資産運用の手段として、株と投資信託のどちらに投資をするべきか悩んでいる人も多いのではないでしょうか。どちらも値動きのある金融商品ですが、必要な資金額やリスクの大きさ、手数料などに違いがあります。それぞれの特徴を確認し、投資スタイルや投資方針に合った商品を選びましょう。

目次

  1. まずは株と投資信託の基本事項を確認しよう
    1. 成長性がある企業に投資をする「株式投資」
    2. 専門家が運用を行う「投資信託」
  2. 株と投資信託の4つの比較ポイントを解説
    1. 株と投資信託の違い1:投資に必要な資金額
    2. 株と投資信託の違い2:売買価格の決まり方
    3. 株と投資信託の違い3:リスクとリターンの大きさ
    4. 株と投資信託の違い4:手数料
  3. 株と投資信託はそれぞれどのような人が投資するべきか
    1. より積極的に投資を楽しみたいなら株式投資に挑戦してみる
    2. 投資初心者や投資の手間を抑えたい人は投資信託も選択肢
    3. 株式投資と投資信託を組み合わせればリスク分散の効果も
  4. 投資家としての自分に合った商品を選んで、無理のない投資を始めよう

まずは株と投資信託の基本事項を確認しよう

株と投資信託のどちらに投資をするか決めるには、それぞれの特徴をよく知っておくことが大切です。まずは、それぞれの投資で狙える利益とリスクを確認しましょう。

成長性がある企業に投資をする「株式投資」

株式投資とは、企業が発行する株式を購入し、配当を得るほか値上がりしたタイミングで売却して、利益を狙う投資方法です。株式を購入した投資家は「株主」となり、その企業の出資者に数えられます。そのため、株主には以下の3つの権利が与えられます。

  • 議決権:株主総会に参加し議決に参加する権利
  • 利益配当請求権:株主配当などを受け取る権利
  • 残余財産分配請求権:会社の解散などに際し、残った資産の分配を受ける権利

このように企業の経営に関われる点も、株式投資の楽しみの1つといえるでしょう。

・株式投資で狙える3つの利益を確認しよう

株式投資で狙える利益には、以下の3つがあります。

(1)値上がり益
(2)配当金
(3)株主優待

値上がり益(キャピタルゲイン)は、購入時よりも高い株価で売却した際に得られる売却差益です。株価の値動きによっては、大きな利益となる可能性もあります。

配当金および株主優待は、保有中に得られる利益(インカムゲイン)です。配当金は、企業の業績により金額が決定され、保有株数に応じて支払われます。たとえば、1株30円の配当がでた銘柄を100株保有している投資家であれば、3,000円の配当金を受け取れることになります。

なお、東証第1部上場銘柄の平均配当利回りは約2.3%、東証第2部上場銘柄は約1.7%です。利回りが3%を超えている銘柄は、比較的配当が高いといえるでしょう。

株主優待は、株式を保有している株主に対して、配当金以外の商品やサービスなどを進呈する日本企業独特の制度です。企業が扱う商品はもちろん、食事券や工場見学招待券、施設利用割引クーポンなどが贈られます。

株主優待は、保有する株数により贈られる優待の内容に差があります。1株から優待の対象となる銘柄もありますが、多くは100株以上などある程度まとまった株数を持っていることが条件となります。

・株式投資で気をつけるべきリスクとは?

株式投資における主なリスクは、以下の2つです。

(1)価格変動リスク
価格変動リスクとは、株価の値動きにより資産価値が変動する可能性をいいます。株式投資は、一般的に価格変動リスクが大きい投資といわれます。そのため、大きな値上がり益を狙える一方、損失が大きくなる可能性もあります。価格変動によるリスクを抑えるには、長期保有により配当金や株主優待を積み上げ、総合的な利益を増やしていくとよいでしょう。

(2)信用リスク
信用リスクとは、投資した企業が倒産するリスクです。株主は残余財産分配請求権を持つため、破綻時に残った資産を、保有する株数に応じて受け取ることはできます。しかし、破綻時の状況によっては、株主に分配できる資産が失われているケースもあるでしょう。そのような状況では、投資した資産が1円も戻ってこないこともあります。信用リスクを軽減するには、投資前に企業の業績や財務状況をしっかり確認しておくことが重要です。

そのほか外国株式に投資する際には、為替相場の動きにより資産価値が変動する可能性の「為替リスク」や、投資した国や地域の経済および、政治が不安定になることで資産価値が変動する「カントリーリスク」にも注意しましょう。

専門家が運用を行う「投資信託」

投資信託とは、多くの投資家から資金を集めファンドマネージャーが運用し、利益を投資家に還元する金融商品です。投資を専門家に任せられるため、投資初心者でも比較的始めやすい投資方法といえるでしょう。

・投資信託で得られる利益は値上がり益と分配金

投資信託で得られる利益は、値上がり益と分配金です。値上がり益は、購入時よりも高い基準価額(投資信託の値段)で売却したときに得られます。

分配金は原則として、運用で得た利益から投資家に還元されるものです。分配金の支払い頻度は、年1回・半年ごと・隔月など、ファンドにより決まっています。複利効果を活用した資産増加を目指す場合には、分配頻度が少ないファンドを選ぶ方法もあります。定期的に利益を確定し受け取りたい人は、分配金が定期的に支払われるファンドを選びましょう。

なお、分配金額はファンドの決算により決定されます。運用成績が下がっているときには、分配金額が下がったり分配されなくなったりする可能性がある点には注意しましょう。

また分配金には、利益ではなく投資元本を原資とする「特別分配金(元本払戻金)」もあります。しかし特別分配金は、あくまでも元本を回収しているにすぎません。分配金が頻繁にでているファンドを購入する際には、特別分配金を還元しているかそうでないかを確認しましょう。

・投資信託で気をつけるべきリスクとは?

投資信託で気をつけるべきリスクは、以下の3つです。

(1)価格変動リスク
価格変動リスクは、投資信託が保有する有価証券の値動きにより、投資資産の価値が変動する可能性です。投資信託は株や債券などを組み合わせてリスクを分散させるのが特徴ですが、金融商品であることに変わりはありません。そのため、投資先のいくつかの株価が下落するなどし、それが投資信託全体の価値低下につながることもあります。

(2)信用リスク
信用リスクは、ファンドが投資する企業や国・債券の発行元などが、業績の悪化や政治の混乱などにより破綻し、投資資産の価値に影響をおよぼす可能性をいいます。

(3)金利変動リスク
金利変動リスクは、金利の変動により投資資産が増減する可能性です。一般的に、金利が上昇すると債券価格は下がります。そして、金利が下がると債券価格は上がります。そのため、金利が上がる局面ではファンドが組み入れる債券の価格が下がるため、債券を多く保有する投資信託の資産は減少する可能性があります。

そのほか、外国の資産を組み入れる投資信託では、為替リスクやカントリーリスクも発生します。

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株と投資信託の4つの比較ポイントを解説

株と投資信託では、リスクおよびリターン以外にもいくつかの相違点があります。ここでは、4つのポイントに分けてみていきましょう。

株と投資信託の違い1:投資に必要な資金額

株と投資信託では、投資に必要な資金額に表1のような違いがあります。

▽表1.株と投資信託における必要資金額の違い

投資信託
・一般的に数万円~数百万円の資金が必要

・ミニ株を活用すれば数百円からの投資も可能

・数千円から投資が可能

・ネット証券なら100円で投資ができる場合も

株式投資は、通常単元株で取引されます。そのため、数万円~数百万円の資金が必要です。ただし、単元未満株で取引できる「ミニ株」を利用すれば、数百円から株式投資ができます。ミニ株は単元株での投資とは取引方法が異なります。ミニ株投資を始めるにあたっては、取引の詳細をあらかじめ確認しましょう。

投資信託は、数千円から投資が可能です。また、いくつかのネット証券では100円からの投資もできます。

株と投資信託の違い2:売買価格の決まり方

株と投資信託では、売買価格の決まり方が異なります。株や投資信託をいくらで売買できるかは、投資結果に大きく影響します。想定外の価格での約定とならないよう、それぞれの価格の決まり方を確認しておきましょう。

・リアルタイムな注文が可能な株取引は「成行注文」か「指値注文」

株式投資は、証券取引所の値動きを見ながらリアルタイムな価格での取引ができます。株式投資では、成行注文と指値注文のどちらを選ぶかにより、適用される価格が異なります。

成行注文とは、値段を指定せずに売買注文を出すことです。買い注文では1番高く売り注文をしていた人と、売り注文では1番安く買い注文をしていた人と契約が成立します。成行注文は、できるだけ早く確実に取引を行いたいときに選ぶべき注文方法といえるでしょう。

指値注文は、希望する売買価格を指定して注文する方法です。希望する価格とマッチする注文があれば取引が成立しますが、希望価格と市場価格が合わない場合には約定されません。指値注文は、一週間後までや20日後までなど、投資家が決めた有効期限内で有効です。つまり、指値注文は約定の速さではなく、約定価格を重視した注文方法だといえます。

・投資信託は「ブラインド方式」での取引になる

投資信託は、ブラインド方式で注文をします。ブラインド方式とは、注文時に約定価格が決まっていない投資方法です。投資信託の売買には、基準価額が適用されます。基準価額は1日1回、その日の取引が終了する15時以降に決定されます。よって投資信託の取引では、約定価格がわからない状態での注文となるのです。

投資信託は、多くの投資家から資金を集め、運用が行われます。ファンドを保有する投資家の利益が損なわれることがないよう、ブラインド方式による約定が採用されています。

株と投資信託の違い3:リスクとリターンの大きさ

株と投資信託では、株の方がハイリスクハイリターンの金融商品です。これは、先述のとおり値動きの幅が大きいからです。そのため株式投資では、使い道のない余剰資金を用いましょう。また、投資初心者は少額からスタートし、知識や経験を積むとともに投資資金を増やしていくと安心です。

投資信託は、株式よりはリスクが少なく債券よりはリスクが大きい、ミドルリスクミドルリターンの金融商品だといわれます。はじめて投資にチャレンジする人は、投資信託からスタートしてみてもよいでしょう。

株と投資信託の違い4:手数料

株と投資信託では、投資に必要な手数料に差があります。手数料は投資におけるコストとなります。手数料管理は、資産運用を成功させるポイントの1つです。

・株式投資で必要なのは売買手数料

株式投資では、売買時に約定代金に合わせた手数料がかかります。手数料額は証券会社によって異なるため、あらかじめ確認することが重要です。なお、株式投資の手数料は約定ごとにかかるプランと、1日の合計約定代金にかかる定額プランなどがあります。どちらのプランを選ぶべきかは、売買回数や約定金額などにより変わります。株式投資をする際には、自分の投資スタイルを確認したうえで、証券会社で口座を開設し、適切な手数料プランを選びましょう。

・投資信託は保有中にも手数料がかかる

投資信託で必要な主な手数料は、購入時手数料・信託報酬・信託財産留保額です。購入時手数料は、投資信託の購入にあたり、窓口となる証券会社や銀行に支払う手数料です。ネット証券などでは、購入時手数料が無料(ノーロード)の投資信託も多く取り扱っています。信託報酬は、保有中に運用会社に支払う手数料です。投資信託は運用を専門家に任せられる一方、報酬としての手数料が必要になります。

信託財産留保額は、売却時にかかる手数料です。投資信託を売却する際には、ファンドが保有する有価証券を換金することで売却代金を用意します。場合によっては、ファンドが意図しないタイミングでの売却となることもあるでしょう。そのため、売却時にファンドに必要なコストとして支払うのが、信託財産留保額です。支払われた信託財産留保額は、ファンド内に留保されます。

投資信託は、株式投資に比べ手数料が多くかかります。手数料額はファンドや証券会社により異なるため、投資前にいくつかのファンドや証券会社で比較検討することが重要です。

株と投資信託はそれぞれどのような人が投資するべきか

株式投資と投資信託は、リスクやリターン、必要資金、手数料などが異なります。では、株や投資信託に投資するべきなのは、どのような人なのでしょうか。

より積極的に投資を楽しみたいなら株式投資に挑戦してみる

株式投資は、どちらかというとハイリスクハイリターンな金融商品です。より積極的に投資を楽しみたい人は、株式投資にチャレンジしてもよいでしょう。株式投資は、値上がり益のほかに配当金や株主優待といった2つのインカムゲインを得られます。初めて株式投資に挑戦する人は、値上がり益のみを目指す短期での売買ではなく、インカムゲインの積み上げも狙える長期投資に挑戦してみましょう。ただし、株価の暴落や最悪の場合、株を保有している企業の倒産リスクなども抱えることも忘れてはいけません。

投資初心者や投資の手間を抑えたい人は投資信託も選択肢

投資信託は、運用を専門家に任せられる金融商品です。投資経験が少ない人や、保有している金融商品を頻繁に売買する時間が取れない人は、投資信託が適しています。投資信託は、保有中にも手数料がかかります。投資初心者は、信託報酬が少なく値動きがわかりやすいインデックスファンド(日経平均やTOPIXなど特定の指標に連動した運用成績を目指す投資信託)を検討してみましょう。

株式投資と投資信託を組み合わせればリスク分散の効果も

資金に余裕がある人は、株式と投資信託の両方に投資をするのも1つの方法です。投資では、複数の資産に投資することで、値下がりなどにより資産が減るリスクを分散できます。株式と不動産を組み合わせて、分散投資の効果があるポートフォリオの形成を目指しましょう。

投資家としての自分に合った商品を選んで、無理のない投資を始めよう

株式と投資信託は、リスクとリターンの大きさ・取引方法・手数料などが異なります。投資家に合わない金融商品を選んでしまった場合、ストレスを感じながらの投資になるだけでなく、運用がうまくいかない可能性もあります。

投資を始めるにあたっては、投資方針や投資スタイルをあらかじめしっかりと確認し、投資家に合った金融商品を選ぶことが重要です。

N.ヤマモト
都市銀行にてファイナンシャルプランナーとして主に、富裕層の資産形成・運用相談を担当。投資信託や保険商品・債券・外貨預金の販売に携わる。その後はWEBライターとして、投資や資産形成についての情報を発信。子供の学費や老後資金作りのため、自らも20代から資産運用を続けている

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