不動産投資には、不動産に関連するさまざまなサービスやそれぞれの業務を担う会社があります。不動産投資家やこれから不動産投資を始めよう考えている人が知っておきたい関連サービスの一つが家賃保証です。家賃保証のサービスを提供する業者のことを家賃保証会社といいます。基本的に家賃保証は、不動産の管理会社が利用することが多い傾向です。

そのため不動産のオーナーにとってはあまりなじみがないかもしれません。しかし2008年には大手家賃保証会社が倒産したことがありその影響が少なからずオーナーにも及んだことがありました。このように家賃保証の必要性や重要性を知っておく必要があります。近年は、賃貸契約で家賃保証会社を利用するケースが増加傾向という状況を踏まえてオーナーも家賃保証の仕組みを理解しておくことが賢明です。

そこで今回は、家賃保証の仕組みや家賃保証のメリット・デメリットについてオーナーと入居者の両面から解説します。

家賃保証の基本と仕組み

今さら聞けない家賃保証の仕組みをオーナー、入居者の両面から解説
(画像=Tinnakorn/stock.adobe.com)

家賃保証は、その名の通り家賃を保証することで滞納リスクに備えるためのサービスです。家賃保証会社は、管理会社やオーナーから保証料を受け取ることで保証を提供し万が一滞納や遅延が発生したときに入居者に成り代わって家賃の支払いを行います。リスク管理を目的としたサービスのため、保険に近いサービスと認識すると分かりやすいでしょう。

家賃保証会社は、家賃を滞納している入居者から家賃の回収を行います。管理会社やオーナーにとって家賃滞納は大きなリスクとなるため、リスクを適切に管理する意味でも利用価値の高いサービスです。

オーナーにとって家賃保証サービスのメリット、デメリット

一般的に家賃保証会社は、不動産の管理会社が利用しますがそのメリットは間接的に不動産オーナーにももたらされます。ここでは、家賃保証がオーナーにとってどんなメリットとデメリットがあるのかについて確認していきましょう。

<メリット>

  • 滞納発生時に備えてリスクヘッジができる
  • 滞納リスクを解消することで経営の安定化、それを前提にした経営計画を立てられる
  • 保証人なし、もしくは信用状態があまりよくない保証人しか付けられない人であっても入居者の対象にできる
  • 保証人が個人だと「なった覚えがない」「支払えない」「支払いたくない」といったトラブルもあり得るが、そのリスクを解消できる

これらのメリットはいずれも家賃を回収できなくなるリスクに備えるものです。家賃回収リスクを減らすには、連帯保証人の制度を活用することもできます。しかし個人の保証の場合、保証人自体の信用状態が変化してしまったり亡くなってしまったりすることは懸念材料の一つです。さらに、2020年4月の法改正によって保証人の保証金額に極度額を設定することが義務づけられており、それまでの根保証契約と違って保証人から家賃を回収できる金額にも上限が設けられることとなりました。オーナーはこの点もしっかり留意しておく必要があるでしょう。こうした個人による保証と違い、家賃保証会社を利用すればコストと引き換えに家賃の滞納や回収不能になるリスクを解消できます。

また連帯保証人を立てられず入居者として迎え入れることができなかった人でも家賃保証の仕組みを利用することで入居者とすることが可能です。これにより対象入居者の見込みが増えるため、マーケットの拡大が期待できます。日本は、人口減少の影響もあり「今後入居者の候補をいかに広げられるか」についても経営課題の一つです。家賃保証は、経営課題を解決できるスキームとしても期待できます。

<デメリット>

  • 保証料という新たなコストが発生する
  • 保証会社が倒産してしまうと、事実上の保証人なしになってしまう

家賃保証会社は、ビジネスとして保証業務を行っているため、当然利用するにはコストが必要です。ただし一般的に保証料は入居者が負担するため、オーナーにとって新たなコストが増加するわけではありません。オーナーにとってデメリットがあるのは、新たなコスト負担により入居者の候補が少なくなってしまうことでしょう。

2つ目の倒産リスクについては、冒頭でも言及した通りです。家賃保証会社は、賃貸契約において保証人としての役割を果たします。しかし家賃保証会社が倒産してしまえば保証能力はゼロです。事実上の保証人がいないことと同じ状態になってしまいます。また滞納が発生している状態で家賃保証会社が倒産してしまえば滞納している家賃の回収は極めて困難となるでしょう。

入居者にとって家賃保証サービスのメリット、デメリット

家賃保証サービスは、入居者側から見るとどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

<メリット>

  • 連帯保証人を立てられない人であっても入居できる
  • 誰にも保証人を頼みたくない人は金銭で解決できる

賃貸契約で必要になる連帯保証人を何らかの事情で立てられない人は、意外に多いものです。仮に連帯保証人を立てられたとしてもその人が入居審査に通らない可能性もあります。そのため十分な信用力のある連帯保証人を立てられない人も賃貸住宅に入居できません。例えば高齢者やフリーランス、外国籍など特に賃貸契約で審査に通りにくい立場の人の場合、この問題は意外に深刻です。

家賃保証会社を利用しても外国人入居者については依然として入居審査に通りにくい状況はあるものの、家賃保証を利用することによって入居しやすくなる人がいるのも事実です。住む場所は、誰もが必要なものですがそれを自分の事情や好みで選べないことは社会全体の問題ともいえるでしょう。こういった問題を解決できるのが家賃保証サービスのため、人によってはなくてはならないスキームといえます。

一方で十分な信用力をもった人が身近にいる場合でも本人の意向や何らかの事情によって「連帯保証人を頼みたくない」ということもあるでしょう。そんな人にとって、連帯保証人になってくれる家賃保証会社の利便性は高いです。実際にこのような理由で家賃保証サービスを利用している人は少なくありません。

<デメリット>

  • 保証料が発生する
  • 保証会社の審査に落ちる可能性がある

先ほど家賃保証を利用する際のコストは、「入居者が負担するのが一般的」と述べました。保証料は、それぞれの家賃保証会社が定めますが「家賃の半分もしくは1か月分程度が大まかな目安です。また保証料の発生タイミングについても各社によって異なりますが「初回契約時と以降1年ごとに保証が発生する」というケースが最も多い傾向です。

専門の会社に保証を依頼するには、こうしたコストが伴います。信用状態があまりよくない人が賃貸住宅に入居しやすくなるのは家賃保証サービスのメリットですが、家賃保証サービスを利用する場合は家賃保証会社が審査を行います。この審査に落ちてしまうと、その人は入居できません。家賃保証があるからといって誰でも入居できるわけではない点も、留意しておく必要があるでしょう。

オーナーは家賃保証サービスを利用するべきか

オーナー自身が不動産の管理をしている場合、家賃保証サービスを利用するかどうかはオーナー自身の判断に委ねられます。自分自身に不動産管理のノウハウがあって自信もあるのであれば家賃保証サービスは不要です。しかし本業がある兼業不動産投資家の多くは、家賃滞納が発生したときの対応に割ける時間が限られています。

また十分な回収のノウハウもないことが多い傾向です。そのため不動産投資を始めるつもりの人の場合は、リスクヘッジの観点から家賃保証サービスを利用するべきでしょう。家賃保証だけに限らず物件の管理や入居者探しなど多くの業務を外部委託できることも不動産投資に参入しやすい理由の一つです。兼業不動産投資家としての参入を検討している人は、安心を買う意味でも家賃保証サービスの利用をおすすめします。

(提供:spacible