特集『withコロナ時代の経営戦略』では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続く中での、業界の現在と展望、どんな戦略でこの難局を乗り越えていくのかを、各社のトップに聞く。

2016年10月創業の株式会社afterFIT。太陽光発電事業において、ドローンやAI技術も活用しながら発電量を最大化するノウハウに強みを持つ。国内大手企業の脱炭素の動きが加速する中、高品質なメンテナンスへのニーズが高まり、発電所の保守・管理事業も本格化した。その背景には、太陽光発電業界を根底から変えて本質的な社会貢献をするという強い理念が潜んでいる。2020年4月期の売上高は155.2億円。業界内外で注目を集める成長著しい新興グリーンテック企業だ。

(取材・執筆・構成=不破聡)

株式会社afterFIT
(画像=株式会社afterFIT )
谷本 貫造(たにもと・かんぞう)
株式会社afterFIT代表取締役
2016年にafterFITを設⽴。創業わずか4年で売上⾼150億円、数名からスタートした社員 は300名を超えた。社名のafterFITは、FIT制度が終了しても、再⽣可能エネルギーの普及・維持・ 活⽤を⽬指そうと名付けた。同社ではニックネーム制を導入しており、社員からは「かんちゃん」と呼ばれ親しまれている。

発電量が低いまま放置された太陽光発電所を救う

――太陽光発電所の保守・管理事業を本格化しました。

当社は発電量を最大にし、コストを削減して太陽光発電所を建設するという点において、業界トップに立てたという自負があります。次のステップとして、自社以外の事業者が所有する発電所の保守・管理業務をさらに広げたいという想いがあります。それが日本にグリーン電力を普及させることにつながるからです。

太陽光発電所の保守・管理業者にとって、収益性を高める妙手は実は“何もしないこと”なのです。問題を発見すれば、なんらかの対応をしなければなりません。そのためには技術者の人件費や修理のための費用がかかります。見て見ぬふりをするのが一番利益となるのです。そのようにして問題を抱えた発電所が放置されてしまう、悪しき慣習が太陽光業界には潜んでいるのです。

――発電所のオーナーは発電量が落ちて故障や不具合に気づかないのでしょうか?

ビルメンテナンスであれば、電球がつかなくなって暗くなればすぐに気づきますが、太陽光発電の場合はそうはなりません。発電量が落ちても、天気が悪かったと言われればそんな気がしてしまうのです。

――afterFITが保守・管理をすることで、発電所のオーナーはどのようなメリットがありますか?

まずひとつめは品質です。太陽光発電所が持っている「本来あるべき発電量」を割りだすことができます。あるべき発電量と実際の発電量を比較することができるため、保守・管理が適切になされているかがわかるのです。

こうした技術は、太陽光発電所の建設や保守・管理に真面目に取り組んできた結果です。設立当初から発電量を極限まで高め、コストを削減する方針をとっていました。外部委託もしておらず、すべての業務を正社員で担い、ノウハウはすべて自社にたまっています。そこが強みになっているのです。

もう1つは価格面です。サービスを開始した1年半前に、そうした高品質なサービスを相場の半額程度で提供すると決めました。当社はドローンの活用によって省人化を実現しています。全国の現場にドローンの有資格者が30名以上いて、赤外線カメラによる点検を標準化し、従来であれば丸2日かかっていた点検作業を15分ほどで終えられるようになりました。ドローンで撮影したサーモ画像を自動解析することも採り入れています。現場点検をリアルタイムで本社に共有するためのソフトウェアも開発し、従来は2人1組で行っていた点検も、現場1人と本社1人とで行っています。

afterFITが開発したバッテリーシステム
afterFITが開発したバッテリーシステム(画像=株式会社afterFIT)

太陽光発電業界全体の競争力を上げる取り組み

――事業が推進していくことによって、これまで以上に拠点や人員の拡大が必要ですね。

現在、国内15拠点、全国に45名の電気主任技術者を抱えています。これを数年内に100拠点、700名の社員へと増やす計画です。DC(直流)もAC(交流)もメンテナンスできる電気主任技術者が多く在籍することで、それぞれの点検を同時に行える強みがあります。また、単に点検をする人員を増やすというよりも、ドローンによる操縦・点検から、トラブル原因の分析と対処もできるような高度で生産性の高い人材が必要です。

――東南アジアとの人材交流も積極的に行っています。

ハノイ工科大学や電力大学などベトナムのトップクラスの大学と提携し、電気主任技術者の育成に取り組んでいます。日本では、発電所から2時間以内に駆けつけられる電気主任技術者を選任しなければならないという経済産業省の通達があります。一方、2030年までに第3種電気主任技術者が約2,000人不足すると言われています。そのため、電気主任技術者を多く雇い入れるため、国内大手電力会社の元役員らを日本からベトナムの大学に派遣して、電気主任技術者育成のための教育カリキュラムを実施しているのです。今、保守・管理の人員も含めてベトナムで60名を育成しています。

昨年度は、コロナ禍にもかかわらず、ベトナムで採用された8名が来日し入社しました。新型コロナウイルスの感染拡大による渡航制限で入社が延期となるトラブルもありましたが、現地で言葉や技術の勉強をする良い期間になったと前向きに捉えています。3名は電気技術系の新卒社員で、2月に北海道の現場に配属されました。

――太陽光発電における課題はどこにあると考えていますか?

技術的なことで言うと、安定的に電力を供給することに尽きます。気象条件で発電量が大きく変化する太陽光は、化石燃料や原子力発電のような安定性が今のところはありません。当社はそれを克服する取り組みに乗り出しました。その1つが蓄電池です。

2020年10月に完工した北海道白老町の発電所は16MWh、乗用車5万台分のコンテナ型蓄電システムを併設し、厳しい出力変動幅の制御を実現しています。こうしたシステムをローコストで作りあげるノウハウがたまっています。

また、気象予測を正確に行えることも安定供給に有利に働いています。当社は専門的に気象モデルを研究してきた人材や、統計のスペシャリストを抱えています。今後、脱炭素化でグリーンエネルギーが電気の中心となったとき、発電量の予測は最重要ポイントになるでしょう。