株式投資をする際に、購入する株の銘柄を決めるにあたって企業の成長性や配当とともに注目したいのが株主優待である。株主優待は、くらしに必要な日用生活品から企業独自のユニークなものまでさまざまだ。しかもその多くは毎年受け取れるため、安定した収益を見込むことができる。

この記事では、おすすめの株主優待や、受け取る際の注意点など徹底解説する。

魅力的な株主優待の世界

株主優待
(画像=PIXTA)

まず株主優待とはどのようなものかを見ていこう。株主優待とは、企業が自社の株を保有している人(株主)に対して感謝の気持ちを伝えるために商品やサービスを提供する制度のことである。2021年5月27日時点で約1,482社が株主優待制度を導入しており、これは上場企業全体の約4割。株主優待制度を毎年実施している企業が多くその内容も自社製品からギフトカードまでさまざまだ。

ライフスタイルに合わせた優待を受けられるだけでなく安定した収益を見込むことができるため、保有する株を選ぶ際に株主優待を重視する人も多い。また、長期で保有している株主ほど株主優待で受け取れる商品やサービスが優遇されるケースもある。これは、企業にとってすぐに株を売却する株主よりも長期的に保有する株主が多いほうが経営を安定させることができるためだ。

そのため株主優待目当てで株を購入する場合は、長期保有がおすすめといえる。どの株を購入するか迷っている場合は、株主優待に注目してはいかがだろうか。

おすすめ株主優待の調べ方

このように株を選ぶ際のポイントの一つとなりうる株主優待だが、何を基準に選べばよいのだろうか。株主優待を調べる場合に考慮しなければならないのが「投資額」と「利回り」である。そこでここからは「投資額」と「利回り」に着目して株主優待を調べる方法について見ていこう。

投資額はいくらか

投資額とは、その株を購入するために必要なお金のことである。企業ごとに株主の権利を得るために必要な株数が異なるため注意が必要だ。株主の権利とは「配当金を受け取る」「株主優待を受け取る」「議決権を行使する」などのこと。ここでいう投資額とは、株主優待を受けるために必要な株数を購入した場合に必要なお金のことである。

例えば、1単元となる100株を保有していると株主優待を受けられる企業も多い。株主の権利を得るために100株が必要で1株あたりの時価が1,000円の場合、株主優待を受けるための最低投資額は、1,000円×100株=10万円となる。予算が決まっている場合は、投資額から株主優待を探してみるのも一つの方法だ。なかには、投資額が5万円以下で株主優待を受けられる企業もある。

例えば、タカラレーベン <8897> (不動産業)なら100株以上で1枚(1キログラム)のお米券を受け取ることができる。最低投資額は3万5,100円(2021年5月26日終値)となっている。投資額が10万円以下、10万円超の場合には、次のような企業の株主優待がある。

・投資額10万円以下

アドバンスクリエイト <8798> (保険業)
最低投資額:8万8,000円(2021年5月26日終値)
株主優待:100株以上でカタログギフト(2,500円相当)

・投資額10万円超

ライオン <4912> (化学)
最低投資額:19万8,500円(2021年5月26日終値)
株主優待:100株以上で新製品を中心とした自社製品詰め合わせ

利回りはどれぐらいか

利回りとは、株価の購入価格に対してどれだけの利益を得たかを示す数値のことだ。利回りには、配当に注目した「配当利回り」と、株主優待に注目した「優待利回り」がある。利回りをもとに優待を考える場合は「優待利回り」を参考にするのが一般的だ。例えば株式の購入価格が10万円で1,000円のクオカードを株主優待で受け取る場合の利回りは、以下のように計算する。

・優待利回り=1,000円÷10万円×100=1%

高い利回りの株主優待となっている株には、以下のようなものがある

エム・エイチ・グループ <9439> (サービス業)
最低投資額:2万3,500円(2021年5月26日終値)
株主優待:100株以上。1枚 3,500円相当の優待券(3年未満保有)
優待利回り:3,500円÷2万3,500円×100=約14.9%

山喜 <3598> (繊維製品)
最低投資額:1万6,400円(2021年5月26日終値)
株主優待:100株以上。半期1,000円相当(年間 2,000円相当)の優待券
優待利回り:2,000円÷1万6,400円×100=約12.2%

目的別・おすすめ株主優待18選

ここまでは、投資額や利回りから株主優待のある株を選ぶ方法を見てきた。しかし株主優待の魅力は、なんといってもその中身だ。そこでここからは株主優待の内容をもとに目的別のおすすめの株を見ていこう。

よく利用するサービス・店に関連したギフトカード

株主優待で多いのが当該企業の買物優待券やギフトカードを株主優待としているケースだ。普段から利用するサービスや店があればその店舗などを運営する企業の株を購入し優待券やギフトカードを使いお得にサービスを受けたり商品を購入したりするのも良いだろう。

株主優待でよく利用するサービスや店に関連したギフトカードを受け取ることができるおすすめ株には以下の3つがある。

・ハニーズホールディングス <2792> (小売業:ファッション店舗経営)
最低投資額:10万3,000円(2021年5月26日終値)
株主優待:100株以上。3,000円相当(500円券、6枚綴り)の優待券

・イオン <8267> (小売業:スーパーマーケット等経営)
最低投資額:29万6,450円(2021年5月26日終値)
株主優待:イオンマークのカードでのクレジット払いなど一定の方法での支払の場合、持株数に応じて数パーセントを半年ごとにキャッシュバック(100株の場合は3%)
長期保有株主優待制度(ギフトカード)もあり

・丸善CHIホールディングス <3159> (小売業:書店等経営)
最低投資額:3万9,800円(2021年5月26日終値)
株主優待:100株以上。500円相当の商品券

欲しい商品で選ぶ

株主優待で受け取れるのは、優待券やギフトカードだけではない。自社商品やおすすめ商品を株主優待としている企業も多くある。そこで欲しい商品から株主優待を選ぶことも保有する株を選ぶ一つの方法だ。株主優待で商品を受け取ることができるおすすめ株には、以下の3つがある。

・オリックス <8591> (その他金融業)
最低投資額:18万8,200円(2021年5月26日終値)
株主優待:100株以上。「ふるさと優待」オリックスグループの全国の取引先が取り扱う商品を厳選したカタログギフト。3年以上継続保有でワンランク上のカタログギフトになる

・キリンホールディングス <2503> (食料品)
最低投資額:22万800円(2021年5月26日終値)
株主優待:100株以上。キリンビールギフトまたはキリンビバレッジ商品詰め合わせなど

・サカタのタネ <1377> (水産・農林業)
最低投資額:37万2,000円(2021年5月26日終値)
株主優待:100株以上。カタログセット。植物の種などを扱う企業ならではのカタログセットで球根セットなども選ぶことができる。保有株数により3種類のカタログセットがある

電車の乗車券は利用価値は高いが投資額は高額

実は、鉄道会社などの株を保有していると電車の乗車券や優待券などが株主優待の商品になっていることも多い。電車をよく利用する人にとっては、ありがたい株主優待だが投資額が高額になることもあるため、注意が必要だ。株主優待で乗車券などを受け取ることができるおすすめ株には、以下の3つがある。

・JR東日本 <9020> (陸運業)
最低投資額:77万1,400円(2021年5月26日終値)
株主優待:100株以上。株主優待割引券1枚(4割引)、JR東日本が運営する施設などの各種割引サービス券

・JR西日本 <9021> (陸運業)
最低投資額:62万2,900円(2021年5月26日終値)
株主優待:100株以上。株主優待割引券1枚(5割引)、JR西日本が運営する施設などの各種割引サービス券

・京浜急行電鉄 <9006> (陸運業)
最低投資額:14万300円(2021年5月26日終値)
株主優待:100株以上。電車・バス全線きっぷ2枚、京急グループ施設株主優待割引券

よく利用する飲食店で選ぶ

次に飲食店で使える優待券などを株主優待として受け取ることができるおすすめ株を3つ見ていこう。

・ペッパーフードサービス <3053> (小売業:飲食店舗経営)
最低投資額:3万2,300円程度(2021年5月26日終値)
株主優待:100株以上。半期1,000円相当(年間 2,000円相当)の優待券

・すかいらーくホールディングス <3197> (小売業:飲食店舗経営)
最低投資額:15万3,500円(2021年5月26日終値) 株主優待:100株以上。半期2,000円相当(年間 4,000円
相当)の優待カード

・サイゼリヤ <7581> (小売業:飲食店舗経営)
最低投資額:24万4,300円(2021年5月26日終値)
株主優待:100株以上。2,000円相当の食事券(500円券×4)

趣味に合わせて

趣味に合わせて株主優待を選ぶのも選択方法の一つだ。映画や音楽鑑賞など趣味に使える株主優待も多くある。おすすめ株を3つ見ていこう。

・東宝 <9602> (情報・通信)
最低投資額:44万4,500円(2021年5月26日終値)
株主優待:100株以上。半期映画招待券1枚(年間2枚)

・エイベックス <7860> (情報・通信)
最低投資額:15万9,800円(2021年5月26日終値)
株主優待:100株以上。年間のヒット曲などを収録した「株主限定スマプラミュージック」ライヴ映像などのオリジナル動画コンテンツを収録した「株主限定スマプラムービー 」を進呈。定時株主総会終了後のイベント招待(コロナなどの関係で中止の場合あり)

・東京テアトル <9633> (サービス業)
最低投資額:12万4,600円(2021年5月26日終値)
株主優待・100株以上。半期映画招待券4枚(年間8枚)

家族で楽しめる優待

最後に家族で楽しめる株主優待を受けることができるおすすめ株を3つ紹介する。

・オリエンタルランド <4661> (サービス業)
最低投資額:158万1,500円(2021年5月26日終値)
株主優待:100株以上。東京ディズニーランドまたは東京ディズニーシーで利用可能な1デーパスポート1枚

・JFEホールディングス <5411> (鉄鋼)
最低投資額:14万9,500円(2021年5月26日終値)
株主優待:100株以上。自社工場見学会(同伴者1名まで可)(コロナなどの関係で中止の場合あり)

・KDDI <9433> (情報・通信)
最低投資額:36万6,500円(2021年5月26日終値)
株主優待:100株以上。au PAY マーケット 商品カタログギフトまたは体験型商品。体験型商品には、キッザニアギフト券などがあり、家族で楽しむことができる。

注意点1:権利確定の月に株主であることが大事

株主優待を受けるためには、株主の権利を得る必要がある。しかし、株を購入したからといってすぐに株主の権利を得ることにはならない。株主の権利を得るためには、株主の権利を得るために必要な株数を権利付き最終日までに購入することが必要だ。権利付き最終日とは、権利確定日の2営業日前のことである。

例えば3月31日(金)が権利確定日の場合は、2営業日前の3月29日(水)が権利付き最終日だ。この場合、3月29日までに購入しておけば、翌日の3月30日以降に売却しても株主の権利を得て株主優待を受けることができる。権利付き最終日がいつになるのかは、企業によって異なるため、事前に調べておく必要があるので注意したい。

注意点2:株の収益性もチェックする

株を購入する際には、株主優待だけでなく株の収益性の確認も重要だ。例えば利回りが極端に大きい株の場合、優待の価格が大きいのではなく株価が下落している可能性もある。株価の下落が続けば売却時に優待以上の損失が出る可能性もあるため、注意が必要だ。一方で配当を出すことができる企業の場合、株主優待とプラスして配当も受け取れるため、株主にとって大きな利益となる可能性もある。

株を購入する場合には、その企業の業績なども確認しておくことが重要だ。

株を買うなら、株主優待のあるものも検討を

2021年5月時点で国内上場企業全体の約4割の銘柄が株主優待制度を導入している。株主優待では、さまざまなサービスや商品を受け取ることができるため、非常にお得な制度だ。

どのような株主優待があるのかを調べて株主優待のある銘柄を購入するのも株式投資の魅力の一つといえるだろう。