FX取引をする際に注意すべき点として「スプレッド」がある。スプレッドは、スワップと並んでFX初心者が理解しておくべき必須用語と言える。この記事では、FXのスプレッドについて詳しく解説する。

FXのスプレッドとは何か?

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(画像=PIXTA)

はじめにスプレッドの意味について詳しく解説する。「FXをこれからはじめる」「FX取引をしているけれど何となくしか把握していない」といった人もしっかりと確認しておいたほうがよいだろう。

●売値と買値の差

経済ニュースなどで「現在1米ドル100円50銭~100円60銭で取引されています」という話題を耳にしたことがあるだろう。外貨為替取引では売値と買値が異なるため、こうした数字の差は売値と買値の差を表している。FXでいうスプレッドとは、FX取引をする際の買値と売値の差を意味している。

●流通が少ない通貨ほど広くなりがち

スプレッドは、一般的に固定されているわけではなく、差が狭くなったり広くなったりと変動する。主に以下のような場合、差が広くなりがちだとされている。

・クリスマスや年末年始などのイベントで取引が少なくなったとき
・夜中など取引が少なくなるとき
・要人の重大発言や、政治に大きな動きがあったとき
・経済指標の発表前後

これらとは別にスプレッドが広くなってしまうケースもある。流動性が低い通貨を取引する場合だ。例えば、米ドルやユーロのように世界中で取引量が多い通貨の取引の場合、頻繁に取引が成立するため、いきなり大きな値動きとなるケースは少なく、買値と売値の差もそれほど大きく開くことはない。

しかし、流動性が低い通貨の場合、取引する相手が見つかりにくく、取引が成立しないこともある。そのため買値と売値の差、つまりスプレッドが広くなってしまう可能性が高くなるのだ。

FXのスプレッドは取引にかかる「コスト」

FX取引をする際は、取引手数料が無料の会社が多いが、「FXは手数料負担がないからお金がかからずお得」とは言えない。なぜなら投資家はスプレッドを負担しなければいけないからだ。以下で、スプレッドが取引コストになる仕組みについて解説しよう。

●FX会社が提示する為替レートの決まり方

通貨の買値と売値は「インターバンク市場」で決まる。インターバンク市場とは、金融機関や短資会社が参加する市場で、個人投資家は参加できない。インターバンク市場で通貨の買値・売値が決まるが、その価格をそのまま個人投資家向けに適用させるわけではない。各社(この場合はFX会社)が手数料としていくらか上乗せし、上乗せされた価格で個人投資家に取引してもらうことになる。

●スプレッドが「取引コスト」になる仕組みを解説

上述した上乗せ金額は、各FX会社が自由に決めていいことになっている。そのため、通貨価格自体は同じでも買値と売値がFX会社によって異なり、当然スプレッドも各社で異なってくる。スプレッドが大きいということは、「それだけ投資家側が負担するコストが大きくなる」ということを意味する。

特に「大きなロットで取引する」「何度も取引を繰り返す」といった人は、コスト負担が大きくなるおそれがあるため、取引前にスプレッドをよく確認しておくべきだろう。なお一般社団法人金融先物取引業協会の規則により、FX会社のスプレッド情報は自社ホームページで公表する義務が定められている。

スプレッドが狭いFX会社3選(米ドル/円)

スプレッドが広いほど取引コストが大きくなるが、反対にスプレッドが狭くなるほど取引コストは小さくなる。ここでは「米ドル/円」通貨ペア取引時のスプレッド実績が狭いFX会社を3社紹介する。単位は1万単位とする。

●SBI FXトレード

SBI FXトレードのスプレッドは、0.10~7.80銭(※1)の間だ。時間割合も公表されており、0.10銭の時間帯は52.93%、0.20銭の時間帯は42.90%で、ほとんどの時間帯が0.10~0.20銭程度で取引できることがわかる。
(※1) 2021年3月1日7:00~2021年4月1日5:30の期間

●外貨ex byGMO

外貨ex byGMOのスプレッドは、午前9時~翌午前3時の間は0.2銭、それ以外の時間は4.0銭だ(※2)。時間によっては、スプレッドのコストが高くなるため、取引する際は時間帯に注意が必要だ。
(※2) 2021年4月5日時点

●LIGHT FX

LIGHT FXのスプレッドは、0.2銭だ(※3)。午前8時~翌日午前5時まで、このスプレッドで原則固定されている。スプレッドが原則固定の時間も長いため、夜中など長時間取引をしたい人でも安心ではないだろうか。
(※3)2021年4月2日時点

●スプレッドが「原則固定スプレッド」か「変動スプレッド」なのかをチェック

スプレッドは「原則固定」と「変動」の2つに分かれる。各社のスプレッドがいくらなのかを気にするのも大事だが、これらの違いについてもチェックしておくべきだろう。

・原則固定スプレッド

買値や売値が変動してもスプレッドは一定。ただし震災などの災害や政変など市場に大きな影響を与える出来事が発生し、市場が急変した場合はスプレッドが変わることもある。

・変動スプレッド

買値や売値が変動すれば、それに合わせてスプレッドも変動する。

スプレッドに関するコスト増を気にせずに取引ができるのは、提示されたスプレッドで取引ができる「原則固定スプレッド」のほうだ。ただし、政変などが起こると固定ではなくなる点は覚えておこう。

FXのスプレッドによる「取引コスト」の計算方法~クロス円の場合~

FXのスプレッドは、取引コストとして考える必要がある。計算方法を理解して、どの程度のコストがかかるのかを把握しておくことも重要だ。

●「スプレッド0.3銭」の場合にかかる取引コストは?~米ドル/円の場合~

米ドル/円の取引でスプレッド0.3銭の場合、買値と売値は以下のように表示されている。 ※例として、米ドル/円:100円としている。

買値 売値
 100.003円  100.000円

例えば、この買値で1万米ドル買った場合、かかる費用は100.003円×1万米ドル=100万30円だ。その後、1万米ドルをこの売値で売った場合、受け取り費用は100.00円×1万米ドル=100万円で、この取引でかかるコストは30円ということになる。

●「スプレッド0.3銭」と「スプレッド0.3pips」の違い

FX各社のホームページを確認していると、スプレッドの部分に「銭」もしくは「pips」という表記が記載されている。pipsとは「percentage in points」の略で、FX取引の通貨の共通単位として用いられている。各通貨の最小単位を表しており、1pipsは日本円の場合「1銭(0.01円)」のことだ。

FXでは「米ドル/円」「ユーロ/円」など別の種類の通貨をペアにして取引を行う。その際、「米ドル〇ドル/円◎円」と単位を1つずつ表記していくとわかりにくくなるため、単位をpipsに統一してわかりやすくしているのだ。ちなみにpipsは、スプレッドの単位としても使われている。

FXのスプレッドによる「取引コスト」の計算方法~クロス通貨の場合~

米ドル/円のコスト計算について紹介したが、クロス通貨の場合も確認しておこう。クロス通貨とは、米ドル以外の通貨ペアを指す。

●「スプレッド1.5pips」の場合にかかる取引コスト~ユーロ/米ドルの場合~

「ユーロ/米ドル」の通貨ペアでコストを計算してみよう。1pips=0.01セントで、「スプレッド1.5pips」を米ドルに変換すると0.015セントだ。1万通貨取引した場合、「1万通貨×0.015セント=150セント=1.5米ドル」となり、1.5米ドルのコストがかかることになる。

●クロス通貨のスプレッドによる取引コストは円レートに影響する

紹介したように、他国通貨同士のペアでFX取引を行った場合、コストも他国通貨で計算される。日本円に換算する必要があるが、円のレートによってコストも変わるため注意が必要だ。

例えば、上述した1.5米ドルのコストの場合、「1米ドル=100円であれば1.5米ドル×100円=150円」で150円のコストとなる。しかし1米ドル=200円となった場合、「1.5米ドル×200円=300円」でコストは300円となる。同じpipsであっても円レートによってコスト負担が変わるため注意しよう。

FXのスプレッドに関する2つの注意点

FX各社のスプレッドを調べる際には、主に以下の2つの注意点がある。

●スプレッドは変動する

スプレッドは、必ず固定されているわけではない。クリスマスなど長期休暇で取引が控えめになる時期や経済指標などの数値が発表される前後などはスプレッドが変動する可能性が高くなる傾向がある。取引時期によっては取引コストが余計かかる可能性もあるため、注意が必要だ。

●スプレッドでロスカットが発生するケースもある

ロスカットとは、損失が証拠金の一定以上の割合に達するときに取引を強制終了させる仕組みだ。ロスカットを行うことで、証拠金以上の損失を食い止める効果がある。通貨の価格がそれほど変わらなくてもスプレッドの拡大があればロスカットが発生する可能性がある。FX取引をしている間は、通貨の動きだけでなく、スプレッドについても注視しておこう。

スプレッドが変動するタイミングは?

スプレッドが変動するタイミングについても理解しておこう。ある程度タイミングが予想できたら、スプレッドが拡大してもさほど慌てなくて済むはずだ。

●FX会社のサービス開始・終了時間

FX会社のサービス開始時間や終了時間周辺は、取引に参加する人が少なくなる時間帯だ。流動性が低くなるとスプレッドにも影響を及ぼし大、きく変動する場合もある。

●雇用統計などのイベント

各国の雇用統計の発表や政治経済に関する発表など、大きな政治経済関連のイベントの前後は、為替レートが大きく動くことが予想される。そのためスプレッドの変動幅も大きくなりがちだ。

スプレッドを意識してFX会社を選ぼう

基本的にFX取引では、取引手数料がかからない場合が多い。しかし通貨はFX会社の手数料が上乗せされた形で価格が提示されている。解説したとおり、上乗せされる金額は各FX会社で自由に設定できる。取引する会社を選ぶときは、高いコストを支払わないで済むように、スプレッドも意識して選ぶようにしたほうがよいだろう。