近年は、温暖化が進んでいることに伴い大規模な天災が増加傾向です。そのため賃貸経営を行う上での天災リスクヘッジの重要性が年々上がってきています。天災リスク上昇によって火災保険や地震保険の保険料が上がってきていることはニュースで報じられている通りです。たとえ保険料が今後も上がり続けたとしても火災保険と地震保険の2つは加入したほうがいいでしょう。

今回は、実際に所有物件が被災した場合の保険活用方法を中心に解説します。保険加入の重要性に気付きたい人は、必見です。

火災保険や地震保険は賃貸経営で欠かせない大きな味方

不動産投資における災害時のリスクヘッジ手段
(画像=taa22/stock.adobe.com)

まず火災保険や地震保険は、コストと考えるのではなく将来の天災リスクに備えるための先行投資として捉えたほうがいいでしょう。日本は、保険の活用率が低い傾向です。保険を活用したことがない人にとっては、大きなコストと捉えてしまう人もいるかもしれません。しかし火災保険は火災リスクだけではなく賃貸経営における様々なリスクをヘッジするための大きな味方です。

例えば火災保険に「建物電気的・機械的事故特約」という特約を任意でつけることができます。この特約をつけておくと雷などでマンション共用部設備の電気がショートし故障した場合、故障した設備の交換費用や修繕費用分の保険金を受領することが可能です。例えばエレベーターであれば交換となった場合、500万円以上の費用が必要となるため大きな負担となってしまうでしょう。

また火災保険の基本補償範囲の中には、風災や水災も含まれていることが多いため、火災以外の天災リスクのヘッジもできます。ただし火災保険および地震保険のどちらにしても「どういった被害が発生すると保険金の支払い対象になるのか?」という部分を知らないと保険料がムダな費用となってしまいかねません。

保険金請求できるものを請求せずに終わらせてしまう人も少なくないのが事実です。一度保険金の請求をすると分かりますが請求自体は簡単と感じる人が多いのではないでしょうか。また補償範囲も保険証券などに記載されているため、その記載も確認しておくと安心です。以下で保険金請求の手順およびポイントを確認してみましょう。

台風被害による保険金請求の手順およびポイント

近年多発している台風被害が発生した場合の保険金請求の手順およびポイントについて解説していきます。まず大きな台風が発生したら自分で物件の被害状況を確認しましょう。確認した結果、明らかに台風が原因と考えられる被害箇所がある場合は、保険証券に記載されている事故受付の電話番号に連絡をします。

オペレーターが電話に出たら被害発生日や被害の内容について聞かれるため、できるかぎり詳しく伝えましょう。被害の状況に応じて以下のようなケースが考えられます。

  • 「後日担当から連絡します」というケース
  • そのまま保険金請求手続きに進むケース

いずれにしても被害を受けた場合は、電話で事故受付することが最初のステップです。ここでポイントになるのが被害内容の伝え方です。事故受付をする前に自分が事故受付をしようと考えている被害が保険の補償範囲に含まれるか確認したうえで電話をするようにします。なぜなら保険の補償範囲に含まれない被害や被害の発生要因が別にあると伝えてしまった場合、保険金が支払われない可能性が高くなるからです。

被害状況がしっかりと補償範囲に含まれていることが分かるよう伝えることを心がけましょう。自分で判断できない場合は、保険代理店に確認したり保険申請代行業者に任せることも選択肢の一つ。ただし保険代理店の担当者に聞く場合には注意が必要です。なぜなら保険代理店にとって保険契約者が保険金を受領することは、保険会社からの手数料を下げることにつながる可能性があるからです。

場合によっては、「保険金請求できる内容を請求できない」と回答してくる可能性もあるため、そうならないよう日ごろから良好な関係性を築いておく必要があります。事故受付が無事完了した後は、保険会社から保険金請求書などが送られてくるため、書類に必要情報を記載して被害箇所の写真および被害箇所修繕のための見積書を返送しましょう。

近年は、保険金請求手続きをインターネット上やLINEで行える保険会社もあるため、その場合は必要書類の郵送を待たず、すぐに請求することが可能です。保険金請求完了後、約1週間で保険会社の担当から電話で連絡がありその電話で保険金の金額通知を受けます。正式な金額内訳は、後日はがきなどが郵送される傾向です。

最後にその電話から数日後に保険金の入金がありすべての手続きが完了となります。被害箇所確認のため、保険鑑定人が現地確認に来るケースもありますが写真で被害箇所が明確に分かるような場合は、コストをかけてまで現地確認に来る可能性は低いでしょう。そのため基本的に分かりやすい写真を撮影し保険金請求することを意識しておくとスムーズです。

地震被害による保険金請求の手順及びポイント

地震被害による保険金請求の手順およびポイントも確認しておきましょう。基本的には、火災保険の手順およびポイントと同様です。ただし地震保険の場合は、以下の点が火災保険と異なります。

  • 震度4以上の地震が請求する物件エリアで発生している
  • 保険鑑定人が必ず現地確認に来る

また地震保険の場合は、被害状況に応じて以下の4つに分けられます。分類ごとに受領できる保険金の割合が異なるのが特徴です。

  • 全損:地震保険金額の100%補償
  • 大半損:地震保険金額の60%補償
  • 小半損:地震保険金額の30%補償
  • 一部損:地震保険金額の5%補償
    ※いずれも時価額が限度

実際に地震保険で保険金請求している人の多くが一部損で請求しています。一部損の定義は、地震による損害額が建物の時価額の3%以上20%未満です。一見分かりにくい箇所が該当することもあり一部損の場合は、素人で判断できないことも少なくありません。そのため保険請求代行会社を利用する人もいます。

自分が物件を所有するエリアで震度4以上の地震が発生した場合は、保険金請求代行の会社へ依頼することも選択肢の一つです。鑑定自体は無料で実際に保険金が発生した場合に保険金の一定割合を手数料として支払う料金システムになっていることが多く、依頼のみだとコストはかからない点はメリットといえるでしょう。ただし、保険金請求の代理業者の中でも50%以上の手数料を設定する、発生していない事故を発生したように見せて申請する等、悪質業者もいるため、複数の業者と話をしたほうが無難だと考えます。

最後に火災保険や地震保険の保険金請求期限は事故発生日から原則3年です。そのため事故発生後にすぐに請求していなかった場合も期限内であれば請求することができます。こういった点も考慮したうえで火災保険や地震保険をうまく活用してみてはいかがでしょうか。

(提供:spacible

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