投資の経験がある人であれば、一度は「サンデーダウ(ウィークエンドダウ)」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。「ダウ」はS&P ダウ・ジョーンズ・インデックスが算出する「ダウ平均株価」のことですが、日曜日(サンデー)にニューヨーク証券取引所は動いていません。

では、このサンデーダウとは何でしょうか。またSNSなどでまことしやかに囁かれる「サンデーダウで週明けの株価が読める」は本当なのでしょうか。本記事で解説していきます。

目次

  1. サンデーダウとは?
  2. サンデーダウの影響度と信憑性
  3. そもそもCFD取引とは?
  4. まとめ:サンデーダウとの正しい付き合い方を身につけよう

サンデーダウとは?

金融
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

サンデーダウを一言でいえば「中東レートのニューヨークダウ版」のことです。

本家のニューヨークダウは、ニューヨーク証券取引所に上場している30種の優良銘柄で構成される株価指数です。工業株が構成銘柄の主体で、正式には「ニューヨークダウ工業株30種平均」といいます。

サンデーダウはこのダウ平均を参照に、外部の取引環境で売買されている指数商品で、具体的にはIG証券の「Weekend Wall Street」という銘柄を指します。Weekend Wall Streetは、現物資産を売買することなく、「参照している数値」をもとに取引開始時点から取引終了時点に発生した差額分を決済するCFD(差金決済取引)の一種です。CFDの詳細は後述しますが、Weekend Wall Streetはダウ平均を参照しつつ取引される、デリバティブ(派生)商品の一種です。

では「中東レート」とは何でしょうか。中東諸国のいくつかでは金曜日がイスラム教の集合礼拝日にあたり、為替決済も休業します。その代わりに週末は為替取引が行われるため、土日でも為替市場のレートが動きます。これを「中東レート」と呼び、週明けのレートの参考にする投資家も少なくありません。

Weekend Wall Streetも中東レート同様に、投資対象としてではなく週明けの株価を展望する指標としても利用されています。IG証券はロンドンに本拠を構える金融グループで、中東で上場しているわけではありませんが、指標としての用途から「中東レートのニューヨークダウ版」と評されています。実際は土曜日も動いているため「ウィークエンドダウ」とも呼ばれています。

Weekend Wall Streetの特徴

Weekend Wall Street は日本時間の土曜日13時から14時頃に動き始め、月曜日にニューヨーク市場が動き始めるまでの週末専門商品です。

CFDは売買それぞれの顧客をマッチングする形で約定する「相対取引」が原則で、売りたい人と買いたい人が証券会社の口座内で注文を出し、価格が一致したら約定です。Weekend Wall Streetも相対取引で運用されるため、ニューヨーク証券取引所が動いていない週末であっても、疑似的にダウ平均の指数取引ができるわけです。

サンデーダウの影響度と信憑性

サンデーダウを参照することで、どの程度まで週明けの市場動向を読むことができるのでしょうか。また、指数としてどこまで信憑性があるのでしょうか。

証券会社の顧客同士で買いたい人と売りたい人をマッチング

Weekend Wall Streetのような商品は、ほかにも数多くあります。IG証券にはWeekend Wall Streetだけでなく、日経平均株価やS&P500、ナスダック指数といった日米の主要指数から、イギリスのFTSE、ドイツのDAX30などの株価指数を参照するCFD商品が揃っています。それぞれの市場が動いていなくても、取引できるのも同じです。

また、CFDによる指数取引サービスを提供している証券会社はIG証券だけではありません。それぞれの証券会社内で顧客をマッチングさせ約定しているため、さながら証券会社ごとに独立した市場があるというイメージに近いといえます。

市場参加者は少ないものの、トピックがあった際に注目度が高まる特徴

証券会社内の顧客同士という限られた範囲での相対取引なので、「ダウ」と呼ばれてはいるものの、本家と比べると圧倒的に市場参加者が少ないのがWeekend Wall Streetの特徴です。特定少数の投資家による行動が相場を動かすことがあるため、サンデーダウの値動きをそのまま真に受けるのは得策ではありません。

しかし、週末に大きな出来事があった場合は、サンデーダウの注目度が一気に高くなります。たとえば土日に株価が暴落させかねない事件が起こったとしても、ニューヨーク市場は月曜日まで開かないので米国株を売ることはできません。

しかしWeekend Wall Streetの取引をしているのであれば、土日のうちに売っておけば、週明けの暴落リスクを回避できる可能性があります。週明けのニューヨーク市場で暴落が起き、現物株で損失が出たとしても、土日にWeekend Wall Streetを売りポジションで持っていれば、現物株での損失と相殺できるからです。

多くの投資家は土日に何か大きな出来事があると、サンデーダウの動向に注目します。そこで予想通りの反応が出たら、同様の値動きが週明けの市場でも起こると予想します。こうして投資家心理はサンデーダウと同じ方向に向きやすくなるため、週末の値動きが週明けのニューヨーク市場に少なからず反映される可能性が高く、取引していない投資家であってもサンデーダウに注目するというわけです。

細かい値動きまで参考にする必要はないものの、大きな出来事があったときにその反応を見て参考にするというのが、サンデーダウとの適切な付き合い方といえそうです。

そもそもCFD取引とは?

では、Weekend Wall Streetもそこに含まれる「CFD」とは何なのでしょうか。CFDはしばしば先物取引と比較されますが、保有資産に対する取引可能資産の大きさ(レバレッジ)と、実際の貸借の有無が異なります。指数取引として歴史の古い先物取引やオプション取引と、CFDとを対比しながら解説します。

先物取引・オプション取引とは

先物市場では、「オプション」と呼ばれる権利を売買します。オプションとは、対象の金融商品を将来の期日に買う(もしくは売る)権利のことで、権利そのものを売買するのが先物取引です。買う権利を「コールオプション」、売る権利のことを「プットオプション」といいます。

簡単な例で説明します。現在は1g5,000円で取引されている金(ゴールド)が、1ヶ月後に6,000円まで値上がりすると予想したとします。この時、手付金1,000円を払って1ヶ月後に5,000円(権利行使価格)で金を買うと約束し、実際に1ヶ月後に6,000円まで値上がりしていれば、残額4,000円を支払いすぐに6,000円で売ると、1,000円の利益が出ます。逆に4,000円に値下がりしていれば、1,000円の損失です。

さらに1,000円の手付金で購入した買う権利(コールオプション)を、7,000円まで値上がりすると予想した人に50円(プレミアム)で売ったとすれば、決済時には金の差額1,000円とプレミアム50円の計1,050円の利益が生まれます。先物とオプションを組み合わせると、レバレッジはどんどん大きくなるため、ハイリスク・ハイリターンの取引も可能になります。

現時点で金を保有していなくても、コールオプションを別の投資家に売ることもできます。この場合、コールオプションを売った側は、期日に権利行使価格で金を購入する義務があり、仮に4,000円に値下がりしていても5,000円で買わなければなりません。対してコールオプションを買った投資家は、必ずしもオプション通り金を買う必要はなく、権利を放棄してオプション分の損失だけにとどめることができます。

ニューヨークダウ先物の場合、最低証拠金は約5万円です。取引単位は「ダウ平均価格×100円」となっているため、ダウ平均が2万6,000ドルであれば、260万円が取引単位となります。最低証拠金が約5万円なので、レバレッジは約52倍ということになります。

先物取引には期日があり、期日までは自由に売買できますが、期日には必ずオプションを行使することになります。後述するCFDでは期日がないため、含み損が発生している場合はそのまま保有して値上がりを待つことも可能です。ただしCFDではレバレッジの上限が定められていますが、先物取引はより大きなレバレッジをかけることができます。またCFDよりも取引量が多いため、価格はより安定する傾向があります。

CFDとは

CFDとは「Contract For Difference」の略で、日本語では「差金決済取引」、つまり差額だけをやり取りする取引を意味します。つまり現物資産のやり取りを伴わず、あくまでも差額のみを取引する点に最大の特徴があります。

例えば金のCFD取引では、金の現物を扱うことなく、エントリーした時とトレードを終了した時の差額を決済するだけです。買った時よりも価格が高くなった時に決済すれば差額が利益になり、逆であれば差額が損失となります。

短期トレードの代表格であるFX(外国為替証拠金取引)も、実はCFDの一種です。FX会社は顧客からの注文をマッチングさせることで約定していますが、実際には外貨のやり取りは行われません。あくまでも外国為替市場で提示されているレートに基づき、売り・買いのポジションを成立させ、決済させているだけです。つまり「各国の通貨レートを参照原資産として、通貨ペアに投資できるCFD」がFXなのです。

・取引金額から見るCFDの特徴

CFDは参照原資産の価格に対して、レバレッジをかけて取引をすることができます。IG証券の場合、レートに対して10倍のレバレッジをかけることができるため、仮にダウ平均が2万6,000ドルの場合は10分の1である2,600ドル(もしくは2,600ドル分の日本円)でポジションを持つことができます。1ドルが105円だとすると、約27万3,000円から取引が可能です。

また、IG証券では最小取引ロット数を引き下げるキャンペーンを行うことがあり、期間中は0.1ロット、上の例でいえば約2万7,300円からの取引が可能です。

・CFDのメリットとデメリット

土日を含めほぼ24時間いつでも取引できる点と、レバレッジの高さがCFDのメリットです。先物と同じく売りから取引できる点や、一定の為替スプレッドはあるものの、手数料がかからない点も魅力です。

反面、レバレッジを高くすればリスクも高くなりますし、口座の残高が一定の割合を下回ると「強制ロスカット(強制決済)」が行われ、買いポジションなら売り、売りポジションなら買いが執行されるケースもあります。また預け入れている資金以上に損失が出てしまった場合に、証券会社から追加で入金を求められる(追証)こともあります。

先物取引と大きく異なるのは、市場規模と流動性(売買のしやすさ)です。先物はニューヨークダウ先物だけでなく日経平均の先物なども取引されており、市場での取引なので市場参加者が多く、現物とかけ離れた価格になるようなことはありません。

初心者が取り組むのであれば、レバレッジを高くしすぎないように管理すれば、流動性の高い先物取引のほうがリスクは抑えやすいといえるでしょう。SBI証券や楽天証券をはじめとするネット証券でも手軽に売買できるので、CFDよりは初心者でも始めやすくなっています。

まとめ:サンデーダウとの正しい付き合い方を身につけよう

サンデーダウはあくまでも少数の参加者による取引なので、値動きはあくまでも参考程度に見ておいて、土日に大きな出来事が起きた時のリスクヘッジとしての活用を視野に置いておく程度が、適切な活用法といえそうです。過度に重視しなければ、投資精度の向上につながるかも知れません。

文・田中タスク
エンジニアやWeb制作などIT系の職種を経験した後にFXと出会う。初心者として少額取引を実践しながらファンダメンタルやテクニカル分析を学び、自らの投資スタイルを確立。FXだけでなく日米のETFや現物株、商品などの投資に進出し、長期的な視野に立った資産運用のノウハウを伝える記事制作に取り組む。初心者向けの資産運用アドバイスにも注力、安心の老後を迎えるために必要なマネーリテラシー向上の必要性を発信中

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