特集『withコロナ時代の経営戦略』では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続く中での、業界の現在と展望、どんな戦略でこの難局を乗り越えていくのかを、各社のトップに聞く。

首都圏では投資用マンション「メインステージ」とファミリー用マンション「ランドステージ」でおなじみの株式会社青山メインランド。その青山メインランドを母体に、2014年に全国展開の足がかりとして大阪に設立されたのが株式会社メインランドジャパンだ。7年の歩みを振り返り、グループ内に東京と大阪の2つの拠点を持つことのメリットや、新型コロナウイルス感染拡大の影響と対策についてうかがった。

(取材・執筆・構成=松本智佳士)

株式会社メインランドジャパン
(画像=株式会社メインランドジャパン)
山下 啓樹(やました・ひろき)
株式会社メインランドジャパン代表取締役社長
1970年神奈川県生まれ。
金融コンサルティング会社経営を経て、2003年株式会社青山メインランド入社。同社営業本部長、執行役員を経て、2018年2月に株式会社メインランドジャパンの代表取締役社長に就任。

空室率1%を維持できる立地へのこだわり

――2014年、株式会社青山メインランドを母体に全国展開の足がかりとして大阪を拠点に株式会社メインランドジャパンを設立しました。

当時、東京では地価や建築代金が高騰しており、用地取得の問題がありました。青山メインランドの物件自体は東京が中心でしたが、お客様は沖縄から北海道まで全国にいらっしゃるということもあり、関西圏に拠点を置いて全国展開をしようという狙いがありました。現在、大阪のお客様が7割ほどで、西日本を中心に全国で営業活動を行っています。

ただ物件に関しては、東京の物件を主として販売してきました。というのは設立当初、関西圏はそれほど地価が高騰していなかったので、そこにビジネスチャンスを求めてやってきたのですが、その後インバウンド需要が高まり海外の方が関西圏にも集中するようになって、地価がものすごく高騰したのです。しばらく関西での用地の仕入れがストップするような状況で、むしろ東京のほうが割安に感じられるというのが東京の物件を主に扱ってきた理由です。ですが最近では、新型コロナウイルス感染拡大の影響で地価の市況感が逆転し、関西圏でも用地の仕入れに積極的に取り組むようになってきました。

――不動産販売だけでなく、トータルライフプランニングを掲げています。

東京の青山メインランドでは、ファミリーマンションや戸建ての販売なども手がけていることから、実需としてご利用いただくお客様もいらっしゃいます。さらに賃貸管理の物件も手がけているため、不動産の売買や建物の管理も含めて、住まいに関することならワンストップでサービスを提供できるというノウハウがありました。当社もそれを受け継ぎ、金融や不動産についての豊富な知識と経験をもとに、ライフプラン上の課題についてのコンサルティングサービスを提供しています。具体的には、賃貸物件に入居されている方から、投資物件や居住用の物件を探しているというご相談をいただいて実際にご購入いただいたケースや、逆に投資用物件のオーナー様から居住用の物件を探しているというご相談もいただいています。

――資産運用型マンション販売における強みをお聞かせください。

とにかく賃貸需要があるエリアに特化した物件というのがポイントです。平均すると主要駅から徒歩6分圏内というロケーションにこだわって分譲しています。投資用物件の中心となる単身者の方がお住まいになる都心のワンルームでは、やはり立地感が大事になります。また、建物の仕様についても、ハイグレードを目指すのではなく「上質なスタンダード」というのをベースにしています。なぜならば投資家目線で見た場合に、あまりにも設備が豪華になってしまうと、修繕トラブルなどがあった場合にコスト増につながります。そのようなコストを抑えることもコンセプトの1つです。

賃料設定についても、そのエリアにおける相場が当然ありますので、必ず入居者が借りるであろう最適賃料を目指しており、それが空室率を下げることにつながっています。2019年度までは空室率1%を下回っていたのですが、現在はコロナ禍の影響で1.4%程度になっています。外国籍の方が母国に帰国されたり、学生の方がオンライン授業中心となり実家に帰られたりしたことで、空室が増えました。ただ、当社の場合99%がサブリース契約ですので、空室になった場合でも安定して家賃収入が得られます。

またサポート面では、オーナー様のファイナンシャルリテラシー向上のためのセミナーを開催したり、四半期に一度会報誌をお送りして、お客様との結びつきを強化し、信頼関係を築くように努めています。我々は販売して終わりではなく、物件管理というアフターフォローが必要になりますので、長いお付き合いをいただけるよう努力は欠かしません。

そして、人材育成にも投資しています。ただ単に販売して利益を求めるような、マンションの販売員を育てたいとは思っておらず、不動産をとおした「住まうことのスペシャリスト」になってもらいたいと考えています。外部研修や資格取得などを含めて、不動産スキルやコミュニケーションスキルを磨いてもらっており、従業員満足度の向上、さらには顧客満足度の向上につながっていると自負しています。

メインステージ両国Ⅲ
メインステージ門前仲町II
メインランドジャパンが販売したメインステージ両国Ⅲ(上)とメインステージ門前仲町II(下)(画像=株式会社メインランドジャパン)

関西圏でもファミリーマンション販売へ

――青山メインランドグループの一員であることのメリットは?

青山メインランドは創業32年という歴史があり、首都圏で320棟超、約2万室の物件を供給してきた実績があります。グループの中に首都圏と関西圏の両方に拠点があることで、双方にとってメリットがあると感じています。用地の仕入れはもちろん、仕事で転勤になったお客様にも住まい探しなどサポートできる部分は多いです。

――新型コロナウイルス感染拡大の影響はどうでしょうか。

一時、空室率が2%程度までに上昇しましたが、立地の優位性に助けられ、空室率が拡大せず正直ほっとしています。物件の内覧に関しても、3年ほど前からVRなどの活用を真っ先に導入していたおかげで、慌てて何か対策を取ったということもありませんでした。商談に関しても、以前から遠方のお客様にはお電話にて商談するスタイルを確立していましたので、今回のコロナ禍でも違和感なくWeb交渉に移行でき、直接表情なども拝見できるようになってより良くなったと感じています。

――今後の目標や達成に向けてのアクションプランついてお聞かせください

コロナ禍の影響があっても東京の都心部では地価がほとんど下がっていません。そのため、関西では用地の物件情報が非常に増えており、コロナ禍を危機と捉えるのではなくチャンスと考えて積極的に用地の仕入れを展開していきたいと思っています。首都圏、関西圏の両方に拠点があるグループの強みを活かして、仕入れの強化につなげていきたいですね。また、これまでは投資用物件の販売会社という位置づけでしたが、中期事業計画を策定している中で、今後は関西圏においてもファミリーマンション販売へ事業内容を広げていきたいと考えています。

公的年金が将来不安視されている中で、不動産投資の認知度も高まっています。また、高齢化社会が進むと一人暮らしをする高齢者の住宅需要も高まっていくと思われます。我々の社会における役割も大きくなることから、より正確な情報やサービスの提供に努めてまいりますので、有利な立地と適正な賃料の物件を見極めてお客様にも安心な資産を築いていただけたらと思います。