新型コロナウィルスの感染拡大はオフィスのあり方を大きく変えました。これまでのオフィスにはない、さまざまなタイプの小規模オフィスを利用する動きが広がっています。代表的な4種類のオフィスのメリット・デメリットを紹介します。

コロナで変わったオフィスのあり方

どれを選ぶ?利用が増えている4種類のオフィスのメリット・デメリット
(画像=sodawhiskey/stock.adobe.com)

新型コロナウィルスが感染拡大する前は、本社ビルに社員が一堂に会して仕事をするのが一般的なオフィスの姿でした。しかし、3密(密閉・密集・密接)を避けるためにソーシャルディスタンスを保つ必要があり、コロナによる最初の緊急事態宣言以降、本社の社員を分散させる動きが急速に広がりました。

また、コロナによる経済情勢の悪化から賃料の高い一般的なオフィスビルを避け、低コストで手軽に利用できる小規模なオフィスの需要が伸びています。個人事業主にとっては少ない費用で開設でき、企業にとっては勤務体系を多様化できるなど、それぞれにとって意味のある形態といえます。

それでは、利用者が増えている4つのオフィス形態の、それぞれのメリット・デメリットについて見てみましょう。

業務スペースをシェアできる「シェアオフィス」

シェアオフィスは、複数の企業や個人がスペースを共有して業務を行うオフィスのことを言います。同じ空間でさまざまな業種の人が働くため、新しい人脈を作れるメリットがあります。PC1つで仕事ができるクリエーターなど個人事業主やフリーランスの利用が多いといわれています。OA機器などの設備も整っており、休憩室やミーティングルームなどを利用できる施設もあります。利用料金は1人席利用の場合で月額5~6万円程度(税込)からと、ワンルームマンションの家賃並みの低コストで提供している事業者もあります。

デメリットはスペースを共有しているため、周りの話し声が聞こえ仕事に集中しづらいことです。また、複数の利用者が出入りするため、セキュリティに注意しなければなりません。PCや資料をその都度持ち込まなければならないのを手間に感じることもあるでしょう。

もう1つコロナ禍のなかでは、隣席のワーカーとソーシャルディスタンスが保てるかどうかを見学時にチェックする必要があります。席の間隔を広くするなどの対策がなされていない場合は利用を慎重に考えたほうがよいでしょう。

専用の個室がある「レンタルオフィス」

レンタルオフィスは、造作された小規模な個室を月額料金でレンタルするオフィスのことを言います。小規模に事業を行っている場合でも個室の事務所を持ちたいという希望はあるでしょう。一般のオフィスビルを契約する場合はスケルトン(空っぽ)の状態で入居しますが、レンタルオフィスはオフィス家具があらかじめ備えられているため、初期費用を抑えられるのがメリットです。スペースを共有するシェアオフィスと違いレンタルオフィスは専用の個室を借りることができるので、周囲を気にせず業務を行うことができます。居室に鍵も付いているので、PCなどの機器をそのまま置いて帰れるのも便利です。シェアオフィスは「貸スペース」、レンタルオフィスは「貸事務所」と考えるとわかりやすいかもしれません。

税理士や宅地建物取引業など開業の際に許認可が必要な業種では定まったスペースを持っている必要がありますが、レンタルオフィスなら開業が可能です。

デメリットは料金の幅が大きいことです。立地によって月額5~20万円台とかなりの開きがあるため、相場をつかみにくい形態といえます。同じ専有面積でも事業者や立地によって料金が異なるので、複数の事業者を比較して慎重に選ぶことが大事です。また、個室であるため入居時に保証金や敷金がかかる事業者があります。退去時には「原状回復」の義務があるので、汚れや傷などをつけてしまうと修繕費用を敷金から差し引かれる場合があります。

仮想の事務所「バーチャルオフィス」

バーチャルオフィスは、物理的な場所を持たないオフィスのことを言います。郵便物の受付・転送、電話・FAXの利用サービスがあり、法人登記のための住所を利用することができます。ビジネスの中心地として認知されている都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)の住所で法人登記できれば対外的な信用も高まることが期待できます。利用料金は一流立地でも月額1~3万円台からと、小規模オフィスのなかでは最も低コストです。

メリットは場所貸しではないため敷金や礼金、改装費用など初期コストがかからないことです。多少の入会金や保証金のみで開設することができます。個人事業主やフリーランスにとっては自宅の住所を公開せずに営業できるのもメリットです。デメリットは、デスクや椅子などの設備を利用できないことです。万一、取引先の人が自社を訪問したいと希望した場合に対応が難しい形態といえるでしょう。

衛星のように点在し利便性高い「サテライトオフィス」

先に紹介した3つの形態は、どちらかというと個人事業主やごく小規模な企業が利用するのに向いていますが、本社を持つ企業が働き方改革につながる拠点として利用できるのがサテライトオフィスです。サテライトオフィスとは、本社から離れた場所に設置する小規模なオフィスのことを言います。衛星(サテライト)のようにオフィスを配置することからサテライトオフィスと呼ばれています。

支社や営業所は勤務する社員が固定されておりデスクも決っていますが、サテライトオフィスは社員なら誰でも利用でき、空いているデスクを自由に使うことができます。外回りの社員が立ち寄り、備え付けのOA機器から営業結果を本社に送信できるなど、利便性が高いオフィス形態といえます。自宅ではテレワークが難しいという環境の社員が、自宅に近いサテライトオフィスでテレワークを行うことも可能です。自社専用のオフィスですので、セキュリティの面でも安心です。

利用料金は月額8万円程度から利用可能な事業者があります。本社オフィスと上手く合わせて利用すると大幅に賃料コストを削減することが可能です。

【賃料コスト削減の具体例】
本社として賃料1フロア100万円のオフィスビルを4フロア契約していた場合
月額賃料合計400万円

本社を1フロアに削減し、月額8万円のサテライトオフィスを6部屋契約した場合
月額賃料合計148万円(100万円+8万円×6部屋)※一例であり、物件によって異なります。

サテライトオフィスは社員の利便性を高めるだけでなく、賃料や交通費などコスト削減のメリットも大きいのです。テレワークの普及で本社に余剰スペースが多くなった企業には検討の価値があるオフィス形態といえます。

デメリットは、本社の社員や上司とのコミュニケーションが不足することです。連絡はインターネットのコミュニケーションツールや携帯電話などで行うため、対面よりも業務上のコミュニケーションがとりにくくなります。また、共用型のサテライトオフィスではセキュリティに不安が生じますので、必ず専用型の事業者を選ぶことが大事です。

ここまで新しいオフィスの形として定着しつつある、4種類のオフィスについて見てきました。個人事業主やフリーランスにとってはシェアオフィス、レンタルオフィス、バーチャルオフィスでスタートし、事業の発展を目指すのもよいでしょう。企業にとってはサテライトオフィスを利用することで社員の労働環境の改善や賃料コストの削減につなげることができます。サテライトオフィスは働き方改革にも対応できる、これからの時代の中心になりそうなオフィス形態といってよいでしょう。

※本記事は各オフィス形態の一般的な特徴を紹介したものです。料金や利用条件は事業者によって異なりますので、利用する際は事業者のホームページ等でご確認ください。

(提供:spacible