●運転中にスマホや映画を観てもいい?
予想以上の驚きかもしれない。ホンダ・レジェンドに初搭載された世界初のレベル3自動運転、ホンダセンシング・エリートである。
3月5日に発売、報道されたので知っている方も多いと思うが、実車に先日やっと乗ることができた。
ちなみにレベル3は、いままでのレベル2と数字にして1段階しか違わないが、中身は全く違う。
レベル2まではアクセル、ブレーキ、ハンドル操作を免除されても運転は常にドライバーの責任。必ず前を向いて運転する必要があった。あくまでも「運転支援」だったのだ。
しかし、レベル3は条件が整ったところでは「アイズオフ」、つまりドライバーの視線外しやサブタスク実行が許され、運転の責任をシステム側が持ち、正式に「自動運転」と呼んでいい。
このサブタスクが最大の要点で、ドライバーがスマホを見たり、モニターに移っている映画を観ても良いというものなのだ。
厳密にいうと、道路交通法第119条2上は、アイズオフ時もドライバーが責任を負うことになっているが、実際に事故が起こった場合、刑法は相手側の過失責任を明らかにしなければいけないので責任を問われない可能性がある。
肝心のアイズオフだが、ドキドキ感は完全に予想以上だった。
現状のレベル3はレジェンドの場合、時速50km以下、法的には時速60km以下で使える。
試したのは夕方の湾岸高速。あえて渋滞を狙ったが、ゆっくりとはいえ、運転中にモニターを注視できるのはすごい。
なにしろ、いままでならば警察につかまっていた行為なのである。独特の背徳感がある。
問題のスマホ注視だが、法的には許されているがホンダセンシング・エリートでは推奨してない。実際に試してみるとかなりの確率でレベル3が中断される。
細かくは別要因かもしれないが、ドライバーの姿勢によって、レベル3機能のトラフィックジャムパイロットが解除されるのだ。
これこそがポイントで、レベル3はドライバーの姿勢や体勢に加え、車速、道路(地図情報のある現状高速のみ)、状況(工事の有無など)、天候が整ってないと実行できない。
だから「条件付き自動運転」ともいわれるわけで、条件から外れると運転の主体はシステムからドライバーに戻されてしまう。
●実際のところ、ホンダ流ハンズオフがハンパない!
従って、そう簡単にマンガの如きイージードライブができるわけではないのだが、それでもすごい。
それともうひとつ、ホンダセンシング・エリートには、日産プロパイロット2.0も実現したレベル2のハンズオフ機能が付いていて、ここにメーカーごとの考えの違いがハッキリ出ているのだ。
プロパイロット2.0は道路毎に設定された速度制限内でしかハンズオフが作動しないが、ホンダセンシング・エリートは時速125km以下であればドライバーが定めた任意の速度でハンズオフが使える。これが非常に有用なのだ。
たとえば首都高、時速50km制限区間は山ほどあるが、本当にスピードを落とすと渋滞の原因になるどころか恐怖すら覚える。しかし、ホンダセンシング・エリートにそれはない。
ちなみに今回のハードウェア進化の白眉は冗長性(トラブルや障害に対する強さ)に関わる部分で、外界センシングとしてはミリ波レーダーとライダーと前方のカメラを備え、三重にしている。
同時にレジェンドは、ステアリング、ブレーキ、電源も2系統が用意され、1系統が壊れてもカバーできるようになっている。
ある意味、飛行機レベルの故障対策がなされているわけだ。
自動運転の技術進化は単なる正確性や扱い易さだけでは語れない。事故やトラブルに対する耐性や法的な責任問題も含まれる。
今回のレジェンドは価格1100万円で100台限定リースと、少々一般的ではないがやはり意義は大きい。つくづくそう思った次第だ。
(提供:CAR and DRIVER)