2014年にスタートしたNISA(少額投資非課税制度)により、個人が少額からでも投資を始めやすくなりました。NISA口座で売買できるのは主に株式、投資信託、ETFですが、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。

目次

  1. 金融庁で設立されたNISA。国の政策として始められた
  2. NISAのメリット
  3. NISAのデメリット
  4. NISAで投資できる金融商品の特徴をおさえよう
  5. NISAで購入できる金融商品のメリット、デメリット
  6. あなたのNISA投資にぴったりの金融機関の選び方
  7. まとめ:目的に合った無理のないNISA運用を

金融庁で設立されたNISA。国の政策として始められた

投資信託のメリット・デメリットを種類別に解説。初心者はどれを選ぶべき?
(画像=SB/stock.adobe.com)

NISAとは、株式や投資信託などの金融商品を対象に、一定の金額内で購入した金融商品の売却益や配当が非課税となる制度です。通常、株式や投資信託などを運用して得た利益には約20%が課税されますが、銀行や証券会社などでNISA専用口座を開設し運用すれば、1年につき購入額120万円までが非課税となります。

NISAは、英国のISA(個人貯蓄口座)をモデルに、金融庁が設立した制度です。2012年に閣議決定された「日本再生戦略」では、2020年までに投資総額を25兆円にするという数値目標が掲げられましたが、NISAは戦略の中核をなす政策の1つといえます。2023年で終了する一般NISAは「新NISA」として5年延長、つみたてNISAも2037年終了から5年延長されるなど、金融庁の制度への本気度がうかがえます。

NISAのメリット

NISAの主なメリットは以下の通りです。

最長5年間、運用益が非課税になる

金融商品への投資は、その利益(配当金、譲渡益など)に対し約20%の所得税が課されます。しかし専用のNISA口座を通じて対象商品を購入すると、年額120万円までの購入分が非課税となります。

仮に1年に120万円ずつ金融商品を取得していくと、5年で購入総額は600万円となります。6年目からは、初年度購入分から順に非課税期間が終了していくので、実質的にNISAで購入できる額は最大600万円までとなります。

ロールオーバーが可能

上記の通り、NISAの非課税期間は購入から原則5年までで、期間が終了すれば売却するか、通常の課税口座に移管しての運用となります。しかし「ロールオーバー」を利用すれば、さらに非課税期間を5年延長することが可能です。

ロールオーバーとは、5年の非課税期間が終了した金融商品を、翌年からの非課税投資枠に移すことのできる制度です。この際、保有している商品の時価総額が120万円を超えていても、そのまま移管できる点にあります。ただしこの場合は非課税投資枠を使い切ったこととなり、新規買付はできません。

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長期間にわたり株式や投資信託を非課税で保有できることは大きなメリットですが、いくつかの制限もあります。

NISAのデメリット

NISAはその投資における運用益が非課税で受け取れるという大きなメリットがありますが、一方、通常の投資とは異なる制限などがあり、注意が必要です。デメリットにもなりうるいくつかのポイントを見てみましょう。

NISAのデメリット1:NISA対象商品は限られている

NISA制度を利用して運用できる商品には限りがあり、通常の課税口座と比較すると投資対象はかなり絞られることになります。

ただし、この点についてはメリットと捉えることも可能です。投資の経験が少ない初心者にとって、数ある商品から自分に合ったものを選び出し、ポートフォリオ(金融商品の組み合わせ)を組むことは簡単ではありません。その点、対象商品が限られるNISAであれば比較的選びやすく、本格的に投資を始める第一歩としては適しているといえるかも知れません。

NISAのデメリット2:損益通算ができない

投資では利益だけでなく損失が発生することもあります。課税対象である運用益から損失分を差し引いて節税を図ることを「損益通算」といいますが、NISA口座で生じた損失は、他の課税口座の運用益と損益通算できません。非課税であるということは、税制上は利益も損失も発生していないことを意味するからです。

NISAのデメリット3:金融機関の変更は1年に1度まで

NISAは「1人につき1口座まで」というルールがあります。もし現在取引している金融機関に不満が感じたとしても、いつでも自由に乗り換えられるわけではありません。

金融機関の変更は1年に1度までです。定められた申し込み期間内に手続きを行えば変更が可能ですが、現在取引している商品を新しい口座に移すことはできず、保有している商品は時期を見て売却するか、課税口座に移管しなければなりません。

また変更を行う年に一度でも変更前の口座で買付を行うと、手続きが失効したり、ロールオーバーができなくなったりするなどのリスクがあります。理想的な投資計画を実現するためには、NISA口座を開設する金融機関は慎重に選ぶ必要があります。

NISAで投資できる金融商品の特徴をおさえよう

NISAの非課税枠を用いて運用できる金融商品は主に以下の通りです。

  • 国内、海外株式
  • 株式投資信託
  • 国内、海外ETF
  • ETN(上場投資証券)
  • J-REIT(国内)、海外REIT
  • 新株予約権付社債

NISAは上場株式等を対象としており、非上場株式の非課税運用はできません。また、預貯金、債券、公社債投資信託、MMF、FX、金・プラチナ、上場株価指数先物、eワラントなどもNISA対象外です。

ここからは、NISAで投資できる金融商品について、それぞれの特徴を見ていきましょう。

NISAで投資できる金融商品1:株式

企業が事業資金を集めるために発行するのが株式です。株式を購入した人は株主となり、企業の業績に応じた配当金(インカムゲイン)を受け取ることができます。NISAの対象となる上場株式は、厳しい基準をクリアして株式市場で取引ができるようになった企業の株式で、株価は市場の需給関係により上下します。株価が値上がりしてから売却すれば、値上がり分が売却益(キャピタルゲイン)となります。

・取引期間の分類

購入から売却までの期間により短期トレード、長期保有などと分類されます。

1日で取引が完結する「デイトレード」などでは、企業が新商品を発表するといった話題性も、値動きを大きく左右します。一度の取引で大きな利益を狙うだけではなく、短期間に何度も取引を行うことでさらに大きな運用益を上げる方法もあります。

これに対し長期保有は、年単位で同じ銘柄を保有して利益を得ることを目指します。売却益や配当金はもちろんですが、特に国内株の場合は株主優待などのメリットもあります。

・投資対象の分類

投資対象の国や地域、企業の成長度などにより、リスクとリターンの度合いは変わってきます。

たとえば、これからの成長が期待できる国の株式は「新興国株式」と呼ばれ、世界経済をリードしているような国の株式は「先進国株式」と呼ばれます。

また、投資対象の分類としては、地域だけではなく、ベンチャー企業に投資して大きな利益を狙うのか、有名企業に投資して安定した運用成果を狙うのか、運用目標やリスク許容度により運用方法は変わってきます。

・海外株式

最近では、経済のグローバル化や、売買手数料無料などのキャンペーンを実施するネット証券の台頭により、海外株式への投資は増える傾向にあります。投資先進国と呼ばれる米国や、経済成長著しい中国株など、リスク分散やより大きなリターンを求めて海外株式へ投資する人も少なくありません。

米国株を例にとると、国内株式に比べ配当金の分配回数が多く設定されている銘柄があることや、1株から購入できるなどの特徴があります。(国内株は原則、最低取引単位が100株)

ただし企業情報の少なさや、取引時間の相違、為替リスクなど、国内株取引とは異なる点も多く、比較的ハイリスクな投資手段である点には注意が必要です。

NISAで投資できる金融商品2:投資信託

投資信託(投信)とは、ファンドマネージャーなど金融のプロが投資家から集めた資金(ファンド)で運用し、運用益を投資家に分配する商品です。運用をファンドマネージャーに委託するため、投資家は資産総額に対して一定率の信託報酬を支払います。

・分散投資できる

投資リスクを小さくする手法の1つに、投資対象や投資タイミングを多様化させる「分散投資」があります。しかし、多くの個人投資家は資金的に、分散するにしても限界があります。その点、資金を募って運用する投資信託では、個人による株式売買などよりも分散効果が大きくなります。

・1日に1度公表される基準価額で売買される

また、通常の株式取引はリアルタイムに行われますが、投資信託では1日に1度公表される価額を基準に売買を行います。投資する側にも少なからず知識や経験が求められるものの、金融のプロによる運用である点や、分散投資効果の高さ、また購入手数料無料の「ノーロード」商品など取引コストが低いこともあり、株式投資よりも比較的始めやすい投資手段といえます。

また、ネット証券では100円から投資信託が始められるなど資金面のハードルも低く、中長期での運用が前提となるため、NISAの強みが発揮しやすいでしょう。

・インデックス型とアクティブ型がある

投資信託は株式と同様に、投資家によりリスク許容度や目標が異なるため、ニーズに合わせたさまざまな商品が販売されています。なお投資信託は大きく、日経平均株価やTOPIXなど市場全体の動きを表す指標と連動した投資成果を目指すインデックス型(パッシブ運用)と、より大きな運用成果を目指すアクティブ型(アクティブ運用)の商品が存在します。

NISAで投資できる金融商品3:ETFとREIT

NISAで投資できる金融商品には、株式や投資信託のほかにも、いくつかの種類があります。初心者でもわかりやすいETF、REITについて、解説します。

・ETF

ETF(上場投資信託)は投資信託の一種ですが、取引所に上場しているため、株式と同じようにリアルタイムで価格が変動します。注文の方法は値段を指定する「指値」と、値段を指定せず取引成立を優先する「成行」の2つがあります。

投資信託にはそれぞれコンセプトがあり、どのような運用成果を目指すのかが定められています。ETFは、国内であればTOPIXや日経平均、米国であればNYダウやS&P500などの指数を対象とし、その値動きに連動するよう運用計画が組まれています。

指数通りの値動きを目指す商品や、倍の値動きを目標とするもの、また逆の値動きを目指す商品などコンセプトはさまざまですが、メジャーな指数を基準とするためわかりやすい点が特徴です。また、多くのETFは投資信託よりも購入・保有時の手数料が安く設定されています 。

ただし、ETFの場合は売買単位が10口、100口などと設定されているため、投資信託よりも初期費用は大きくなります。また、NISA対象商品は投資信託に比べれば多くありません。非課税枠をフルに活用するためには、ほかの投資手段との比較や、ETFの吟味に時間をかける必要がありそうです。

なおETFは銀行での取扱いはなく、取引する場合は証券会社でNISA口座を開設することになります。

・REIT

REIT(不動産投資信託)も投資信託の一種で、投資対象として不動産を組み込んでいます。投資家は不動産投資法人を通じて対象への投資を行うため、個人で不動産投資を行う場合に比べ少額から始めることができます。

出資金を募った不動産投資法人は運用会社へ業務委託を行い、運用会社がテナントなどを購入し利益を得ます。その運用益からコストを差し引いた分が、REIT運用益として投資家へ分配されることになります。

NISAで購入できる金融商品のメリット、デメリット

それぞれの金融商品には必ずメリットとデメリットが存在します。

たとえば株式では大きなリターンが得やすくマージンなどコストも低い反面、ボラティリティ(値動き幅)が高いためリスクが大きく、まとまった初期費用も必要で、投資活動に割く時間も長くなる傾向があります。

また、企業の業績悪化などで売り注文が殺到し、買い手が見つからず価格も下落し続け、いつまでも取引が成立しないなどの状態も起こりえます。金融商品の取引(換金)のしやすさを「流動性」といいますが、株式投資は「流動性リスク」が相対的に高めであるといえます。

ファンドマネージャーに運用を任せられる投資信託では、金融のプロが流動性を考慮したうえでポートフォリオを組むため、流動性リスクの低さがメリットになります。一方、分散投資効果により値動きは緩やかで短期で大きなリターンが得にくい点、また信託報酬などのコストもかかる点がデメリットといえるでしょう。

ETFは株式よりは小さな資金で始めやすく、取引コストも投信より低いというメリットがある反面、商品ラインアップが少なく選択肢が限定されます。

以下に、株式、投資信託、ETFでのそれぞれの特徴をまとめて表にしてみました。メリットとデメリットはそれぞれ表裏一体な部分がありますので、ご自身の重要視する点から比較し、検討してみましょう。

▽NISAで投資できる株式、投資信託、ETFの特徴比較

現物株式 投資信託 ETF
投資対象 株式 NISA対象は株式のみ 株式等
最低投資金額 数万円~ 100円~ 数千円または数万円~
コスト
リターン
ボラティリティ
流動性リスク

あなたのNISA投資にぴったりの金融機関の選び方

NISA口座は1人1つしか開設できません。上述したように、投資できる商品は、口座を開設した金融機関で取り扱っているものに限られるため、金融機関選びがより重要となってきます。以下より、NISA口座開設のための金融機関の選び方を考えてみましょう。

金融機関の選び方1:株式を購入するなら

株式は投資信託などに比べ金融機関ごとの違いは少ないように思えますが、IPO(新規上場株)においては顕著な違いが見られます。初値よりも株価が上がることが多く利益が出やすいといわれるIPOですが、抽選に当選しないと購入できません。割当本数は証券会社ごとに大きく異なり、取り扱わない会社もあるため注意が必要です。

・主幹事実績が多い大手総合証券

企業の新規上場を支援する「主幹事証券」は、その銘柄を取り扱う他の「幹事証券」よりも割当数が多くなるため、当選確率も高くなります。主幹事証券は多くの場合、歴史と実績がある対面営業中心の総合証券が務め、なかでも野村證券は業界トップのIPO取り扱いを誇ります。

・ポイントによる当選優遇があるSBI証券

ネット証券のなかでもSBI証券はIPOの取扱本数が多くなっています。SBI証券に口座を開設する人も多いため、当選確率は低くはなりますが、抽選に外れた場合「IPOポイント」が付与され、次回以降の抽選でポイントを使えば当選しやすくなるシステムを導入しています。

IPO取引の場合、公開価格で購入し初値で高く売るスタイルが中心となるため、NISAの優遇枠を使い切ってしまう懸念はあるものの、新規上場する企業への長期的な出資を考えるのであれば、SBI証券でのNISA口座開設も有力な選択肢といえそうです。

・マネックス証券では海外株の買付手数料が全額キャッシュバック

ネット証券大手のマネックス証券は、海外投資に積極的な金融機関の1つです。海外投資リスクの1つである為替コストについても、円→米ドルの為替手数料を0円にするなどのキャンペーンを行なっています。

マネックス証券は米国株と中国株がNISA対象商品で、本数も業界トップクラスです。また買付時の国内手数料が無料になる点も見逃せません。米国株での無料キャンペーンを行う証券会社はありますが、マネックス証券では中国株も同様にキャッシュバックされます。

購入手数料は1回の取引では少額でも、複数回の取引により無視できないコストとなります。また海外株式では、現地で登記している企業の配当金は現地で源泉徴収されるなど、NISAの適用から外れるケースもあります。少しでもコストを抑える工夫が、投資利回りの向上につながります。

金融機関の選び方2:投資信託を購入するなら

NISA口座で投資できる投資信託は、口座を開設した金融機関によって取扱い商品の本数に大きな違いがあります。また、取引の手数料なども、金融機関によって異なります。これからNISA口座を使って投資信託を中心に投資を始めたいなら、投資信託の取扱本数が多く、また手数料の設定において有利なネット証券が、有力な候補となるでしょう。特にネット証券大手であるSBI証券、楽天証券について、解説します。

・ネット証券最大手のSBI証券、楽天証券

ネット証券の2大巨頭、SBI証券と楽天証券は投資信託の取り扱いにおいてトップクラスで、ほかのネット証券の2倍に当たる約2,600本もの投信を取り扱っています。

商品ラインアップもさることながら、ネット完結できる保有管理の手軽さや、初心者向けオンラインコンテンツなど、ネット証券の強みを活かし工夫を凝らした運営を行っています。

口座開設数ではSBI証券が1位ですが、楽天証券の伸びも顕著です。ポイントシステムや、提携銀行との連携により受けられる特典、スマートフォンでのサイトの見やすさなども人気の要因となっています。

金融機関の選び方3:ETFを購入するなら

投資信託としてリスク分散しながら、取引所への上場により流動性も高いのが魅力のETF。こちらも口座を開設する金融機関により、取扱数には大きく違いがあります。国内はもちろん海外のETFも多く取り扱うネット証券大手は、口座開設の有力候補となりそうです。ネット証券2大大手のSBI証券、楽天証券の特徴について、確認しましょう

・海外ETFが無料のSBI、楽天

ETFでも楽天証券とSBI証券が強みを発揮します。海外ETFでの取り扱い本数の多さもさることながら、買付時の手数料が無料になるなど、コスト面にもアドバンテージがあります。

またSBI証券では、住信SBIネット銀行との連携により為替スプレッド(通貨の売値と買値の差額)が小さく、またロイター社によるニュースやデータベースが提供されるなど、海外投資のハードルを低くするサービスが多数用意されています。

まとめ:目的に合った無理のないNISA運用を

制度のスタートからまもなく適用期間が延長され、ジュニアNISAにつみたてNISAとサービスが拡充されたNISAは、多くの金融機関が参入し商品ラインアップも充実してきています。

金融庁による基準をクリアした金融商品が対象となっているため、リスクの低さも魅力です。NISAをよく理解して、ご自分のライフスタイルや投資スタイル、資金作りの目的に合った運用を心がけることが成功への近道といえるでしょう。

文・雲山 陸
フリーランスライター。これまでに税、不動産、投資情報を中心に数多く執筆。また教科書等海外出版物の英日翻訳や、音楽等芸術分野の知識を活かしコンサートパンフレット・エンターテインメント記事の執筆など幅広く手掛けている。