不動産投資の成否を分ける要素の一つに金融機関からの融資を受けられるか否かが挙げられます。融資を受けるには審査があり融資審査において「どのような基準や条件が設定されているか」は金融機関によって大きく異なるのが特徴です。しかし一般的な個人投資家にとって「どの金融機関に融資打診をするのが最も合理的なのか」を正確に把握するのは、容易ではありません。
そこで本記事では「金融機関にはどのような種類があるのか」「どのような人や物件に対して融資を行っているのか」という点に言及しつつ「各金融機関に融資を打診するのに適しているのはどのような属性の人なのか」について解説します。
金融機関は必要不可欠なパートナー
不動産投資では、1件あたりの投資単価が高く投資規模が数千万円や数億円になることも珍しくありません。投資規模が大きくなることから不動産投資家の多くは、物件購入に当たって金融機関からの融資を利用する必要があるため、不動産投資は融資ありきの投資といえるでしょう。融資を利用することで自己資金を手元に確保しながらレバレッジの利いた投資ができます。
そのため金融機関を味方につけることができれば資産規模を加速度的に拡大していくことが期待できるでしょう。不動産投資家にとって融資をしてくれる金融機関は、必要不可欠なパートナーといえます。
当たるべき金融機関は投資家の個人属性によって異なる
財務省のホームページによると2021年5月1日時点の金融機関は、証券会社や農業協同組合、労働金庫なども合わせると12種類に分けられ総数は955あります。全12種類ある金融機関の中で不動産投資ローンを提供する主な金融機関は、以下の8つです。
- 都市銀行
- 地方銀行
- 信用金庫・信用組合
- ノンバンク
- 政府系金融機関
- 信託銀行
- 労働金庫
- JAバンク
8種類の金融機関とも融資をする目的やメインターゲットとなる属性等が異なるため、自身の年収、金融資産、居住地、購入する物件の所在地等の諸条件を勘案したうえで当たるべき金融機関を選定しましょう。
属性別!最も合理的に融資を受けられる金融機関は?
不動産投資ローンを提供する金融機関は、上記で説明した8種類ですが、その中から特に融資の可能性が高い5種類については融資対象とするメインターゲットやエリアはどうなっているのでしょうか。各金融機関の特徴を述べたうえでどのような属性の投資家がどのようなシチュエーションにおいて当該金融期間を利用すべきかについて解説します。
- 都市銀行
- 地方銀行・第二地方銀行
- 信用金庫・信用組合
- ノンバンク
- 政府系金融機関
都市銀行
都市銀行とは、東京や大阪などの大都市に本店を置き全国的に支店を展開している銀行のことです。三菱UFJ銀行・みずほ銀行・三井住友銀行・りそな銀行・埼玉りそな銀行の5行が該当します。都市銀行は、全国に支店があり全国の人および物件に対して融資ができる点が特徴。また金利が低い点は、大きなメリットです。
しかし融資基準が厳しい傾向で高い社会的信用性(年収や金融資産、勤務先等)が求められるため、「融資のハードルが高い」という特徴があります。都市銀行に融資を打診するのに適している属性は、高年収の会社員や資産家、大企業の役員等の社会的信用が高い個人や一定程度以上の規模(資本金や純利益、従業員数等)を有する法人です。
地方銀行・第二地方銀行
地方銀行とは、地域経済の活性化を目指して個人や中堅・中小企業のニーズに応えるための融資やコンサルティングなどの金融サービスを提供している銀行です。地方銀行は、各都道府県を主たる拠点としており2021年5月1日時点で例えば横浜銀行や千葉銀行、武蔵野銀行、スルガ銀行など全国に96行があります。
地方銀行は、特定の地域に根ざした銀行ですが周辺の県および大都市に支店を出していることも多く融資対象となるエリアはやや広め。地方銀行に融資を打診するのに適している属性は、都市銀行の融資審査を通過できる年収や金融資産はないが対象物件の所在地や自身の居住地または勤務地などの関係で信用金庫・信用組合では融資対象外になる人です。
特定の地域に根ざしていながらも融資対象となるエリアを広めに設定しており審査基準が都市銀行ほど厳しくないのが地方銀行のメリットの一つ。柔軟な融資を期待できる金融機関といえます。
信用金庫・信用組合
信用金庫・信用組合とは、地域密着型の金融機関で地域内における相互扶助によって当該地域の繁栄を図る使命があり主に中小零細企業や個人を取引先とする金融機関です。信用金庫・信用組合が主に融資対象とするのは、当該金庫・組合などの営業地域内に住所または居所を有する人・事業所を有する人・勤労に従事する人など(出資会員および組合員)で同地域内に所在する物件となります。
地域の繁栄を図る目的があることから当該金庫・組合の営業地域内で融資を完結できるか否かが重視されている傾向です。信用金庫・信用組合に融資を打診するのに適している属性は、当該金庫・組合の営業地域内に一定期間(目安として3年)以上にわたって居住または勤務(個人の場合)、営業(法人の場合)しており同地域内の物件への融資を希望する人です。
ノンバンク
ノンバンクとは、預金業務を行わずに融資業務や決済代金の立替業務に特化している銀行ではない金融機関を指します。ノンバンクは、融資審査のハードルが低めなため、他の金融機関では融資を受けられなかった人または物件にも融資が下りやすい点はメリットです。一方で金利が高めであったり共同担保となる物件を求められたりする場合がある点はデメリットでしょう。
ノンバンクに融資を打診するのに適している属性は、年収や金融資産が少なかったり勤続年数が短かったりすることで他の金融機関で融資を受けられなかった人や担保評価が低い築古や郊外の高利回り物件への融資を希望する人です。金利が高めのため、ノンバンクを利用する際は「キャッシュフローが確保できるか」「元金の返済スピードが遅すぎないか」などのシミュレーションをしておきましょう。
政府系金融機関
政府系金融機関とは、政府が出資し株式を保有している金融機関を指します。営利目的の民間企業となる金融機関とは異なり政府系金融機関は公益性の高い融資活動(女性・若者・シニア起業家支援資金や新事業活動への融資など)を行っている金融機関です。政府系金融機関は、不動産投資を初めて行う人(新事業者)や若年層、高齢層など幅広く融資を行っています。
また低めの金利を設定している点もメリットです。一方で融資期間が短めであったり融資担当者との面談を事業者(投資家)本人が行う必要があったりするというデメリットがあります。政府系金融機関に融資を打診するのに適している属性は、新規事業者として不動産投資(不動産賃貸業)を始める個人・法人、女性、若年層。シニア層で同機関が提供する融資サービスの対象者に該当する人です。
融資期間が短めのため、政府系金融機関を利用する際は「キャッシュフローが確保できるか」を事前にシミュレーションしておきましょう。
同じ金融機関でも支店や担当者によって融資姿勢が異なる
不動産投資への融資姿勢は、同じ金融機関であっても支店や担当者によって異なります。そのため融資打診をする際は、不動産投資への融資に積極的な支店および担当者を見つけるのが得策です。しかし一般の個人投資家が各金融機関の中で「どこが不動産投資に積極的な支店なのか」「どの担当者にアプローチすればいいのか」について把握するのは困難でしょう。
そのため融資打診先を検討する際は、各金融機関の融資姿勢に詳しい不動産業者に紹介してもらうことが賢明です。
やみくもに融資打診をするのは得策でない
「早く不動産投資を始めたい」「どうしても買いたい物件がある」といった事情があったとしても金融機関への融資打診をやみくもに行うのは得策とはいえません。なぜならやみくもに融資打診を行っても融資審査で落ちてしまう可能性が高くなるからです。融資審査で落ちると当該金融機関内に審査落ちの履歴が残ります。
そのため次回以降の再チャレンジの際に同履歴が審査上ネガティブに作用してしまう可能性もあるでしょう。融資打診をする際は、自分の属性および購入する物件に鑑みどの金融機関のどの支店にアプローチをするのが最も審査通過の可能性が高いかを考えてから動くのが大切です。
(提供:spacible)
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