「お金がない……」と不安に思う方は少なくありません。しかし、お金に関する知識があれば、不安を解消できることもあるでしょう。

本記事では、よくあるお金の不安について、どのように考えればよいのか、また不安を解消するための知識をご紹介します。

みんなはどう思ってる?お金に不安がある方の割合

お金がない,不安
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

私たちの生活に欠かすことのできない「お金」について、多くの人はどう思っているのでしょうか。日本FP協会の「くらしとお金に関する意識調査2020」から確認してみましょう。

全体の約6割がお金の不安を抱える 心配がない方が少数派

日本FP協会によると、現在や将来のお金について不安を抱える方は、全体の5~6割程度いらっしゃるようです。特に、現在よりも将来について不安を抱える方が多いようです。

【お金に関する不安がある方の割合】

現在 将来
収入の不安 59.3% 66.6%
支出の不安 52.9% 59.6%
預貯金の不安 56.2% 62.9%

不安解消の情報を知りたい方も6割 不安を解消しましょう

同調査では「不安を解消する情報があれば知りたいか」についての調査も実施しており、こちらも全体の5~6割の方が情報を知りたいと回答しています。

【お金の不安を解消する情報があれば知りたい方の割合】

現在 将来
収入の不安 58.6% 63.5%
支出の不安 55.3% 60.3%
預貯金の不安 56.8% 60.6%

お金に対して不安になったらどうすればいい?

では、お金に対して不安になったらどうすればよいのでしょうか。

不安なのは「知らない」から お金の知識を身につけましょう

お金についての不安を解消する1つの方法が「知ること」です。

お金の問題を解決するためにできることは、何かしらあるでしょう。しかし、お金の知識やその方法を知らないと「解決できない」と思い込んでしまい、途端に不安な気持ちにとらわれてしまいます。

不安を解消するためにも、まずはお金の知識を身につけましょう。

どんなことが不安なのか、明確にすることが大切

お金の知識といっても、たくさんの種類があり、やみくもに身につけるのは非効率です。

また、悩みを解決するためには、「自分がどのようなお金の不安を持っているか」を明確にすることが大切です。

最も避けるべきケースは、「なんとなく不安」という状態です。これでは対策が難しく、なかなか不安から脱することができないでしょう。

次章から、よくあるお金に関する不安についてご紹介します。以下を参考にしながら、自分がどのような不安を抱えているか、それに対してどのように解決すべきかを明らかにしていきましょう。

お金に関するよくある不安1:収入が少なくて不安

まずは「収入が少ない」という不安を持つ方に役立つ知識をご紹介します。

自分の収入を把握する

漠然と「自分は、収入が低い」と考える前に、平均はどれくらいなのか、平均に対して自分の収入は低いのか高いのか客観的に把握しましょう。国税庁の「令和元年分 民間給与実態統計調査」によると、2019年の平均給与は以下の通りでした。

【平均給与(2019年)】
436万円(年額)

収入に不満なら転職や副業を検討

仕事は給与だけで判断すべきことではありませんが、平均も踏まえた上で収入が低いと考える人は、スキルアップやキャリアチェンジに取り組んで転職することを検討したいところです。

また、副業も選択肢のひとつです。勤め先の就業規定で副業が禁止されている場合は注意が必要ですが、収入の増加が期待できます。

ただし、一般的に若いうちは収入が低いものですから、全体の平均に届かないのも無理はありません。

平均に近い収入を得ているのに「お金がない」と不安に感じる人は、収入が少ないのではなく、収支のバランスがとれていない可能性が高いので、家計を見直す必要があるでしょう。

お金に関するよくある不安2:家計が赤字で不安

次に、「家計が毎月赤字で不安」という方に役立つ知識をご紹介します。

家計簿を付け、赤字の原因を解決しましょう

家計が赤字になる方の多くは、生活費の収支を把握できていないケースが多いでしょう。簡単にでも「家計簿」を付け、収入に対する支出や割合を見直しましょう。

支出の見直しは、大きな支出から見直すと効率がよいです。家賃や通信費など、比較的大きくなりがちな固定費から見直してみましょう。

家計簿アプリが便利

手書きの家計簿でもよいですが、面倒なら「家計簿アプリ」を利用してみましょう。自動的に家計簿を作成してくれるので便利です。

お金に関するよくある不安3:老後のお金を用意できるか不安

続いては、「老後のお金」について不安がある方に役立つ知識をご紹介します。

老後の収入と支出の平均

老後にはどれくらいのお金が必要となるのでしょうか。2020年に行われた家計調査によると、65歳以上の収入と支出の平均は以下のようになりました。

【65歳以上 ひと月あたりの収入と支出の平均(無職・2人以上世帯)】
実収入:26万6,056円
実支出:26万3,662円

平均では収入と支出がほぼ同じ水準となり、年金などの収入で生活できている様子がうかがえます。

老後にいくら必要か計算

上記は、あくまで平均的な老後の生活の収支です。自分のケースではどうなのか、今から想定しておきましょう。

老後の収支を想定する場合、大切なのは収入の把握です。「公的年金」と「退職金」について把握しましょう。

・老後年金の平均と計算方法
日本年金機構によると、老齢厚生年金に加入し、平均的な収入で40年間就業した場合、1人あたりの年金額は以下のようになります。

【サラリーマンが老後に受け取れる年金の平均】
186万6,996円(年額/2020年度)

大まかに、月に15.6万円程度の年金が受け取れるようです。日本年金機構の「年金見込額試算」で年金額のシミュレーションができるので、自分の年金額がいくらになるか把握しておくとよいでしょう。

・会社の退職金制度を把握
お勤めの会社に退職金制度がある場合は、それも老後の生活費に充てられます。人事部など、退職金の窓口に問い合わせてみましょう。

老後のお金なら「iDeCo(イデコ)」がおすすめ

老後の収支に不足が想定される場合、老後用の貯蓄を進めましょう。老後資金の備えには「iDeCo」がおすすめです。

iDeCoは、60歳になるまで掛け金を拠出し、60歳以降にお金を受け取れる私的年金の制度です。60歳になるまで、原則としてお金を引き出せないので、確実に老後のお金を貯められます。

ポイントは、掛け金のすべてが「所得控除」となる点で、節税しながらお金を貯められるのが最大の魅力です。

お金に関するよくある不安4:将来のお金が足りるか不安

ここでは将来のお金について、特に「教育費」と「介護費用」について不安を抱える方に役立つ知識をご紹介します。

教育費

まずは「教育費」について、平均的な費用と公的な助成をご紹介します。

・平均的な費用
生命保険文化センターによると、大学4年間の授業料や生活費(下宿の場合は自宅外通学を始めるための費用)の合計は以下のようになりました。

【大学4年間の教育費】

自宅・下宿の別 教育費
国立 自宅 527.9万円
下宿 825.9万円
私立文系 自宅 688.3万円
下宿 977.9万円
私立理系 自宅 824.3万円
下宿 1,113.9万円

いずれも自宅より下宿の方が、また国立より私立の方が大きな費用になっているようです。

・「国の教育ローン」や「奨学金」 低金利でお金を用意できる
教育費の場合、「国の教育ローン」や「奨学金」が利用できます。いずれも比較的低い金利でお金を借りられる制度です。

【「国の教育ローン」と「奨学金」の金利】
国の教育ローン:1.68%(2021年3月8日時点)
奨学金(JASSO):0.268%(2021年3月の貸与終了者)
(奨学金は「利率固定方式」の「基本月額部分」)

教育費を自己資金で用意できない場合、これら公的な制度を利用してみるとよいでしょう。

介護費用

次に「介護費用」について、平均的な費用と公的な助成をご紹介します。

・平均的な費用
生命保険文化センターによると、介護にまつわる平均的な費用は以下のようになりました。

【介護費用の平均】

一時的な費用の平均 69万円
月額の平均 7.8万円
介護期間の平均 54.5ヵ月
合計 494.1万円

教育費と同じく、少なくない負担が発生しているようです。

・「介護保険」 国の支援制度
介護や支援が必要な状態になると「介護保険」から支援を受けられます。所定の介護サービスの費用を、自己負担1~3割で利用できます。

介護保険による保障を受けるためには、まずは市区町村の窓口で「要介護」または「要支援」の認定を受ける必要があります。自動的に支援を受けられるわけではないので気を付けましょう。

お金に関するよくある不安5:病気やケガの治療費や生活費が不安

加えて、「病気やケガの治療費や生活費」が不安な方に役立つ知識をご紹介します。

公的医療保険で自己負担は3割 大きな負担は発生しにくい

基本的に私たちはなんらかの公的医療保険に加入しています。これにより、私たちが自分で負担する金額は、総医療費の3割程度に抑えられます。

【公的医療保険 自己負担の額】

一般・低所得者 現役並み所得者
75歳以上 1割負担 3割負担
70~74歳 2割負担
6~69歳 3割負担
義務教育就学前 2割負担

・「高額療養費制度」 一定以上の自己負担が出ない仕組み
医療費が高額だと、3割負担でも家計に与えるダメージは大きくなってしまいます。そういった事態を防ぐのが「高額療養費制度」です。

高額療養費制度は、3割負担とは別に「自己負担限度額」を設け、これを超える金額が申請により払い戻しされる制度です。自己負担限度額は所得に応じて変動し、所得が少ないほど自己負担限度額が小さく有利になります。

・「傷病手当金」 休職中の収入減を補う制度
病気やケガで4日以上会社を休み、収入が一定以下になってしまった場合、「傷病手当金」を受け取れます。

受け取れる額はおおむね給与の3分の2で、最長1年半受け取れます。支給には所定の要件がありますが、覚えておきたい制度です。

お金に関するよくある不安6:奨学金など、借金を返済できるか不安

最後に、「借金の返済」について不安を抱える方に役立つ知識をご紹介します。

計画性が大切 きちんと返済できるなら怖くない

借金を考える場合、まずは「毎月の返済額」を把握しましょう。いくら低金利でも、毎月の返済額が大きいと返済できないケースが考えられます。

借金の毎月の返済額が大きい場合、ローン会社などと返済計画の見直しについて相談しましょう。奨学金の場合、「返還期限猶予」の制度を活用するのもよいでしょう。

高金利の借金は「おまとめローン」でまとめて返済

貸金業法上、借り手に一方的に有利な借り換えになるローンを「おまとめローン」といいます。借り換え前より、金利や毎月の返済額が小さくなるローンとして定められています。

比較的金利が高い借金を利用している場合、おまとめローンでまとめて返済するとよいでしょう。

どうしても返済が難しいなら「債務整理」

どうしても返済できない場合、法的に返済の免除や猶予を行う手続きを「債務整理」といいます。

最後の手段ともいえる債務整理ですが、どうしても返済できない場合はきちんと手続きし、生活再建を目指しましょう。

どうしても「お金がない」と不安に思う方へ

ここまで、よくあるお金に関する不安について、さまざまな角度から心配事を解消できる知識をご紹介してきました。それでも、どうしてもお金がないと不安に思う方もいらっしゃるでしょう。

どうしてもお金がないと不安に思う方にお伝えしたいのは、「お金は人生の道具でしかない」という点です。お金について深刻に考えこまず、自分が実現したいことを明確化し、それに対する不足金に淡々と対応しましょう。

文・若山卓也(ファイナンシャルプランナー)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業、保険募集代理業、金融系ライターとして活動しています。関心のあるジャンルは資産運用や保険、またお得なポイントサービスなど。お金にまつわることなら幅広くカバーし、発信しています。AFP、プライベートバンキング・コーディネーター資格保有。

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