不動産投資にはコストがついてまわり、コストの多寡によってキャッシュフローや売却時の損益額が大きく変動することがあるため、コストは物件購入前の段階で漏れなく資金計画に落とし込む必要があります。
本記事では、不動産投資における固定費および変動費という2種類のコストを7つの項目に分けて解説します。物件購入前にコストを漏れなく見積もり、盤石な資金計画を立ててから投資を始めましょう。
不動産投資にコストがかかる2つの理由
不動産投資を行う際には、以下2つの理由から株式や投資信託への投資よりも多くの項目でコストがかかります。
- 現物資産ゆえの維持費
- アウトソーシングする項目の多さ
現物資産ゆえの維持費
不動産オーナーが所有するマンションやアパート、ビルという建物には数多くの設備や機器類が設置されています。
建物および付帯設備は経年とともに劣化が進行することから、正常な機能を維持するために定期的な点検や修繕、交換といったメンテナンスをオーナーが実施しなければいけません。
建物には、エレベーターや外壁タイル、塗膜防水といった定期的なメンテナンスを必要とするものが多くあるため、維持費がかかるということです。
アウトソーシングする項目の多さ
物件購入後、オーナーは経営者として賃貸経営を行うことになりますが、賃貸経営においては多くの項目を賃貸管理会社にアウトソーシングすることになるでしょう。
賃貸経営上の実務をオーナーが自ら行う「自主管理」と呼ばれる管理形態も選択肢としてありますが、自主管理をするには建物および付帯設備に関する高度な専門知識、工事業者や不動産業者とのコネクション等が求められるため、プロの不動産投資家や経験豊富な専業大家でない限りは非現実的といえそうです。
賃貸経営上の実務である入居者募集や原状回復工事、入居者対応といった各種工程をアウトソーシングする場合には、委託先である賃貸管理会社に対して支払う管理委託料というコストが発生します。
投資前に見積もるべき不動産投資の7つのコスト
不動産投資におけるコストは固定費と変動費に大別され、固定費は毎月ないし毎年に一度の頻度で定期的に発生するコスト、変動費は不定期に発生するコストを指します。
固定費には、ローン返済・管理委託料・税金・管理費および修繕積立金(区分マンションの場合)・共用部分の電気代および水道代(一棟物件の場合)の5つが挙げられ、変動費には入退去費用・修繕費の2つが挙げられます。
- ローン返済
- 管理委託料
- 税金
- 管理費および修繕積立金(区分マンションの場合)
- 共用部分の電気代および水道代(一棟物件の場合)
- 入退去費用
- 修繕費
ローン返済
金融機関から融資を受けて物件を購入する場合は、金融機関に対して毎月一定の金利を上乗せした金額でローンを返済することになります。
融資を受ける際には、金融機関からローンの返済計画表の提示が事前にあるため、返済計画表を参照して毎月の返済額および借入金残高の推移を確認しておくのが得策です。
ローン返済は賃料収入の有無に関わらず毎月かかるため、空室期間中も支払いができるように手元のキャッシュを確保しておく必要があります。
管理委託料
管理委託料とは、賃貸経営上の実務を賃貸管理会社にアウトソーシングする際に発生する費用です。
賃貸管理会社はオーナーの判断に基づいて、入居者募集や原状回復工事、入居者対応といった各種の実務工程を代行してくれます。
管理委託料は、「送金賃料の◯%」や「一戸当たり○円」という料金体系で発生し、毎月の送金賃料と相殺されるのが一般的です。
税金
不動産投資における税金には、物件の購入時および売却時に一度きりで発生する不動産取得税や譲渡所得に対する税金に加えて、物件の保有期間中に毎年固定で発生する固定資産税および都市計画税という税金が挙げられます。
固定資産税は当該不動産の課税標準額に対して1.4%、都市計画税は当該不動産の課税標準額に対して0.3%の税率で課税されるのが一般的です。
税率が低くても、物件規模が大きくなると税金の絶対額も高額になるため、毎年の固定費として資金計画に落とし込んでおくべきといえるでしょう。
税金は賃料収入の有無に関わらず毎年ないし四半期ごとにかかるため、空室期間中も支払いができるように手元のキャッシュを確保しておく必要があります。
管理費および修繕積立金(区分マンションの場合)
管理費および修繕積立金は、区分マンションにおいて毎月かかる固定費であり、マンション全体の日常的なメンテナンス(管理費)や、およそ12年に一度の周期を目安として行われる大規模修繕への備え(修繕積立金)のために各住戸のオーナーが共同で毎月拠出する資金です。
築年数の経過につれて共用部分の設備の劣化が進行したり、大規模修繕での修繕項目が増えたりするため、修繕積立金は定期的に値上げされるが想定されます。
新築や築浅の区分マンションを長期保有する際は、将来的な修繕積立金の値上がりによるコストの増加を想定しておくことが得策です。
管理費および修繕積立金は賃料収入の有無に関わらず毎月かかるため、空室期間中も支払いができるように手元のキャッシュを確保しておく必要があります。
共用部分の電気代および水道代(一棟物件の場合)
一棟物件においては区分マンションと異なり、建物の共用部分も含めて全てオーナーの所有物です。
共用廊下やエントランスの照明、オートロック、エレベーター等を動かすための電気代および日常的な清掃作業を行うための水道代といった共用部分における日常的なコストは原則としてオーナーが全額負担することになります。
共用部分の電気代および水道代は賃料収入の有無に関わらず毎月かかるため、空室期間中も支払いができるように手元のキャッシュを確保しておく必要があります。
入退去費用
入退去費用とは、入居者の入れ替わり(前入居者の退去および新入居者の入居)の際に発生するコストのことです。
入居者の入れ替わりはいつ発生するか分からないため、入退去費用は変動費に分類されます。
前入居者の退去費用には原状回復工事費用やハウスクリーニング費用、設備交換費用等が挙げられ、新入居者の入居費用には仲介業者への広告報酬(「AD」と呼ばれることもあります)や賃貸管理会社への契約事務手数料等が挙げられます。
入退去費用は突発的に発生する費用であるため、入退去の発生に備えて毎月のキャッシュフローから資金を積み立てておくのが得策です。
修繕費
修繕費とは、エアコンや給湯器、建具等の部品または本体の交換をはじめとする建物の付帯設備における劣化や故障による修繕に要するコストを指します。
修繕費についてオーナー個人が負担するのは、原則として区分マンションにおいては専有部分(部屋内)のみ、一棟物件においては専有部分および共用部分、敷地等を含む全範囲です。
建物の付帯設備の劣化や故障による修繕はいつ発生するか分からないため、修繕費は変動費に分類されます。
修繕費は突発的に発生する費用であるため、修繕の発生に備えて毎月のキャッシュフローから資金を積み立てておくのが得策です。
コストを見積もり余裕のある資金計画を
不動産オーナーは、建物および付帯設備という現物資産を所有することになるため、メンテナンスに要する費用を負担しなければならなかったり、賃貸経営上の実務をアウトソーシングする賃貸管理会社に管理委託料を払う必要があったり、突発的な入退去が発生したりと多くの項目でコストがかかります。
コストの見積もりに漏れがあると賃貸経営中に資金ショートを起こしてしまうリスクがあるため、物件購入前にコストを漏れなく見積もることで余裕のある資金計画を立てましょう。(提供:Incomepress )
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