40代の後半から50代の後半にかけての世代は働き盛りであるのと同時に、老後が目前に迫り、それをリアルに感じる世代でもあります。老後に備えてお金の準備をしておく必要性を感じつつも、特に資産運用などを何もしてこなかった(できなかった)という方にとって喫緊の課題は「今からでも何か始めておかなければ」ということではないでしょうか。

しかし、何から始めればよいのか、何を勉強すればよいのか分からない。当記事は、そんな方々に読んでいただきたい内容をまとめました。

老後を目前に控えた方々が資産運用を始めるのにあたって最も意識しておくべきことは、リスク許容度の低さです。これはつまり、失敗できないということです。この年代で手持ちの資金を失ってしまうと、老後までにそれをリカバーできるだけの時間がありません。その一方で老後までの時間が少なくなっているために、「何としても自分年金を作りたい」という思いが強くなるのも理解できます。資産運用への思いや焦りを感じつつ、何とかしたいというミドル世代の方々が絶対に留意しておくべきことを解説し、おすすめの「運用」を1つご紹介します。

まもなく老後がやってくるのに資産運用をしてこなかったら、どうなる?

まもなく老後を迎える人が資産運用を考えた時、絶対に留意するべき3つのポイント
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

多くの方が衝撃を受けた、「老後2,000万円不足問題」。金融庁の諮問機関が発表したレポートにそのような記述があったためにそれが大きくクローズアップされたわけですが、この内容が衝撃的であったというより、多くの人が薄々感じていたことを国が追認したことへの衝撃が大きかったのではないかと思います。

公的年金だけで老後の生活が安泰だと思っている人は今や少数派でしょうし、そのために貯金をしたとしても老後に取り崩していくといつか尽きてしまいます。生命保険文化センターの調査によると、老後の生活に不安を感じている人は84.4%もの高率になり、しかもその不安内容のトップは公的年金だけでは不十分だというものです。まもなくやってくる老後に向けて資産形成をしてこなかった人が不安を感じ、「何とかしなければ」と焦ってしまうのも無理はないでしょう。

しかし、焦りは禁物です。焦りから来る短絡的な思考や行動ほどリスクの高いことはないので、まずは現在の状況をしっかりと理解し、最もやってはいけないことを知ることから始めましょう。

留意するべきポイント① リスク許容度が低い

まもなく老後という時期に差し掛かっている方が留意しておく最大のポイントは、リスク許容度の低さです。若い頃であれば少々リスクの高い投資をしてもそれをカバーできるだけの時間がありますが、ミドルエイジ以上になると失敗は許されません。この「失敗できない」というのが第一前提になっていることを、まずは留意してください。

しかも、年齢的に健康リスクが高くなってきますが、その一方でここから収入が大きく伸びることは期待しにくくなってきます。むしろ収入が減ってしまう可能性もあるので、このことも資産運用のリスク許容度を低くします。

退職金やそれまでの貯蓄など、投資に回せるだけの現金はある程度持ち合わせているかもしれませんが、その資金をどうやって運用するのかといったノウハウを積み上げてこなかったこともリスク要因として認識しておくべきでしょう。

留意するべきポイント② 他人が勧めてきた金融商品に投資するな

資産運用を経験してこなかった一方で一定の運用資金を持っている状況は、銀行や証券会社など投資を勧める側から見ると魅力的なターゲットです。しかし、これは運用者の立場で考えるとリスクが高く危険な状況です。なぜなら、金融機関を含む他人が勧めてきた商品によいものはないというのがセオリーで、それは顧客を儲けさせるためのものではなく、勧めている金融機関が儲かるものである可能性大だからです。

よい投資とそうでない投資を見極めるには、金融リテラシーが必要です。これまで資産運用を経験してこなかったことで金融リテラシーがあまりない人というのは、プロから見ると自分たちの儲けを大きくできる「カモ」となってしまうわけです。

他人が勧めてきたものに投資をしないのは基本中の基本です。特に、よく分からないものに投資をするのはリスクが高すぎるので絶対にやめておきましょう。

留意するべきポイント③ 実は最も有利で確実な「運用」は年金の繰り下げ受給

リスク許容度が低く失敗できない状況であり、他人に勧められたものに投資するべきではないと解説を進めてきましたが、それでは一体どうすればよいのでしょうか。ここでおすすめするのは、公的年金の受給繰り下げです。

本来は65歳から受給が始まる老齢基礎年金ですが、「まだ要らない」と申請をすることで受給の繰り下げをすると、受け取り額が増えることをご存じでしょうか。例えば66歳0か月まで繰り下げる(つまり1年繰り下げ)ことで8.4%の増額率になります。最大70歳0か月まで繰り下げることができるので、そこまで繰り下げをすると8.4%の5年分で42%もの増額になります。

これを資産運用に当てはめてみると、年利8.4%で運用をしているのと同じ効果になります。超低金利時代において、銀行の定期預金が限りなくゼロに近いことはご存じかと思います。そんな時代において実質的に年利8.4%での運用は決して簡単なことではありません。しかも年金受給繰り下げは元本が保証されている「運用」なのでリスク許容度が低い年代からであっても十分取り組めます。

しかし、ここで重要になるのが「70歳までをどう乗り切るか」です。年金を最大70歳まで繰り下げて受給するのであれば、もし65歳で定年を迎えると5年間の空白が生じます。しかし、逆に考えると70歳以降は42%増額された公的年金を受給できるので、公的年金だけで生活できる可能性が高くなります。何歳まで生きるか分からない老後に向けた準備をするよりも、「70歳まで乗り切れば何とかなる」という準備のほうが現実味があると感じませんか?70歳まで年金受給を繰り下げれば公的年金で生活ができる目算が立つのであれば、70歳まで生活できる貯蓄さえ用意しておけばよいという計算が成り立ちます。

大切なのは、早めの対策と正しい知識

資産運用には時間が必要なので、早くその重要性に気づいて早くから取り組むことが有利な結果につながります。積立投資などで運用をしていくにも長い時間があるほうが積立額が大きくなりますし、複利効果といって運用益を積み増しながら運用をすることで雪だるま式に資産を増やしていくのにも時間が味方になります。大切なのは、早めの対策と正しい知識です。

特に重要なのが、正しい知識です。先ほど年金の繰り下げ受給で最大42%もの増額が可能であることを解説しましたが、このこと1つをとっても知っているか否かによって老後に向けた計画は大きく変わることでしょう。もちろん知っているほうが老後に向けた資金計画の選択余地が大きくなりますし、より安全に老後資金を増やすことができます。こうした思考を可能にするのが、金融リテラシーです。

金融リテラシーが十分にない一方で退職金などまとまったお金を持っている人が「カモ」にされてしまい、全く魅力のない投資信託や不動産物件を買わされてしまった結果、安心の老後どころか大切な老後資金を失ってしまうといった事例が後を絶ちません。そんな事態は誰もが恐れる「老後破産」のリスクを高めてしまうので、くれぐれもそんなことのないよう、正しい知識に対して高い関心を持ち、自分の老後は自分で考えて自分で手当てしていくという意識を忘れないようにしましょう。

(提供:Incomepress



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