漫画『鬼滅の刃』やゲーム「刀剣乱舞」のヒットを受け、日本刀の人気が高まっています。専門性の高い美術品として、もとより愛好家に人気がありましたが、いまや外国人や若い女性にまでその人気が広がっています。

ブームを受けて各地で展覧会も開催されていますが、実際に日本刀を鑑賞して、その世界を堪能するには、どのようなことを知っておけばよいのでしょうか。この記事では、日本刀の“美”を楽しむための方法を紹介します。

日本刀の興り

日本刀,魅力
(画像=RewSite/stock.adobe.com)

日本における刀剣の歴史をひも解いてみましょう。

私たちがイメージする日本刀のルーツは、鉄製の刀が見られるようになった「古墳時代」にさかのぼります。当時の刀は、武器としてはもとより、装飾を施して“権威の象徴”とする性格が強いものでした。一方で、同じく古墳時代に現在の東北地方の民は「蕨手刀」(わらびてとう)と呼ばれる刀を使っていました。柄頭が蕨のような形状をしている刀です。

この蕨手刀が後に、刀身に反りがつくようになり、やがて日本刀に発展していったと考えられています。

日本刀の魅力

日本刀の魅力は、一切の無駄を省いた刀身の形、輝きだけでなく、それを必要とした当時の思想、歴史的背景など、無言のうちにいろいろなことを語りかけてくるような存在感から、観る者に想像を広げさせてくれるところにあります。刀身の美しさを鑑賞する上では、次の3つを押さえるとよいでしょう。

姿(すがた)

「姿」は、そのまま刀身全体の形状やたたずまいを指します。何に使われてきたのかや、それを手にした者たちの思いを想起させます。

刃文(はもん)

「刃文」は、焼き入れによって刀身に現れた文様です。刀匠によって違うので、この作者が誰であるかを知る手がかりになります。日本刀の最も重要な見どころの1つです。

地鉄(じがね)

刀を打つとき、折り返し鍛錬という工程を経ますが、その跡が模様となって刀身の表面に浮き出てきています。その模様や素地のことを「地鉄」や「地肌」といいます。刀匠にも流派があり、流派によって地鉄も違ってきます。

造られた時代によって違った顔を見せる

日本刀は時代とともに変化してきました。時代ごとに実戦を経て、武器として改良が重ねられてきたからです。

今日、私たちが知る日本刀は、平安時代中期ごろに直刀から湾刀へと移行した形だと考えられていますが、その姿や刃文は時代ごとに特徴があります。時代の要請がそうさせていることを考えると、日本刀の姿に歴史を感じ、感動を覚えます。

日本刀の製造技術

日本刀を鑑賞する上では、その製造工程を知っていると、より深く味わえるでしょう。

製鉄〜水へし・小割り

たたら製鉄で砂鉄から作った玉鋼(たまはがね)を低温で熱してたたき、厚さ3~6ミリメートルの板にします。これを水につけて急激に冷やし、小槌でたたき割っていきます。そして割れた鋼、割れなかった鋼に選りわけます。

割れた鋼は炭素の含有量が多い“硬い鋼”といえるため、刀身の外側「皮鉄」(かわがね)に用いられます。反対に、割れなかった鋼は炭素の量が少ない“柔らかい鋼”といえるため、刀身の中心部「心鉄」(しんがね)に用いられます。

この炭素の含有量を推し量る作業を、「水へし」「小割り」といいます。

沸し〜鍛錬

前の工程で小割り、選別された玉鋼には不純物が含まれています。そこで一度、炉に入れて熱し、たたいて塊にしていきます。この工程を「沸し」(わかし)といい、温度を調節することで徐々に不純物が取り除いていきます。

沸しを終えたら、大槌で叩く「鍛錬」を行います。鍛錬によって不純物がさらに取り除かれ、さらに炭素量を均一化させる効果があります。たたいて伸ばして折り曲げることを何回も繰り返し、皮鉄の場合これを15回繰り返します。15回繰り返すと層の数は2の15乗ということになり3万2,768層にも折り重なった鋼の層ができます。

素延べ〜焼き入れ

心鉄を皮鉄でくるんで刀身の構造をつくり、次に「素延べ」(すのべ)という作業で、これを引き伸ばすことで刀の形にしていきます。

刀身の長さにたたいて伸ばしたのち、小槌などで日本刀の形を作り仕上げていきます。これを「火造り」(ひづくり)といいます。火造りを経て刀の姿が決定しますが、この段階では刃文は見られません。その後に行う「焼き入れ」という作業を経て、反りを調節し、刃文が表れます。

これらの複雑な製造工程を経ることで、強さとしなやさを併せ持った武器になるのと同時に、工芸品としての美しさが生みだされているのです。

日本刀は美術品として個人所有も可能

機能美を体現する美術品である日本刀を、展覧会や美術館で鑑賞するだけでなく、自ら所有したいという方もいるでしょう。その点、いわゆる“銃刀法”によって、日本刀を持つには特別な許可が必要だと思っている方も多いかもしれません。

実は、美術品もしくは骨董品としての価値を持つ刀剣については特別な許可は必要なく、各都道府県の教育委員会に登録することで誰でも所有できます。具体的には、教育委員会が行っている刀剣類の審査会で審査をうけたのち、刀剣と「銃砲刀剣類登録証」とセットで保管すればよいことになっています。

このように日本刀所有のハードルは意外と低いものです。取り扱いにはもちろん注意が必要ですが、魂の宿った、凛とした雰囲気と緊張感をもつ刀を自宅に置いておけるのは魅力です。

日本刀を一本所有して、何か大事な局面に立ち向かう際にその前に立てば、これまでできなかったような精神統一ができるかもしれません。ぜひ一本、手に入れてみてはいかがでしょうか。

(提供:JPRIME


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