欧州中央銀行も来年前半にテーパリングか
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欧州中央銀行も来年前半にテーパリングか

SMBC日興証券 チーフマーケットエコノミスト / 丸山 義正
週刊金融財政事情 2021年5月4日号

 変異株が猛威を振るうなど新型コロナウイルスの感染拡大は継続しているが、ワクチン接種が進んだ国では経済に薄日が差してきた。2021年半ばに世界経済はコロナ禍前の水準に回復するだろう。現時点でほとんどの先進国の中央銀行は金融緩和継続のスタンスを崩さないが、景気回復に対応して金融緩和度合いを縮小する必要がいずれ生じる。大規模緩和が永遠に続くわけではない。

 カナダ中銀は1年前に週当たり50億カナダドルでスタートした国債買い入れ額を、4月に30億カナダドルへ減額した。金融市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)が22年までに月額1,200億ドルの資産買い入れの縮小、いわゆるテーパリングに踏み切るというのがコンセンサスとなっている。イールドカーブ・コントロールを導入する日本銀行は、量的緩和を主体とする米国などと同列には扱えないが、3月の「点検」を経て、ETFの買い入れスタンスを「積極的な」から「必要に応じて」に改めた。

 欧州中央銀行(ECB)はいつ金融緩和の縮小へ動くのか。今年3月、米国発の長期金利上昇がユーロ圏に波及し、ECBは試練にさらされた。震源地の米国において長期金利上昇を景気回復見通し好転の結果としてFRBが容認する一方、ECBは長期金利上昇を抑制するスタンスを強調した。ECBは3月、コロナ禍に際して導入した資産買い入れの仕組みであるパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の買い入れペース加速を表明、金利上昇を抑制する姿勢を明確にした。ワクチン接種と景気回復のペースいずれも米国に劣後するユーロ圏にとって、長期金利上昇が時期尚早であり、景気回復やインフレ目標の達成に対する大きなリスクであると判断した結果だ。

 米国発の長期金利上昇は一服したが、ECBは4月22日、政策理事会で買い入れペースを加速させるスタンスを維持し、PEPPの増額さえ視野に入れるような印象を与えた。しかし、ある程度加速したペースで買い入れても、PEPPが22年3月の期限までに購入枠1.85兆ユーロを使い果たす可能性は低い(図表)。また今後、遅ればせながらワクチン普及が進み、かつ世界経済持ち直しの恩恵がユーロ圏経済にも及ぶ点を踏まえれば、PEPPは22年3月で予定どおり終了し、資産買い入れを縮小すると考えられる。ただ、FRBも同時期22年に資産買い入れの減額に動く。金融緩和縮小に際して金融市場が動揺し、ECBが再び試練にさらされるリスクには留意が必要だ。

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(提供:きんざいOnlineより)