不動産所得のある人は、確定申告をしなければならないが、不動産で得た収入すべてに税金が課せられるわけではない。この記事では、不動産所得の内容や、確定申告をする際の注意点などについて解説する。

確定申告と不動産所得に関するQ&A

不動産所得,確定申告
(画像=PIXTA)

まず確定申告と不動産所得に関する4つの質問に答えていこう。

Q


不動産所得があれば確定申告が必要なの?

家賃収入などの不動産収入から必要経費などを差し引いた不動産所得が一定額以上あれば、確定申告が必要である。給与所得者は、不動産所得を含めた給与以外の所得が年間20万円を超えれば、確定申告をして所得税を納めなければならない。

家賃収入などの不動産収入から必要経費などを差し引いた不動産所得が一定額以上あれば、確定申告が必要である。給与所得者は、不動産所得を含めた給与以外の所得が年間20万円を超えれば、確定申告をして所得税を納めなければならない。


Q


不動産所得と不動産収入の違いとは?

家賃や駐車場代などの不動産賃貸によって得た利益の総称が「不動産収入」である。例えば月額賃料が10万円の部屋から得られる1年間の不動産収入は120万円になる。この不動産収入から不動産の維持管理などにかかった必要経費や減価償却費などを差し引いた額が「不動産所得」だ。賃料として不動産収入が120万円あり、必要経費などが50万円かかった場合の不動産所得は「120万円-50万円=70万円」となる。

家賃や駐車場代などの不動産賃貸によって得た利益の総称が「不動産収入」である。例えば月額賃料が10万円の部屋から得られる1年間の不動産収入は120万円になる。この不動産収入から不動産の維持管理などにかかった必要経費や減価償却費などを差し引いた額が「不動産所得」だ。賃料として不動産収入が120万円あり、必要経費などが50万円かかった場合の不動産所得は「120万円-50万円=70万円」となる。


Q


家賃収入があれば絶対に確定申告が必要なの?

家賃収入そのものは不動産収入である。不動産収入から必要経費などを差し引いた不動産所得が一定額以上あれば、確定申告が必要となる。家賃収入があるからといって、すべての人が確定申告をしなければならないわけではない。

家賃収入そのものは不動産収入である。不動産収入から必要経費などを差し引いた不動産所得が一定額以上あれば、確定申告が必要となる。家賃収入があるからといって、すべての人が確定申告をしなければならないわけではない。


Q


不動産所得を確定申告する場合の注意点

不動産所得とは、不動産収入から必要経費などを差し引いたものなので、不動産所得が低ければ確定申告をして納める不動産所得に対する所得税も安くなる。したがって、不動産収入から必要経費などを少しでも多く差し引けるようにすると節税につながると言える。
確定申告をする前に、あらかじめどのような費用が必要経費として差し引けるかを確認し、領収書などを保管しておくようにしよう。

不動産所得とは、不動産収入から必要経費などを差し引いたものなので、不動産所得が低ければ確定申告をして納める不動産所得に対する所得税も安くなる。したがって、不動産収入から必要経費などを少しでも多く差し引けるようにすると節税につながると言える。
確定申告をする前に、あらかじめどのような費用が必要経費として差し引けるかを確認し、領収書などを保管しておくようにしよう。


不動産所得について

不動産によって得られる利益には、家やマンションなどを貸して得られる家賃や不動産を購入した額よりも高く売却することで得られる売却益などがある。このような不動産によって得られる利益の一つが、不動産所得である。

そもそも不動産所得とは?

不動産所得とは、土地や建物などの不動産の貸し付けや地上権など、不動産そのものや不動産の権利を貸し付けて得た「不動産収入」から、必要経費や減価償却費などを差し引いたものである。

不動産所得の計算方法について

不動産で得た収入に課せられる所得税を計算する際の基準額となる「不動産所得」を算出するための計算式は、次のようになる。

(不動産収入の総額)-(必要経費)=不動産所得

不動産所得からさらに所得控除を差し引き、税率をかけたものが実際に納める所得税額だ。不動産所得が高くなれば所得税も高く、不動産所得が安ければ所得税も安くなるので、不動産収入から差し引く必要経費をいかに多く計上できるかが、所得税額を決定する重要なポイントである。

不動産収入に含まれるもの

不動産収入とは、家やマンションなどの不動産を貸し付けて得られる収益の総称である。賃料以外にも、以下のようなものが不動産収入に含まれる。

• 賃貸借の名義変更手数料、契約更新料、礼金などとして受領するもの
• 返還する予定がない敷金や保証金など
• 共益費や管理費などの名目で受け取る電気代、水道代、掃除代、駐輪場代など

賃貸借契約を結ぶ際に受け取る「礼金」、契約更新の際の「契約更新料」や「事務手数料」、契約者を変更する際に賃借人が支払う「名義変更手数料」などは、すべて不動産収入として扱われる。

契約時に受領する「敷金」や「保証金」のうち、契約解消時に返還しないものは不動産収入になるので注意が必要だ。例えば敷金30万円で、退去時に50%を返還する契約の場合は、15万円を不動産収入として計上しなければならない。

必要経費に含まれるもの

不動産収入から必要経費として差し引けるものとして、以下のような費用が挙げられる。
• 建物や室内を維持するための修繕費
• 建物や室内の経年劣化に伴う減価償却費
• 建物や土地の固定資産税など
• 損害保険料

建物や室内の修繕費、設備の修理や交換費などは必要経費として計上できる。しかし修理のついでだからといって、壁紙やフローリングをグレードアップしたり、設備の機能を上げたりした場合は、修繕費ではなく資本的支出(資産の価値を高めるための支出)としてみなされることがあるため注意が必要である。

経年劣化に伴う減価償却費は、建物の購入額に法律で定められた償却率と築年数をかけて算出する。事業用の建物の償却費の計算は、建物の構造や取得年月によって異なる。2007年4月1日以後に取得した不動産の場合、次の計算で求められる。

減価償却費=建物購入額×償却率×業務に供された月数÷12

償却率や建物の耐用年数などについては、国税庁ホームページ「No.2100 減価償却のあらまし」で詳しく説明されている。

固定資産税や都市計画税、不動産を購入した際の不動産取得税、登録免許税、印紙税だけでなく、火災保険や地震保険などの損害保険料も必要経費として計上できる。さらにローンを組んで購入した場合は、ローン返済額の金利部分も必要経費になる。

不動産所得と確定申告

不動産所得がある場合は原則、確定申告をして所得税を納める必要がある。確定申告が必要な場合と不要な場合についてそれぞれ詳しく説明しよう。

不動産所得で確定申告が必要な場合

不動産所得で確定申告が必要なのは、不動産収入の総額から必要経費などを差し引いた金額が一定以上の場合である。

給与所得者の場合、給与分の所得税は源泉徴収と年末調整が給与の支払い元で行われているため、確定申告の必要はない。しかし給与所得以外に不動産所得など別の収入がある場合、1月から12月までの総額が20万円以上であれば、確定申告をしてその分の所得税を給与の所得税とは別に納めることになる。

不動産所得で確定申告が不要な場合

主な収入が給与で不動産所得以外の収入があり、給与以外の収入が年間20万円を超えれば確定申告が必要だが、20万円以下であれば確定申告は不要だ。

ただし確定申告をして所得税を納める必要はないが、住民税は課せられる。そのため、確定申告をしなかった場合は、管轄の役所で住民税の申告をする必要がある。

確定申告をする必要がないからといって確定申告をしないと、損をする場合があるので注意が必要だ。後の「確定申告が不要でも確定申告するほうがよい場合」で詳しく説明するが、例えば不動産所得がマイナスになった場合、確定申告をすることで、給与などの他の所得と合わせた「損益通算」をすることができるからである。

確定申告が不要な場合に確定申告をしたからといって、罰せられたり損をしたりすることはない。しかし、しないことで損をしたり、住民税の申告をする必要があったりするため、不動産所得がある場合は利益があってもなくても確定申告をしておくとよいだろう。

不動産所得で課せられる税金について

不動産所得には、どのような税金がいくらぐらい課せられるのだろうか。ここでは、不動産所得に課せられる税金について詳しく説明する。

不動産所得に課せられる税金の種類

不動産所得に限らず、すべての所得には次の3種類の税金が課せられる。

• 所得税
• 復興特別所得税
• 住民税

所得は以下の10種類あり、それぞれの所得から控除される額を差し引いた残り(課税所得)に税率をかけて、税金を算出する。

• 利子所得
• 配当所得
• 不動産所得
• 事業所得
• 給与所得
• 退職所得
• 山林所得
• 譲渡所得
• 一時所得
• 雑所得

復興特別所得税とは、東日本大震災の復興のために課せられる税で、2037年12月31日まで所得税額の2.1%を納めることになっている。

所得税は国に納める税金だが、住民税は地方自治体に納める。そのため、住民税の税率は自治体によって異なる。確定申告をすれば、住民税の申告も同時に行われるため、別に申告をする必要はない。

不動産所得税はいくらになる?

不動産所得税に限らず、所得税の計算は「課税所得額」(所得額から控除額を引いたもの)に税率をかけて算出する。

所得控除には、次のようなものが挙げられる。

• 基礎控除
• 社会保険料控除
• 配偶者控除
• 扶養控除
• 医療費控除
• 生命保険料控除、地震保険料控除など

所得税の税率は、額が多いほど税率が高くなる「累進課税税率」だ。課税所得額が195万円以下だと5%、195万円を超えて330万円以下なら10%となり、最大は4000万円を超えた場合の45%である。 また所得税の額の2.1%が復興特別所得税になる。課税される所得額ではなく、税率をかけた後の所得税額の2.1%である点に注意しよう。

住民税は、自治体によって異なるが、課税所得額の10%程度が多い。気になる場合は、自治体のホームページや窓口で確認しよう。

確定申告が不要でも申告するほうがよい場合

「不動産所得で確定申告が不要な場合」で述べたが、不動産所得がマイナスだった場合、所得税を納める必要はないが、確定申告をするほうが得になることがある。不動産所得のマイナス分を他の所得で得た利益から差し引ける「損益通算」が適用されるからだ。

例えば、不動産所得が100万円のマイナスで、他の所得が400万円あったとする。この場合、確定申告をしなければ400万円の所得に所得税が課せられるが、確定申告をして損益通算すると、400万円の所得から不動産所得のマイナス分100万円を差し引いた300万円が所得税計算の基準となる。

損益通算をすれば所得税を減らせる場合があるので、不動産所得がマイナスの場合は、確定申告をするとよいだろう。

不動産所得があれば確定申告を忘れずに

不動産所得は、家賃などで得た不動産収入から必要経費などを差し引いたものである。実際に課税される課税所得額は、不動産所得からさらに控除額を引いたものになる。

給与所得者の場合、不動産所得と他の副収入を合わせた額が1年間で20万円以下なら確定申告の必要はない。しかし確定申告をして所得税を納める必要がなくても、住民税の申告は必要だ。

不動産所得がマイナスになった場合は、確定申告をすることで損益通算ができる。不動産所得がある場合は、プラスでもマイナスでも、確定申告を忘れないようにしよう。