預金利息は引き下げ傾向にあり、大手都市銀行の定期預金利率は0.002%まで落ち込んでいます。預貯金の利息では、いっこうにお金が増えない昨今。NISA等で資産運用を検討している方も多いと思います。そこで、株式投資と投資信託等を利用した投資で迷っている人に向けて、そのメリットとデメリットを比較してみます。

目次

  1. NISA制度の基礎知識
    1. NISA制度の成り立ちと目的
    2. NISAのメリットとデメリット
    3. NISAで投資可能な商品
    4. NISAをネット証券で口座開設するメリット
  2. NISAで株式投資と投資信託を運用するメリットとデメリット
    1. NISAで株式を運用するメリット
    2. NISAで株式を運用するデメリット
    3. NISAで投資信託を運用するメリット
    4. NISAで投資信託を運用するデメリット
  3. 株式と投資信託、迷ったときは投資の性質で選ぼう
    1. 株式投資に向く人
    2. 投資信託に向く人
    3. 「株式50%、投資信託50%」「株式30%、投資信託70%」など、両者を組み合わせる
    4. 銀行のNISA口座は株式投資できない。口座開設をする金融機関選びは慎重に
  4. 株式投資と投資信託、どちらがどんな人に向いているか
    1. 株はやや中級者向け、投資信託は初心者向け
    2. デメリットを理解しながら併用も選択肢に
    3. 株にも投資できるように証券会社に開設しておくのがよい
  5. 自身の投資スタイル、メリットとデメリットを考慮したうえで第一歩を踏み出そう

NISA制度の基礎知識

NISAは「貯蓄から投資へ」という金融庁の政策によって、2014年にスタートした、少額から始められる個人投資のために創設された非課税制度です。その概要を解説します。

NISA制度の成り立ちと目的

一般的にNISAと呼ばれる制度は、3つに分かれており、それぞれに特徴があります。最初のNISAは2014年の1月にスタートしました。株式や投資信託等の配当・譲渡益等が非課税とされ、年間120万円の金融商品(株式や投資信託など)の購入枠が設定されています。その非課税期間は5年間で、非課税投資枠は最大600万円です。

2016年1月には、未成年者を対象とした、ジュニアNISA制度がスタートしています。この制度は、子どもの教育費を効率よく準備することを目的に創設されました。0歳~19歳までの未成年者を対象に、年間80万円の非課税運用枠が設定され、非課税期間は5年間、非課税投資枠は最大400万円です。投資対象は最初に創設されたNISAと同様、株式や投資信託等の配当・譲渡益等が投資対象です。

2018年1月からは、つみたてNISA制度がスタートしました。つみたてNISAは、投資経験の少ない投資初心者を対象としており、少額からの積み立て投資に特化した、長期積立分散投資を基本とする非課税制度です。年間の投資枠は40万円で、投資可能期間は2018年~2037年で、非課税投資期間は20年とされており、非課税投資枠は最大800万円です。

NISAのメリットとデメリット


3つのNISA制度それぞれの、メリット・デメリットをご紹介します。

・一般NISA

メリット デメリット
・譲渡益や配当金、分配金が全額非課税となる ・NISA口座で損失が出ても損益通算ができない
・5年間の非課税期間経過後も5年間のロールオーバーが可能 ・損失の繰り越しもできない
・金融機関の変更が可能(年1回) ・代用証券としては使えない

※ロールオーバーとは、非課税期間の終了後に、翌年の非課税投資枠に移管することです。

・ジュニアNISA

メリット デメリット
・世帯での非課税枠が増加する ・原則、18歳まで払い出しできない※
・譲渡益や配当金、分配金が全額非課税となる ・金融機関の変更はできない
・5年間の非課税期間経過後も5年間のロールオーバーが可能 ・損失の繰り越し及び損益通算ができない

※2023年に制度廃止が決定したため、原則18歳までの引き出し制限が撤廃され、随時自由に引き出すことが可能となりました。

・つみたてNISA

メリット デメリット
・譲渡益や配当金、分配金が全額非課税となる ・損失の繰り越し及び損益通算ができない
・分散投資によるリスク回避が可能 ・ロールオーバーの規定がない
・長期積立による複利効果が得られる ・個別株式及びREITは対象外
・投資タイミングの判断が不要  
・厳選された低コストの商品群  

NISAで投資可能な商品

NISAは国が推進する個人の投資促進のための制度です。あくまで投資であり、中長期での試算運用を前提としています。そのため、NISA口座という特別な口座によって運用し、投資できる金融商品も目的に合ったものに制限されています。一般NISA、ジュニアNISA、つみたてNISAで投資可能な商品を確認しましょう。

・一般NISA及びジュニアNISA

取扱商品
・国内株式 ・ETN(上場投資証券)
・外国株式 ・国内REIT(J-REIT)
・株式投資信託 ・海外REIT
・国内ETF ・新株予約権付社債(ワラント債)
・海外ETF  

・つみたてNISA

取扱商品
・厳選された投資信託及びETF  

NISAをネット証券で口座開設するメリット

ネット証券で口座開設するメリットは、なんといっても取引手数料の安さです。ネット証券は店舗を保有しないため、対面営業を行う総合証券に比較して運営コストが抑えられます。また、投資信託商品等の取り扱い銘柄も豊富であり、その検索機能や投資に関する情報ツールが充実しています。ネット証券ごとに特色があり、自身の投資スタイルに合ったネット証券を選択することが可能です。

NISAネット証券比較ランキング
ネット証券
会社名
投資信託
取扱数
手数料

最大21万5千円
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NISAで株式投資と投資信託を運用するメリットとデメリット

株式投資で運用するメリット、投資信託で運用するメリットおよびNISA制度を利用して運用するメリットをご紹介します。

NISAで株式を運用するメリット

株式で運用するメリットは、投資信託に比べて大きな収益を上げる可能性があることです。自身で研究した銘柄に集中投資することにより、大きな結果を得ることができます。

しかし、そのためにはしっかりとした知識を身につけ、正確な情報をいち早くキャッチする必要があります。すでに発表された情報などは、瞬時に株価へ反映されてしまいますので、経済やマーケットの動きを常に観察しておく必要があります。

ある程度は資金力に余裕がある場合、IPO(新規上場株式)に投資することにより、大きく利益を上げられる可能性があります。IPO投資を取り扱っている証券会社は限定的ですが、たとえばネット証券最大手のSBI証券では取り扱い銘柄も多く、たくさんの情報も得られるようです。

IPO投資で重要なのは、投資した会社が大きく成長するか否かです。それにはしっかりとした分析能力が必要となります。決算書の分析力やその市場の動きを予測できる能力なども必要になるでしょう。大きなメリットが見込める分、経験値や高い能力が要求される投資スタイルです。

NISAで株式を運用するデメリット

NISAにはいくつかのデメリットが存在します。その1つが、NISA口座は1人1口座しか開設できないことです。金融機関を変更することはできますが、1年単位になります。また、NISAでの投資は新規に限定されており、保有中の株式や投資信託をNISA口座に移すことはできません。

そして、最も注意したいのは損益通算ができない点です。損益通算とは、複数の口座で発生した利益と損失を相殺できる仕組みですが、NISA口座で損失となっても他の口座の利益で相殺することはできません。損失の翌年以降への繰り越しができない点もデメリットといえます。

NISAで投資信託を運用するメリット

投資信託で運用する大きなメリットは、少額から投資できることです。株式投資では100株単位での売買となるため多額の資金が必要となりますが、投資信託による投資では、1万円程度から投資することができます。

一般的に投資における基本的な考え方は、リスクをできるだけ回避することにあります。そのために1つの銘柄に集中投資することは避け、分散投資により、リスクをおさえます。ここで注意したいのは、個人投資ではリスクを分散して投資することは難しいということです。ひとりで多くの株式や債券に分散投資するには多額の資金を必要とするからです。しかし、投資信託は不特定多数から小口資金を集めて、1つの大きな資金として運用するスタイルです。よって投資信託に投資をするだけで、リスクを分散することが可能です。

投資信託は、投資家が集めた資金を運用の専門家が代わりに運用します。運用の専門家は個人では習得の難しい高い専門知識を有しています。つまり、株式投資のように投資家自身で高度な知識や豊富な投資経験を有する必要はありません。

原則、取引価格である基準価格は毎日公表されています。よって資産価値がわかりやすくなっています。また、監査法人の監査を受けていることもあり、透明性の高い金融商品といえます。

NISAで投資信託を運用するデメリット

NISAで投資信託を運用するデメリットとしては、株式の購入と同様、損益通算ができない点が挙げられます。

またNISAで購入できる投資信託の商品は金融庁が定めたものに限られます。そのため、安全性は高い反面、自分で選ぶ点では物足りなさがあるかもしれません。一般NISA、ジュニアNISAは投資期間が限られていることから、長期投資による運用益を得る機会も限定されます。

株式と投資信託、迷ったときは投資の性質で選ぼう

運用資金に余裕がある場合、株式投資か投資信託で迷う場合があるかもしれません。反対に運用資金に余裕がない場合や、リスクを冒したくない場合等は投資信託の一択になると思われます。ここでは、投資スタイルごとに「向き・不向き」を検討していきます。

株式投資に向く人

株式投資は情報に関して几帳面な性格の人に向いているといえるでしょう。具体的には、株式情報を定期的にチェックする習慣を身につけたり、企業の業績や市場に関する情報に常にアンテナを張ることができたりする人です。

また、株式投資では投資タイミングを自身で決定することになりますので、判断力や決断力も備わっていなければなりません。よって決断力に乏しい優柔不断なタイプの人には、向いていないといえるでしょう。また、忍耐力も必要なのではないでしょうか。

そして株式投資に使用するお金は、生活資金ではない余剰資金で行うことが基本です。生活資金からの投資では、絶対に失ってはならないという執着心が強くなり、成功しない傾向があるようです。余剰資金を投資でき、お金への執着心があまり強すぎないほうがよいといえるでしょう。

投資信託に向く人

投資の初心者は、株式投資よりも投資信託ほうが向いているといえるでしょう。なぜなら、株式投資では投資タイミング等の判断を自分自身で行いますので、ある程度の知識や経験が必要です。

一方で、投資信託はプロのファンドマネージャーが投資を代行してくれます。よって、資産運用等の知識の習得に時間を取れない投資の初心者などの場合、投資信託が向いています。また、短期的に勝負するよりも、長期的な視野でコツコツと資産したいという方も向いているのではないでしょうか。

「株式50%、投資信託50%」「株式30%、投資信託70%」など、両者を組み合わせる

ここまで株式投資に向いている人、投資信託に向いている人の概略をご説明しましたが、必ずどちらか一方を選択すべきということではありません。最初は投資信託を少額で始めて、経験と知識をある程度習得した時点で、株式投資にチャレンジするのもよいのではないでしょうか。

具体的には、まず投資信託で積立投資を開始します。それと並行して投資知識を習得します。そして、知識を蓄え、投資信託運用で個別株を購入できる必要額まで達したら、一部の投資信託を解約します。そのうえで、自身で選定した個別株を購入する方法です。

このように個別株式のポートフォリオを形成していくのも1つの選択肢です。そうすれば結果的に、株式と投資信託の比率はご自身の知識と経験の蓄積で自然と決まってくると思われます。

銀行のNISA口座は株式投資できない。口座開設をする金融機関選びは慎重に

NISA制度を利用する場合、銀行でもNISA口座を開設することが可能ですが、証券会社に比べて、取扱商品が少ないことは否めません。また、銀行では株式を取り扱っていないため、株式投資を行うことはできません。株式投資を行う場合、証券会社の証券総合取引口座を開設する必要があります。

NISA制度の創設当初は、一度NISA口座を開設すると、4年間は金融機関を変更することはできませんでしたが、2015年からは制度が改正され、1年に1度だけ金融機関を変更できるようになりました。変更できる条件として、金融機関を変更する年に買い付けを行っていないことが条件となります。

また、金融機関を変更するデメリットとして、金融機関を変更するとロールオーバー(非課税期間の終了後に、翌年の非課税投資枠に移管すること)ができなくなってしまいます。通常のロールオーバーでは、5年間の非課税期間終了後、翌年のNISA非課税投資枠にその商品を移管して、非課税期間を5年間延長することができます。しかし、これは同一の金融機関でなければできません。

値上がりが期待できる株式などを保有している場合は、注意が必要です。もし、ロールオーバーの権利を得たい場合は、再度、元の金融機関にNISA口座を変更する必要があります。とにかく金融機関を変更すると、ロールオーバーができなくなるというデメリットがあることに気を付けなければなりません。

株式投資と投資信託、どちらがどんな人に向いているか

あらためて、株式投資、投資信託、どちらを選べばいいか、考えてみましょう。今度はそれぞれの利益をあげるために必要な行動から、向き不向きを分析します。

株はやや中級者向け、投資信託は初心者向け

株式取引は、買い付けのタイミングや利益を確定させるための売却タイミング等を、自身の知識と経験で判断しなくてはなりません。その分だけハードルは高く中級者向けの投資スタイルといえます。

国内や世界経済の動向を常にチェックし、市場の株価や注目している企業の業績などにも注意を払わなくてはなりません。

『会社四季報』などにも目を通して、公表される決算書の内容も理解することが必要です。ただ、現在起こっていることは、すでに株価に反映されてしまっているのが現実です。市場の反応を先回りして予測できる能力が必要になってくるでしょう。

また昨今では、AIの能力が驚異的に高まっており、蓄積した知識や習得した能力が役に立たなくなる時代が来るかもしれません。AIを味方につけながら投資することも一般的になるでしょう。AIを活用したロボアドバイザー(ロボアド)と呼ばれるAI投資にも注目しておきたいところです。

株式投資では投資タイミングが合えば、投資信託に比べて大きな利益を生み出す可能性もあります。しかし、短期的な取引ではなかなか難しく忍耐力も必要とされます。

投資信託を利用した投資スタイルでは、前述した投資タイミングなど、プロのファンドマネージャーが代行してくれます。リスクを上手に回避して、少額からの買い付けも可能となっていますので、初心者には適した投資方法といえますが、基本的には長期にわたる資産運用スタイルとなっています。

デメリットを理解しながら併用も選択肢に

いずれにせよ、株式、投資信託それぞれのデメリットも理解して活用することが大切です。そして、それらのデメリットを補うために、前述の投資信託運用で個別株式の購入資金を調達することも視野に入れましょう。そうすると、株式投資と投資信託投資を並行して行うという併用投資も選択することもできます。

株にも投資できるように証券会社に開設しておくのがよい

株式投資と投資信託投資を並行して行うためには、証券会社に証券総合取引口座を開設する必要があります。投資信託での資産運用やNISA制度の利用の場合は、銀行での口座開設で取引可能ですが、株式投資は証券会社での口座開設が必要となるからです。

なんといっても、証券会社における商品の取り扱い量は、銀行の比になりません。証券会社ごとにも各社それぞれの特色があり、それぞれの強みがありますので、証券会社のホームページ等を確認して、まずは証券取引総合口座を開設してみてください。

自身の投資スタイル、メリットとデメリットを考慮したうえで第一歩を踏み出そう

中級者向けの株式投資、初心者が投資のはじめの一歩を踏み出しやすい投資信託を説明してきましたが、どちらもメリットとデメリットが存在します。そして、どちらで資産運用をするとしても、一定程度の勉強は欠かせません。リターンとリスク、そして自身の性格にあった投資スタイルをじっくりと考えたうえで、貯蓄から資産運用へ、まずは第一歩を踏み出すことから始めてみましょう。

内宮 慶之
ファイナンシャルプランナー。大阪市天王寺区でFP事務所を開業しており、講師業・相談業・執筆業を主としている。会計事務所に長く在籍していたこともあり、法人と個人のバランスを考慮したコンサルティングを得意とする。相続についての相談実績も多数。趣味は山登りで、自然のなかにいることが何よりの癒し。