専門家に運用を委託する投資信託は、金融商品に深い知識がなくても投資しやすい金融商品として人気があります。しかし、投資のために、どの銀行や証券会社を選べばいいのか、あるいはどんな商品を選べばいいのかがわからず、はじめの一歩を踏み出せない人が多いかも知れません。本記事では金融機関ごとの特徴や投資信託の種類などを紹介します。

目次

  1. みんなのお金を集めて、プロが運用する投資信託
  2. 投資信託は「運用形態」「購入可能時期」「払い戻しの可否」などで分類される
  3. 運用方針からインデックス型、アクティブ型に分けられる
  4. 投資信託の運用先は目論見書で確認できる
  5. 投資信託のメリットは?
  6. 投資信託のデメリットやリスクは?
  7. 投資信託はどこで購入できる?
  8. 投資信託を購入するために。口座の種類を知ろう
  9. 大手証券、ネット証券、銀行での投資信託を比較
  10. 結局、投資信託はどこで購入すればいいの?
  11. 投資信託への投資を始めるなら、自分に合った金融機関選びを

みんなのお金を集めて、プロが運用する投資信託

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(画像=994yellow/stock.adobe.com)

投資家から集めた資金を、ファンドマネージャーなどの専門家が運用し、利益を投資家に分配するのが投資信託です。株式や債券の取引においては、相場の急変によるリスクを抑えるための手法として、銘柄や投資タイミングを多様化させる「分散投資」が基本とされます。投資信託は多くの投資家から資金を集めることから資金規模が大きくなるため、幅広い銘柄に投資できます。そのため、大きな分散効果を得ることができます。

投資信託ごとにリスクの幅や参照する指標は異なり、それぞれの方針に沿って運用されています。また、投資信託では元本保証はありませんが、たとえば企業が倒産すれば資産価値がゼロになる株式とは異なり、投資先企業の1つが倒産しても投資信託そのものはなくなりません。これも分散効果の特徴です。

投資信託は「運用形態」「購入可能時期」「払い戻しの可否」などで分類される

投資信託は運用形態、購入可能期間、公募か私募か、運用期間中の払い戻しが可能か、株式に投資が可能か、などの条件で分類されます。

運用形態

運用会社と信託銀行が信託契約を結ぶ「契約型」と、投資を目的とする法人(投資法人)を設立する「会社型」に分かれます。日本では契約型が主流ですが、会社型で運用されるJ-REIT(不動産投資法人)などもあります。

購入可能時期

当初の募集期間のみ購入できる「単位型」と、運用期間のいつでも購入できる「追加型」があります。

公募/私募

機関投資家など少数の投資家が購入できる「私募」よりも、誰でも購入可能な「公募」が主流です。

払い戻し

多いのは運用期間中ならいつでも払い戻し可能な「オープンエンド型」ですが、運用期間中は払い戻しに応じない「クローズドエンド型」もあります。

株式投資の可否

約款に株式に投資できる旨が明記されている「株式投資信託」と、株式には投資しない旨が明記されている「公社債投資信託」があります。

公社債投資信託には、MRF(追加型公社債投資信託)、ETF(上場投資信託)、MMF(マネーマネジメントファンド)の3種類がありますが、現在MMFは多くの証券会社で販売中止になっています。

MRFは安全性の高い公社債などで運用される投資信託で、いつでも払い戻し可能なオープンエンド型です。元本保証はないものの元本割れの可能性が低いため、利回りの良い預金として活用している個人投資家も少なくありません。

ETFは日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)など、特定の指標(インデックス)の動きに連動した運用成果を目指して運用される投資信託です。ETFは株価指数だけでなく、債券やREIT(リート)、通貨、コモディティ(商品)の指数に連動したものもあります。また取引所に上場しているため、いつでも売買が可能です。

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運用方針からインデックス型、アクティブ型に分けられる

上記のETFはインデックスと同水準の運用成果を目指した投資信託ですが、インデックスを上回る収益を目指す「アクティブ型投資信託」などもあり、それぞれリスクとリターンの許容幅が異なります。運用方針から投資信託を分類すると、主に下記のように分けられます。

インデックス型投資信託

日経平均株価やTOPIXなどの値動きに近い運用成果を目指します。信託報酬はアクティブ型と比べると低めです。

アクティブ型投資信託

インデックスを上回る運用成果を目指します。銘柄選択のための調査コストなどが発生するため、信託報酬はインデックス型より高めです。

投資信託の運用先は目論見書で確認できる

投資信託は商品ごとに運用対象が異なります。一部上場企業の株式、ジャスダックやマザーズなど成長企業を中心とした株式、海外株式、公社債など多様な投資対象があり、連動させる指数も多様です。

運用先や運用方針、実績や手数料などは、投資信託の購入を検討する投資家に渡される「目論見書」に明記されています。購入の前には必ず目を通し、自分自身の投資目的や許容できるリスクと合致しているかどうかを確認することが重要です。

投資信託のメリットは?

投資信託の最大のメリットは分散効果です。一部の投資先が倒産しても、それによる損失は通常の株式投資よりも軽減されます。

また投資信託は「分別管理」が義務付けられ、証券会社や銀行など販売会社、運用会社、資金を預かる信託銀行などの財産とは別に管理されています。それらの会社が倒産しても、投資信託は別の運用会社などに移管されるか、繰上償還により払い戻しを受けることになります。この点でも通常の株式投資よりも安全度は高くなっています。

投資信託のデメリットやリスクは?

投資信託のデメリットとしては、株式投資とは違い、毎月の手数料が発生することです。また、売却益も株式投資と比較すると低いため短期での売買には不向きです。

もちろん、投資である以上は経済動向や企業業績、為替の急変などの影響を受けるので、元本割れの可能性も否定できません。このように一定のリスクを許容する必要があります。

投資信託はどこで購入できる?

投資信託はさまざまな金融機関で販売されており、それぞれに特徴があります。最近はネットでの販売も普及しています。販売手数料も最近でノーロード(手数料無料)の機関も多く、手軽に始めることができます。

投資信託の購入先1:証券会社

証券会社には、店舗での対面販売を主とする大手証券会社と、オンラインで販売しているネット証券会社があります。対面販売のメリットは営業担当に相談できることや、アドバイスを受けられる点にありますが、手数料はネット証券よりも高い傾向があります。扱う投資信託の種類も豊富です。

対してネット証券は営業担当者からアドバイスなどは受けることができませんが、多くの場合は販売手数料が無料です。扱っている投資信託の種類は対面販売よりもさらに多く、大手では数千種にも上ります。

投資信託の購入先2:銀行・信用金庫など

多くの銀行では投資信託も販売しています。メインバンクで購入すれば、預金やローン状況とあわせた投資計画を立てることができるでしょう。

・大手都市銀行

対面販売が主流で、ほとんどの銀行で販売手数料がかかります。品ぞろえは証券会社ほど多様ではありません。

・地方銀行

大手都市銀行と同じく対面販売が主流で、原則として販売手数料もかかりますが、ネット取引では手数料の10%がキャッシュバックされるなどのサービスもあります。

・第二地方銀行

地方銀行よりもさらに商品数は少ない傾向があり、販売手数料もかかります。地銀や第二地銀では投資信託購入や大口の預金、年金受取指定などで預金金利が高くなるケースもあります。

・ネット銀行

多くのネット銀行では、同系列のネット証券との提携サービスを行っています。ネット銀行口座からの自動引き落としにより、ネット証券の投資信託への積立を行うことで、金利が優遇されるなどの特典があります。

・ゆうちょ銀行

証券会社と比べると商品数は少なく販売手数料もかかりますが、2020年10月21日現在で128種類の投資信託を販売しています。おなじみの郵便局で販売されていることも多く、郵便局に用事のある時に局員に相談できるのは便利です。ただし、郵便局では一部の商品を扱っていないことがあるので要注意です。また、投資信託の取り扱いのある郵便局と、取り扱いのない郵便局もあります。

・信用金庫・、信用組合

対面販売が主ですが、インターネットで取引できるところもあります。信用金庫で50種類ほど、信用組合では30種類ほどの商品が販売されています。

・JAバンク(農協)

23種類の投資信託を扱っています。ネットで公開されている情報は少なく、対面販売が中心となります。

投資信託の購入先3:その他(生命保険会社や損害保険会社、各種共済等)

その他に、生命保険会社や損害保険会社、各種共済等でも投資信託を販売しています。ただしNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)などには対応していないケースが多く、税金の優遇などを受けられないこともあるので、申し込む際には確認が必要です。

投資信託を購入するために。口座の種類を知ろう

投資信託に投資する場合は投資信託口座を開設する必要があります。投資信託口座は大きく「一般口座」と「特定口座」に分けられます。

一般口座で投資する場合、投資家は自ら年間の損益を計算し、確定申告する必要があります。特定口座の場合は販売会社が「年間取引報告書」を作成してくれますし、源泉徴収ありの特定口座であれば所得税も差し引かれているので、確定申告の必要もありません。

また、NISA制度を使う場合はNISA口座を、iDeCoならiDeCo口座をあわせて開設する必要がありますが、どちらも非課税優遇枠の収益に関しては非課税なので、確定申告の必要はありません。優遇枠を超えた分については一般口座か特定口座に払い戻しとなり、課税対象となります。

個人投資家であれば、源泉徴収ありの特定口座を開設し、必要があればNISA口座やiDeCo口座を併設するのが一般的です。

大手証券、ネット証券、銀行での投資信託を比較

多くの個人投資家は、大手証券会社、ネット証券会社、銀行のいずれかで投資信託を購入し、資産運用を行っています。それぞれのメリットとデメリットを比較してみましょう。

大手証券会社のメリットとデメリット

大手証券会社で購入する最大のメリットは、知識が豊富な営業担当者に相談しながら、豊富な種類の商品から選択できることでしょう。MRFの払い戻し金を店舗で下ろすこともできますし、初心者向けセミナーや冊子なども充実しています。

デメリットは、ネット証券より手数料が高くなりがちなことです。iDeCo口座の口座管理手数料も、100万円以上の資産がないと高くなるなどの制限があります。また、対面営業で比較的リスクとリターンの高い商品を勧められてしまう可能性もあります。

ネット証券会社のメリットとデメリット

ネット証券では100円から取引できるところが多く、少額投資でも手数料が安い点が魅力です。購入手数料も多くはノーロードで、取扱商品数も銀行の約10倍と多様な商品から選択できます。購入や売却手続きは24時間いつでもできますし、貯まったポイントで投資できる会社も少なくありません。

初心者向けのオンラインセミナーなども充実していますが、基本的には自分で投資判断をしなければならず、初心者は迷うことも多いかも知れません。証券口座開設から投資信託購入まで、すべての手続きを自分で行わなければならない点も、ネットに慣れていない投資初心者には、準備と知識が必要といえるでしょう。

銀行のメリットとデメリット

ほとんどの人が銀行口座を持っており、現金の引き出しや振り込み、諸手続きなどで足を運ぶ機会も少なくないことでしょう。銀行で投資信託を購入するメリットとしては、他の用事で足を運んだついでに、窓口で投資信託購入の相談もできることにあります。

ただし証券会社よりも商品数は少なく、販売手数料も高めです。対面販売で銀行から見て収益性の高い商品を勧められる可能性もあります。

結局、投資信託はどこで購入すればいいの?

自分にあった投資信託を始めるための金融機関選びは、どんなポイントを重視すべきでしょうか。

購入したい投資信託があるか?

「どんな商品・銘柄に投資しているファンドなのか?」「利回りは?」「信託報酬などのコストは?」「いくらから積立ができる?」など、条件が多岐にわたる場合は、商品数の豊富なネット証券が比較検討しやすいといえます。

アドバイスは必要か?

1人ではなかなか決めることができない、アドバイスが欲しいという人は、大手証券会社や銀行での購入をおすすめします。普段取引している金融機関の安心感や経営の安定性を重視する人や、PCやスマホの操作に苦手意識がある人も、対面相談が向いているといえそうです。

運用コストは?

とにかくコストを抑えたい人や、なるべく少額から投資信託を試したい人には、ネット証券が向いています。月100円から始められる手軽さと購入手数料がかからない「ノーロード」の多さは、ネット証券ならではの利点です。

参考までに、ネット証券大手5社の特徴を表にまとめてみました。サービスなどは2020年10月21日現在のものです。

▽ネット証券5社の取り扱い投資信託数とサービス比較

取り扱い商品数 購入手数料 最低投資金額 ポイント投資の有無 サービス充実度
SBI証券 2,634(国内株式440 国際株式699 国内債券49 国際債券660 国内リート50 国際リート134 バランス475 コモディティ18 ヘッジファンド22 ブルべア29 その他56 無(ノーロード) 月100円 有 Tポイント SBI銀行とリンクすると銀行金利が優遇される
楽天証券 2,678(国内株式450 海外株式738 国内債券44 海外債券716 国内不動産52 海外不動産136 コモディティ7 ミックス412) 無(ノーロード) 月100円 有 楽天ポイント 楽天銀行とリンクすると銀行金利が優遇される
マネックス証券 1,163(国内株式196、国際株式385、国際債券230、日本債券27、バランス298、ブルべア22) 無(ノーロード) 月100円 有 マネックスポイント 投資信託をもっているだけでアマゾンギフトカードに交換できるマネックスポイントが貯まる
松井証券 1,256(国内株式216 新興国株式114 国内債券36 先進国債券172 国内リート32 コモディティ15 先進国株式246 新興国債券61 海外リート66 その他300 無(ノーロード) 月100円 有 松井証券ポイント 投資信託を購入すると信託報酬の一部がキャッシュバックされる
auカブコム証券 1,254(国内株式235、外国株式375、債券3、バランス641) 無(ノーロード) 月100円 有 ポンタポイント じぶん銀行とリンクすると銀行金利が優遇される

投資信託への投資を始めるなら、自分に合った金融機関選びを

コストの低さや手軽さを求めるのか、初心者に寄り添ったアドバイスを重視するのか、日頃から通っている金融機関で投資信託も始めたいのか、など、求める条件や利便性は人それぞれです。逆にいえば自分が何を優先するのかを確認すれば、自分にあった金融機関も絞られてくることでしょう。

いずれにしても投資信託は商品そのものが分散投資を前提に組み立てられており、かつ少額から始められるという点で、投資初心者向けの商品といえるでしょう。

文・北垣愛
国内外の金融機関で、金融マーケットに直接携わる仕事を長く経験。現在は資産運用のコンサルタントを行いながら、主に金融に関する情報発信も行っている。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、FP一級技能士、宅地建物取引士資格試験合格、食生活アドバイザー2級