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FX投資をする際に絶対知っておきたい言葉の一つが「ロスカット」だ。FXは、少ない手元資金で大きな利益を期待することもできるが、逆に大きな損失を出す可能性もある。損失を抑える対策として設けられているのが、ロスカットという仕組みだ。この記事では、ロスカットの仕組みや、リスクをコントロールする方法などについて説明する。
FXのロスカットとは?
一般的に投資は、FX投資に限らず順調に利益が出ているときもあれば、損失が出ることもある。株式の現物取引などと比べると、FXは利益も損失も大きくなる可能性がある。そのためFX取引では「ロスカット」というルールが設けられている。ここでは、ロスカットの仕組みについて見ていこう。
●ロスカット=強制決済のこと
ロスカットとは、簡単にいうとポジション(決済前の「売り」または「買い」注文の状況)の評価損がある一定レベルに達したときに、損失が膨らむのを防ぐためにFX会社が現在の取引を自動的に終了することだ。
FXは、2国間の通貨の為替変動を利用して行う投資法だが、為替が変動する要因として、各国の景気や株価、貿易収支、投資動向などが関係している。ほかにも、各国の経済指標や政策の発表、要人の発言などにより急変することも少なくない。このような場合に為替が予想と反対に大きく動いてしまうと、大きな損失が出る可能性があるのだ。
またFXは、預け入れた証拠金を担保に国内FX業者であれば最大25倍までの金額の取引ができる。しかし取引金額が大きいほど、少しの為替の動きでも利益または損失への影響は大きくなる。そのため法律によって「ロスカット・ルール」を整備・遵守することがFX会社に義務づけてられている。
FX会社は、証拠金に対して損失が一定の割合を上回ったときにポジションを反対売買することで強制的に決済して取引を自動的に終了させる。これがロスカットだ。
●目的は投資家の保護
ロスカットは、投資者が大きな損失とならないようにある程度のところで留めることが目的だ。もしロスカットが行われず、為替が予想と反対に動き続けた場合の損失規模は計り知れない。ポジションを自動的に強制決済することで、損失がどんどん膨らむのを防ぐことがロスカットの大きな役割だ。
FXでは、預け入れた証拠金を超えて損金を支払わなければならない可能性もあるため、一定のロスカット・ルールによって損失が確定すれば、それ以上の損失を被らずに済む。投資家にとってロスカットは、資産と投資家自身を守るための安全装置とも言える。
しかしロスカットが執行されても、相場の急変などで証拠金以上の損失が出てしまうこともある。なぜなら急な相場変動により、多くの投資家が反応して取引量が急増することもあるからだ。
そうなると流動性の問題でロスカットのための決済注文が約定しなかったり、急激な取引集中によりFX会社のシステムトラブルが発生してロスカットできなくなったりする可能性がある点も大きなリスクだ。決済注文約定やシステムが回復するまでの間、さらに損失が膨らみ預けた証拠金を上回る損失が出る可能性もある。
ロスカットを回避する方法はあるのか?
ロスカットされることで甚大な損失を免れられるとはいえ、ロスカットが執行されることで投資家にとってデメリットとなることもある。
例えば、「FX会社によって強制的に損失を確定されてしまう」ことだ。取引をすべて終了させられるため、いったん取引ができなくなってしまう(取引の再開は再度入金したり、保有ポジションの一部を決済したりすることで可能)。
できればロスカットをされないように、投資家自身が対策を取っておくのが賢明だ。ここでは、ロスカットを回避するための方法を3つ紹介する。
●レバレッジを低くする
1つ目は、レバレッジを低くすることだ。FXで預け入れた証拠金に比べて何倍もの金額の取引ができる理由は、レバレッジが効いているからである。レバレッジとは、いわゆる「てこ(レバレッジ)の原理」で、小さな力(証拠金)で大きなもの(取引)を動かす仕組みのことだ。
レバレッジは、1倍、5倍、10倍……というように倍数で表される。これは「預け入れた証拠金の何倍まで取引できるか」という意味だ。例えば証拠金が10万円でレバレッジが1倍の場合、取引できるのは10万円分まで、レバレッジが10倍なら100万円分までの取引ができることになり、レバレッジが高くなるほど取引できる金額も大きくなる。
しかし前述したように、取引額が大きいほど為替の動きによる利益または損失への影響も大きくなる点は注意が必要だ。急激な為替変動が起これば、ロスカットされる可能性も高くなる。為替変動は、投資家自身が調整できるものではないが、あらかじめレバレッジを低めにしておくことでロスカットされるリスクを抑えることはできる。レバレッジを低くするには、取引口座に余裕を持った資金を入れておくと安心だ。
●スキャルピングをする
2つ目はスキャルピングだ。スキャルピングとは、数秒~数分単位で売買を繰り返し小さな利益を積み重ねていくFX取引手法の一つで、利益が小さい分、損失のリスクも低くなりロスカットのリスクも抑えることが期待できる。
瞬時の売買を繰り返すということは、自分がトレード画面を見ている間だけ取引をしているということだ。つまりすべてのポジションを決済するまでずっと画面を見ていることになるため、急な相場変動に巻き込まれる可能性も低くなる。FX会社の中には、スキャルピングを禁止している業者もあるため、FX口座開設をする前に確認しておくことが必要だ。
●損切りルールを明確化する
3つ目は、FX会社によってロスカットが執行される前に自ら保有しているポジションの全部または一部を決済し損失を確定することだ。これを「損切り」という。損切りは、FXに限らずすべての投資で大切な考え方であり、「もう少し待てば値上がりする」「今は評価損だけどきっと回復する」といった考えは投資家の期待心理だが、期待に反して損失がどんどん大きくなることもあり得る。
誰でも損はしたくないものだが、損失を最小限にとどめるためにも、損失額の少ない段階で決済してしまうほうが結果的にはよい場合もある。そのためには、ポジションを持つ前の段階で損切りの決済をするルールを決めておくことが大切だ。
損切りのルールの決め方は、投資家の考え方によって異なる。例えば「含み損が〇万円に達したら」「含み損が残高に対して〇%になったら」など許容できる損失額の基準をもとにルールを決めておくとよいだろう。損切りルールを決めてもルールを守らなければ意味がないので、自分で決めたルールは、きちんと守るようにしよう。
ロスカットを決める証拠金維持率
FX会社がロスカットを執行する基準としているのが「証拠金維持率」だ。実際は「証拠金維持率が何%以下になればロスカット」という決め方をしている。証拠金維持率とは、純資産(口座の時価評価総額)に対する必要証拠金の割合を示す数値のことで、言い換えれば「口座の余力を示す数値」となる。
証拠金維持率100%というのは「口座の純資産=必要証拠金」という状態を表す。ちなみに必要証拠金とは、FX会社に預け入れる最低限の証拠金をいう。証拠金維持率が100%なら証拠金の残高を全部使って取引していることを意味しており、この場合新規取引はできない。
このように証拠金に対して純資産が多いほど証拠金維持率は高くなるのが特徴だ。証拠金維持率が高ければ高いほど、口座に余力があるとみることができる。
●証拠金維持率の計算式
証拠金維持率は、以下の計算式にあてはめて計算できる。
・証拠金維持率=純資産(時価評価総額)÷必要証拠金×100
具体的な例で見てみよう。口座に10万円入金し、1米ドル=100円のときに1万米ドルを保有するとしよう。必要証拠金は、FX会社によって異なる場合があるが、取引額の4%とする場合は4万円(100円×1万米ドル×4%)で、このときの証拠金維持率は250%(10万円÷4万円×100)となる。
1米ドル=100円として2万米ドルを保有する場合、必要証拠金は取引額の4%とすると、8万円(100円×2万米ドル×4%)となる。この場合の証拠金維持率は125%(10万円÷8万円×100)となり、1万米ドルの取引の場合の250%と比べると、口座の余力が少なくなっていることがわかるだろう。
●ロスカット基準となる証拠金維持率は会社によって異なる
FX会社は「証拠金維持率が〇%以下になればロスカット」という基準を設定しているが、ロスカットが執行される証拠金維持率は、FX会社によって異なる。例えば100%以下という会社もあれば80%や50%以下とするなどさまざまだ。また同じ会社でもFXの取引コースによって100%、80%、70%、60%、50%などの選択肢から投資家が選べるようにしているところもある
ロスカット基準(証拠金維持率)が大きいほど、相場が意図しない方向に動いてしまった際の損失を小さく抑えられることも知っておこう。
リスクをコントロールしてFX取引を
投資にリスクはつきものだ。しかしレバレッジを効かせて投資をするFXは、損失が甚大になる可能性がある。そこで投資家のリスクをできる限り小さく抑えるために導入している仕組みが「ロスカット」である。
しかし投資家としては、ロスカットが執行されないようにリスクをコントロールすることも必要だ。リスクをコントロールするためには、レバレッジを低くしたり、証拠金維持率を常に意識したりすることなどが大切だ。あらかじめ損切りのルールを決めておき、万一損失の許容範囲を超える基準に到達した場合は損切りしてしまう覚悟も場合によっては必要だろう。