新型コロナウイルス感染拡大に端を発する経済不安は、さまざまな業界に影響をもたらしました。不動産投資を行っている人の中にも「経済不安の影響で収益が悪化した」という人もいるかもしれません。そのような人に向けて本稿では、不動産投資家でも活用できる支援制度について紹介します。今後のためにも「どのような支援制度があったのか」について認識を深めておきましょう。

不動産投資家が知っておくべき新型コロナウイルス関連の支援制度

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(画像=JP trip landscape DL/stock.adobe.com)

以下の項目からは、不動産投資でも利用可能な新型コロナウイルス関係の支援制度について、それぞれ個別に解説します。本記事を執筆している2021年3月現在で申請可能な支援制度だけでなく、「すでに申請締め切りが終了した」「締め切り間近」といった制度についても解説します。今後を見据えて、各支援制度の給付要件や金額などについて、しっかりと把握しておきましょう。

新型コロナウイルス感染症特別貸付

日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は、コロナ禍の影響を受けた人に対して実施している支援制度です。2021年3月時点では、日本政策金融公庫からすでに受けている融資の貸付残高にかかわらず限度額8,000万円の融資を受けることができます。このうち6,000万円までを限度として融資後3年は、基準利率から0.9%を引いた利率が適用されるのが特徴です。

新型コロナウイルス感染症特別貸付を受けるための条件は、以下のどちらかに該当し中長期的に経済的な回復が見込まれる人となっています。

<新型コロナウイルス感染症特別貸付の融資条件>

  1. 最近1ヵ月の売上高、あるいは過去6ヵ月の平均売上高が過去3年の同じ時期に比べ、5%以上の減少
  2. 業歴3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合は、以下の1~3のいずれかと比較して最近1ヵ月の売上高、あるいは過去6ヵ月の平均売上高が過去3年の同じ時期に比べて5%以上の減少

  1.過去3ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高
  2.2019年12月の売上高
  3.2019年10~12月の平均売上高

出典: 日本政策金融公庫

セーフティネット保証制度4号・5号

セーフティネット保証制度とは、経営が悪化している中小規模の事業者を支援するために中小企業庁が設けている支援制度です。一般保証となる最大2億8,000万円とは別枠で保証を受けることができます。セーフティネット保証制度では、中小企業と金融機関の間に信用保証協会が入り、万が一の際の返済を肩代わりする仕組みです。

セーフティネット保証制度には、1~8号まであり新型コロナウイルス関連では「4号(自然災害などの突発的災害)」「5号(業績が悪化している業種)」が該当します。

セーフティネット保証制度4号

災害などの影響で直近1ヵ月の売上が前年同月比で20%以上減少した際に受けられる支援制度です。通常、災害が起きた該当地域の中小企業が利用できる保証制度ですが、コロナ禍では日本全国が指定されています。

セーフティネット保証制度5号

受けられる企業を業種ごとに指定しています。2021年3月現在、不動産関係は「不動産取引業(土地売買業のうち、投機を目的とするものを除く)」「不動産賃貸業・管理業」に該当する企業が支援を受けることが可能です。

持続化給付金(募集終了)

「持続化給付金」は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響から経済産業省によって実施された支援制度です。売上が、前年同月比50%以上減少している中堅・中小企業小規模・小規模事業者は上限200万円、フリーランスを含む個人事業主の場合は上限100万円の支援金を受け取ることが可能でした。募集は、2021年2月15日で終了しています。

当初の予定では同年1月15日とされていましたが書類の準備などに必要な時間を鑑み、延長されました。不動産投資を行っている人で持続化給付金が受け取れる可能性があるのは、法人として不動産投資を行っている人です。経済産業省の「持続化給付金に関するよくあるお問い合わせ」によると給付条件で必要な売上の定義は「確定申告書類で事業収入として計上するもの」とあります。

不動産投資を行っているビジネスパーソンや個人事業主の場合、家賃収入は確定申告では不動産収入と記載するため、事業収入としては扱えません。一方で法人として不動産投資を行っている場合は、家賃収入などを事業収入として計上できるため、持続化給付金を受け取れる可能性があります。持続化給付金は、すでに募集締め切りが終了した支援制度です。

しかし今後の情勢次第では似たような制度が実施される可能性もあるため、給付条件などについて把握しておきましょう。

家賃支援給付金(募集終了)

家賃支援給付金とは、新型コロナウイルス感染症拡大を受けて土地代・家賃の負担軽減を目的として中小企業庁によって実施された支援制度です。受付は、2021年2月15日で終了しています。給付の対象となっていたのは、資本金10億円未満の中堅企業、中小企業、小規模事業者などの賃貸の借り主となる事業者です。給付額は法人で最大600万円、個人事業者で最大300万円となっています。

借り主が対象の支援制度のため、オーナーにとっては直接的な関係はありません。しかし「入居者に利用してもらい家賃滞納などのリスクを軽減する」という意味では重要な制度です。

住居確保給付金

厚生労働省で実施されている住居確保給付金は、家賃支援給付金とは別の住居確保のための支援が受けられる制度です。こちらも残念ながら2021年3月までが申請期限となっています。支給金額の上限は、世帯人数によって変動し例えば東京都特別区で1人の場合は5万3,700円、2人の場合は6万4,000円、3人の場合は6万9,800円です。

住居確保給付金では、当初は原則3ヵ月(最長9ヵ月)とされていた支給期間が最長で12ヵ月に延長されるなど時勢に応じて制度の内容に改定が加えられています。

コロナ禍で不動産用ローンの条件に変化はあった?

不動産投資を行う際には、金融機関からのローンを組むケースが一般的です。「これから不動産投資を始めたい」「さらに投資規模を拡大したい」と考えている人とっては、コロナ禍で金融機関からの融資条件などの変化も気になる点ではないでしょうか。現状では、不動産投資ローンに関する業界内での大きな動きは見られません。

しかし今後は金融機関側からの融資条件が厳しくなったり審査に時間がかかってきたりするなどの可能性が十分に考えられます。なぜなら各金融機関では、政府指導のもと実施されたコロナ禍における特例制度への対応に追われリソースが不足している可能性があるからです。特例制度の例としては「民間金融機関における実質無利子・無担保融資」「新型コロナ特例リスケジュール」などがあります。

そのため「これから不動産投資用のローンを組もう」と考えている場合は、スケジュール的に余裕を持って行うのが望ましいでしょう。

まとめ

新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済不安は、不動産業界にも大きな影響を与えたものの政府主導となった補助制度も多く実施されました。コロナ禍において施行された支援制度は、本稿を執筆している2021年3月現在は多くが申請締め切りを迎えています。しかし今後の感染症の拡大状況次第では、今回紹介した支援制度の再実施が行われるかもしれません。

不動産投資を長期的な成功に導くためにも、今のうちからコロナ禍で実施された支援制度について把握しておきましょう。

(提供:spacible