ネット証券大手の楽天証券は、楽天グループの総合力やネット証券としてバランスの取れたサービス内容に定評があります。2019年12月時点で口座数が約376万に達し、ネット証券業界ではトップクラスのシェアを誇ります。
株式はもちろんのこと、株式以外にも豊富なサービスラインアップを有しており、そこには「つみたてNISA」や「iDeCo」といった老後資金作りに役立つサービスも含まれます。
当記事では株式だけでなく、つみたてNISAとiDeCoによる老後資金作りの観点から楽天証券の口座を利用するメリットやデメリットを研究していきます。
目次
楽天証券の特徴
楽天証券は、ネットショッピング大手の楽天が運営するネット証券会社です。かつては「DLJディレクト証券」という名称で1999年に設立されました。1999年というとインターネット自体の普及が本格的に進みつつあった時期なので、ネット証券のなかでも草分け的な存在でといえるでしょう。
楽天証券は今や国内有数のネット証券会社となり、口座開設数は冒頭で述べたように約376万口座です。全国の主要な証券会社に開設されている口座数が約2,600万口座なので、証券会社との取引がある人のうち7人に1人程度は楽天証券に口座を持っていることになります。
国内の現物取引手数料は55円からとネット証券のなかでもトップクラスの安さで、この点も楽天証券が人気を集める理由の1つとなっています。IPO(新規公開株)の取り扱い実績は2019年で26社ですが、前年の2018年が11社から倍増しており、IPOでも着実に実績を残しているといえそうです。
楽天証券は投資信託の取り扱い本数が2,688本(2020年9月23日現在)と多く、しかも買い付け手数料は無料です。
日本だけでなく外国株など海外の金融資産に関心を持つ個人投資家が多くなっていますが、その流れを受けて楽天証券も外国株の取り扱いに力を入れています。世界中から資金が集まる米国株をはじめ、中国株やASEANの株の取り扱いもあります。ASEAN株式を扱う証券会社は少ないなか、楽天はアセアン主要4市場(シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア)の株式に投資できます。
楽天証券で投資するメリットとデメリット
楽天証券の口座を利用するメリットとデメリットを整理してみました。楽天証券の口座を利用すると、主に以下の4つのメリットがあります。
楽天証券のメリット1:利便性の高い「楽天経済圏」のメリットを投資にも生かせる
ショッピングサイトの楽天市場をはじめ、楽天カード(クレジットカード)や楽天銀行、楽天モバイル(携帯電話)など、楽天グループには多くのサービスがあります。グループである楽天証券を利用することで「楽天経済圏」とも呼ばれる豊富なサービスを有利に利用できるようになります。
例えば楽天証券の「超割コース」で株取引をすると、手数料の1%がポイントとして貯まります。頻繁に売買をする人であれば、すぐにまとまったポイント数になるでしょう。このポイントは「楽天経済圏」で使用できるため、限りなく現金に近い価値を持ちます。このポイントを使って投資をすることもできるので、ポイントを活用して資産を増やしていくことも可能です。
楽天証券のメリット2:大口投資家には取引手数料の2%還元あり
取引手数料に対するポイントバックには、大口投資家向けの優遇制度があります。信用取引の新規約定が5,000万円以上であったり1ヶ月の新規約定額合計が5億円以上であったりするなど、その他にもいくつか適用される要件がありますが、これらのうちどれかを満たすと大口優遇が適用され、先ほどご紹介したポイントバックが倍の2%になります。楽天のポイントは利用価値が高いため、倍の速度でポイントを貯めることができるのは大きなメリットです。
楽天証券のメリット3:取引ツール「MARKET SPEED Ⅱ」を無料で利用可能
証券会社が提供している取引ツールのなかでも楽天証券の「MARKET SPEED Ⅱ」は高性能かつ使い勝手が良いとして定評があります。楽天証券の口座を持っているとこの「MARKET SPEED Ⅱ」を無料で利用できるため、これだけでも楽天証券に口座を持つ価値があると考える投資家もいるようです。
楽天証券のメリット4:楽天銀行との口座連携
楽天証券と楽天銀行は、「楽天経済圏」の中核をなす金融サービスです。この両者に口座を持っていることで、以下のような優遇を受けることができます。
・マネーブリッジ
楽天証券と楽天銀行の提携サービス「マネーブリッジ」は、楽天証券からの出金を楽天銀行の口座にすることで得られる特典です。楽天銀行の金利が通常の5倍になるため、単に楽天証券から出金したお金を楽天銀行に置いておくだけでもメリットが得られます。
・株式配当受け取りに現金プレゼント
上記と同様に、楽天証券で保有している株式からの配当金を楽天銀行口座で受け取ると、現金プレゼントが得られる特典があります。金額は1件あたり10円なので、受取の件数が多くなればなるほどプレゼント額が大きくなります。
ここまで楽天証券を利用するメリットを紹介しましたが、もちろん、メリットばかりでなく、投資家スタイルなどにより多少なりともデメリットと感じるところもあるでしょう。続いては楽天証券の口座を利用するデメリットについても、見てみましょう。
楽天証券のデメリット1:IPOの取り扱いはSBI証券に軍配
株式投資家の中にはIPO投資を志向する人も多くいます。楽天証券は近年になってIPOに力を入れている傾向が見られますが、IPOの主幹事数はトップではありません。また、SBI証券にはIPOの抽選に外れてもポイントが貯まり、そのポイントを使えば次回以降のIPOの当選確率がアップする仕組みがあります。楽天証券では現在、そのような仕組みがなく、IPO投資を積極的に行いたい場合、楽天証券は必ずしも有利とはいえなさそうです。
楽天証券のデメリット2:外国株の取り扱いはやや限定的
安定感の欧米諸国や成長力に期待の新興国など、外国株に関心を持つ投資家は多くなっています。楽天証券で投資できる外国株は現在6か国で、外国株を楽しみたい方にとっては少々物足りなく感じるかもしれません。
ネット証券 会社名 |
手数料 | 投資信託 取扱本数 |
特徴 |
---|---|---|---|
無料 | 約2,600本 | 手数料、IPO、外国株 全てトップクラス |
|
無料 | 約2,600本 | トレードツールが便利 | |
無料 | 1,163本 | 米国株取引に強み | |
楽天証券でつみたてNISA投資をするメリット
楽天証券でつみたてNISAを利用するメリットについて、つみたてNISAの基本から順に解説します。
つみたてNISAとは、投資信託に対する積立投資で得られた分配金や売却益などといった利益に対する税金が非課税になる制度です。非課税枠は1年あたり40万円で、20年間有効です。つまり、40万円の20年分なので合計800万円が非課税枠の上限となります。
老後など将来資金を積み立てる際にこのつみたてNISAを活用すると、本来であれば税金として納めていた分も将来資金に上乗せすることができるため、ぜひとも利用したい制度です。
もちろん楽天証券でも、つみたてNISAを利用することができます。数ある証券会社のなかで楽天証券のつみたてNISAを利用するメリットは、以下の通りです。
楽天証券でつみたてNISA投資をするメリット1:積立金の引き落としに楽天カードを利用するとポイントが貯まる
つみたてNISAは名称の通り、毎月一定額で投資信託を購入し、それを積み立てていきます。その積立金の引き落としにクレジットカードが利用可能なのですが、ここで「楽天経済圏」の一角である楽天カードを使用すると、100円あたり1ポイントの比率でポイントが貯まります。
楽天証券でつみたてNISA投資をするメリット2:貯まったポイントも投資できる
上記のように楽天カード引き落としによる積み立てのポイントだけでなく、「楽天経済圏」の各サービスで貯めたポイントは、楽天証券でポイント投資に回すことができます。つまり、積み立てや光熱費の引き落とし、さらにはネットショッピングや携帯電話料金などさまざまな料金の支払いを「楽天経済圏」に集約するとポイント投資の額も大きくなるため、それらのポイントもつみたてNISA投資に回すことも可能です。
楽天証券でつみたてNISA投資をするメリット3:つみたてNISAの対象商品が多い
つみたてNISAでは投資信託の積立購入をするため、取り扱い商品が多いほうが自身の将来設計に合った資産形成をしやすくなります。楽天証券が取り扱っている投資信託のうち、つみたてNISA対象商品は161本(2020年9月23日現在)で、日本株から先進国、新興国などラインアップも多彩です。
ネット証券 会社名 |
特徴 | 投資信託 取扱数 |
手数料 |
---|---|---|---|
最大21万5千円 キャッシュバック |
手数料、IPO、外国株 全てトップクラス |
約160 | 無料 |
楽天ポイント 200ポイントプレゼント |
トレードツールが便利 | 約160 | 無料 |
最大20万円 キャッシュバック |
米国株取引に強み | 約150 | 無料 |
IPOに注力 | 約150銘柄 | 無料 | |
楽天証券でiDeCoを投資するメリット
次に、つみたてNISAと同じく老後資金作りに役立つiDeCoについて、楽天証券を利用するメリットについて解説します。
iDeCo(イデコ)とは正式名称を「個人型確定拠出年金」といいます。少々難しい言葉ですが、平たい表現にすると自分で自分の年金を作るための制度です。現役世代のうちに少しでも老後に多くの資金を残したいと考える人がiDeCoに加入し、積み立てたお金を運用したうえで60歳以降に引き出すことができます。
これだけを見るとつみたてNISAとあまり違いがないように感じるかもしれませんが、iDeCoは60歳までお金を引き出すことができないことからもお分かりのように、NISAよりも老後資金作りに特化した制度です。つみたてNISAと同様に税金面での優遇があり、積立金の全額を所得から控除できるだけでなく、運用益も非課税、さらに受取時にも非課税メリットがあります。
それではこのiDeCoについて、楽天証券を利用するメリットを挙げてみましょう。
楽天証券でiDeCoを投資するメリット1:運営管理手数料が無条件で無料
iDeCoは口座開設時や口座保有時に手数料が発生することがあります。手数料が発生しない金融機関であっても無料になるには残高や積立額などに一定の条件を設けている場合がありますが、楽天証券は条件に関係なく無料で開設できます。
楽天証券でiDeCoを投資するメリット2:コストの安い投資信託がある
投資信託には信託報酬という手数料がかかります。これは投資信託を運用するファンドマネージャーに対する報酬で、この報酬が高いと運用益が減ってしまいます。楽天証券はiDeCoの取り扱い商品が豊富で、そのなかには信託報酬等の管理費用が0.2%を切る低コスト商品も多く存在します。
楽天証券でiDeCoを投資するメリット3:初心者向けの情報発信
iDeCoは一般的な積立貯金と異なる点が多いため、初心者の方にはわかりづらい部分もあると思います。楽天証券は初心者向けオンラインセミナーや情報発信に力を入れています。また、AIチャットで疑問点などを解消することもできます。
楽天証券で口座開設をする方法、具体的な手順
ここからは、楽天証券で口座を開設する手順と必要書類について解説します。
楽天証券で口座開設をする手順1:まずはWebから申し込み
楽天証券への口座開設申し込みはWeb上から行います。公式サイトにある口座開設申し込みフォームに必要事項を記入し、送信すると審査が始まります。
数日から1週間程度で口座開設の案内が届くので、案内に従って初期設置をしたうえで投資に必要なお金を入金したら、いつでもその資金の範囲で金融商品を購入できるようになります。
楽天証券でつみたてNISAを始める際、まだ口座を持っていない場合は、総合口座とNISA口座を同時に開設できます。すでに口座を持っているのであれば、口座管理画面からつみたてNISA口座の申し込み手続きが可能です。
楽天証券でiDeCoを始める場合も、NISAと同様にiDeCoの専用口座が必要です。楽天証券の公式サイトから申込書を請求し、届いた申込書に必要事項を記入して返送、その後に届く解説完了通知をもってiDeCoの積立を始めることができます。
楽天証券で口座開設をする手順2:口座開設に必要な書類を用意する
楽天証券に個人が口座を開設するには、以下のうちいずれかの書類が必要です。
- 運転免許証
- 健康保険証
- 住民基本台帳カード(氏名、住居、生年月日の記載のあるもの)
- 住民票の写し
- 在留カード
- 特別永住者証明書
- 印鑑登録証明書
これらの必要書類はコピーを取って郵送する必要はなく、スキャンした画像データをオンライン上からアップロードで提出することが可能です。スマホで書類を撮影した「写メ」で提出することも可能なのでとても便利ですが、その場合は記載内容がしっかりと読み取れる状態で撮影するようにしましょう。
「楽天経済圏」のメリットは大。さまざまな投資スタイルに合う万能ネット証券
楽天証券はネット証券大手として、口座開設数も多く、投資家からの人気も高い証券会社です。楽天証券ならではのメリットとして大きな魅力なのはやはり、「楽天経済圏」の一角であることです。楽天グループの他のサービスと併せて使うほど、楽天証券を利用するメリットを感じられるでしょう。
もちろん楽天証券だけの利用を考えても、手数料の安さや豊富なラインアップ、多機能な取引ツールなど、投資目的を十分果たしてくれるはずです。どのような投資スタイルをとるとしても、メインもしくはサブ口座として持っておいて損はないのではないでしょうか。
文・田中タスク
エンジニアやWeb制作などIT系の職種を経験した後にFXと出会う。初心者として少額取引を実践しながらファンダメンタルやテクニカル分析を学び、自らの投資スタイルを確立。FXだけでなく日米のETFや現物株、商品などの投資に進出し、長期的な視野に立った資産運用のノウハウを伝える記事制作に取り組む。初心者向けの資産運用アドバイスにも注力、安心の老後を迎えるために必要なマネーリテラシー向上の必要性を発信中