将来に向けた資産形成をするなら、預貯金だけでなく投資を取り入れることも重要です。投資する金融商品や投資方法によっては、忙しい人でも負担を抑えた資産運用ができます。保有資産に投資を組み入れることで、将来に向けた上手な資産形成を目指しましょう。

目次

  1. 忙しい人でも投資による資産形成を目指すべき理由とは?
    1. 預貯金金利と物価上昇率にはどのくらいの差があるか
    2. 保有資産を使い道によって「預貯金」と「運用資産」に分けよう
  2. 投資できる資産は主に3つ。それぞれの特徴を確認
    1. 投資できる資産1:債券
    2. 投資できる資産2:投資信託
    3. 投資できる資産3:株式
    4. リスクの軽減を目指すなら複数の資産に投資する分散投資がポイント
  3. 忙しい人は長期投資を目指そう
    1. 短期投資が難しい理由
  4. 効率的な長期投資ができる制度1:NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)
    1. 一般NISAとつみたてNISA
    2. ジュニアNISA
    3. NISAを始める手順を確認
  5. 効率的な長期投資ができる制度2:iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)
    1. 3つの税制優遇を受けられる
    2. iDeCoを始める手順を確認
  6. 忙しくても投資は可能。中長期的な運用に向いた金融商品の購入を検討してみては?

忙しい人でも投資による資産形成を目指すべき理由とは?

将来に向けた資産形成手段として、投資による資産運用が重要とされているのは、預貯金だけでは将来の物価上昇に追いつけないと考えられるからです。物価上昇に対応するためには、物価と連動した動きをするといわれる株や投資信託といった金融商品で資産の一部を運用することが重要になります。

預貯金金利と物価上昇率にはどのくらいの差があるか

では、預貯金金利と物価上昇率には、具体的にどのくらいの差があるのでしょうか。2020年10月現在、メガバンクにおける定期預金金利は0.002%です。この金利では、仮に100万円を1年間預けたとしても、15円しか利息がつきません。利払い継続で5年間預け続けたとしても、得られる利息は75円ほどでしょう。

一方、総務省統計局が発表した消費者物価指数によると、2020年8月の物価指数は2015年を100とした場合、102に上昇しています。これは、2015年に100万円だったものが、2020年には102万円になったことを意味します。つまり、資金を預貯金に預けているだけでは、2015年には買えた品物が2020年には購入できなくなっているのです。

このように、預貯金で資産を保有していると額面金額を守ることはできますが、資金の価値は守れません。資金の価値を守っていくには、保有資産の中に投資資産を組み入れる必要があるでしょう。

保有資産を使い道によって「預貯金」と「運用資産」に分けよう

将来に向けた資産形成をしていくためにはまず、資産を色分けすることが重要です。なぜなら、一口に「お金を貯める」といっても、資金の性質によってお金の活用方法が変わるからです。自身の資産状況を整理し、保有資産を「預貯金」と「運用資産」に分けることが、上手な資産形成の第一歩となります。

・換金性を重視するなら「預貯金」で保有

換金性を重視する資金は、「預貯金」での保有が適しています。日々の生活費はもちろん、半年・1年後に必要となるお金や、万が一のときに使えるためのお金は預貯金しておき、現金で持っておくとよいでしょう。

・学費や老後資金など長期で使う予定がないなら「資産運用」

長期で使う予定がない資金があれば、投資による資産運用をしてみましょう。資産運用で大切なのは、売買のタイミングを選べる資金で投資を行うことです。たとえば、半年後に使い道が決まっているお金であれば、半年後の運用成績が悪い状態でも解約せざるを得なくなります。そのような事態にならないよう、長期で運用できる資金で投資を始めることが重要なのです。

10年後から必要になる子どもの学費や30年後に向けた老後資金などは、投資による資産づくりに適した資金といえるでしょう。
 

ネット証券比較ランキング
ネット証券
会社名
手数料
特徴
少額投資

最大21万5千円
キャッシュバック
手数料、IPO、外国株
全てトップクラス
100万円まで無料

楽天ポイント
200ポイントプレゼント
トレードツールが便利 100万円まで無料

現金1,000円
プレゼント
初心者へのサポート充実 50万円まで無料

最大20万円
キャッシュバック
米国株取引に強み 50万円まで
最大495円
IPOに注力 50万円まで
最大440円

投資できる資産は主に3つ。それぞれの特徴を確認

投資する資産には、主に3つの種類があります。それぞれの特徴やリスク、リターンを確認し、投資スタイルに合った資産を選びましょう。

投資できる資産1:債券

債券は、国や地方公共団体・企業などが資金を集めるために発行する、有価証券です。債券は、市場金利が高い局面で価格が下がり、金利が低い局面では価格が上がるといった値動きをします。

・債券の魅力は、計画的に安定した資産運用ができること

債券は、金融商品のなかでは、比較的リスクが低いといわれます。それは、償還(満期)まで保有することで、投資した資金が返還されるからです。また、保有中に得られる利息も決まっているため、計画的な資産運用がしやすいといえるでしょう。

・債券のリスクは「信用リスク」と「金利変動リスク」

債券で気をつけるべきリスクは、信用リスクと金利変動リスクです。信用リスクとは、債券の発行元が経営難に陥った場合などに、償還金や利息を受け取れなくなる可能性です。信用リスクの大きさは、発行元により異なります。債券に投資をする際には、民間の格付け機関などが発表している信用度などを参考にするとよいでしょう。

金利変動リスクとは、金利の変動により債券の価格が増減する可能性です。債券を償還まで保有する場合は、原則として投資額が返還されるため金利変動リスクは発生しません。しかし、償還前に売却する場合には、時価で換金することになります。購入時よりも市場の金利が上がっている場合には、購入価格よりも安い値段での売却になる可能性には注意しましょう。反対に、保有中に市場の金利が下がり債券価格が上昇した場合には、償還前に売却することで値上がり益を得られます。

投資できる資産2:投資信託

投資信託は、多くの投資家から資金を集め運用会社が運用し、利益を投資家に還元する金融商品です。ネット証券では100円から投資が可能で、各種ポイントを利用した投資もできるなど、投資の初心者でも比較的始めやすい金融商品といえます。また、積立による投資も可能なため、少額ずつ資産を形成していく場合にも適しているといえるでしょう。

・投資信託は値上がり益と分配金を狙える

投資信託では、値上がり益と分配金の獲得を目指します。値上がり益は、購入時よりも高い価格で売却することで得られる売却益のことです。分配金は、ファンドの運用で得た利益を投資家に還元するものです。

分配金の支払い頻度は、ファンドにより決まっています。定期的な支払いを重視するファンドでは、頻繁に分配金が支払われます。一方、複利効果による基準価額の値上がりを重視するファンドでは、利益がでていたとしても分配が行われないこともあります。分配金の方針や、これまでの分配実績は、各ファンドの目論見書(もくろみしょ)で確認できます。

・投資信託の主なリスクは「価格変動リスク」「信用リスク」「金利変動リスク」

投資信託の主なリスクは、価格変動リスク・信用リスク・金利変動リスクです。価格変動リスクは、ファンドが組み入れる株式や債券などの価格が変動することで、資産が増減する可能性です。信用リスクは、ファンドが組み入れる有価証券の発行元が倒産することにより、資産が変動する可能性です。

また、債券を多く組み入れるファンドの場合、先述の金利変動リスクが発生します。そのほか、外国の資産に投資するファンドでは、為替相場により資産が変動する「為替リスク」や、投資した国や地域の情勢不安により資産が変動する「カントリーリスク」にも注意が必要です。

投資できる資産3:株式

株式は、企業が資金調達のために発行する有価証券です。投資家は、株式を購入することで企業に出資をし、値上がり益や配当金・株主優待などの獲得を目指します。

配当金は、企業活動により得た利益を投資家に分配するものです。配当の頻度や金額は、銘柄により異なります。株主優待は、一定以上の株式を保有している株主に対して商品やサービスを進呈する、日本企業独特の制度です。株主優待の内容は自社製品に限らず、各企業の特徴がでるサービスとなっています。魅力的な株主優待を行う銘柄を選ぶのも、株式投資の楽しさといえるでしょう。

・株式投資では大きな値上がり益を得られることも

株式は、債券や投資信託と比べて値動きが大きい金融商品といわれます。そのため、企業の業績によっては、大きな値上がり益を狙うことも可能です。投資経験が豊富な人や積極的な投資を楽しみたい人は、株式投資にチャレンジしてみましょう。

・株式投資のリスクは「価格変動リスク」と「信用リスク」

株式投資には、価格変動リスクと信用リスクがあります。先述のとおり、値動きが大きい株式投資は、価格変動リスクも大きくなります。値動きによる損失を抑えるには、長期で保有することで配当金や株主優待を積み上げ、総合的な利益を増やすことが肝心です。

信用リスクは、投資した企業が倒産するリスクです。株式を発行する企業が倒産した場合、出資した資金は戻ってこないことも多々あります。信用リスクを抑えるには、決算書などで企業の財務状況などを確認しましょう。

リスクの軽減を目指すなら複数の資産に投資する分散投資がポイント

債券や投資信託・株式は、それぞれリスクの大きさや得られる利益に差があります。投資資金のすべてを1つの資産に投資するのではなく、3つの資産に分散して投資することで、リスクの分散・軽減が図れます。安定した資産運用を目指すなら、分散投資を取り入れることが重要です。

忙しい人は長期投資を目指そう

仕事などが忙しくて投資をする時間が取れない人に適しているのは長期投資です。長期投資は、値上がり益はもちろん、利息や分配金・配当金といったインカムゲインの積み上げを重視します。そのため、値動きを常にチェックし続ける必要が少ないのです。

投資をする時間がない人は、分散投資と長期投資を組み合わせることで、負担が軽く安定した資産運用を目指せるでしょう。

短期投資が難しい理由

現役世代など仕事や育児などが忙しい人にとって、短期投資で利益を上げていくのは簡単ではありません。なぜなら、インカムゲインが期待できない短期投資では、値上がり益のみを追求しなければならないからです。短期で値上がり益をあげるには、市場の状況や値動きを常に気にしていなければなりません。また、投資に関する新たな情報や知識を得続けることも不可欠です。

投資の時間がなかなか取れない人は、短期投資はしないでおくか、損失がでても許容できる資金のみでのチャレンジがよいでしょう。

効率的な長期投資ができる制度1:NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)

ここからは、効率的な長期投資ができる制度を2つ紹介します。1つめはNISAです。

NISAは、投資から得た利益にかかる20%(2037年までは復興特別所得税がかかるため20.315%)の税金が、一定期間一定金額まで非課税となる制度です。利益が非課税になることで、複利効果が高い効率的な資産運用を目指せます。

NISAには、「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」の3つの口座があります。NISAは1人1口座しか開設できません。3種類の口座の併用も不可です。それぞれの特徴を知り、投資方針に合った口座を選びましょう。

一般NISAとつみたてNISA

一般NISAもつみたてNISAも、日本在住の20歳以上の人を対象とした制度です。概要を表1にまとめます。

▽表1.一般NISAおよびつみたてNISAの概要
 

  一般NISA つみたてNISA
非課税対象 株や投資信託などへの投資から得られる値上がり益・分配金・配当金 金融庁が認める一定の投資信託から得られる分配金および値上がり益
非課税投資枠 (投資の上限) 新規投資額で毎年120万円 新規投資額で毎年40万円
非課税期間 最長5年 最長20年
投資可能期間 2014~2023年 2018~2037年

一般NISAは、国内外の株や投資信託・REIT(リート:不動産投資信託)など、さまざまな金融商品に投資ができる制度です。1年間の非課税投資枠も120万円と多いため、積極的に投資を楽しめます。

つみたてNISAは、長期での積立投資に特化しています。金融庁が選定した、長期での安定した運用に適しているファンドのなかから投資対象を選ぶため、投資経験が少ない人でも始めやすい特徴があります。毎年の非課税投資枠は40万円と多くはありませんが、積立により長期で投資資産を増やすことにより、最終的にまとまった資産の形成を目指せます。

ジュニアNISA

ジュニアNISAは、日本在住の0~19歳の人を対象とした制度です。概要を表2にまとめます。

▽表2.ジュニアNISAの概要
 

  ジュニアNISA
非課税対象 株や投資信託などへの投資から得られる値上がり益・分配金・配当金
非課税投資枠 (投資の上限) 新規投資額で毎年80万円
非課税期間 最長5年
投資可能期間 2016~2023年

ジュニアNISAは、未成年者の名義で口座を開設し、親権者となる親や祖父母が資金の拠出および運用指示を行う制度です。ジュニアNISAを活用することで学費など子どもに必要な資金作りができますが、2023年で制度が終了します。終了後は課税口座への移管もしくは、非課税口座で保有を継続または、売却のいずれかとなります。

NISAを始める手順を確認

NISAを始めるにはまず、証券会社で証券口座とNISA口座を開設しましょう。すでに証券口座を保有している人は、NISA口座の開設のみ行います。

証券口座およびNISA口座の開設では、開設申込書および本人確認書類、マイナンバー書類の提出が必要です。証券会社によって、書面もしくはインターネット上からのアップロードで提出をします。

証券口座は、証券会社により数日~1週間程度で開設ができます。一般的に、書面での手続きよりもインターネット上からの申し込みの方が早く手続きが完了します。NISA口座の開設は、税務署の審査があるため、2週間程度かかります。NISAでの取引を希望する場合には、必ずNISA口座の開設を確認してから売買を始めましょう。

効率的な長期投資ができる制度2:iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)

iDeCoは、老後の資産形成を目的とし厚生労働省が行う個人年金制度です。申し込みや資金の拠出、運用方法の決定は、すべて加入者自身で行います。iDeCoの概要は、表3のとおりです。

▽表3.iDeCoの概要
 

項目 詳細
加入できる人 (加入資格) 国民年金第1号被保険者:日本在住の20歳以上60歳未満の人(自営業者、フリーランス、学生など)
国民年金第2号被保険者:60歳未満の厚生年金の被保険者(サラリーマン、公務員)
国民年金第3号被保険者:20歳以上60歳未満の厚生年金に加入している人の被扶養配偶者
拠出限度額 加入資格により月額1万2,000円~6万8,000円
運用方法 定期預金・保険商品・投資信託

iDeCoでは、定期預金や保険商品・投資信託で拠出金を運用します。運用できる商品のラインアップは、iDeCoを開設する証券会社により異なるため、開設前に確認するとよいでしょう。

iDeCoに拠出した資金は、原則として60歳になるまで引き出しができません。iDeCoの拠出金額を決める際には、緊急時に使える資金などを用意したうえで、長期で使う必要がない資金を充当することがポイントです。

3つの税制優遇を受けられる

iDeCoでは、老後資金をより効率的に形成できるよう、以下の3つの税制優遇が設けられています。

(1)拠出時:掛け金が全額所得控除される
(2)運用時:運用益が全額非課税になる
(3)受取時:公的年金等控除もしくは退職所得控除の対象になる

iDeCoの特徴は、運用益が非課税になる以外に、所得控除などの対象にもなる点です。たとえば拠出時は、掛け金が全額所得控除されることで、間接的に家計の負担も軽減されます。老後の資産形成を考えている人は、余剰資金の一部をiDeCoに拠出してもよいでしょう。

iDeCoを始める手順を確認

iDeCoを始めるにはまず、取扱商品数や手数料などを比較検討し、口座を開設する証券会社を選びます。

証券会社を決めたら、申込書類を請求しましょう。書類が到着したら、必要事項を記入し必要書類をそろえて返送します。

返送した書類は、証券会社および国民年金基金連合会で確認・審査がされます。そのため、開設手続きの完了までは、1~2ヵ月程度かかる点に注意しましょう。開設手続きが完了し、口座開設のお知らせおよび、インターネットパスワードが送付されれば、取引を開始できるようになります。

忙しくても投資は可能。中長期的な運用に向いた金融商品の購入を検討してみては?

忙しくて投資にかける時間がない人でも、分散投資を取り入れた中長期の投資であれば、リスクを抑えた安定的な資産運用が可能です。中長期的な投資をする人には、NISAやiDeCoといった税制優遇も設けられています。非課税制度を活用し、物価上昇に負けない将来の資産づくりを目指してみてはいかがでしょうか。
 

N.ヤマモト
都市銀行にてファイナンシャルプランナーとして主に、富裕層の資産形成・運用相談を担当。投資信託や保険商品・債券・外貨預金の販売に携わる。その後はWEBライターとして、投資や資産形成についての情報を発信。子供の学費や老後資金作りのため、自らも20代から資産運用を続けている。