特集『withコロナ時代の経営戦略』では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続く中での、業界の現在と展望、どんな戦略でこの難局を乗り越えていくのかを、各社のトップに聞く。

株式会社Lib Work は、1974年に熊本県山鹿市で創業した瀬口工務店から始まった。当初個人事業として営まれていた工務店は、1997年に有限会社、2000年には株式会社へと発展していく。2004年には社名を株式会社エスケーホームに変更し、工務店は住宅メーカーへと本格的にシフトした。Webマーケティングを集客に活用した同社は、2015年には福岡証券取引所に上場。2018年には現在の株式会社Lib Workへと社名を変更し、2019年には東証マザーズへと上場する。「Webマーケティングをコアコンピタンスとする住宅テック会社」を目指し、今も事業拡大を続けている。

(取材・執筆・構成=長田小猛)

株式会社Lib Work
(画像=株式会社Lib Work)
瀬口 力(せぐち・ちから)
株式会社Lib Work代表取締役社長
1973年熊本県生まれ。熊本大学大学院法学研究科修了。
1999年、大学院在学中に創業者である父の急逝に伴い、Lib Workの前身である瀬口工務店に入社。翌年には代表取締役社長に就任した。大学院では商法ゼミに在籍するなど、法律や企業買収を専門としており建築は全く学んでいなかったが、企業経営者として手腕を発揮。Webマーケティングを武器に、2019年には株式会社Lib Workを東証マザーズへ上場させた。

工務店から住宅メーカーへ、そして生活創造企業へ

――瀬口工務店からエスケーホーム、現在のLib Workと、会社は名前を変えながら発展してきました。

父の急逝で私が実家に戻った頃の社名は瀬口工務店でした。すでに住宅建築を手がけてはいましたが、まだまだ業態は工務店然としていました。まずはこれを変えるために社名をエスケーホームに変更し、社内外の意識を「工務店から住宅メーカーへ」と本格的にシフトさせました。結果としてエスケーホームは福岡証券取引所に上場、私はこれが第二創業期だと思っています。

また、当時はインターネットの力がどんどん大きくなっていた時期で、当社はこれをフル活用することに決めました。そして住居だけでなく暮らしに関すること全般に取り組む「生活創造企業」を目指すべくLib Workに社名を変えました。Libはリビングを表し、生活に関わるネットワーク全体に関わっていくため、ドメインを広げる意味を込めてLib Workとしました。2019年には東証マザーズに上場することができ、言ってみれば、今は第三創業期ですね。

――「Webマーケティングをコアコンピタンスとする住宅テック会社」をというビジョンを掲げられていますね。

当社は、インターネットのポータルサイトを通じてお客様からお問い合わせをいただくことが多いのです。営業パーソンはおりますが、業務のほとんどはコンサルティング。集客のためのアプローチはほぼ行っていません。お客様は、当社が運営しているポータルサイトから自社サイトにいらっしゃいます。当社は土地情報検索サイトの「e土地net」や、平屋住宅を検索する「e平屋net」など、6つのポータルサイトを運営しています。大切なことは当社の住宅を押し売りするのではなく、お客様のニーズから入ることですね。これはコストダウンにもなります。

――近隣にはモデルハウスもご用意されていますね?

福岡、佐賀、大分にモデルハウスを設置しています。以前は当社で住宅建築をされたお客様のご自宅で見学会を開催していたのですが、機会損失もあることから2016年以降モデルハウスを充実させています。福岡では昨年、イオンモール内にモデルハウスを作りました。お買い物のついでに来ていただくこともできますし、建物内なので天候にも左右されません。商談のクロージングには、やはりモデルハウスが必要です。住宅は見ずには買っていただけませんからね。

イオンモール内にあるsketchモデルハウス福岡かすや店
イオンモール内にあるsketchモデルハウス福岡かすや店(画像=株式会社Lib Work)

成長戦略の要はエリアの拡大

――価格面やデザイン面でのこだわりはありますか?

価格面は、大手ハウスメーカーより平均して2割ほど安いのではないかと思います。やはり集客でコストをかけていないことが大きいですね。おそらく他社の1/10程度でしょう。これをコストに還元させています。ただしデザイン面で手は抜きません。断熱、省エネ性能にもこだわっていますが、頑丈な家づくりには昔から自信があります。もともと熊本県は地震が少なく、大きな地震は来ないと信じられてきました。行政のホームページにも、災害の少なさが特徴として書かれていたくらいです。ですが2016年、熊本地震が発生しました。当社の住宅は幸いにも倒壊ゼロ。柱は絶対に四寸柱、耐震クラスターボードを使って柱と壁で耐震するなど、ハイブリッド工法にこだわってきたおかげだと思っています。京都大学とカネシンが共同研究した「EQ GUARD」(壁内の鉄の鋼材が何度でも伸縮を繰り返し、安定した制震効果を維持する制震装置)なども、当社の特徴ですね。

――第2四半期を終えて、コロナの影響はありましたか?

コロナはほとんど影響していないと思います。熊本県の上期着工件数は2割ほど落ちているようですが、当社はインターネットからの集客が好調で、売上は40億、経常利益は2.96億となっており、7-12月は前期比200%を超える受注がありました。リアルな展示場での集客に依存していたメーカーさんは影響を受けているのかもしれません。

――この好調さは先頃発表された中期経営計画にも影響していますか?

今期は1年目ですが、売上95億、利益は4億の計画です。特に利益は、先ほどお話したようにすでに2.96億を達成しました。2年目は売上150億、利益は12億です。成長戦略の要はエリアの拡大です。まずは福岡県のシェアを拡大させたい。昨年オープンさせたイオンモール内のモデルハウスは、マーケティングテストをしたところ一般の展示場と比べて5倍の集客力がありました。イオンモールは全国にあるので、さまざまな場所で展開できると考えています。また今年は千葉にも出店し、展示場もオープンします。全国への展開も狙っていきたいですね。

――今後はどのように事業を発展させていきたいとお考えですか?

エリアの拡大も重要ですが、人材の確保も大切です。当社には現在、商品企画や営業、現場監督など230名の社員がいます。昨年は50名の新卒、今年の4月には53名を採用予定です。拡大する事業を支える人材を採用し、育てていきたいと考えています。また当社の強みはWebマーケティングですが、今後はWebサイトだけでなくYouTubeなどの動画も活用していきたい。現代ではテレビなどではなく、スマホやパソコンで一人ひとりが好きな番組を観ていますので、それに合わせたマーケティングが必要です。先ほど人材採用のお話をしましたが、YouTubeチャンネルを作っていたクリエイターも採用しています。すでに「Lib Workチャンネル」を立ちあげており、1週間で10万回の再生数があります。住宅メーカーではトップクラスではないでしょうか(笑)。登録者数も3年後までに10万人にすることが目標です。インターネットにはエリアという概念がありませんから、全国に事業を展開するときにはこの取り組みが有利に働くだろうと考えています。ほかにも、私たちは自社でAIを使った間取り検索システムなどを開発しています。CADメーカーとサブスクサービスを開発する取り組みなどもしていて、いずれは住宅テックとして「住宅戸建てのプラットフォーマー」になりたいと考えています。IT技術を使ってさまざまなシステムを開発し、全国の仲間といい家づくりをしていきたいのです。