CFD取引は一般的にはあまり知られていない金融商品ですが、とても便利な仕組みの投資方法です。CFD取引にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。取引時間や各社のチャートツールに加えて、証券会社を選ぶ際のポイントも紹介します。

目次

  1. CFD取引とは?
  2. CFD取引のメリット
  3. CFD取引のデメリットとリスク
  4. CFD取引を始める際の証券会社を選ぶポイント
  5. CFD取引取扱い4社の「特徴」「手数料」「取扱商品」「チャートツール」を比較
  6. メリットはもちろん、デメリットとリスクをよく把握して取引しよう

CFD取引とは?

CFD取引とはなにか?メリット・デメリットは?取引時間やチャートツールも解説!
(画像=taa22/stock.adobe.com)

はじめにCFD取引の概要を確認します。CFDとは「Contract For Difference」の略で「差金決済」のことを指します。

差金決済取引とは

差金決済とは、株式等有価証券の受け渡しを行わずに、買付金額と売却金額の差額の授受のみで決済する方法です。通常、信用取引以外で株式の差金決済を行うことは法律で禁止されています。CFD取引は現物の株式を売買するわけではないため、差金決済が可能となります。

株価指数や商品などが対象

CFD取引の対象になるのは、株価指数や商品(コモディティ)などです。ニューヨークダウなどなじみが深い株価指数が採用されているので、投資判断がしやすい取引方法といえます。商品のなかには金(ゴールド)もあるため、金投資の代用にすることも可能です。証券会社によっては個別株を扱っている場合もあります。

売買レートの取引差額で利益を出すもの

CFD取引は、売買レートの取引差額で利益を出します。ASK(買い)とBID(売り)の価格が提示され、投資家が買う場合は「売りの価格」で買います。逆に売る場合は「買いの価格」で売ります。

【例】

(A)売値5,100 買値5,050

(B)売値5,200 買値5,150

上記のレートでは、買う人は5,100円で買い、売る人は5,050円で売ります(A)。このレートが翌日買値5,150円になれば、前日5,100円で買った人が売った場合に50円の利益が出ます(B)。

CFD取引ができる時間は?

CFD取引ができる時間は、証券会社や対象商品によって異なります。GMOクリック証券の例では、以下のような時間帯で取引できます(主な取引)。

  • 日本225:月~金曜日8:30~翌7:00
  • 米国株価指数各種:月~金曜日8:00~翌6:15
  • 上海A50:月~金曜日10:15~16:25
  • 株価指数ETF全銘柄共通:月~金曜日23:30~翌6:00
  • 商品(金・銀・原油・天然ガス):月~金曜日8:00~翌7:00
  • 商品(コーン・大豆):月~金曜日10:00~22:45、23:30~翌4:15

また、銘柄によっては米国夏時間、欧州夏時間が設定されている取引があります。開始と終了の時刻がそれぞれ1時間ずつ早まるので注意が必要です。米国夏時間は3月第2日曜日午前2時~11月第1日曜日午前2時まで。欧州夏時間は3月最終日曜日午前1時~10月最終日曜日午前1時となっています。

取引ができる対象資産は?

取引ができる対象資産は、株価指数が日本株225種、ダウ工業株30種、ナスダック100、SPX500などとなります。商品は金、銀、原油などを扱っています。株価指数はよく知られたものなので、投資判断はしやすいでしょう。また、会社によってはETF(上場投資信託)、ETN(上場投資証券)、REIT(不動産投資信託)、債券先物を扱っているところもあります。

CFD取引のメリット

CFD取引には、以下のようなメリットがあるので、有効に活用するとパフォーマンスのよい取引が可能になります。

CFDのメリット1:1つの口座で世界中の資産に投資できる

CFD取引は、1つの取引口座で世界中の資産に投資することができます。通常の証券投資では国内株取引と外国株取引は別の口座になるので、分ける必要のないCFDは利便性の高い取引といえます。商品にも投資が可能なので、原油や金も相場の動向をみながら、機動的に投資することができます。

CFDのメリット2:取引コストが低い

CFDの取引コストは取引手数料とスプレッドのみです。手数料は無料の会社もあるため、実質的にはスプレッドのみで取引できる場合があります。スプレッドとは買値と売値の表示差額のことをいいます。例えば、ある個別株のCFD取引レートが「1,500~1,505」の場合、スプレッドは5円になります。また、ドル/円のCFD取引レートが「105.10~105.15」の場合、スプレッドは5銭になります。

CFDのメリット3:売りからのポジションが持てる

CFD取引は信用取引と同じく、売りのポジションから入ることができます。相場全体が過熱しているときや地政学リスクが発生したときに売りから入ることで利益を得られるチャンスが広がります。相場はリーマンショックをみるまでもなく、下がるときのほうがスピードは速いので、売りから入れるのは有利といえます。

CFDのメリット4:資金効率がよい

CFD取引は、資金効率がよいのもメリットです。レバレッジを効かすことができるので、少ない自己資金で数倍の取引をすることが可能です。GMOクリック証券では商品ごとにレバレッジを設定しています。外国株CFDとバラエティCFDが5倍、株価指数CFDが10倍、商品CFDが20倍という倍数です。

例えば、証拠金を10万円入れて10倍のレバレッジを効かせる場合は100万円の取引を行うことができます。この銘柄が110万円に値上がりしたらどうなるでしょうか。10万円の利益が出ますが、投資した資金は10万円ですので、利益率は100%です。これが普通の現物株取引では100万円投資して10万円の利益を得るので、利益率は10%でしかありません。比較すると、CFD取引の資金効率のよさがわかります。

CFDのメリット5:取引期限がない

CFD取引には先物取引のような取引期限(限月)がありません。精算日にポジションが解消されたり、自分で次の限月に乗り換えるなどのリスクや手間が無いので、安心して取引できます。

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CFD取引のデメリットとリスク

CFD取引は便利な反面デメリットもあるので、以下のような点に注意して取引を行う必要があります。

CFDのデメリットとリスク1:レバレッジが効くので損失が大きくなる可能性も

先述したように、レバレッジは自己資金の何倍もの取引ができ、大きな利益を上げることが可能です。しかし、裏を返せば何倍もの損失を被るリスクを抱えることも意味します。したがって、取引を始めて間もない段階では、なるべく少ない資金から始めるべきでしょう。

ただし、一般的に先物取引が1,000単位や100単位であるのに対し、CFD取引は10単位で取引が可能です。リスクが小さくなるように工夫もされているので、無理のないバランスを考えてレバレッジを利用するようにしましょう。

CFDのデメリットとリスク2:株や投資信託と損益通算できない

CFD取引で損失が出ても、株式や投資信託と損益通算することはできません。現物株取引で100万円の利益が出た場合で考えてみましょう。損益通算ができればCFD取引で30万円の損失が出た場合、差し引き70万円に対して約20%課税されます。これに対し、損益通算ができないと100万円全額に課税されることになります。両者を比べると、(100万円×0.2)-(70万円×0.2)=6万円も課税額に差が出ます。

CFDのデメリットとリスク3:FD取引に関する情報が少ない

CFDは株式や投資信託のようなメジャーな取引ではないので、情報が少ないのもデメリットです。メディアから情報を得るのは難しいと考えたほうがよいでしょう。情報を得るとすれば、チャートツールのなかに配信される、「マーケットニュース」や「分析レポート」などを参考にする方法があります。

CFDのデメリットとリスク4:追証が発生する可能性がある

レバレッジ取引をするためには、証券会社に証拠金を預ける必要があります。CFDの評価額が必要な証拠金の金額を下回った場合、追加の証拠金を入金しなければなりません。この追加で入金する資金のことを「追証(おいしょう)」といいます。もし、期日までに入金できなかった場合は強制決済となり、損失が確定します。

ただし、追証による損失を拡大させないために、ロスカットという仕組みが用意されています。ロスカットとは、含み損が一定の基準に達すると、自動的に取引が決済される仕組みです。

CFDのデメリットとリスク5:配当金を支払う場合がある

CFD取引でも買いポジションで入っている場合は、配当金調整額を受け取ることができます。逆に、売りポジションで入っている場合は、買い方への支払い義務が生じるため、取引口座から相当する金額を引かれます。売りポジションでは配当金がデメリットになることを心得ておく必要があります。

CFD取引を始める際の証券会社を選ぶポイント

続いて、CFD取引を始める際にどの証券会社を選べばよいか、ポイントを紹介します。

CFD取引のための証券会社選びのポイント1:コスト

あらゆる投資において重要なのが取引にかかるコストです。取引手数料は完全無料の会社と、一部無料の会社があります。スプレッドは銘柄や証券会社によって異なります。よく利用する銘柄のスプレッドは、わずかな差でも取引回数が多くなるほど差が広がっていきます。コストは取引手数料とスプレッドを総合的に比較して判断する必要があります。

CFD取引のための証券会社選びのポイント2:信頼性

大事な資産を運用するので、信頼できる証券会社を選ぶことが大事です。

  • CFDの取引実績が多い
  • セキュリティがしっかりしている
  • 情報をきちんと開示している

これらのポイントを比較して、安心して取引できる証券会社を選ぶようにしましょう。セキュリティ面では、多くの証券会社が信託保全を導入しており、万一破綻した場合でも、投資家の資産は全額保全されます。

CFD取引のための証券会社選びのポイント3:取扱銘柄

取扱銘柄が多いということはそれだけ選択肢が広がるということ。取扱銘柄数は証券会社によってまちまちです。個別株CFDを扱っていない会社もあるので、株価指数を買うか、個別株を買うかによっても選ぶ会社が違ってきます。

CFD取引のための証券会社選びのポイント4:ツールの充実度

インターネット取引で重要になるのがチャートツールです。各証券会社が独自のチャートツールを開発しているので、ホームページで詳細を確認してみましょう。ほとんどの証券会社のツールはPC(パソコン)用とスマホ用の両方を用意しています。

基本的な機能は各社とも備えているので、レイアウトをみて使いやすいツールを選ぶのも1つの方法です。日常的に使うものなので、自分の感性に合っているか否かは重要な要素といえます。とくにPC版とスマホ版ではレイアウトが違うので、迷うところでしょう。基本的には両方あれば、自宅と外出先で使い分けられるので、投資機会を逃がさずに済みます。

CFD取引のための証券会社選びのポイント5:サポート機能

取引する際に不明な点がある場合に頼りになるのがサポート機能です。証券会社のコールセンターでは、各種手続きからチャートツールのインストールの方法まで聞くことができます。24時間体制で電話またはメールで問い合わせることが可能です。

CFD取引取扱い4社の「特徴」「手数料」「取扱商品」「チャートツール」を比較

ではCFD取引を扱っているネット証券会社のサービス内容をみてみましょう。数ある証券会社のなかから、GMOクリック証券、~~ DMM.com証券、 IG証券、サクソバンク証券の4社のサービスを比較すると以下のようになります。

手数料 取扱商品 チャートツール
GMOクリック証券 無料 株価指数、商品、ETF、ETN、REIT、米国株、中国株 はっちゅう君CFD(PC) プラチナチャートCFD(PC) CFDroid(スマホ)

iClickCFD(スマホ)
DMM.com証券 無料 株価指数、商品 DMMCFD STANDARD(PC)
DMMCFD BASIC(PC)

プレミアチャート(PC)

DMMCFDスマホ(スマホ)
IG証券 株式CFD以外は無料。株式CFDは、日本株が0.055%、米国株が1株2.20セント、英国株が0.110%。 株価指数、株式、商品、債券先物、 ETF Webブラウザ版取引システム(PC)

トレーディングアプリ(スマホ、タブレット)
サクソバンク証券 株価指数、商品、日本株は無料(日本株日計り取引は0.05%)。米国株式・ETF、ETNは0.15%。中国株式は0.2%。欧州株式・ETF、ETNは0.25%。 株価指数、株式、商品、ETF、ETN Saxo Trader Go(PC、スマホ)

Saxo Trader Pro(PC、スマホ)

取扱商品は各社それぞれに特色を出しているので、自分が投資したいカテゴリーがあるかをチェックしましょう。各社の特色は以下のとおりです。

GMOクリック証券

GMOインターネットグループの証券会社です。2015年度のオリコン顧客満足度ランキングのネット証券部門で1位に輝きました。取引を開始する前に「デモ取引」を無料で試すことができます。チャートツールはPC用とスマホ用が2つずつあり、充実しています。レートは口座開設していなくても、ホームページの「レート」ボタンからみることができます。

DMM.com証券

取扱い銘柄を日本株225種、ダウ工業株30種、ナスダック100、米国SPX500、金、銀、原油の7銘柄に絞っています。DMM.com証券のメリットはスプレッドが原則固定なので安心して取引できることです。また、「取引応援ポイントサービス」を実施しており、FX、CFDの新規取引ごとにポイントが貯まります。

IG証券

取扱い銘柄数が多いのが特徴で、国内外1万2,000銘柄の株式に1株から投資することができます。スプレッドは主力通貨ペアのドル/円が0.2銭と安いのが魅力です。日経平均、ダウ、VIXなどの株価指数は24時間取引できるので便利です。

サクソバンク証券

取扱い銘柄数は合計で、9,000銘柄と充実しています。米国株の買い建て・売り建てができるので、現物株では提供されていない、米国株の信用取引を実質的に行えます。チャートツールが一般用とプロ用に分かれているのがユニークです。

メリットはもちろん、デメリットとリスクをよく把握して取引しよう

投資にはメリットもあれば、デメリットもあります。特に長期投資ではないCFD取引においては、ほかの投資以上にメリット・デメリットを把握して取引する必要があります。

とくに株式や投資信託などメジャーな金融商品との違いを頭に入れておくことは大事です。普通株取引や投資信託にはない、レバレッジという仕組みがあります。大きく利益をあげられる半面、ロスカットによって強制的に決済させられるなど、もろ刃の剣にもなります。

また、損失が拡大した場合は追加証拠金が発生することも、普通株や投資信託にはないデメリットです。もう一つ、買いポジションの場合は配当金相当額を得られますが、売りポジションでは逆に支払いが生じるのも異なる点です。

それでも、少ない資金で世界のさまざまな株式や商品に投資できるのはCFD取引の大きな魅力です。メリット・デメリットをしっかり把握し、コストパフォーマンスのよい投資を目指すことが求められます。

文・丸山 優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している。