっているのではありませんか?

ホームページを見て訪ねてくれる人が多いですが、やはり北米風のデザインに惹かれたという話をよく聞きます。当社は家としてのデザイン性と、周辺環境になじむ外観や造りの双方を加味して設計しています。奇抜な家は誰にでも作れますが、街全体にフィットするものを提案するのは難しい。そこに共感を覚えてもらえるとうれしいですね。

――自然災害に強い構造も特徴の1つです。

かつては北米の輸入住宅を手掛けていました。その中で最も気をつけたことが構造体としての強さです。日本とアメリカで起こる自然災害は質が全く異なります。地震や水害に強い構造を長年研究し、日本で長く住むための家が完成しました。また、耐火性能に長けていることもポイントの1つです。火災が起こったときに、少しでも長く家が崩壊しないようにする。それが家族を守る家の役割であると考えています。

――10年後まで定期点検をするアフターサービスも充実しています。

家が完成してから1年、2年、5年には瑕疵担保保険会社の検査員が訪問し、屋内外の細かな部分をチェックします。そこで何かが見つかれば、補償基準に応じたメンテナンスを実施しています。

10年目は当社のスタッフが訪問して点検を行い、必要なメンテナンスを行っています。私は家を建てることがゴールではないと思っています。その中で家族が暮らし、それぞれの人生を作ってゆく。その空間づくりのお手伝いです。当社とご家族の関係はできるだけ長いほうが良いと考えています。社員たちは“ビス(建築部品)1本から締めにうかがう”という信念のもとで対応しています。こうした姿勢が住む人に喜びを与え、それが結果的に良い評判となって新たな顧客開拓につながります。

――民泊事業も開始し、新たな事業展開に余念がありません。

北鎌倉に古民家風の宿泊施設をオープンしました。コロナで旅行業界が停滞していますが、星野リゾートが提唱する3密を避けながら近場で過ごす旅のスタイル「マイクロツーリズム」の需要は大きいと考えています。鎌倉は公共交通機関を使わず、気軽に車で来られますし、歴史や文化に彩られた街です。家族のちょっとした思い出作りに活用してほしいですね。

また、葉山の本社をキャンプ場としても開放しています。たき火ができ、電源やWi-Fi環境も整っています。都心の人だけでなく、地元の住人たちの利用も多くなっています。この場所に人が集い、街を活性化させるのも当社の仕事の1つと捉えています。グループホームもそうですが、これからは社会に貢献できる事業を成長させたいですね。