新型コロナウイルスの流行は、医療機関に多大な負荷をかけるものとなっていますが、一方で、医療業界の変革のきっかけとなるという見方もあります。この記事では、従来の医療を変えるテクノロジーの最先端について調べ、わたしたちの生活にどのような変化があらわれるのかを考えていきたいと思います。
医療現場のデジタル化は生活にも影響
医療現場ではデジタル化が進み、私たちの生活にも変化が現れはじめています。身近な例としては「オンライン診療」と「マイナンバーカードの保険証利用」があげられます。
オンライン診療
新型コロナウイルス感染拡大に伴って最初の緊急事態宣言が発令された2020年4月に、“時限的措置”として初診も含めたオンライン診療が解禁されました。
従来の「初診では対面診療、オンライン診療は特定の疾患を対象にした2回目以降の診療のみ」という原則が変わり、医師が診断可能と判断した範囲であれば、初診を含めてオンライン診療を行うことが可能になりました。
これにより他患者との接触がないため、院内感染・二次感染のリスクを減らせるなどの効果が期待でき、通院にかかる時間負担の軽減も実現しました。
マイナンバーカードの保険証利用
2021年4月から一部の医療機関でマイナンバーカードが健康保険証としても利用できるようになっています。マイナンバーカードを利用して医療機関で受診すると、受診者の情報が一元的に管理され、医療費が確認でき、確定申告にもそのデータを利用できます。
実用化が期待されている医療技術
すでに実現したオンライン診療やマイナンバーカードの保険証利用は、医療のデジタル化の一端です。いま、これからの医療技術の進展に、ますます大きな期待が寄せられています。特に、感染対策や業務効率化の観点から、オンライン診療のような“非対面”の医療に各事業者が注力しており、最近ではIoT機器を活用した遠隔診療、遠隔手術の技術が実用化に向けて進んでいます。
遠隔診療では、具体的には“ウェアラブル端末”の活用が期待されています。ウェアラブル端末を体に装着することで心拍や活動量、睡眠状態などを連続的に測定され、そこから得られたデータが医師へ送られる仕組みです。これにより診察日以外の患者の状態を把握することも可能になり、医師はより緻密な遠隔診療を行えるようになります。
また遠隔手術の開発も進んでいます。遠隔手術とは、手術支援ロボットを遠隔操作しながら行う手術のことです。2020年に実用化がはじまった新しい通信規格である“第5世代移動通信システム(5G)”により、従来よりも格段に高速大容量、低遅延の通信が可能となったため、実用化に向け大きく前進するといわれています。
遠隔手術が実用化されれば、離れた場所にいる優秀な技能をもった医師の手術を比較的容易に受けることができるようになります。また都市部に集中している医療人材の力を、地方でも有効活用できる可能性も期待されています。
デジタル技術を応用、他業界からの新規参入が増加
デジタル化による変革は、医療業界に大きな需要を生みだし、さまざまなベンチャー企業が参入してきています。
慶應義塾大学医学部として初のベンチャー企業であるメディカルデータカードは、医療情報プラットフォーム「MeDaCa」(メダカ)を提供しています。
患者側は、このプラットフォームを使うことで、それまで病院ごとに管理されていた自身の健康・医療データをデジタル化して集約させ、一元管理できるようになります。また患者側が同意すれば、医療データを他の医療機関に提供することも可能であるため、シームレスな医療サービスを受けることが可能です。
さらにデジタル化により市場規模が拡大していることを受け、医療業界には他業界から新規参入が相次ぐようになっています。
伊藤忠商事は医療マーケティングのフェーズワンと提携し、共同で開発したDX基盤の提供をはじめています。提携により医師向けの教育コンテンツ配信プラットフォームサービスを開始しているほか、新薬セミナーや医療機関での各種カンファレンスなどをオンライン上で実施できるコミュニケーションサービスも開始する予定です。
こうしたデジタル化の進展とともに、大きく期待されるのが「ビッグデータ活用」です。膨大な患者情報、遺伝子情報などを含めたさまざまなビッグデータを活用することで、がんなどの疾病の原因遺伝子が解明され、それをもとにした新たな診療サービスや治療法が開発される可能性があります。
デジタル化が進むことで医療は予防医療へシフトする
新型コロナウイルスの感染がこのまま拡大していくと、それ以外の疾患への対応が逼迫するリスクがあります。感染拡大を抑えるには1人ひとりの感染予防は不可欠であり、あらためて予防医療の重要性が注目されています。
前述したウェアラブル端末を使った健康管理サービスや、ビッグデータの分析結果を参照しながら、患者の検査結果と生活習慣病との関連性を解析し、将来の健康状態を予測するサービスなどは今後広く普及していく可能性があります。
(提供:JPRIME)
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