投資用マンションの事業転用というと民泊やレンタルスペースを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし変化の激しい昨今、選択肢が多いことがリスク回避に有効であり、その他の事業転用の選択肢も視野に入れるほうが賢明かもしれません。ここでは、サロンやジム、福祉施設、オフィスなどの事業転用アイデアをご紹介します。
事業転用の選択肢は、民泊やレンタルスペースだけではない
投資用マンションで長期空室が発生し、さまざまな空室対策を講じても効果が得られない場合、「事業転用」や時には「売却」を検討するのが一般的ではないでしょうか。事業転用を選んだときによく使われる方法は、新型コロナ感染の拡大前後で異なります。
- 新型コロナ感染拡大前:民泊
- 新型コロナ感染拡大後:レンタルスペース
これらの手段が悪いわけではありませんが以下のような問題点があることも理解しておきたいところです。「民泊」は皆さんご存じの通り新型コロナ感染拡大によってインバウンド需要が激減したため、壊滅的なダメージを受けています。たとえ新型コロナが収束しても新種の変異型が現れたり、感染症が流行したりするたびに収益が悪化する可能性がある点は大きなリスクです。
一方「レンタルスペース」は、市場規模の急拡大が見込まれる分野ですが注目度が高い分、新規参入が相次ぎ競争激化に巻き込まれるリスクもあります。一般社団法人シェアリングエコノミー協会と株式会社情報通信総合研究所が共同で行った「シェアリングエコノミー関連調査2020年度調査結果」によるとスペースのシェアリングエコノミー市場は、約3,249億円(民泊含む)でした。
ベースシナリオの場合、2030年には約2兆3,513億円に急拡大すると予測されています。
投資用マンションの事業転用アイデア集:サロン、ジム、福祉施設、オフィス
民泊やレンタルスペースには、上記のようなリスクがあるため、事業転用をするときにはこれら以外の選択肢も視野に入れて考えたほうがよいでしょう。ここでは、以下の4つの事業転用アイデアを紹介します。
- 個室レンタルサロン
- 個室トレーニングジム
- 障害者向けグループホーム
- サテライトオフィス
事業転用アイデア1:個室レンタルサロン
近年は、フリーランスの美容師やネイリスト、エステシャン、整体師も増えている感があります。こういった人たちに空室になっている部屋を施術スペースとして提供する事業転用ビジネスが「個室レンタルサロン」です(※)。密にならない環境でサービスを提供できるため、コロナ禍が長期化しても強いカテゴリといえるでしょう。 ※ただし、美容師がスペースを使う場合、保健所への美容室申請・許可が必須です。
実際の成功事例としては、健美家の不動産投資ニュース(2020年5月13日付)では、22平方メートルの部屋を「レンタル美容室」として貸し出したケースが紹介されています。この事例自体は、テナントビルのものですが1室の広さがワンルームに近いため、投資用マンションの事業転用でも参考になるでしょう。
ただ一口に個室レンタルサロンへ事業転用するといっても以下の3つの選択肢があります。立地や周辺ニーズなどに合わせて有利な選択をしましょう。
- 選択A:時間貸し
- 選択B:月貸し
- 選択C:レンタルサロンをしたい人との賃貸契約
なお個室レンタルサロンに事業転用したときのメリット・デメリットなどは以下の通りです。
好相性の立地 | 路面店の賃料が高額なエリア |
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メリット | 賃貸よりも高い賃料収入 |
デメリット | オーナーが運営する場合、設備導入コスト高 |
事業転用アイデア2:個室トレーニングジム
「個室トレーニングジム」もコロナ禍によってニーズの高まってきたサービスです。これは、ジムの会員になると完全貸し切り制でトレーニングジムを使えるというもの。会員のメリットとしては「一人または、限られたメンバーで集中できる」「コロナ感染のリスクが低い」といったものです。例えば2017年に法人設立した「ハコジム」では、個室トレーニングジムを空室物件の活用で展開しています。
広島市と福岡市の2エリアで店舗数を着実に増やしているのが特徴です。(2021年5月14日時点では計9店舗展開)ハコジムの場合は、オフィスビルの活用が中心のようですが投資用マンションも条件さえ合えば個室トレーニングジム転用が可能性でしょう。もともとハコジムのビジネスアイデアは、海外の賃貸物件に設置されたトレーニングルームがヒントになっています。
ハコジム代表の永田秀晶氏は、ビジネスメディアのインタビューでアメリカ駐在した経験をもとに以下のように解説しています。
「米国の集合住宅には住民のための小さなトレーニングルームがあって、ICカードで入室し、自由に利用できるところがたくさんあります」
引用:事業構想 2020年4月号
個室トレーニングジムに事業転用したときのメリット・デメリットなどは、以下の通りです。
好相性の立地例 | 駅近の商店街やオフィス街など |
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メリット | 新しいサービスなので競合が少ない |
デメリット | 設備導入コスト高 |
事業転用アイデア3:障害者向けグループホーム
障害者向けグループホームとは、複数の障害者が支援を受けながら共同生活する施設のことです。この分野のコンサルティング業務を行うNAQRAS(北海道札幌市)によると1棟マンションはもちろん、マンションの1階部分のみをグループホームに転用することも可能とのこと。とはいえ「福祉の知識のない人では、この方法での事業転用は難しいのでは?」と感じるオーナーもいるかもしれません。
この部分については、ノウハウのあるパートナーさえいれば福祉の知識ゼロのオーナーでもグループホームへの事業転用が可能です。例えば前出のNAQRASの場合、障害者向けグループホームに事業転用するために必要な申請を代行。さらに承認後の運営やトラブル対応まですべてアウトソースできるためオーナーの実務負担はほとんどありません。
(この項の参照:NAQRAS公式サイト)
障害者向けグループホームに事業転用したときのメリット・デメリットなどは、以下の通りです。
好相性の立地例 | 住宅地など |
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メリット | 安定した収益性 |
デメリット | 区分マンションだと難しい |
事業転用アイデア4:サテライトオフィス
前出の個室サロンや個室ジムと同様に時代の流れをキャッチした事業転用には「サテライトオフィス」もあります。サテライトオフィスとは、本社や支社などとは違う場所にある離れた場所に設置されているオフィスのことです。導入メリットとしては、通勤の負担軽減や新型コロナ感染のリスク回避の効果が見込まれます。
「住居用をオフィスに転用するのは、リフォーム費用がかかりそう」と感じるオーナーもいるかもしれません。しかし実際には、以下の3つをそろえるだけで事業転用が可能です。
- 高速ネット回線
- オフィス家具
- セキュリティ設備
また「オフィスに事業転用しても借り手がいるのだろうか」と不安なオーナーもいるかもしれませんがサテライトオフィスに詳しいパートナーを選べばこの点も解決できるでしょう。参考までに当メディア『Spacible(スペーシブル)』を運営する株式会社PLEAST(プレスト)もサテライトオフィスへの転用支援を行っています。
オフィス転用についてさらに詳しく知りたいオーナーはこちらをご参照ください。
好相性の立地例 | 人気沿線の駅近など |
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メリット | 安定した収益性 |
デメリット | 立地を選ぶ |
区分マンションの場合は管理規約などルールを確認
ここで紹介した内容は、あくまでも事業転用アイデアの一例です。時代の流れや地域住人のニーズに合わせて柔軟に発想していけばこのほかにもさまざまなアイデアが湧いてくるのではないでしょうか。ただし投資用マンションを事業転用する際、区分マンションの場合は、管理規約などで用途が制限されているケースも多いため、ルールをしっかりとチェックしてください。
事業転用を禁じられているにもかかわらず、無断の事業転用をしてしまわないようにしましょう。内緒で事業転用していたことが発覚した場合「契約者や利用者」「マンションの管理組合」とトラブルに発展する可能性があります。
(提供:spacible)
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