昔と比べて気温の変化が激しく、外で過ごしづらくなった人もいるのではないだろうか。地球が悲鳴をあげているからかもしれない。原因として考えられるのが気候変動だ。今回は、気候変動の事象や影響、日本における対策などについて解説する。

気候変動とは?

集中豪雨で2300人死亡?気候変動がもたらす悪影響3つ
(画像=JennySturm/stock.adobe.com)

気候とは、地球における大気の平均状態をさす。気候が平均より離れた状況を気候変動(異常気象)と呼ぶ。

気候変動の原因

気候変動の原因は大きく分けて2つ存在する。1つ目は自然要因だ。太陽の活動サイクルや海面の変化が挙げられる。

2つ目は人為的影響だ。人口増加による二酸化炭素の排出量増加、森林伐採などが挙げられる。人間のライフスタイルが変われば、その影響も変わる可能性がある。

気候変動の主な3つの事象

気候変動の主な3つの事象を見てみよう。

事象1.気温の上昇

政府のレポート「日本の気候変動とその影響」によれば、19世紀後半以降において世界の年平均気温は、100年あたり0.72度の割合で上がっているとのことだ。

日本に限定すると、100年あたり1.19度の割合で上がっていることもわかっている。

つまり世界平均と比べると、日本の年平均気温の上がり方は早い。ちなみに、緯度が低い場所よりも高い場所のほうが気温は上がりやすいといわれている。

参考:日本の気候変動とその影響2018年2月(環境省・文部科学省・農林水産省・環境省・気象庁)

事象2.集中豪雨

集中豪雨も気候変動の一種である。国内でも線状降水帯と呼ばれる雨雲が発生し、比較的狭い範囲で1時間に100ミリ以上の雨が降った。

土砂崩れや家屋の倒壊などに巻き込まれて、死者が出た事例もある。

気象庁の「気候変動監視レポート2019」によると、2019年7~10月の大雨によって、南アジア(周辺地域も含む)では2,300人以上が亡くなったと報告されている。

ちなみに、集中豪雨は地球温暖化による気温上昇が原因だと述べる学者もいる一方で、否定的な学者もいるようだ。

参考:気候変動監視レポート2019(気象庁)

事象3.ヒートアイランド現象

ヒートアイランド現象とは、都市部の気温が周辺と比べて高くなる現象をさす。その原因は2つある。

1つ目の原因は、都市部に空いているスペースが少ないことだ。

たとえば、東京や大阪の都心部はビルの乱立によって熱が逃げにくい。また、アスファルトの箇所が多いため、気温が下がりにくくなる。

2つ目の原因は、人間が活動するときに放出される熱だ。

都市部は郊外と比べてオフィスが多い。オフィスが稼働していると、電気やガスも消費され、大量の熱が放出される。場所によっては、昼間に放出される熱量が1㎡あたり100Wを超える場所もあるようだ。

なお、ヒートアイランド現象は地球温暖化に似ているが原因は違う。地球温暖化は、二酸化炭素やメタンガスといった温室効果ガスの放出で気温が上昇する。

気候変動がもたらす3つの悪影響

気候変動がもたらす3つの悪影響を紹介する。

悪影響1.森林火災

森林火災の中には、人為的な火災だけではなく自然的な火災もある。たとえば、2018年にはアメリカ西部のカリフォルニア州で大規模な火災が起こり、85人が亡くなった。送電線からの発火が原因ではあったが、森林火災が大拡大した理由としては土地の乾燥、強風、高気温、低湿度などが挙げられる。

オーストラリアでは、2019年の9~12月にかけて大規模な自然発火による森林火災が発生した。降水量が極端に少なく、非常に乾燥していたことが火災拡大の原因となった。

森林火災が起こると木々を消失するだけでなく、動物まで犠牲になって
しまう。居場所をなくした動物が街中に出現し、住民が襲われるケースも想定される。

悪影響2.農作物が不作になる

農作物が不作になり、農家の収入が減ることもある。具体的な事例は下記の通りだ。

・平年と比べて気温が高く農作物が育たなくなった
・豪雨被害が多く出荷できる農作物が減った
・気候変動により畑を荒らす動物が増えた

農家だけでなく消費者も不利益を被る場合がある。代表的なのは不作による値上げだ。時期によっては、通常と比べて価格が2倍以上に跳ね上がった野菜もあり、消費者の家計に負担が重くのしかかる。

悪影響3.コストの増大

気候変動はさまざまなコストを増大させる。たとえば、平年よりも暑い日が続き、体に不調を感じる人が増えれば、生産性が下がるかもしれない。

労働コストが大きくなり、企業の財政状況を圧迫する恐れがある。そのほかにも医療費の増大や、気候変動から身を守るための設備投資など、あらゆる面でコストが増える。

気候変動に対する世界的な取り組み

気候変動に対する世界的な取り組みで有名なのがパリ協定だ。パリ協定とは、2015年にパリで実施された「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)」で決まった協定だ。2020年以降の温室効果ガスを減らすために採択された。

パリ協定の要点

はじめて全ての国が参加して結ばれた協定であり、京都議定書に代わる内容が盛り込まれている。パリ協定の要点は主に下記の通りだ。

・長期目標として気温の上昇を2度以内に抑える
・各国が削減する温室効果ガスの数値を5年ごとに報告する
・先進国は途上国を支援する資金を提供する

気候変動に対する日本の取り組み

日本では「気候変動適応法」と呼ばれる法律を平成30年12月1日に施行した。国や自治体、企業などが一体となって気候変動に対する取り組みを推進する法律だ。

各団体の取り組み

役割は各団体によって分かれている。たとえば、国では気候変動適応計画を立て、自治体や企業などの取り組みを評価する。

そのほかにも、自治体に地域気候変動適応計画を立てる努力義務を課したり、海外との協力体制を整えたりしている。

気候変動に対して取り組む企業

国内には脱炭素化を念頭に置いて、気候変動を食い止めようとしている会社が存在する。気候変動に対して取り組む企業を3社紹介する。

企業1.JR東日本(ゼロカーボンチャレンジ2050)

JR東日本グループは2050年までに二酸化炭素の排出量を0にすることを目標にしている。

ベンチャー企業やスタートアップ企業に出資するJR東日本スタートアップ株式会社では、JR平泉駅にて太陽光発電の効率向上を目的とした実験を行った。駅で使う電力を太陽光や蓄電池による電気のみでまかなう。実現すれば二酸化炭素の排出量が0になる。

そのほか、ジェイアールバス関東株式会社では、東京駅や竹芝地区付近で水素シャトルバスを走らせた。水素をエネルギーにして走っているため、ガソリン車と比べると走行中の二酸化炭素排出量が大幅にカットされる。

企業2.イオン(イオン脱炭素ビジョン2050)

イオンでは、2050年の脱炭素化に向けて二酸化炭素の排出削減を目指している。中間目標は、2030年までに二酸化炭素排出量を35%カット(2010年比)することだ。

店舗での電力使用量を削ったり、再生可能エネルギーを生成したりする。たとえばイオンモール座間では、太陽光発電によって1,000kWの電力を発電している。

企業3.脱炭素化支援株式会社(脱炭素化のコンサルティング)

脱炭素化支援株式会社は名古屋市に本社を構える企業で、脱炭素化のコンサルティングを行っている。同社にはエネルギー管理士と呼ばれる資格を持った人材が集まっている。

エネルギー管理士は、エネルギーの合理化に関する専門知識を持つ。同社では、二酸化炭素の削減やエネルギーの消費軽減についてアドバイスしたり、脱炭素化関連の補助金や省エネに役立つ製品を紹介したりしている。さらに二酸化炭素を増やす業務に携わらないことも徹底している。

気候変動を防ぐ取り組みも検討

過去には産業革命や高度経済成長によって大量の二酸化炭素が排出された時代があった。しかし今後は、気候変動を起こさないために脱炭素化を進めることが大事になるだろう。収益だけにとらわれず、気候変動を防ぐ取り組みにも目を向けたい。

文・津田剣吾(フリーライター)

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